odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

中国史

貝塚茂樹「中国の歴史 上」(岩波新書)-1 古代から春秋戦国まで。宗教都市国家が官僚制国家に成長する。

中国の歴史は断片的にしか知らないので手軽な通史を読む。高校生時代に、この3巻を通読したとはいえ、半世紀近くたっているとなると、初読に等しい。また1964年初出なので、学問的には不備があるはず。とくに考古学などの科学的知見に乏しい。本書でも上巻…

貝塚茂樹「中国の歴史 上」(岩波新書)-2 秦・漢から三国志の時代まで。都市国家連合から官僚による専制国家が誕生。

2024/02/16 貝塚茂樹「中国の歴史 上」(岩波新書)-1 古代から春秋戦国まで。宗教都市国家が官僚制国家に成長する。 1964年の続き 中国の歴史の中でも最も人気がある「史記」と「三国志」の時代。たいていはパワーゲームや戦略・戦術に目を奪われるようだ。…

貝塚茂樹「中国の歴史 中」(岩波新書)-1 五胡十六国・南北朝から隋・唐まで。中国はいつも人口過剰なので、労働生産性をあげたり機械化する意欲に欠けていた。

2024/02/15 貝塚茂樹「中国の歴史 上」(岩波新書)-2 秦・漢から三国志の時代まで。都市国家連合から官僚による専制国家が誕生。 1964年の続き 最初のミレニアム期を駆け足ですぎる。前半は国がころころ変わるので、高校の歴史でもあっさりと通り過ぎるとこ…

貝塚茂樹「中国の歴史 中」(岩波新書)-2 五大十国・宋から元まで。同じ中国文化圏のなかで分裂と統合を繰り返す。

2024/02/13 貝塚茂樹「中国の歴史 中」(岩波新書)-1 五胡十六国・南北朝から隋・唐まで。中国はいつも人口過剰なので、労働生産性をあげたり機械化する意欲に欠けていた。 1969年の続き 古代中国史の泰斗も、中世になると学識は及ばないのか、平坦な記述に…

貝塚茂樹「中国の歴史 下」(岩波新書) 明と清から中華人民共和国まで。世界史に中国が登場する。

2024/02/12 貝塚茂樹「中国の歴史 中」(岩波新書)-2 五大十国・宋から元まで。同じ中国文化圏のなかで分裂と統合を繰り返す。 1969年の続き 明から中華人民共和国の建国までの600年を新書一冊で取り上げるのは無理がありすぎた。そのうえ、著者はこの時…

宮崎市定「科挙」(中公新書) 中国の教養主義は出世競争を激化させ官僚制を強化したが、危機と変化の時代には役に立たない。教育勅語と軍人勅諭は中国の真似。

中国では西暦584年隋の時代に科挙という官吏登用試験が始まり、1904年の清の時代まで続いた。もともとは貴族政治による世襲を壊すためで、在野の人々(ただし試験には多額の費用がかかるので、ある程度の資産を持っている家でないと受験者を支援できない…

堀江則雄「ユーラシア胎動」(岩波新書) ロシア、中国、中央アジア各国(旧ソ連圏)、インド、パキスタン、イランなどの参加でユーラシア経済共同体が2000年に成立。

ユーラシアという概念は1970年代ころかと思っていたら、1920年代ロシア知識人からでたそう。スターリン時代に弾圧されて封印されたが、1990年以降に具体的な経済圏構想として誕生した。2000年にユーラシア経済共同体がロシア、中国、中央アジア各国(旧ソ連…

野町和嘉「長征」(講談社文庫) 1988年に日本のカメラマンが中国に行き、長征の跡をたどる。脱落した兵士のその後は多様だが一様に口が思い。

中華人民共和国の建国のあと、中国は厳しい入国制限をしていたので、その国の様子はよくわからなかった。60年代後半の文化大革命も中国のプロパガンダが先行し、実際の情報は断片的だったので、妙な期待を生むことにもなった。それも毛沢東の死のあとの、開…

アグネス・スメドレー「偉大なる道 下」(岩波文庫) 中国共産党軍の軍事指導者・朱徳の聞き書き。軍の民主主義が称揚されるが本書の記述は信用できない。

2018/04/10 アグネス・スメドレー「偉大なる道 上」(岩波文庫) 1953年 主人公は朱徳。奇縁で軍事学校に入学し、国民党軍に連なる軍閥の士官になったが、その活動に疑問をもって脱退。上海にでて孫文にあい、ドイツ留学中に周恩来などの社会主義者・共産党…

アグネス・スメドレー「偉大なる道 上」(岩波文庫) 1937年に長征をおえた紅軍(本書中表記を使用)の本部がある延安を訪れたアメリカ人ジャーナリストの中国共産党幹部たちのレポート。

著者の序文やまえがき、解説などを読んでも、スメドレーと朱徳の関係がよくわからない。1937年に長征をおえた紅軍(本書中表記を使用)の本部がある延安を訪れ、朱徳と出会う。朱徳の人柄に魅かれたスメドレーはロングインタビューを試みる。そのあと1943年…

エドガー・スノー「中国の赤い星 下」(ちくま学芸文庫) 毛沢東の「遊撃戦論」の精髄が書かれている。毛沢東の権力がどこから生まれたかは不問。

2018/04/06 エドガー・スノー「中国の赤い星 上」(ちくま学芸文庫) 1937年 それまで中国の軍隊は傭兵みたいなものであって、利益のために闘うのであり、傷つくのは避け、しかし戦闘状態は長引いた方がよい、隊内はアヘンなどで退廃、外には暴力と略奪その…

