odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

2011-07-01から1ヶ月間の記事一覧

今西錦司/柴谷篤弘「進化論も進化する」(リブロポート) 自然選択と適応が嫌いな今西進化論は五族協和八紘一宇の日本型共同体主義のいいかえ

この本は、1983年夏に、今西錦司と柴谷篤弘が「今西進化論」について談論した記録。米本昌平の発案をリブロポートという出版社が企画して実現した。その背景になったのは、柴谷篤弘が「今西進化論批判試論」という本を出版していたから。もう少し背景を説明す…

今西錦司「進化とはなにか」(講談社学術文庫) 格段に情報量が増えた時代から今西進化論を見直すと誤解と牽強付会ばかりのトンデモ学説。

2008年11月5日に、大分市と別府市の境にある高崎山モンキーセンターを観光した。昭和30年代初期に、ニホンザルの被害にあっていたころ、当時の大分市の市長の発案で山中の寺でニホンザルの餌付けを行う。数年したら複数のグループが毎日定期的に通うようにな…

Filemakerの表示がおかしくなった時の対応

Filemakerのバージョン9.0をインストールして、しばらく経つとブラウズ画面でフィールドが表示されず、レイアウトでフィールドの枠線が出ないことがあった。OSはXP。 サポートセンターで教わった対応方法。0.ファイルメーカーを閉じる。1.デスクトップを…

ライアル・ワトソン「生命潮流」(工作舎) この本にでてくる「百匹目のサル」「グリセリンの同時結晶化」は作者の作り話。

ここでの主題は、生命探究の還元主義批判で、すべてをDNAとその発現機構だけで説明するのはおかしいというもの。こういう機械論の考えでは説明つかないものがたくさんあるよ、そして科学のもっている手段では発見することのできないシステムが生物にはあ…

日高敏隆「動物にとって社会とはなにか」(講談社学術文庫) 動物の行動を擬人化・比喩・過度な一般化・特殊な事例の普遍化・人間の行動の正当性に利用するのはやめよう。

これは名著。著者40代に書かれていて、文章は清冽かつ意気に溢れ、慎重でありながら、ときには学問の領域を逸脱し的確なところで矛を収めている。見事。 内容の検討の前に、気をつけなければならないことをいくつか。主題は動物の社会であって、「社会」と…

柳川弘志「生命の起源を探る」(岩波新書) 太陽光がなくても生命は発生できそうで、セントラルドグマでない系もあったらしい。

とても久しぶりに、生物学関連の本を購入。主題は、生命の誕生に関する最新知見の紹介。 1980年代初頭では、生命の誕生はミラーの実験(1950年代)までしか紹介されていない。その前の10年間、生物学者は遺伝子組換実験の可能性を検討し弱点を克服することに…

立花隆/利根川進「精神と物質」(文春文庫) サブタイトルは「分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか」だが、利根川進にそこまでの意図はない。

サブタイトルは「分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか」。これはいささか風呂敷を広げすぎている。利根川進にはそこまでの意図はない。免疫系の複雑さが脳神経系の複雑さに似ているのではないか、という直観を語ったのみ。立花隆の勇み足。(1990年初出)…

平澤輿「生命の探求者」(新学社文庫) 戦時中に書かれた19世紀に医学に貢献した学者たち。本邦の研究者の成果は大きめに書かれている。

昭和17年に「子供の科学」に連載されたエッセー集。自分の知っている「子供の科学」は誠文堂新光社から出版されていたが、当時はどうだったのか。 タイトルから連想されるのは、生物学の発展の話であって、たしかにレーヴェンフックが顕微鏡の発明と細胞の発…

三田誠広「天才科学者たちの奇跡」(PHP文庫) 小説家が書いた科学者たちの肖像。図表や年表がなく小見出しがついていないので検索できない。

隠された原理を見出したい」「もっと深く真理を探究したい」……。科学者たちのそうした願いが、ときに信じられないような奇跡を呼び起こした。「何かがおかしい」という直感を得て、何時間も揺れるシャンデリアを見続けたガリレオ。リンゴは落下するのに、な…

ローレンス・D・クシュ「魔の三角海域」(角川文庫) 日本近海はバミューダ・トライアングル同等の危険地帯。な、なんだって!

