2023-01-01から1年間の記事一覧
2023/12/28 ウィリアム・シェイクスピアを読む前に:エリザベス朝期の劇場について 1595年 2023/12/27 ウィリアム・シェイクスピア「リチャード三世」(新潮文庫) 他人を見下し屈服することが目的で、それだけが行動の原理の主人公は王位についたとたんに次…
戯曲の解読に取り掛かる前にエリザベス朝期の劇場がどういうものかを調べてみよう。現代の舞台を想像すると、シェイクスピア時代の様子を誤ってしまう。「ロミオとジュリエット」訳者の中野好夫の解説を参照する。 1.小劇場で寄席程度の大きさ。当然肉声。…
実在の暴君リチャード三世を主人公にした史劇。上演は1594年と推測されているようで(新潮文庫の福田恒存の解説による)、この戯曲の背景にあたるのは薔薇戦争。その中の1484-85年にかけてのできごと。大まかな流れはwikiを参照。 ja.wikipedia.org シェイク…
その昔、エフェサスとシラキュース(いずれも都市の名)は犬猿の仲であり、互いの市民は相手の都市に行ったら死刑、もしくは1000マルクの身代金と引き換えに釈放という決まりを作った。とはいえ、同じ地中海の都市であって、不運に嵐にでもあえばいやおうな…
シェイクスピアの若書きとされている喜劇。成立年は解説を読んでもはっきりしないが(資料不足による)、1593年か1594年とされる。タイトル「The Taming Of The Shrew」を「じゃじゃ馬ならし」としたのは坪内逍遥かなあ。口の悪い若い女性を「じゃじゃ馬」と…
イタリア・ヴェロナの町(いまは野外オペラで有名かな)に、相違いしているモンタギュー家とキャピュレット家がある。両家の子息は召使や従者を従えて街を練り歩き、仇敵を見つければからかい、喧嘩をする。あるとき、モンタギュー家の跡取りロミオ(15歳く…
舞台はアセンズ(アテネ)の町であるが、演出ではその通りにするのもありだし、シェイクスピアの時代のイングランドにしてもよいし、ケルト幻想のどこにもない場所にしてもよさそうだし、無機質・金属質のSF的にもできそう。そういう読み替えが可能なお話(1…
2023/12/21 ウィリアム・シェイクスピア「夏の夜の夢」(新潮文庫)-1 夏の夜は、普段目に見えない妖精が姿を現し、普段の人間界の秩序が壊されて、一時だけヒエラルキーが逆転する。 1596年の続き アテネの老人イジアスには娘ハーミアがいる。彼女にはライ…
初演の1596-7年というと、モンテヴェルディの「オルフェオ(1607年)」「ポッペアの戴冠」「ウリッセの帰還」などとほぼ同時代。これらをシリアスというのであれば、シェイクスピアの「ヴェニスの商人」は喜劇、ブッファだ。登場人物はリアルであるようであ…
シェイクスピアが1596-99年の間に書いたとされる歴史もの。極東に住むおれには背景がちんぷんかんぷんなので(代わりに歌舞伎は見当がつく)、資料を読む。百年戦争 ja.wikipedia.org ヘンリー4世 (イングランド王) ja.wikipedia.org 中世から近世に切り替わ…
シシリー島メシーナの執政官レオナートには美しいひかえめな一人娘ヒーローと毒舌で高慢な姪ベアトリスがいるが、二人とも年頃なにの結婚しないのが気になる。アラゴンの領主ドン・ペドロがやってきたので一月歓待することにした。いっしょに来た貴族のクロ…
ローマ史は詳しくないので、史実とつきあわせない。本書の記述だけでまとめる。 戦勝したシーザーが帰還するとき、元老たちは眉をひそめる。此度の勝利によってシーザーの権威はますますあがり、専制の様子を呈してくる。割を食うのは元老たちであり、市民(…
シェイクスピアには森が何度もでてきて、思いだすだけでも「夏の夜の夢」「マクベス」などがある。イングランドはシェイクスピアの時代まで(もっと後の産業革命までかも)は深い森におおわれていた。そこが重要なのは、何しろ深くて道がないので容易に行き…
ときは11世紀ころ? デンマークの先王ハムレット急死のあと、係累のクローディアスが後を継いだ。先王の急逝のあと息子ハムレットは憂いが晴れず、服喪の黒服を身に着けている。おりしもエルノシアの城に怪異の噂が立つ。先王の亡霊が王子ハムレットの前に立…
白水ブックスの解説では、過去にあった本作への批評は芳しいものではなかったと言っている。まあ、人権が確立する前の創作であるし、マキャベリ「君主論」の時代であるし、封建制で統治者の権力は神の威光といっしょになってとても強かったのであるし。近代…
