odd_hatchの読書ノート

エントリーは3200を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2024/11/5

ウィリアム・アイリッシュ

ウィリアム・アイリッシュ「夜は千の目を持つ」(創元推理文庫) タイトルは抜群なんだが、オカルトはサスペンスと相性が悪い。

大富豪で資産家に最近雇われたメイドがおかしなことを口にした。「主人が飛行機に乗るのをやめるように」。実際に予約していた飛行機が墜落した(当時はさまざまな技術不足などで、墜落事故が頻発していた)。しかし、搭乗直前にとどいた電報で思いとどまっ…

ウィリアム・アイリッシュ「暁の死線」(創元推理文庫) 都会の残酷さから脱出するために深夜の街で真犯人を追いかける。アイリッシュの最高傑作。

個人的な思い出から。それまでムーミンとかドリトル先生とかツバメ号などを読んでいたときに、ませたクラスメートに進められたのが、この小説。あまりのおもしろさに、それからミステリーを読み出した。教えてくれた友人に感謝。 「もう探偵はごめん」所収の…

ウィリアム・アイリッシュ「もう探偵はごめん」(ハヤカワポケットミステリ) 短編「バスで帰ろう」は長編「暁の視線」の元。

札束恐怖症 ・・・ 小悪党が屋台の売上を盗んで逃げた。警官に押さえつけられたが、金を持っていない(この隠し場所トリックはなかなか実用的、あれっ)。小悪党が友人の医者に弁護を頼むと、証人にたって小悪党が札束アレルギーであることを証明する。無罪…

ウィリアム・アイリッシュ「短編集4 シルエット」(創元推理文庫) アイリッシュのモチーフは「遠くから見る」「覗き見る」。

「毒食わば皿」1940.6 ・・・ 偽装倒産に巻き込まれたペインは臆病者であったが、明日アパートを追い出されるので、雇い主のバロウズに未払賃金を要求しにいった。ドアの前で逡巡する彼の目に、バロウズの金庫と札束が見えた。彼は懇願を強奪に変更する。首…

ウィリアム・アイリッシュ「短編集2 死の第3ラウンド」(創元推理文庫)「消えた花嫁」は「幻の女」に通じる不条理感

アイリッシュの短編集は読んでは売り、また買うを繰り返したおかげで、何を読んだのかそうでないのかわからなくなってきた。今回はたぶん3回目(10代、30代、今回)。でも、ストーリーをすっかり忘れている。個人的な述懐はどうでもいいですか、そうですね。…

ウィリアム・アイリッシュ「幻の女」(ハヤカワ文庫) 目立つ帽子をかぶった女は見たことがないとなぜ誰もが言うのか。再読できない傑作サスペンス。

「夜は若く、彼も若かったが、夜の空気は甘いのに、彼の気分は苦かった”暗いムードを湛えた発端……そして街を彷徨ったあと帰宅した彼を待ちうけていたのは、絞殺され無惨に変り果てた妻の姿であった。強烈なスリル、異常なサスペンスを展開し、探偵小説の新し…

ウィリアム・アイリッシュ「死者との結婚」(ハヤカワ文庫) 秘密が露見することに怯える想像力が不安を掻き立てる。

「男に捨てられたヘレンという女性がいた。彼女は八ヶ月という身重ながら財産も身寄りもなく、何の希望もないままに故郷のサンフランシスコへ向かう列車に乗り込む。しかしそこで富豪のハザード夫妻と出会ったことで、彼女の人生は大きく回転し始めた。何と…

ウィリアム・アイリッシュ「恐怖」(ハヤカワ文庫) ハーレクインロマンスでendになったところから始まるサスペンス。男たちは結婚前の秘密暴露に怯える。

「彼の指が女の喉元にくいこみ、やがて女の体は動かなくなった……証券会社に勤めるマーシャルは最愛の女性と婚約し、今日が結婚式だった。しかし、たった一度おかした過ちから恐喝を受け、愛する女性と結ばれるため、結婚式の当日に恐喝者を殺してしまったの…

ウィリアム・アイリッシュ「黒いカーテン」(創元推理文庫) 記憶をなくした男の孤独と寂寥。

ウィリアム・アイリッシュもコーネル・ウールリッチもいっしょくたに。 「ショックを受けたタウンゼントは記憶喪失症から回復した。しかし、三年の歳月が彼の頭の中で空白になっていた。無気味につけ狙うあやしい人影。おれはいったい何をしたというのだ? 殺…