odd_hatchの読書ノート

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政治

小林正弥「サンデルの政治哲学」(平凡社新書)-1

正義はこれまで宗教や倫理による要請として語られてきたが、そのような権威を人があまり認めなくなったので、功利主義で説明するようになった。個人の幸福の増大が社会全体の幸福につながるという考え方。でも、不遇な人をさらに不遇にさせたり、再分配を拒…

小林正弥「サンデルの政治哲学」(平凡社新書)-2

2019/07/19 小林正弥「サンデルの政治哲学」(平凡社新書)-1 2010年 サンデル、あるいは政治哲学の議論を読むときに、ヨーロッパとアメリカの違いを意識することは重要。本書の指摘をまとめると、社会契約説はヨーロッパでは仮構であるとみなされるが、アメ…

小林正弥「サンデルの政治哲学」(平凡社新書)-3

2019/07/19 小林正弥「サンデルの政治哲学」(平凡社新書)-1 2010年2019/07/18 小林正弥「サンデルの政治哲学」(平凡社新書)-2 2010年 読みながらいろいろ疑問をもっていたら(サンデルの議論は東洋でも使える? コミュニティって封建的じゃない?)、最…

庄司克宏「欧州連合」(岩波新書)-1

第2次大戦の惨禍(と東西冷戦)は、分断された欧州ではふたたび戦争を起こすことが懸念された(と同時に、中世から近世の宗教戦争による分断の記憶も想起された)。そこで、緩やかな統合の試みが戦後に始まる。最初は石炭の生産と流通の壁をなくすことだっ…

庄司克宏「欧州連合」(岩波新書)-2

ここまではEUの仕組みと加盟国内の施策について。後半は、関係諸国・国際社会とのありかたについて。EUは国際的共生を理念としていることを念頭において読む。 第3部 EUの挑戦―国際的共生と対立国際ルールの形成・発展とEU―法の支配・人権と環境 ・・・ 範囲…

明石康「国際連合」(岩波新書)

たとえば「宇宙戦艦ヤマト」では、仇敵ガミラスの滅亡の後、地球は人種や民族を止揚して世界政府をつくる。そういう想像力はユートピア文学やSFによくあって、たいていの未来社会はそんな感じ。さかのぼれば、トーマス・モア、カンパネラらに、さらにはプラ…

トーマス・ペイン「コモン・センス 他三篇」(岩波文庫)

アメリカ独立戦争(1775-1783年)のさなかの1776年に出版されたパンフレット。アメリカ独立戦争 - Wikipedia ほぼ無名の人物の筆になるものであるが、ベストセラーになり、「その半年後に発表された『独立宣言』の内容に多大な影響を与えた(表紙解説)」と…

樋口 陽一「個人と国家―今なぜ立憲主義か」(集英社新書)

著者の名は2015年安保の際の国会前抗議でなんどかスピーチしているのを聞いて知った。憲法や立憲主義を聴く機会が増えているので、勉強のために読む。2000年初出。なので、事例は少し古い。 今、私たちにとって「戦後」とは何か ・・・ 「戦後」、人権を拡張…

木下ちがや「ポピュリズムと「民意」の政治学 3・11以後の民主主義」(大月書店)-1

1990年以降の政治をポピュリズムという概念を使って分析する。 「ポピュリズムとは、人びとが抱く感情にはたらきかけ、政治的シンボル(言葉やイメージ等)への支持/同一化を広範に喚起する政治」という齊藤純一の定義がわかりやすい。通常は、「一般大衆の…

木下ちがや「ポピュリズムと「民意」の政治学 3・11以後の民主主義」(大月書店)-2

後半は「2011.3.11」以降のできごと。本書の性格から外国の話題は少ししか触れていないが、2000年以降の大規模占拠などの民主化のポピュリズム運動も知っておいた方がよい。 第7章 二〇一五年七月一六日――「安保法制」は何をもたらしたか ・・・ 2015年の安…

アンソニー・ギデンズ「第3の道」(日本経済新聞社)

1990年代。東欧ソ連の社会主義が一気に倒壊。1980年代に成立した日英米の新自由主義保守政権は貧困層の増加と格差の拡大、国内の差別の拡大などの諸問題を起こした。そこで、リベラルな政権が望まれ、日英米で成立する。そのとき、もっとも実績を残したのが…

アマルティア・セン「人間の安全保障」(集英社新書)

アマルティア・センの講演集第2弾(2006年)。アマルティア・セン「貧困の克服」(集英社新書)の続編のような位置づけ。 安全が脅かされる時代に 2003 ・・・ 基礎教育を充実させ普及することによって、社会の安全と公平な場所にしよう。識字、計算、意思…

イマヌエル・カント「啓蒙とは何か/永遠平和のために」(光文社文庫)-1

カントの政治哲学や歴史哲学の論文を読む。道徳論の難解さはここにはなくとても平易(下記にあるように翻訳のせいかもしれない)。楽しみながら高揚しながら読むことができました。まあ、素人であるおいらがカントの考えを正確に伝えられるはずもなく、解説…

イマヌエル・カント「啓蒙とは何か/永遠平和のために」(光文社文庫)-2

2016/06/30 イマヌエル・カント「啓蒙とは何か/永遠平和のために」(光文社文庫)-1 1795年 の続き つづいて「永遠平和のために」を読む。政治哲学ではあまり言及されることがないようだが(おいらの偏見)、別の分野の本で言及されることがある。この国では…

高橋源一郎×SEALDs「民主主義ってなんだ?」(河出書房新社)

