2014-01-01から1年間の記事一覧
ハンガリーという場所を現在の国境線で考えるとおかしな認識になりそうだ。第1次大戦の敗戦まではトランシルヴァニアやスロヴァキア、トルコの一部がハンガリーであったし、それ以前となるとまたハンガリーの指すものはあいまいになってくる(オーストリア=…
シェーンベルク1874-1951、カンディンスキー1866-1944。彼らの仕事を紹介するときに、それぞれ互いの名前が出ることはまずない。しかし、この本によると、1910-30年代にかけて彼らは文通をして、深い交友があり、ロシア革命で決裂した。その関係と対立(とい…
生松敬三「二十世紀思想渉猟」(岩波現代文庫)ではジンメル経由で触れられる指揮者オットー・クレンペラーの証言をこちらで読む。 生涯を略述すると、1885年ドイツ生まれのユダヤ人オットー・クレンペラーは歌劇場の手伝いからキャリアを開始。マーラー、シ…
アルマは画家の娘として1879年に生まれ、1902年にマーラーと結婚。2人の娘を授かったものの一人は死別し、1911年に夫とも死別する。その後はグロピウス、ココシュカその他と華麗な恋愛を繰り返す。1964年にアメリカで死去。この本は、1939年にナチスによるマ…
1993年10月に書いた感想文。 - 「グスタフ・マーラー 失われた無限を求めて」を読んでいます。前評判とおりに、とてもinterestedでinterestingな本ですね。未読の本の山を少しでも低くするべく新刊から遠ざかっていたのですが、ひさびさの音楽の本はとても新…
1992年5月に書いた感想文。 - 宮田光雄「キリスト教と笑い」(岩波新書)を読んでいたところ、次のような一節をみつけました。今回はカール・バルト(1886〜1968)の話です。 1935年、ヒトラー政権下のドイツで神学者のバルトはヒトラー式敬礼とヒトラーへの…
1984年10月に販売されて即座に買い、翌日には読み終わり、そのあと数年間は繰り返し読んで内容をすっかり覚えてしまった。マーラーの作品や生涯のみならず、ここには著者の50年間に経験したこの国のマーラー受容史も書かれていて、録音のない物故者の名前を…
昭和の中ごろからプロレスラーは本を書いていた。たいていの場合は、ゴーストライターによる代筆だろう。 プロレスラーが自分で書いていることを宣言したうえで、文章を発表した端緒は、馳浩が安田忠夫のデビュー戦を週刊プロレスでレポートしたとき(いっし…
本名田尻義博で、21世紀になってからアメリカのプロレス界でもっとも名の知られた日本人レスラー。20世紀だと、戦前のキラー・シクマから戦後のジャイアント馬場、マサ斎藤、ヒロ・マツダ、キラー・カンなどの成功者を上げることができる(ここでは日系アメ…
1988年に出たので、著者が「第2次UWF」を旗揚げしてしばらくしたところ。翌年がこの団体のピークで、たしか東京ドームで大会を開いたのではなかったかな(U-COSMOS 1989年11月29日。TVで録画放送されたが、なんと旅客機のハイジャック事件が起きて、半分の試…
ジャイアント馬場の全日本プロレスは1972年に創立された。さまざまなスターレスラーを誕生させ、1999年に社長のジャイアント馬場が亡くなった後、選手とフロントで内紛がおき、分裂した。そのあと新日本プロレスの武藤敬司が社長に就任する。それも2013年に…
いうまでもなく、1980−90年代でこの国を主戦場にしたプロレスラーで最も知られ、最も成功した人。名前を書いた途端に、vsアントニオ猪木、vsアンドレ・ザ・ジャイアント、vsジャイアント馬場、vsジャンボ鶴田、vs天龍源一郎、vsハルク・ホーガン、vs四天王(…
本名リチャード・ベイヤー(バイヤーのほうが発音に近いらしいが、この国ではベイヤーでとおっている)、通称ディック・ベイヤー。こちらの名でリングに上がったことがある。われわれにとってはジ・インテリジェント・センセーショナル・デストロイヤーあるい…
1989年の東欧革命、1990年のソ連邦崩壊を受けて、20世紀の社会主義運動と国家成立を概観する。記述は19世紀初頭のユートピア社会主義から1990年まで。地域もヨーロッパ、ロシアにとどまらず、東欧・中欧、東アジア、東南アジアと広域にわたる。社会主義の思…
20世紀前半のもっとも偉大な映画監督の一人で、モンタージュ理論の確立者。彼の映画理論に関する論文や講演などを収録したもの。1953年初版で、自分の持っているのは1989年の第9刷。これも入手しにくくなっていて、たとえばWikipediaのエイゼンシュタインの…
