音楽
音楽を聴くとその時の感情の動きを誰かに話したくなる。でも、同じ音楽を聴く場にいても、必ずしも同じ感情を共有できるわけではない。同じ音楽を録音で聴いても、同じ感情が再現するわけではない。それでも、音楽を聴いた時の感情や知的関心などは語りたい…
西洋の音楽の通史を新書200ページ強で説明しようとする野心的な試み。専門家向けには数巻に及ぶような微に入り細を穿つ「音楽史」の叢書があるが、素人が通読するのは困難。そのうえ、「西洋」や「西洋音楽」をどこまで取るかで、範囲は膨大になる。ここでは…
玉木正之(1952年生)が指揮者・金聖響(1970年生)にインタビューして交響曲の魅力を語るという企画第2弾。 指揮者が自分の仕事を語るというのは、朝比奈隆「交響楽の世界」(早稲田出版)や岩城宏之「楽譜の風景」(岩波新書)があるが、ここでは彼らの2…
玉木正之(1952年生)が指揮者・金聖響(1970年生)にインタビューして交響曲の魅力を語るという企画第1弾。 ベートーヴェンの交響曲はクラシック音楽のアルファであり、オメガ。なので、個々の曲ごとに傾聴することにする。以下では気になる言葉をメモした…
「音楽の基礎」というタイトルで、内容は西洋古典音楽のスコアを読めるようになるための基礎知識の紹介。初版の1971年はニクソンショックやオイルショックの前で、高度経済成長の最後の年。このころにオーディオとピアノのブームがあって、多くの人がこぞっ…
ゲオルギアーデス(1907〜1977)はギリシャ出身のドイツ音楽学者。本にもネットにも情報がほとんどない。 テオドール・アドルノ「ベートーヴェン 音楽の哲学」(作品社)にゲオルギアーデスの名前が出ていたので、高名な学者であったらしい。 この本で、音楽…
2017/04/18 T・G・ゲオルギアーデス「音楽と言語」(講談社学術文庫)-1 1954年の続き。 12 音楽的現実の諸段階 ・・・ ルネサンス(パレストリーナ)、バロック(J.S.バッハ)、ウィーン古典派(ロココ)のの特長と発展史を図式的にまとめる。パレストリー…
クラシック音楽を聴くようになったのは20歳に近くなってからだから、聞きとおすことに困難があったのをよく覚えている。友人と酒を飲みながら、ブラームスの交響曲全4曲をいっきに聞いた。友人が「ここすごいだろ」といっても、初めて聞く音楽だったので、…
ベートーヴェンは、当時の人と同じく手紙をたくさん出していて、それだけで一冊の本になるくらいの量になる。それとは別に、手帳や楽譜などの書き込みなどがたくさん残っている。というのも、耳疾疾患のために難聴になり、晩年は筆談になった。そこに書いて…
パリの郊外でもあるような一軒家に住むミッシェルのところに、「わたし(アラン)」は16歳のピアニストであるクリスチーヌとともに赴く。ミッシェルはピアノの調律をすると、ヴァイオリンを手にし、クリスチーヌとベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタを順…
編者解説によると、アドルノには「ベートーヴェンに関する哲学的仕事」をまとめる構想があったらしい。大量のメモが書かれた。いくつかは短い文章になったものがあり、「美の理論」「楽興の時」などに収録された。それらは「哲学的仕事」を網羅するまでに至…
フランツ・シューベルトは1797年生1827年没、享年31歳。ほぼ全分野(協奏曲がないくらい)にわたって作曲した。生前はほとんど売れず、貧困のうちに死亡。極端な内気(ベートーヴェンに二度会うも一言も口をきけず)もあるけど、チビ(5フィートちょっと)…
フランスの音楽史を作曲や作品からみると、19世紀は妙に空白なのだ。18世紀には、ジル、カンプラから始まってラモー、リュリ、クープランなどの名が綺羅星のように現れるのに、19世紀ではベルリオーズとショパンを除くといきなり、サン=サーンス、フランク、…
本書の議論にはいるまえに、ヘルムート・プレスナー「ドイツロマン主義とナチズム」(講談社学術文庫)で当時の状況を確認していおこう。図式化すると、ドイツは西洋諸国に比べ遅れていて、民主主義の未成立と宗教の世俗化によって情熱の持っていき場が哲学…
タイトルこそヨハン・シュトラウス(息子)個人であるが、主人公はハプスブルク帝国そのもの。なるほどこの帝国の栄光と没落はこのワルツ音楽の大家に具現しているわけか。 この本の記述にそうと、19世紀のハプスブルク帝国の歴史はこんな感じになる。前の世…
