odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

フリーマン・クロフツ

フリーマン・クロフツ「樽」(創元推理文庫) 「何かに詰められた死体がたどった経路を追ううちに謎が深まる」というスタイルの嚆矢。

中学生の時に読んで、それなりに感動した。それまで読んできたクイーンやクリスティの謎解き小説とは違った味わい。堅実でけれんのない捜査に謎。途中で容疑者ひとりにしぼられるが、鉄壁のアリバイがある。それをくずす警察と私立探偵の足と口。 以来、半世…

フリーマン・クロフツ「フレンチ警部とチェインの謎」(創元推理文庫) 高等遊民チェイン氏の素人捜査がギャングの罠にまきこまれる冒険アクションでスクリューボールコメディ。

快活な青年チェイン氏はある日、ホテルで初対面の男に薬を盛られ、意識を失う。翌日自宅に戻ると、家は何者かに荒らされていた。一連の犯行の目的は何か? 独自の調査を始めたチェイン氏を襲う危機また危機。いよいよ進退窮まったとき、フレンチ警部が登場し…

フリーマン・クロフツ「チョールフォント荘の恐怖」(創元推理文庫) クロフツには珍しいイギリスの田舎の館ものミステリー。

法律事務所のやり手経営者リチャード・エルトンは、郊外に大邸宅チョールフォント荘を構え、再婚相手のジュリアとその連れ子のモリー、甥のジェフリィと暮らしていた。ダンス・パーティが催された夜、リチャードは何者かに後頭部を一撃され、死んでいるのを…

フリーマン・クロフツ「フレンチ警部の多忙な休暇」(創元推理文庫) 前半のイギリス周遊汽船ツアーという新規事業立上物語は当時としては新鮮。

旅行社の社員ハリー・モリソンは、ある男から豪華船を用いたイギリス列島巡航の事業計画を聞かされ、協力を申し出る。紆余曲折の末、賭博室を設けた観光船エレニーク号がアイルランド沿岸の名所巡りを開始した。だが穏やかな航海は、モリソンが船主の死体を…

フリーマン・クロフツ「海の秘密」(創元推理文庫) フレンチ警部視点はハードボイルドと同じだが、他人に共感を持たない警官の物語には魅力がない。

1970年代にはクロフツの小説がたくさん邦訳されていたのだが、そのうちに品切れになり、今では「樽」「クロイドン発11時30分」をのぞくとほとんど入手不可能になってしまった。これは地元の古本屋で購入したもの。クロフツばかりが10冊くらい並んでいて、そ…

フリーマン・クロフツ「ヴォスパー号の喪失」(ハヤカワポケットミステリ) 発注伝票や棚卸帳票を調べるクロフツの捜査は「業務」的。

ロンドン・ブエノスアイレス間を就航する貨物船ジェイン・ヴォスパー号が、謎の爆発によって沈没した。海事裁判が開かれ、原因と責任の所在が追及されるが、真相は謎であった。積荷の保険会社は私立探偵サットンに依頼し、保険金詐欺の確証を得ようとするが…