odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

ビジネス

斎藤美奈子「冠婚葬祭のひみつ」(岩波新書) 冠婚葬祭のやりかたは20世紀に3度大転換した

古今の冠婚葬祭マニュアルを集めて比較しているから、マニアかと思ったが、以前マニュアル作成の仕事をしていたとのこと。時代の変化だけでなく、業界の事情にも詳しいと思ったが、そういう理由でしたか。それでも多数の類似本を読みこんでいるので、知識の…

正保美和子「ラボ整理コミュニケーション術」(Booko出版) ボスの無関心・押し付けに愚痴を言うより、みんなで仕組みをつくっちゃいましょう。

学生時代の実験実習で、自分の手先があまりに不器用なことがわかった。まともに試薬を調整できず、実験装置を組み立てられず、試料をきちんと入れることができず、コンダミをおこしてばかりだったので、そうそうに学者になることはあきらめた。卒業研究もフ…

今野晴貴「生活保護」(ちくま新書) 生活保護のバッシングとヘイトデマを止めるためには本書の知識を持つことが必要。

差別者、レイシストは外国人生活保護の廃止を要求する。それに対抗するために、連中が言っていることを調べて、デマばかりであることを明らかにしたことがある。 odd-hatch.hatenablog.com メディアの報道など断片的な知識は入っても全体の知識がないので、…

本田良一「ルポ・生活保護」(中公新書) 日本では江戸も明治政府も「隣保相扶」で貧困や公共サービスにはまったく関心・興味をもたず、常にコストを惜しんで、公の責任を放棄しようとしてきた。

日本では1970-80年代に貧困の話を聞くことはとても少なかった。まったくなかったわけではないが、メディアが報道することがなかったからだろう。佐和隆光/浅田彰「富める貧者の国」(ダイヤモンド社)が2001年にでたとき、「貧者」は景気回復が進まず、公共…

岩瀬大輔「生命保険のカラクリ」(文春新書) 個人の最適を図る生命保険より、国民全体の最適をめざす健康保険制度が充実しているほうが重要で有益。

2009年にでた本書で、著者は生命保険に加入するポイントを書いている。生命保険の目的は、死亡後の配偶者他係累の保障、医療保障、貯蓄の3つ。収入や体調などにあわせて適切なものにしよう(詳細は本書で)。最後の貯蓄は「金利が上がってから」としている…

櫻井稔「内部告発と公益通報」(中公新書) 企業や組織の不正や悪を告発する人を保護する仕組みを作れ。

2004年6月に公益通報者保護法が制定された。その説明(のようなもの)。21世紀になってから、企業の不正が連続して発覚した。そのきっかけになったのが労働者(雇用人)による内部告発。これを行政が調査し、マスコミが報じることによって、企業や行政などの…

町田洋次「社会起業家」(PHP新書) 国家(自治体)と個人が担いきれない社会保障を事業として補う人々。プロが携わることで品質を維持し、長期継続の可能性がある。

現在の社会保障制度は、高度経済成長や人口構成がピラミッド型で平均寿命の短い時代に作られたもの。それが変わってきて、負担の増加に国家はアップアップしている。これまでは、多人数の家族親族や地域コミュニティが社会保障制度の一部を担ってきたのだが…

矢沢永吉「成りあがり」(角川文庫) マーケティング、商品開発、商品のブランド化、マネージメント、ファイナンスなど起業に必要なことを一人で行ったミュージシャン。

1978年初出で当時のベストセラー。聞き取りと構成を糸井重里が行ったのも注目された。 父の家族は本人を除いて広島原爆で死亡。再婚した父から永吉が生まれる(1949年)が、数年後に死去。母は別の男と失踪。永吉は祖母との二人暮らし。貧乏暮らしであったが…

荒俣宏「広告図像の伝説」(平凡社) 明治から昭和にかけてのこの国の起業家たちが商標に込めた機智や思い込み、不思議なイメージ。無機的なロゴやCIにはない味わいを楽しむ。

産業考古学シリーズともいうべき一冊。1987年に雑誌連載されて、1989年に単行本化。 ここでは、図案、商標に注目。すなわち、製造業と販売業の境がなく、消費者は「もの」を購入していた時代。企業は商品のイメージを的確に消費者に伝えるためにどのような工…

ピーター・バーンスタイン「リスク 上」(日経ビジネス文庫)

「リスク」という言葉はどうもえたいが知れないし、どうも誤解された使われ方をしているのではないか(自分の責任とは無関係に降りかかってくる災難みたいな意味)。なので、このタイトルの本を読む。 前半は、リスクの考え方や計算に使われる確率や統計、推…

ピーター・バーンスタイン「リスク 下」(日経ビジネス文庫)

2013/05/16 ピーター・バーンスタイン「リスク 上」(日経ビジネス文庫)第10章 サヤエンドウと危険 ・・・ ようやく株の話。株価は変動が激しいが、長期的にみれば「平均への回帰」がみられる。問題は、「平均」が長期的に変動していくこと。ほかにもいく…