ヤン・ヴェーニグ「プラハ音楽散歩」(晶文社)を読んだときに驚いたのは、チェコスロヴァキア(初出は1960年代)という国が3つの地方に分かれていて、それぞれ反目と友愛によってつながっているということ。すなわち、チェコ・モラヴィア・スロヴァキア。…
1929年生まれの作曲家。この本は1990年に岩波新書ででた。おおよそ自身の半生の振り返りと、時代ごとの音楽状況のまとめ、それに触発された自身の思考と作品を述べる。 親が中学校の音楽教師で、子供のころから自発的にピアノを弾き、作曲を行い、SPを聞いて…
この本が出たのは1970年。 15年戦争の後半、西洋の文化財を輸入しなくなってから、この国には西洋の情報が入らなくなった。それが敗戦のあと、アメリカ経由で情報が大量に入ってくる。レコードや楽譜や演奏家でなのだけれど、どうやらそれらにまして米軍向け…
たんに「言葉に言い表しがたい」というのではなく、「筆舌に尽くせない」というので、そこには積極的な評価があることになる。しかし、言葉という不変・普遍な記号に移そうとするととたんに逃げ出してしまうのであって、ひとところに捉えておくことができな…
朝日出版社は、いろいろな学問の著名学者と文筆業者と対談させるというシリーズを1980年代に出していて、たぶん20冊強までいったのではなかったかな。数冊は読みました。その中でも印象的な一冊。版元を変えていまでも入手可能なのはこの一冊くらい。 大森哲…
ロベルト・シューマンは1810年生まれで、1856年に若くして亡くなった。彼の作品だと、ピアノソロの曲と歌曲が代表になるのかな。「クライスレリアーナ」とか「幻想曲」、「詩人の恋」あたり。人によっては大規模作品の「楽園とペリ」を推すこともある。自分…
ハンガリーという場所を現在の国境線で考えるとおかしな認識になりそうだ。第1次大戦の敗戦まではトランシルヴァニアやスロヴァキア、トルコの一部がハンガリーであったし、それ以前となるとまたハンガリーの指すものはあいまいになってくる(オーストリア=…
シェーンベルク1874-1951、カンディンスキー1866-1944。彼らの仕事を紹介するときに、それぞれ互いの名前が出ることはまずない。しかし、この本によると、1910-30年代にかけて彼らは文通をして、深い交友があり、ロシア革命で決裂した。その関係と対立(とい…
1957年に出版された。3つの論文を収録。共通するテーマはタイトル通りの「夜の音楽」。ここに登場する作曲家をリストアップすると、フォーレ、ショパン、サティの3人を中心に、ドビュッシー、ラヴェル、シャブリエらのフランス人、バラキエフ、リャードフな…
ロシア生まれの両親をもつフランスの哲学者ジャンケレヴィッチ。主著はたぶん巨大な「死」(みすず書房)かな。一度所有したけど、どうしても読めそうになかったので、手放した。 さてこちらは1968年初出のドビュッシー論。これは小さいけれども浩瀚な書物で…
ドビュッシーは1862年生まれ。最初の成功は1894年の「牧神の午後への前奏曲」。20世紀に入ってから重要作をたくさん書いて、1918年に死去。この本は1901-1905年ころに雑誌や新聞に掲載した短文をまとめ、作曲者自身が編集して出版したもの。ほとんどが時評。…
ショパンはフランス人を父にしてポーランドに1810年に生まれた(異説あり)。1830年、ワルシャワ蜂起にあわせて亡命し、以後パリで生活し、作品を発表した。この評伝では誕生から亡命、パリ到着までを描く。そのあとのサロンでの生活やジョルジュ・サンドと…
J・S・バッハをどうみるかについて、大きな変化が1960年代から起きたらしい。 ひとつは1962年の音楽学者フリードリヒ・ブルーメの講演で、それまでバッハをキリスト教精神史に位置付けるように考えていたのを実証的研究に変えて「人間バッハ」を見るようにし…
1895年生まれの著者は、この国のバッハ研究の第一世代。この新書も、もとは1957年にでたものを1960年以降のバッハ研究の進展に応じて書き加えたものを1983年に出版。そのとき、著者87歳! この年齢で書きなおしをする気力、体力を持っておられるとは。 さて、…
ヨハン・セバスチャンが生まれたのは1685年。1750年に死去。作者のフォルケルは1749年に生まれた。なので、直接会ったことはないのだが、ヨハンの息子のヴィルヘルム・フリーデマンやカール・フィリップ・エマヌエルらと親交があった。フォルケルからみると…