2014/12/03 レフ・トロツキー「裏切られた革命」(岩波文庫)-1に続けて後半。 7 家庭、青年、文化 ・・・ プロレタリア革命はあらゆる差別(性、職業、民族その他)から解放するはずであった。なるほど蜂起の一瞬には解放のきざしはあったであろう。しかし…
レーニン死後、スターリンとの権力闘争に敗れ、1928年国外追放1932年市民権剥奪となったトロツキーが1936年に書いたスターリン時代のソ連批判。亡命後はイタリアとドイツと日本のファシズムの勃興があり、著者はそれらの帝国主義・排外主義・全体主義などを…
1950-60年代の講演や書評を並べたもの。大著の「ソヴェト・ロシア史」が進行中で、雑誌に国際関係の論文を多数発表している時期。おりしもソ連は世界第2位のGNPであり、冷戦のさなかで、第三世界に多額の援助を多数行っているものの、国内情勢はほとんど外に…
「革命」がいつ始まり、いつ終わったかの合意をとることは難しい。この小さな本では、1917年の帝政崩壊から1929年のスターリン体制確立までを扱っている。ほかの人であれば1905年の血の日曜日を開始とするだろうし(トロツキー「裏切られた革命」などがそう…
2014/11/27 ジョン・リード「世界をゆるがした十日間 上」(岩波文庫) の続き。 ロシア革命といっても10月革命の「十日間」ですべてが決したわけではない。その前後にも、さまざまな重要な出来事があり、人々が右往左往しながら物事を決めていった。その期間…
ジョン・リードは1887年生まれのアメリカ人。1917年の2月革命の報を聞き、ロシアに向けて8月に出発。彼はアメリカの社会党員でジャーナリストの実績を持っていたので、ボリシェヴィキに受け入れられる。ここでは、10月革命の現場であるペトログラードにいて…
19世紀後半、工業化によって資本主義がヨーロッパを覆う。機械の導入は生産性を向上し、賃金を上げるはずであったが、資本家や経営者は労働者の要求を拒んだ。労働環境は劣悪で病気にかかりやすく、事故が多発する危険な場所である。そのうえ政府は住宅問題…
もとは1974年初出で、1990年に文庫化された。著者は小児科医で、育児の本で有名。彼の原作をもとに商業映画もつくられたくらい。一方、ロシア革命の研究家でもあるらしく、いくつか著作があるようだ。このあとがきによると、書き手がほかにいなくてお鉢が回…
188X年、社会主義者の会合で疲れて帰宅した「私」は夢を見た。それは200年後の社会で、共産主義社会が実現していた。その話をぜひ書けとすすめられたので、ここにまとめてみた。というわけで、19世紀の詩人で工芸家ウィリアム・モリスの構想したユートピアが…
2014/11/19 ジュール・ヴァレース「パリ・コミューン」(中央公論社)-1 後半の150ページが1871年の「パリ・コミューン」のドキュメント。小説を見る前に、このできごとをまとめておこう。 遡ると1789年のフランス革命まで行ってしまうが、そこまで行くのは…
そういえば19世紀後半のフランスを知らないなあ、大仏次郎の「パリ燃ゆ」も読んでいねえなあ、ということでタイトル買いした一冊。1965年初版の中央公論社版「世界の文学」の第25巻。その後、この小説は復刻された様子がないので、読むにはこの本を入手しな…
タイトルの論文は1974年に雑誌連載。そのあと改訂されて1978年に単行本化。自分の初読の1980年代半ばには「差異」「テキスト」「貨幣と言語」というのは人気のあるタームになっていて珍しくもなかったが、雑誌初出のころを考えると先進性がすさまじい。なに…
1964年に出版されたものを2006年に文庫化。著者は1924年生まれなので、40歳のときのものか。 マルクス紀行1964 ・・・ マルクスの思想は、3つのカテゴリがあってそれぞれが連関している。ひとつは、現実的なものとしての<自然>哲学。エピクロスから始まる…
1848年2月のフランス革命から51年12月のルイ・ナポレオンのクーデターまでをレポート。この時代、マルクスはパリの現場を見ているわけではない(4月上旬にケルンに移動。翌年のドレスドン蜂起のあとプロイセン政府の追放令がでて、フランスにもドイツにもベ…
実業家リゴベルトは先妻をなくし、後妻ルクレシアをめとう。リゴベルトは尻の大きなルクレシアを女神のように崇拝し、ほとんど儀式のように愛撫する。家には先妻の息子アルフォンソ(フォンチート)がいて、継母ルクレシアの周囲をつきまとう。彼女の入浴を…