日本経済新聞社編「日本電産 永守イズムの挑戦」(日経ビジネス文庫) 企業成長期の成功体験。

「一番以外はビリと同じ」――日本電産・永守社長の強いリーダーシップのもと勝ち続ける秘密は何か? 倒産寸前の三協精機を従業員の意識改革によりわずか半年で再生させたドラマを再現、「永守流経営」の真髄を描く。 2007-8年ころ、永守社長はメディアによく…

高木新二郎「事業再生」(岩波新書) 破産倒産する前に、リソースを有効活用できる事業再生をはやめにしましょう。そのほうがみんなにいいですよ。

バブル崩壊後,不良債権処理とともに日本経済のなかで大きな位置を占めるようになった事業再生.そもそも事業再生とは何を目的とし,どのようにして実現するのか.注目を集めるM&Aなどの手法,各種ファンドなどのプレイヤー,この数年で抜本的改正を遂げた…

坂根利幸「民主経営の理論と実践」(同時代社)

企業や組合の私的経営をいかに超克して、民主経営にするかという議論。通常、企業の経営は出資者がオーナーになり、業務の責任者を集めて経営陣という組織を作る。ときに、出資者が経営に参加しないで、経営責任者を別に調達してくることもある。この組織で…

あらえびす「名曲決定盤」(中公文庫) 1万枚のSPレコードを収集したマニアの在庫管理(分類と整理)の方法は21世紀にも通用する。

ここではおまけのように書かれているSPの保管方法について紹介。ここに書かれている分類と整理の方法を会得すると、他に応用が利くから。これを参考に自分は蔵書の並べ方を検討し、管理ファイルを作成した。その経験は実は、ビジネスの現場、というよりバッ…

橘木俊詔「企業福祉の終焉」(中公新書) 企業の内部留保金は史上最高なのに、退職金を出さないようになった。

これまで企業は従業員のために福祉活動を行ってきた。たとえば、法定福利費による福祉費用の負担であり、退職金の支給であり、福利厚生費による住宅・健康・保養所・食事などの負担である。2015/04/16 入江徳郎「泣虫記者」(春陽文庫) 昨今の不況で、法定…

ウィリアム・パウンドストーン「ビル・ゲイツの面接試験」(青土社) SPIだろうがパズルだろうが、面接官が自分の能力以上の新人を部下に採用するということはめったにないよね。

仕事柄百人以上を面接してきたが、満足した人材を採用したことがない。それは、自分に限ったことではなく、マイクロソフトでも同じらしい。面白いのは、ビル・ゲイツ以下のメンバーは面接でパズルを質問して、その返事を聞いて採用を決めるらしい。しかも、そ…

岩井克人「会社はこれからどうなるか」(平凡社) 20代で会社に入社するというのは、20年後の起業を目指して知識、経験、人的ネットワークを作るため。

まとめと自分の感想をごっちゃに。 ・法人の定義について、名目説と実在説の2つがある。前者は会社の株主主権論の根拠になっている。 ・しかし、法人には、モノがヒトを管理する状態とヒトがモノを管理する状態が同時にあって、単純に名目か実在かに二分さ…

柴田昌治「なぜ会社は変われないのか」(日経ビジネス文庫) 古参の中間管理職の意識改革をどう行うか。

日本企業の病はここにある! リストラで人も給料も減らされたのに、上からは改革の掛け声ばかり。残業を重ねて社員は必死に働くのに、会社は赤字。社内には不信感が渦巻き、口ばかりの評論家が氾濫。こんな日本では普通の会社を本当に蘇らせた「風土・体質革…

宮本光晴「日本の雇用をどう守るか」(PHP新書) 即戦力を要求し社内教育を行わない企業が日本の雇用を悪化させ、低賃金のままにする。

年俸制や業績給、専門職制や契約雇用制等の導入により、日本型雇用システムは「市場指向型」「流動型」へと本当に変化していくのか。 著者は、アメリカ、ドイツのモデルとの比較を通して、日本独自の能力主義である職能システムを核とする日本型システムは、…

一橋総合研究所「「身の丈起業」のすすめ」(講談社現代新書) 会社に所属している人は会社をよく知らないから、法と仕組みをおぼえよう。あと確定申告は自分でできるように。

新刊書店であろうが、中古本屋に行こうが、「起業」に関する本は大量に出ている。いいかげんに分類すれば 1.起業して成功した人が過去を振り返る回想本 2.スケジューリングや法律など起業の手続の解説本 ということになる。1を読むとファイトは湧くがノ…

太田肇「ベンチャー企業の「仕事」」(中公新書) ベンチャー企業の成長には組織論や評価システム、マネジメントが大事。

経済再生のカギを握るベンチャー。そこに働く人々はいったい何を思い、どのように仕事をしているのか。また、会社は彼らの「やる気」をどう引き出そうとしているのか。これまでイメージだけで語られがちだったベンチャーの実態を検証すると、先進的な側面と…

マイケル・デル「デル革命」(日経ビジネス文庫) 企業の成功には本書に書かれなかったことが大事と思った。「ジャパネットたかた」がデルに近いモデルによる日本の成功例。

あまりビジネス本は読まない。社内の経営会議とか取締役会の経験のほうが身につくことになったから。でもいくつかたまってきたので、しばらく取り上げることにする。 最初期のコンピューターオタクが、顧客の仕様に合わせたPCを販売することを思いつき、19…