odd_hatchの読書ノート

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音楽エッセー

みつとみ俊郎「オーケストラの秘密」(NHK出版生活人新書)

西洋音楽がこの国で聞かれるようになってからわずか150年しか経過していない。明治維新以降のクラシック音楽受容の系譜は下記エントリーを参考に。 堀内敬三「音楽五十年史 上」(講談社学術文庫) 堀内敬三「音楽五十年史 下」(講談社学術文庫) 中島健蔵…

宮下誠「カラヤンがクラシックを殺した」(光文社新書)

タイトルは大仰であるし、著者は文中でたくさん怒っておられるが、さていったい誰を叱っているのかというと心もとない。なにしろ市場は減少の一途であり、新規参入客も減少中とはいえ、クラシック音楽の演奏会も放送も継続しており、音楽パッケージは販売さ…

中川右介「カラヤンとフルトヴェングラー」(幻冬舎新書)

自分がフルトヴェングラー関連の本を集めたのは1980年代。フルトヴェングラーは没後30年たったころだが、カラヤンとチェリビダッケは存命中。本書の言葉をつかえば、カラヤンはフルトヴェングラーをその死の後に追い出したのだが、その幻に脅かされていた時…

あらえびす「楽聖物語」(青空文庫)

昭和16年(1941年)初出。あらえびすは、野村「銭形平次」胡堂がレコード評論をするときのペンネーム。SPレコードしかない時代に1920年代から西洋古典音楽のSPレコードを集め、人を呼んで聞きあい、筆で紹介の労をとった。戦前から西洋古典音楽を紹介するも…

五味康祐「オーディオ遍歴」(新潮文庫)

LPを聞くには作法がある。真空管が温まるまで時間がかかるから聞く20分前にアンプの電源をいれておきましょう。レコードプレーヤーの水平確認と回転むらがないことをチェックしよう。針圧を調整し、針先のゴミを丁寧に取り除いておこう(このときノイズがス…

ジュリアス・ファスト「ビートルズ」(角川文庫)

御多分にもれず、自分がビートルズを知ったのは、中学生の時に悪ガキがクラスに持ち込んだラジカセからだった。そこで聞いた「She Loves You」のメロディとビートにびっくりした。さっそく、若いみのもんたのDJで、ビートルズの曲を片端からかけるというラジ…

無量塔蔵六「ヴァイオリン」(岩波新書)

この本にはヴァイオリンの歴史がかかれているが、それをみるとヨーロッパは遅れていたのだなあと思う。すなわち、たとえば雅楽の楽器は7-8世紀には完成しているし、アラビアでは弦楽器が古代にはあったが、ヨーロッパでは10世紀ころまで弦楽器はなかった。よ…

中村紘子「ピアニストという蛮族がいる」(文芸春秋社)

ピアニストが同業他社のユニークな所業を紹介した。観客としてだと、ステージか録音/録画でしかピアニストを知るしべはなく、おおむね会話ができない。なので、ステージの下やスピーカーの前にいるものは、ピアニストにスター性やカリスマ性をみたりする。そ…

片岡義男「ぼくはプレスリーが大好き」(角川文庫)

ずいぶん長い間品切れ状態。1970年に請われて書いた文章をまとめて、1971年に出版。のちに角川文庫に入ったが、彼の小説のブームがとりあえず終わった1990年代にはもうこれだけは書店で見つからなかった。自分はどこかの古本屋で2000年ころに買ったらしい。 …

芥川也寸志「音楽の旅」(旺文社文庫)

「父・龍之介の書斎でストラビンスキーを聞き入った幼少の思い出から、現在の作曲家・指揮者の生活までを語る自伝抄「歌の旅」、人びととの出会いや外国旅行記を含む「出会ったこと忘れ得ぬこと」、音楽教育への直言「私の音楽教育論」などを収録。すべての…

大町陽一郎「楽譜の余白にちょっと」(新潮文庫)

著者は1931年生まれ。戦後芸大に入学。同期が岩城宏之や山本直純、大賀則雄。すぐにウィーンの音楽大学指揮科に入学。同期にはズービン・メータがいた。先生はスワロフスキーになるのかな。また同じころにヴィオラの土屋邦雄も留学中(のちに日本人初のベル…

武満徹/小澤征爾「音楽」(新潮文庫)

1979年から1980年にかけての3回の対談を収録。このとき、武満徹50歳(1930年生まれ)、小澤征爾45歳(1935年生まれ)ともっとも精力的に活動していた時期。ふたりとも、かつて(20代前半)は徹夜でいろいろ話をしたことがあるけど、この頃は忙しくてねえと嘆…

小澤征爾「ボクの音楽武者修行」(新潮文庫)

著者が26歳のときに発表。この若々しさやういういしさというのはまぶしいし、西洋に対する不安やおののき、それを凌駕しようという自信と努力、こういうのは戦前生まれの人(著者は昭和10年、1935年の生まれ)によくみられるものだ。とりあえずこの本で明か…

