odd_hatchの読書ノート

エントリーは3200を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2024/11/5

2019-05-01から1ヶ月間の記事一覧

エドガー・A・ポー「ポー全集 2」(創元推理文庫)-1「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」

全集第2巻。ポオ唯一の長編。 ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語 1837 ・・・ 子供のころから冒険に出たがる少年アーサー・ゴードン・ピムが、従兄の誘いに乗って密航した。世界が開けてくるはずであったが、この少年には苦難ばかりが続…

エドガー・A・ポー「ポー全集 2」(創元推理文庫)-2「群集の人」ほか

全集2巻後半の中短編。ポオ20代後半の作品。附録はボードレールのポオ論。 沈黙 1838(1839.10) ・・・ 悪霊が「僕」に語るザイレ川ほとりのできごと。孤独にたたずむ男を嵐や雷鳴で脅すが動じない。そこで沈黙の呪いをかける。睡蓮、風、森、嵐、雷鳴、…

エドガー・A・ポー「ポー全集 3」(創元推理文庫)-1「モルグ街の殺人」「マリー・ロジェの謎」「盗まれた手紙」 オーギュスト・デュパン登場。探偵小説の始まり。

ポオ全集第3巻。「モルグ街の殺人」と「マリー・ロジェの謎」と「盗まれた手紙」(全集4に収録)のデュパン登場作を集めて一エントリーにする。それほど気になることが詰まっている。 モルグ街の殺人 1841.04 ・・・ 探偵小説はここから始まる。 パリの朝…

エドガー・A・ポー「ポー全集 3」(創元推理文庫)-2 「赤死病の仮面」「メエルシュトレエムに呑まれて」ほか

全集3巻の前半の短編。 メエルシュトレエムに呑まれて 1841.05 ・・・ ノルウェーの海岸村ヘルゲッゼンできく、一夜にして白髪になった老人の語り。ヘルゲッゼンの近くにおこるモスケエ・シュトレエムの渦に漁船が巻き込まれた。出ることのできない渦。老人…

エドガー・A・ポー「ポー全集 3」(創元推理文庫)-3「陥穿と振子」「早まった埋葬」ほか

全集第3巻の後半の短編。 エレオノーラ 1841(1842) ・・・ 家族のいない「私」は母の姉妹とその一人娘と谷で暮らす。娘エレオノーラは「私」を愛したが、病で亡くなる。死の床でエレオノーラは「別の娘と結婚するな」と告げる。数年して、谷の美しさが色…

エドガー・A・ポー「ポー全集 4」(創元推理文庫)-1「黄金虫」「黒猫」ほか

全集4の短編。ポオ30代の作品。 黄金虫 1843.06 ・・・ 南カロライナ州のサリヴァン島に隠遁しているウィリアム・ルグランド青年。毎日無聊を囲っているのを見かねて「ぼく」は様子を見に行った。あたらしい黄金虫を見つけたよとスケッチを受け取ると、そこ…

エドガー・A・ポー「ポー全集 4」(創元推理文庫)-2「シェヘラザーデの千二夜の物語」「アモンテイリャアドの酒樽」ほか

全集4の短編。ポオ30代の作品。1844年以降作品が極端に少なくなる。今回の再読では、ポオの評伝を読んでいないから、あてずっぽうだけど、編集長の仕事が忙しくなったのと、大酒癖が発生したためかなあ。(wikiをみたら、貧困と窮乏が進行していたうえ、「…

エドガー・A・ポー「ポー全集 4」(創元推理文庫)-3「アルンハイムの地所」「ランダーの別荘」ほか

全集4の短編。ポオ30代後半の作品。 アルンハイムの地所 1847.03 ・・・ 「庭園」「ウィサヒコンの朝」で夢想された造園を具体的にイメージする。造園術もここまでくると精神的な目的を実現する手段になり、ほとんど哲学や芸術と同じところにいる。ヨーロッ…

東野圭吾「名探偵の掟」「名探偵の呪縛」(講談社文庫) 「本格探偵小説」の啓蒙と小説の構造の意図的な破壊。長編はたいしたことない。

サマリーを書くのは面倒なので、このサイトを紹介して終了。 higashinokeigo.net ステロタイプなキャラクターがステロタイプな登場人物を相手にステロタイプな「本格探偵小説」向きに設定された事件をステロタイプな謎解きをする。この国ではミステリーが大…

東野圭吾「ダイイング・アイ」(光文社文庫) バブル崩壊後の20世紀末日本はまだ浪費が可能なほど「豊か」だったのだなあ(嘆息)

「雨村慎介は何者かに襲われ、頭に重傷を負う。犯人の人形職人は、慎介が交通事故で死なせた女性の夫だった。怪我の影響で記憶を失った慎介が事故について調べ始めると、周囲の人間たちは不穏な動きを見せ始める。誰が嘘をつき、誰を陥れようとしているのか…

樋口陽一「個人と国家―今なぜ立憲主義か」(集英社新書) 改憲論者の言い分は数十年同じ。反論するには本書一冊で十分。

著者の名は2015年安保の際の国会前抗議でなんどかスピーチしているのを聞いて知った。憲法や立憲主義を聴く機会が増えているので、勉強のために読む。2000年初出。なので、事例は少し古い。 今、私たちにとって「戦後」とは何か ・・・ 「戦後」、人権を拡張…

デビッド・ギャレン編「マルコムX最後の証言」(扶桑社文庫) 20世紀前半から半ばまでのアメリカの問題を一身に集約した存在。

1992年スパイク・リー監督の映画「マルコムX」が評判だったのにあわせたのか、1993年に出版。原著は1992年初出。この本は3部構成で、人々の思い出を集めた回想録、生前のインタビュー7本、故人の人となりや評価からなっている。 アレックス・ヘイリーが編集…

角岡伸彦「被差別部落の青春」(講談社文庫) 1990年代の関西(とくに大阪周辺)の被差別部落のレポ。就学、就職、結婚、出産などで差別にあう。

部落差別問題のことをほとんど知らなかったので、入り口として読む。いや、過去に本で部落差別の起源や100年前の水平社運動のことは知っているが、<いま>どうなっているのかを知らないのだ。民族差別や人種差別はSNSやネットで流れてくるくらいに目に見え…

広田和子「証言記録 従軍慰安婦・看護婦」(新人物文庫) 慰安婦は自発的に参加したわけではないし、高給ではない。戦後沈黙を余儀なくされ、支援と救済システムから取りこぼされる。

文庫になったのは2009年だが、もとは1975年の出版。インタビューや聞き取りは1970年ころから開始されている。1945年敗戦から25年たったころ(同時に大阪万博終了を境に、テレビのドラマやアニメ、エンタメ小説から戦争記憶が描かれなくなったころ)から行わ…

大沼保昭「「慰安婦」問題とは何だったのか」(中公新書) 1990年代に「慰安婦」問題が起きてから解決に向けた取り組みを総括。成功と失敗の政府と市民の運動の記録。

第1-2章にあるように、1990年代に「慰安婦」問題が起きてから解決に向けた取り組みを総括。成功と失敗の政府と市民の運動の記録。 第1章 「慰安婦」問題の衝撃 ・・・ 1991年に韓国女性が名乗り出て、事実が確認された。1994年の村山内閣のときに被害補償の…

鹿嶋敬「男女共同参画の時代」(岩波新書)

21世紀の10年代が憂鬱だったのは、女性に対する差別やバッシングがきわめて厳しく行われたことだ。痴漢には加害者の男性よりも被害者の女性がいじめや非難をうけ、共働きの女性は家で子育てしろと命令され、レイプ事件では加害者は匿名にされたが被害者の実…