odd_hatchの読書ノート

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アメリカ文学

カート・ヴォネガット「ヴォネガット大いに語る」(サンリオSF文庫)

作家の小説に一時期はまっていて、著者名に「Jr」がついているころから、ずっと追いかけていた。その当時、翻訳されていたものは全部読んでいたのではないかな。どうやって知ったのかというと、たぶん大江健三郎のエッセイで。「坑内カナリア理論」で知った…

マーク・トウェイン「トム・ソーヤーの冒険」(講談社文庫)

そういえば西部劇映画には子供が出てこないなあ、あのころ子供はどういう暮らしだったのだろうと思って、今まで読んでこなかった「トム・ソーヤーの冒険」を読む。完全に読む時期を失したおかげで、うきうきわくわくの時間を持てなかった。 ミシシッピーに住…

マーク・トウェイン「ちょっと面白い話」(旺文社文庫)

この本はオリジナルがあるのではなく、訳者兼編者が作家自身の言葉や作家のエピソードを集めたもの。出典が書かれているわけではないので、読者は検証しようがないが、そこまで気にすることはない。15〜32文字くらいの警句を1ページに配置するという贅沢なレ…

E・L・ドクトロウ「ダニエル書」(サンリオSF文庫)-3

2014/04/18 E・L・ドクトロウ「ダニエル書」(サンリオSF文庫)-1 2014/04/21 E・L・ドクトロウ「ダニエル書」(サンリオSF文庫)-2 ダニエルの不安定さは、小説の書き方に表れている。表向きの話は、博士号を取得した25歳の若者が就職先を探してニュー…

E・L・ドクトロウ「ダニエル書」(サンリオSF文庫)-2

2014/04/18 E・L・ドクトロウ「ダニエル書」(サンリオSF文庫)-1 1は息子の話だったが、こちらは父の話。 アイザックソン事件はローゼンバーグ事件を模しているのはあきらか。 ローゼンバーグ事件 - Wikipedia ローゼンバーグの獄中書簡は山田晃訳「愛は…

E・L・ドクトロウ「ダニエル書」(サンリオSF文庫)-1

自分の知り合いだった人に、大正生まれで共産党員の父を持つ昭和30年代生まれの人がいた。都内の高校から大学に進学するにつれ、1970年代のこととして新左翼の運動に共感をもっていく。その結果、家族内では当時の左翼運動を巡る議論が白熱したという。とき…

トマス・ピンチョン「競売ナンバー49の叫び」(サンリオSF文庫)

ある夏の日の午後、エディパ(オイディプスの女性名とのこと)・マース夫人(夫はラティーノのDJ)はカリフォルニア州の不動産業者大立者であるピアス・インヴェラリティ(これもなにかのもじりらしい)の遺言執行人に指名された。かつて付き合ったことがあ…

ジョン・バース「旅路の果て」(白水ブックス)

「ある意味で、ぼく、ジェイコブ・ホーナーだ」で始まるのは、メルヴィル「白鯨」を意識しているのかな。異なるのは、バースの主人公は、強い主張で自分の名を言上げするのではなく、とりあえずの記号の意味しかないということ。読み進むにつれて、この30歳…

ヘレン・ケラー「わたしの生涯」(角川文庫)

ヘレン・ケラーは1880年生まれ。2歳で高熱の病気を発症。以来、視力と聴力を失う。話すこともできなくなり、わがままでしつけができないで育つ。転機は彼女が7歳の時。グラハム・ベルの紹介でパーキンス盲学校の卒業生、20歳のアン・サリヴァンが派遣される…

ブルフィンチ「中世騎士物語」(岩波文庫)

「トリスタンとイゾルデ」のバリアント。今度はイギリスの場合(著者はアメリカ人だけど、この本のもとにした伝承や中世文学はイギリスのもの)。 最初に中世物語の起源が書かれる。きわめて簡略化したまとめをすると、もともとは口承であったのが、11世紀く…

ウィリアム・ブラッティ「エクソシスト」(新潮社)