諸井誠「名曲の条件」(中公新書)

さまざまな楽曲をみて、「名曲の条件」を探るという試み。もちろん、「条件」は明示できなかったけど、そのかわりに聞き方とか見方とかそういうものが変わった。 ・英雄の条件 ・・・ 英雄の調性は「変ホ長調」。この調性で「英雄」を描く際に、ベートーヴェ…

諸井誠「ロベルトの日曜日」(中公文庫)

およそ25年ぶりの再読。そうかそれほどの時間がたったのか。最初に読んだときは、わくわくしながら読んで、今度は懐かしさを感じながら。個人的な記憶にある懐かしさであるのと同時に、ここに書かれた1960年後半から70年にかけての音楽事情がそろそろ半世紀…

岩城宏之「楽譜の風景」(岩波新書)

1983年に岩波新書で初出。永遠の未完成 「第9の謎」 ・・・ 前者(シューベルトの交響曲第7番:当時は第8番)第1楽章の最終音、後者(ベートーヴェン交響曲第9番)は第4楽章の最初の歓喜の歌合唱の最後でティンパニだけがデクレッシェンドするのはおかしい。…

岩城宏之「オーケストラの職人たち」(文春文庫)

晩年の指揮者が「週刊金曜日」に連載したエッセイ。音楽活動の裏方にいる人たちの仕事を紹介したもの。たとえば、楽器運搬、ステージマネージャー、調律師、チラシ配布、そういう人たち。同じような内容を「フィルハーモニーの風景」(岩波新書)で書いてい…

岩城宏之「指揮のおけいこ」(文春文庫)

クラシック音楽を聴いているだけの立場からすると、もっとも魅力的に思えるのは100人のオーケストラを前にしてタクトを振る指揮者。ここにはたとえばカラヤンあたりのイメージ戦略に乗せられているところがきっとあるに違いないにしても(またこのような思い…

在庫管理の極意はあらえびす「名曲決定盤」(中公文庫)で学べ

ここではおまけのように書かれているSPの保管方法について紹介。ここに書かれている分類と整理の方法を会得すると、他に応用が利くから。これを参考に自分は蔵書の並べ方を検討し、管理ファイルを作成した。その経験は実は、ビジネスの現場、というよりバッ…

小林秀雄「モオツァルト」(角川文庫)

自分の若いころには大学入試の論文解読の練習のために小林秀雄の「考えるヒント」を読むべし、といわれていた。一冊だけ目を通したことがあり、何が書いてあるのかわからなかった。で読むのを辞めたわけだが、これだけ例外。「モオツァルト」は、少しクラシ…

中野雄「丸山真男 音楽の対話」(文春新書)

中野雄という人は「ウィーン・フィル 音と響の秘密」(文春新書)を前に読んでいて、どこかのクラシックレーベルでプロデューサーの仕事をしていることを知っていた。どこかの音楽大学あたりを経由していたのかと思ったが、東大の丸山真男門下というのは知ら…

中野雄「クラシック名盤この1枚」(知恵の森文庫)

クラシック音楽を聴くという趣味に入ると、どうしても自分の聞いた演奏のことを語りたくなるものだ。あるいは、自分の聞いた演奏の評価を他人を比べたくなるものだった。かつては、「音楽評論家」を名乗る人たちの文章を読むしかなかった。レコードやVTRの価…

中野雄「ウィーン・フィル 音と響の秘密」(文春新書)

著者はどこかのレコードレーベルの録音技術者かプロデューサー。クラシック分野で仕事をしていたので、ウィーン・フィルやそのメンバーと一緒になることが多かった。ウィーンその他のヨーロッパ諸国や来日公演などいろいろな場所で、演奏−録音をともにしてい…

野呂信次郎「名曲物語」(現代教養文庫)

この本を購入したのは、高校2年のときか。実家にはクラシック音楽を聴くという作法はないし、友人にそういう趣味を持つものもいなかった。しかもLPレコードはおいそれと帰るものではない。第一、家にはLPプレーヤーがない。安いポータブルプレーヤーがあ…

石原俊「いい音が聴きたい」(岩波アクティブ文庫)

万人に認められる欲望もある境を越えるようになるとそれは狂気に変わる。周囲は不可解に思うが、当人だけは正常と思っているので、説得もできずにあきれるしかない。不思議なことにそういう人生を棒に振りかねないほどの欲望を持つのは、男の方が多い。 ここ…

石井宏「帝王から音楽マフィアまで」(学研M文庫)

著者は音楽学者ということだが、ここでは1990年バブル時代のクラシック音楽業界の裏話を語っている。槍玉にあがっているのは、カラヤンとホロヴィッツ。演奏の内容に関する批判は少なくて(でも下記の非難のあとに返す刀でぶった切っている)、むしろマネジ…