イタロ・カルヴィーノ
イタロ・カルヴィーノの最初の長編小説。カルヴィーノはパルチザンに加わっていたし、WW2戦後にはイタリアで「レジスタンス小説」が多数出版されたそうだ。その時流に乗っていながら、ズレたところのある小説。 おそらく1944年夏の北イタリア(具体的な年月…
解説を読んでも発刊の経緯はよくわからない。1958年初出の似たようなテーマを集めた短編集。 ある兵士の冒険 ・・・ 汽車に乗っている兵士が豊満な若い女性に愛撫を試みる。言葉のないコミュニケーションを言っているのかもしれないが、行為は痴漢そのものな…
Qfwfq老人(別の訳者ではクフウフクと表記)のホラ話。科学の記述を聞くと、わしはそこにいたと叫んで、思い出話に花を咲かせる。1965年初出。 月の距離 ・・・ 月の軌道がいまより地球に近かったころ。老人のいた岩礁から月にいくことができた(途中の無重…
2022/07/19 イタロ・カルヴィーノ「レ・コスミコミケ」(ハヤカワ文庫)-1 1966年の続き Qfwfq老人のホラ話。後半。 いくら賭ける? ・・・ 宇宙ができるまえ、何が起こるかを老人は学部長と賭けをする。どんどんエスカレートして地球の歴史のささいなことま…
「レ・コスミコスケ」1966年に続く1967年の短編集。第1部はQfwfq老人のホラ話。訳者が変わったので、老人のイメージから中堅サラリーマンのようになった(一人称が「わし」から「私」に変更)。でも、底を流れるのは過去が回復しないことへの諦念。同類や仲…
2022/07/14 イタロ・カルヴィーノ「柔らかい月」(ハヤカワ文庫)-1 1967年の続き 以後はQfwfq氏の名は出てこない。でも「ティ・ゼロ」で「私Q0(0は小文字)」と表記されるので、Qfwfq氏が語り手だと推測可能。 第三部 ティ・ゼロティ・ゼロ ・・・ 突如…
パロマー氏という中産階級のインテリを語り手にした短編集。短編というにはオチもないし視点はズレるしで奇妙な味をもっている。3部3章3節で合計27のフラグメントからなる。 中年男性、職業不詳、家族は妻と娘一人、パリとローマにアパートを所有―これがパロ…
マルコヴァルドさんは都会に住む人夫(倉庫勤務の工員だ)。奥さんと4人の子供が狭苦しい家に住んでいる。彼が得意なのは街中に自然の息吹を見つけることだが、それに感心するひとはいない。自分や他人のために良かれと思って行ったことは、たいてい失敗する…