バミューダ・トライアングルについての与太話を楽しもうと思ったら、これは個々の事例についての調査報告。およそ100例の事件について当時の新聞記事にあたるなどして、ほとんど疑問のない事故なんだよ、真相は不明とはいえ理由は推測可能な範囲(ハリケーン…

アンドルー・トマス「太古史の謎」(角川文庫) 太古の叡智を復活せよというが、本書は知的レベルが低くてつきあっていられない。

中身は新たな「ヘルメス学」。ヘルメス・トリメギウスの書いた古い書物に世界の謎が記載されていたが、それは失われてしまった。だから、現在の問題(なぞ)の答えは古代に埋もれている、ということらしい。 十字軍遠征のあと、アラビア語に翻訳されていたプ…

フランク・エドワーズ「世にも不思議な物語」(角川文庫) オカルトはできごと以外のメッセージを隠し、否定された情報を再発信する不誠実な運動

1970年代のユリ・ゲラーと映画「エクソシスト」に代表される一連のオカルト・ブームに合わせて角川文庫が大量に「超自然の謎」シリーズを出版した。1978年の「スター・ウォーズ」上映で一気にブームが去り、その後再販されていない(一部は別の文庫で再刊さ…

コナン・ドイル「霧の国」(創元推理文庫) 妖精写真を本物と信じ込んだ作者のスピリチュアリズム宣伝本。心霊術は陰謀論と秘密結社と紙一重。

コナン・ドイルが晩年に心霊術に凝ったことは有名。少女が撮影した妖精写真を見て、妖精実在を論証したという論文を書いたり(1980年代になってから本人が偽造であることを証言したので、ドイルには気の毒)、西洋・アメリカで心霊術に関する講演旅行を行っ…

M.ミッチェル ワールドロップ「複雑系」(新潮文庫) 複雑系の研究成果のレポート。研究の中心にあったサンタ・フェ研究所も自己組織化する複雑系のよう。

1985年に「VHSコミュニケーション」という深夜番組があった。最初の放送が、浅田彰がプロデュースした「ビデオ進化論」。その第1部が、アートとサイエンスの中間領域に関する話題だった。そこで初めて、「セルオートマトン」「ライフゲーム」「メンガースポ…

サイモン・シン「フェルマーの最終定理」(新潮文庫) 現代数学は理解もイメージすることも難しいものになったが、孤独なワイルズに訪れたひらめきには心躍らされる。

フェルマーが当時の数学の教科書の余白に書いたメモ(それが知られるようになったのは、息子が書き込み付の本を出版したこと、および1908年にとある財団が証明に懸賞をだしたこと)で、350年間数学者が頭を悩ました問題の最終解決を独力で行った物語。証明の…

中谷宇吉郎「雪」(岩波文庫) 研究というのは結果の面白さではなく、過程の面白さであり、未知なるものがつぎつぎと現れてくることに驚く楽しさ。

高校1年に入学したてのとき、学校図書館に通って昼食時に読む本を借りていた。ひとつは谷崎精二訳の「ポー小説全集」(たしか6巻。全巻制覇)。もうひとつが中谷宇吉郎の随筆集。後者はたしか3巻だったが、途中で挫折したと思う。それにしてもなぜこの随…

コリン・ウィルソン「賢者の石」(創元推理文庫) 「価値体験」を繰り返す「意識の進化」で超古代から続く宇宙的闘争を幻視する。ニセ科学・オカルト満載で中二男子が通る道を高尚に描く。

死の問題にとりつかれた一人の青年が永生を夢みて不老長寿の研究を始める。研究は前頭前部葉の秘密に逢着し、彼は意識をほとんど無限に拡大し、過去を透視できるようになる。パラドックスを伴わない真の時間旅行がここに初めて実現する。だが意外な妨害が………

ウンベルト・エーコ「フーコーの振り子 下」(文芸春秋社) 社会で暴力が吹き荒れているとき、何もしないでおしゃべりしていると粛清の対象になるぜ。

こちらでは「現在」の話を書こう。主要登場人物は、語り手である「私」=カゾボン。1943年生まれ?の大学紛争当事者。とはいえ若者の直接行動には懐疑的で、政治にも斜に構えたところのあるニヒリスト(というか優柔不断だが、知的優位に立とうとする臆病も…

ウンベルト・エーコ「フーコーの振り子 上」(文芸春秋社) 学者が本気出して陰謀論とオカルトで遊べば、そこらのトンデモを凌駕する偽史をつくれるんだぜ。

ベルボが消えた。フロッピーディスクを残して。カゾボンがピラデという店で、ベルボと知り合ったのは 学生時代。カゾボンはテンプル騎士団について研究する学生、ベルボはガラモン社という出版社で働いて いた。ガラモン社にアルデンティ大佐という怪しげな…

マービン マイヤー「ユダの福音書 DVDブック ビジュアル保存版 」(日経ナショナルジオグラフィック社)

世界中に衝撃を与えた「ユダの福音書」。その発見から修復、解読にいたる全プロセスのエッセンスを映像にしたDVDと解説書を組み合わせたDVDブック。DVDは、「ユダの福音書」解読までのドキュメントはもちろんのこと、プロジェクト関係者、ならびに識者のコメ…