「女優クリスの娘リーガンを突如襲う異変。教会で発見された黒ミサの痕跡。映画監督の惨殺。一連の異常事は次第に《悪魔憑き》の様相を見せはじめた。神父カラスに助けを求めるクリス。が、ここから善と悪との闘争が始まろうとは知るよしもなかった! 壮絶な…

ジョン・サマヴィル「人類危機の十三日間」(岩波新書)

「ジョン・サマヴィル教授の戯曲『危機』The Crisis の訳である。主題は一見してわかるように、一九六二年のいわゆるキューバ危機を扱った半ドキュメンタリー・ドラマ。キューバ危機とは、一九六二年十月に突発した、文字通り世界が全面核戦争、一触即発の危…

ジャック・ケルアック「路上」(河出文庫)

読んだタイミングが悪かったな。もしも自分が20代で、何をしていいのかわからず、あまりある時間を無為に過ごすことがちっとも惜しくない時代に出会っていたら、この本は聖典のようになっていただろう。さらには、60年代のアングラロックやヒッピームー…

トマス・ピンチョン「スロー・ラーナー」(ちくま文庫)

きわめて寡作でありながら、どんな長編を書いてもそれが文学史的事件になるという稀有な作家、ピンチョンの若いころの短編集。「重力の虹」邦訳の出版直前にこの短編集がハードカバーで出版されたが、しばらくして絶版。このほど文庫に収録。とりあえず慶賀…

リリアン・ヘルマン「眠れない時代」(サンリオSF文庫)

v 「未完の女」は戦争終了後までのことがおもに書かれている。そして1976年に出版されたこちらの「眠れない時代」はまさに非米活動委員会の証言の模様が描かれる。 非常に単純化して、この時代とヘルマンのことを書いてみると、 ・非米活動委員会は1937年設…

リリアン・ヘルマン「未完の女」(平凡社ライブラリ)

リリアン・ヘルマンは1905年生、1984年没のアメリカの劇作家。代表作は「子供の時間(1934年)」。しかし彼女の名前は、ダシール・ハメット(ハードボイルド小説の創始者。「マルタの鷹」「血の収穫」など)との同棲生活と、1950年代のマーッカシー旋風時に…

ノーマン・メイラー「鹿の園」(新潮文庫)

世間に無知な青年が都会に来て、次第に社会知と自我に目覚めていくという話は、一般的だ。「赤と黒」「三四郎」などを持ち出したいように、無垢な青年の目が社会の批評になっているという構図を作ることになるから。この小説は、戦後アメリカを舞台にしたそ…

ヘンリー・ミラー「南回帰線」(新潮文庫)

世界文学史年表にのっていたミラーの「北回帰線」を読んだのは高校2年のときだったが、何を読み取ったのだろうか。今回同様に最初のページから最後のページまで活字をトレースしていったことに過ぎなかったのだろう。 (脱線するが、文学に興味をもったとき、…

アーネスト・ヘミングウェイ「危険な夏」(角川文庫)

ヘミングウェイは最晩年に、雑誌ライフの後援を得て(かどうかはわからないが)、スペインを訪れることになった。作者は市民戦争時代の元義勇兵であるものの、その数年前にノーベル文学賞を受賞したというのであれば、軍事政権も門戸を開かぬわけにもいくま…

アーネスト・ヘミングウェイ「移動祝祭日」(岩波書店)

「「パリは移動祝祭日だ」という言葉で始まる本書を1960年に完成し,ヘミングウェイは逝った.「20年代のパリ」を背景に,スタイン,フィッツジェラルド,パウンド,ジョイスら「失われた世代」の青春を回想した不朽の名作.」 1961年に自殺した後に発表され…

アーネスト・ヘミングウェイ「われらの時代に」(福武文庫)

「第一次世界大戦に席捲され、暴力と死の翳におおわれた「われらの時代」の行き場のない不安と焦躁、そこからの脱出の苦闘を、日常生活の断片のスケッチによって描き上げた初期傑作短篇集。ドス・パソス、F.S.フィッツジェラルド、フォークナーら「失われた…