エドガー・スノー「中国の赤い星 上」(ちくま学芸文庫) アメリカ人ジャーナリストに毛沢東インタビューまとめ。レジスタンスの現場では民主主義が実現し、土地の再分配、税改革、教育が行われる。

アメリカ人ジャーナリストのエドガー・スノーが1936年に長征を終えたばかりの中国共産党とコンタクトを取り、廷安他の根拠地に入る。そこに行くまでには、日本軍占領地や国民党支配地などを越えなければならず、本人のみならずガイドやドライバーも危険に身…

ロバート・ペイン「毛沢東」(角川文庫) 大躍進政策、紅衛兵より前の毛沢東本。ダメなところもちゃんと書く。

もとは1949年刊行、のちの1961年に改訂されて翻訳の定本になった(文庫初出は1967年)。でも、毛沢東はこのあと長年月生きるのであって、1961年以降のことは当然触れていない。とはいえ、1970-80年代には毛沢東の評伝で入手しやすいものはまずなかった(あと…

狭間直樹「中国社会主義の黎明」(岩波新書) 日本に亡命した活動家と留学生が共産党設立前の中国の社会主義運動をけん引した。

中華人民共和国の成立に興味をもつと、毛沢東のいた中国共産党にフォーカスするのだが、この本ではそれ以前の社会主義者、共産主義者の動向を紹介する。おもしろいのは、日本が彼らの運動に重要な鍵であったということ。 すなわち、満州民族の支配する清とい…

市古宙二「世界の歴史20 中国の近代」(河出文庫) 世界システムに飲み込まれた古代帝国は植民地化から抜け出すのに2世紀以上かかった。

18世紀末から中華人民共和国の成立(1949年)まで。宋の時代に近代の一歩手前までいったのに、元や明の時代に政治や経済が古代から中世まで戻ってしまった。清になっても封建制はそのまま。それでも清は経済発展する。主な理由は耕作地の拡大。多少は農機具…

三田村泰助「世界の歴史14 明と清」(河出文庫) いち早く近世になったものの緊縮財政の鎖国で古代に逆戻り。多すぎる人口はイノベーションを生まない。

ここでは元の末期から清の最盛期まで。1350年から1800年ころまでか。このころになると、「中国」「中華」の範囲が広がって、「西域」とされる高山地帯や砂漠なども含まれるようになる。ことに元や清のような漢民族でない民族が政権をとるようになると、それ…

愛宕松男「世界の歴史11 アジアの征服王朝」(河出文庫) いち早く近世になった宋と元が倒れると、貨幣の信用がなくなり、ハイパーインフレを起こす。

ここでは唐の末期から元の末期まで。900年から1300年ころまで。高校教科書にあるように元王朝は「匈奴」と呼ばれる西方民族の支配になるので、その前後の西域の歴史も記述される。自分は西域にはあまり興味を持てないので、以下のまとめと感想では主に中国の…

羽田明/間野栄二/山田信夫/小中仲男「世界の歴史10 西域」(河出文庫) ユーラシア大陸の交易が陸上輸送だった時に栄え、海上輸送に切り替わると衰亡した。

「西域」はとてもあいまいな地理や歴史の概念のよう。とりあえず21世紀初頭の世界地図で言うと、モンゴル、中国西部(新疆ウィグル自治区、チベット)、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、アフガニスタン、トルクメニキスタンあたり。…

宮崎市定「世界の歴史07 大唐帝国」(河出文庫) シルクロードは漢の金銀を流出させて国を滅亡させ、名産品をたくさんもつ唐を輸出超過で経済発展させる。

ここでは漢の滅亡ころ(三国時代の開始)から五代時代(唐の滅亡)ころまでの、西暦200年から1000年ころまでを扱う。著者によると、これが中国の中世に相当するという。ヨーロッパの中世が500年ころ、この国の中世が1200年ころから開始したとすると、この古…

高木桂蔵「客家」(講談社現代新書) 漢人と同化することがなく、独自の「場所」を占めている客家(ハッカ)の政治力。

ヨーロッパに対してユダヤ人を、アメリカに対してWASPを対置させると、政治・経済・文化を理解するときの有効な補助線になる。同じように、中国に対して客家(ハッカと読む)を対置させると、この国を理解するのに有効だ。ここらへんのみたては独自研究な…

興梠一郎「現代中国」(岩波新書) 1990年代の中国は全国的な混乱・流動化。

そういえば毛沢東が死ぬまでのことは何冊か読んでいたが、その後の中国のことを知らないと思ったので、古本屋で中国関係の本をまとめて購入。一冊105円で、4冊合計420円。定価で買うとこの6倍くらいか。ありがたや。 「訒小平の遺産」は1995年刊。毛沢東死後…

武田泰淳「司馬遷」(講談社文庫) 昭和19年「言論の自由」がないとき、知識人は古典と歴史から現実を批判する。

中国の古典を読むときによくある失敗は、本の中に入り込みすぎ、しかも「神」のような超越的な場所から人物評をするということ。そうなると、項羽はどうこう、劉表はあれこれ、呂后はなんだかんだ、という具合に読者の身の丈を超えて、彼らを評価し、現代の…

貝塚茂樹「世界の歴史03 中国のあけぼの」(河出文庫) 帝国の誕生は文字による記録が作られる前。国家の起源はよくわからない。

先に鈴木良一「織田信長」を読んでいたのだが、信長の時代である1500年代の100年間に起きたことは、中国では春秋戦国時代の約500年間(紀元前700年から紀元前200年まで)に起きたことなのだ、と考えた。ということは、中国は日本より約2000年早く歴史を進み…