SEALDs(自由と民主主義のための学生緊急行動)の活動は2015年12月末現在で進行中(2016年参院選終了後解散を予定)。前史から含めると2011年ころから活動を開始。その歴史をまとめるとのちにずれが出てくるだろうから、ここでは省略。個人的には前身のSASPL…

高橋源一郎「ぼくらの民主主義なんだぜ」(朝日新書)

著者はデビュー時から知っていてしばらく追いかけていた。デビュー前に全共闘運動に参加して逮捕されたり、町工場で騒音の中で働いていたりしたことを知った。でも、たとえばテレビ時評でタレントの分析をしたり、ファッションショーの批評をしたり、「追憶…

内田義彦「社会認識の歩み」(岩波新書)

経済学史家でマルクス経済学者の著者が、市民向け講座で1971年に講義したものをまとめたもの。 はじめに―問題と方法 ・・・ 我々が社会を認識するために、過去の社会科学の遺産をどう生かすかを考える。これはいわばいかにうまく本を読むかに通じる。なお、…

日高六郎「1960年5月19日」(岩波新書)

タイトルの日付は、衆議院で安保条約締結が採決された日。それまでは議会内の小委員会で審議が行われていた。社会党議員の質問に政府はまともに答えられない場面があった。議事の休憩中に、突然審議終了・採決などの議案が自民党から出される。議事録も取れ…

保坂正康「六〇年安保闘争」(講談社現代新書)

この本が出たのは1985年(奥付は1986年1月)。60年安保から25周年という企画だった。当時の朝日ジャーナルの記事だったと思うが、あるラジオ局が60年安保のドラマを流した。そのあと、闘争に参加した人たち(当時40-50代)と若者(20代)が対談することにな…

アマルティア・セン「貧困の克服」(集英社新書)

著者はインド生まれの哲学・経済学・政治学その他の研究者。アジア人として初めてノーベル経済学賞を受賞。ここでは彼の考えをよく示す講演4つを収録。 危機を超えて−アジアのための発展戦略 1999 ・・・ 東アジアの経済発展と危機の経験から開発の戦略を考…

広井良典「日本の社会保障」(岩波新書)

元厚生省官僚で、執筆当時の1999年は大学助教授(当時の呼称)。社会保障のありかたを原理までさかのぼって考察する。 第1章 福祉国家の生成と展開 ・・・ 社会保障の制度は19世紀に遡れるものもあるが、現在の制度は戦後。戦後の経済成長の間に各国で採用さ…

広井良典「定常型社会」(岩波新書)

はじめに─「成長」に代わる価値とは ・・・ 経済成長に代わる社会の目標を「持続可能な福祉社会/福祉国家」とする定常型社会を提案したい。 (ここでいきなりひっかかる。定常型社会ではゼロ成長社会となるのだが、その場合福祉や社会保障の源泉になる税収は…

C・ダグラス・ラミス「経済成長がなければ私たちは豊かになれないのだろうか」(平凡社ライブラリ)

著者は1932年生まれ。1950年代にアメリカ海兵隊にいたそうな。除隊後の活動は解説に書かれていない。1980年にこの国の大学教授になり、退官後沖縄で執筆・講演しているとのこと。この本は2000年初出。911事件の前であり、サブプライムローン問題やリーマンシ…

ジョン・グレイ「グローバリズムという妄想」(日本経済新聞社)

著者は1948年生まれの、イギリスの政治哲学者。専門は、自由主義思想とのこと。オックスフォード大学教授から、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスに移ったとのこと。批判先はグローバーリズムだけど、同時にアメリカの啓蒙思想。 1. 「大転換」からグ…

河邑厚徳「エンデの警鐘」(NHK出版)

著書のことばとは少し違った言葉で主題をまとめると、ここの主要な問題は経済のグローバリゼーションと国家の権限の拡大に対する批判。すなわち、グローバル化した経済の問題は、(1)利子を目当てに投資するものたちと多額な報酬を期待する経営者によって…

河邑厚徳「エンデの遺言」(NHK出版)

主題はエンデの「金」に対する疑問と、その解決方法。ここでは地域通貨(LETS)が取り上げられている。 最大の収穫は、邦訳が一冊も出ていない経済学者シルビオ・ゲゼルを知ったこと。経済学者として、「国家に抗する貨幣」のあり方を考えていた人がいるとは…

佐伯啓思「アダム・スミスの誤算」(PHP新書)

アダム・スミスの読み直しとそれによる経済のグローバル化の批判。スミスの生きた時代が漱石「文芸評論」の時代であること、そして「産業革命」の時代であること(下記のように実際は別の経済革命が重要だった)。そのころから300年もたつと、どうもわれわれ…

佐伯啓思「ケインズの予言」(PHP新書)

2013/05/20 佐伯啓思「アダム・スミスの誤算」(PHP新書) 序章 凋落したケインズ ・・・ ケインズの政策は一国の閉鎖的な経済環境を想定していた。外国との開放経済を調べてみると、1)一国の独自の経済政策、2)貿易のバランス、2)為替レートの安定…

リチャード・ロービア「マッカーシズム」(岩波文庫)

ジョゼフ・マッカッシーはおよそエレガントでもジェントルでもインテリジェンスもない人柄。小柄で太っていて、強い飲酒癖をもち、ポーカーと競馬が大好きで仕事中に予想紙を広げていることもある。虚言癖をもち、いつでも支離滅裂ではあるが人を納得させる…

藤原帰一「デモクラシーの帝国」(岩波新書)

1989年の東欧革命で自由主義国家と社会主義国家の対立がなくなった。一時期は国際連合のような国家間の利害調整機能が働くかに思えたが、2011年9月11日のテロののち、アメリカが独断的に国際政治に介入し、世界を指導するという図式に変わった。このようなア…