これを読む前にまずヴェルディの歌劇「オテロ」を見てしまったのだ。なので、この劇はほぼ同世代の中年男であるオセローとイアーゴウの闘争であり、そこに巻き込まれたデズデモウナの死が悲劇なのであると思ったのである。筋を確認するために、戯曲を読んだ…
ブリテン王リアは齢80にして、老いを自覚し、国を3人の娘のいずれかに継承させることにする。上二人はことば巧みにリアの幸福と感謝をのべたが、末娘は口下手のために沈黙する。激怒したリアは末娘コーディリアを放逐(フランス王が娶る)し、上二人の娘(…
ご他聞にもれず、20代の初読時は、反乱を最後まで遂行できないマクベスをふがいないと断じたのであった。魔女の予言を真に受けて、夫人の使嗾にのっかっただけの機会主義者はその程度の覚悟か、と。「マクベス」を翻案した黒澤明の映画「蜘蛛巣城」にもさほ…
シェイクスピア畢生の大作。すでに四大悲劇を書き終えたシェイクスピアの筆は雄渾、無駄な一字もない。驚くほど多数のキャラを縦横に動かし語らせ、ジュリアス・シーザー亡き後のローマンの混乱を余すところなく描き、運命に逆らうことはできず、英雄たちも…
シチリアとボヘミアの王様は幼少期から仲がよく一緒に遊ぶことしばしばだったが、即位後は多忙でなかなか会えない。しばらくぶりのボヘミア王の来訪にシチリア王は喜ぶが、虫の知らせがあってボヘミア王は変えると言い出す。シチリア王は妻にボヘミア王を引…
ミラノ公とナポリ公を乗せた船が難破し、ほうほうのていで全員が無人島に漂着する。ミラノ公とナポリ公はいっしょにいたが、ミラノ公の息子は行先不明になってしまった。ほかに水夫などの火夫のグループと、酔漢の賄い方が島の別の場所に避難した。船が折れ…
原則として小説評論は読まないようにしているが(自分で考えないようになるため、評者の見解に引っ張られるため)、シェイクスピアとドストエフスキーだけは自分の読み取りだけでは不安なので、見つけたら読むことにしている。これはたまたま見つけた一冊。…
久しぶりにシェイクスピアを読み直したらとても面白かった。知っている話であっても発見がたくさん(なのに20代の読書ではなぜつまらないと思ったのだろう)。でも、50年以上前の解説だけでは情報が不足していると思ったので、2001年刊の本書を読む。著者は…
2023/11/20 ロレンス・スターン「トリストラム・シャンディ 上」(岩波文庫)第1巻 トリストラム氏懐胎のシーンから始まるが巻の終わりでも生まれていない 1760年2023/11/17 ロレンス・スターン「トリストラム・シャンディ 上」(岩波文庫)第2巻 出産の準備…
ロレンス・スターンは1713年生まれ。国教会の牧師になったが特筆にたることはひとつとしてない。それが1760年に本書「トリストラム・シャンディ」の第1巻をだしたところ大評判になった。そのおかげで社交界でちやほやされ、莫大な収入を得ることになり、当時…
2023/11/20 ロレンス・スターン「トリストラム・シャンディ 上」(岩波文庫)第1巻 トリストラム氏懐胎のシーンから始まるが巻の終わりでも生まれていない 1760年の続き 第2巻は出産準備。誰に取り上げてもらうかで父と母が対立し、陣痛が始まると男性医師を…
2023/11/17 ロレンス・スターン「トリストラム・シャンディ 上」(岩波文庫)第2巻 出産の準備をするが男たちは別の話に夢中になってばかり 1760年の続き 第3巻は引き続き出産前。産気ついたが産婆が腰を抜かしたので、スロップ医師がいやいやながら出産を手…
2023/11/16 ロレンス・スターン「トリストラム・シャンディ 上」(岩波文庫)第3巻 産婆が腰を抜かし藪医者がトリストラムの鼻をつぶしてしまう 1761年の続き 第4巻。愛息子の鼻がつぶれたので父は動転、卒倒寸前。そのために記述の気もそぞろ。したがって、…
2023/11/14 ロレンス・スターン「トリストラム・シャンディ 中」(岩波文庫)第4巻 手違いで父が最も嫌った名前が乳児につけられてしまう。 1761年の続き 第5巻。「私のために賽を投げた最初の三つの大勝負――私の種つけと鼻と名前と――に、いずれも勝負運にめ…
2023/11/13 ロレンス・スターン「トリストラム・シャンディ 中」(岩波文庫)第5巻 5歳になったトリストラムは割礼をすることになり、大人たちはおしゃべりし、婉曲表現では意を尽くせない 1762年の続き 第6巻。割礼の手術になったが、スロップ医師と助手の…