エリエット・アベカシス「クムラン」(角川文庫) 死海文書をネタにしたミステリー。それより音楽やダンスによるトランス状態が重要であるユダヤ教に「異」なるものを見る。

イスラエル建国前夜、クムラン洞窟で二千年の封印を解かれ発見された死海文書――。そして半世紀後、この謎に満ちた古文書の盗難を発端に恐怖の殺人事件が始まる。古文書捜索を依頼された考古学者ダビットと息子アリーは真相を突き止めるため旅立つが、接近を…

サイモン・シン「宇宙創成」(新潮文庫) 力学と天文学の発展はパラダイムシフトの繰り返し。古いパラダイム観の人は主張を変えないが引退死亡すると、新パラダイム観の人が残ってシフトが完成する。

宇宙はいつ、どのように始まったのか?人類永遠の謎とも言えるその問いには現在、ある解答が与えられている。ビッグバン・モデル。もはや「旧聞」の感さえあるこの概念には、実は古代から20世紀末の大発見へと到る意外なエピソードと人間ドラマが満ちていた―…

ミチオ・カク/ジェニファー・トンプソン「アインシュタインを超える」(講談社ブルーバックス) 相対性理論から超ひも理論までの物理学詩の平易な解説。

相対性理論から超ひも理論までの物理学詩の平易な解説。ここでのポイントは「統合」かな。アインシュタインは時間と空間を統合した。マクスウェルは電力と磁力を統合した。量子力学は電磁力と弱い力を統合した。アインシュタインは4つの力を統合する理論を…

カール・セーガン「コスモス」(朝日文庫) 初期のCGを使用したTV番組は大きな反響を獲得。

カール・セーガンはミラーの弟子。ミラーは原始地球の大気を想定した気体に長期間の放電を行うことにより、有機物質を合成する実験をした人。セーガンは、この実験に協力していたとの由。直前に生命の起源に関する新書を読んでいたので、共時性に少し驚くこ…

ドナルド・ゴールドスミス「宇宙を見つめる人たち」(新潮文庫) 天文学も観察先行-理論先行-観察先行と研究のやり方が何度も変わる。

昔、人々は明日を生きるための知識を得ようと空を見上げた。その後、僧侶や学者など一部の専門家だけのものだった時代を経て、宇宙は間近に捕えられた映像によって、再び我我の手に戻ってきた。途方もなく広い宇宙の神秘に魅せられた人たちの業績と夢を紹介…

二間瀬敏史「ここまでわかった宇宙の謎」(講談社+α文庫) 科学的に予想される宇宙の終わりとM理論を目にすると、存の宗教の「時間」なんてちいせえちいせえ。

自分の天文学に関する知識は1980年で止まっていたので、久しぶりに科学の本を読む。一般向けなので、深くはない。残念なのは、写真(とくにハッブル望遠鏡の写したもの)がほとんどないこと。天文学は「見る」ことの快楽を満たしてくれる学問分野なのに…

ダン・ブラウン「ダ・ヴィンチ・コード」(角川文庫) 中心的な興味は歴史の謎。それを除くと、あんまりうまくない巻き込まれ型サスペンス。

自分の半生はこの本を読むためにあったのだ(笑)。なにしろ、 福音書 使徒のはたらき ヨハネ黙示録 「新約聖書外伝」(講談社学芸文庫) 高橋保行「ギリシャ正教」(講談社学術文庫) エドマンド・ウィルソン「死海写本」(みすず書房) 高橋正男「死海文書…

アルバート・アインシュタイン「晩年に想う」(講談社文庫) ノーベル賞受賞者の素朴でナイーブな理想論が世界に影響を及ぼした。

2005年は一般相対性理論の論文が書かれてから100年目にあたる。とくにそのことを意識していたわけではないが、古本屋で絶賛品切れ中の文庫を入手した。収録されたのは、雑誌その他への寄稿や演説などであり、もともとひとつにまとめることを意図して書かれた…

荒俣宏「レックス・ムンディ」(集英社文庫) 世界を照らす光は古代財宝伝説と秘密結社を明るみにだす。

古代から中世にかけてのキリスト教史は非常に興味深い。ごたぶんにもれず教義の解釈の相違によって分派が起こり、相対立して党派闘争があり、次第に勢力が伝播していくということが起きているからだ。おそらくイエス自身の考えがしっかりと保持されていたの…

コンラート・ローレンツ「攻撃」(みすず書房) ナチス体験者はヒトの攻撃性に悲観し、理性の発動と熱狂の否定を提案する。

なんとまあ、購入してから読了するまでに20年かかるということになってしまった。もともとみすず書房は上下2巻で出版していた。1985年に一冊にまとめた改訂版がでて、それを自分は購入したのだった。今はなき神田駅前の書店で仕事の移動中だったか、帰宅途中…