2023-01-01から1年間の記事一覧
ブリテン王リアは齢80にして、老いを自覚し、国を3人の娘のいずれかに継承させることにする。上二人はことば巧みにリアの幸福と感謝をのべたが、末娘は口下手のために沈黙する。激怒したリアは末娘コーディリアを放逐(フランス王が娶る)し、上二人の娘(…
ご他聞にもれず、20代の初読時は、反乱を最後まで遂行できないマクベスをふがいないと断じたのであった。魔女の予言を真に受けて、夫人の使嗾にのっかっただけの機会主義者はその程度の覚悟か、と。「マクベス」を翻案した黒澤明の映画「蜘蛛巣城」にもさほ…
シェイクスピア畢生の大作。すでに四大悲劇を書き終えたシェイクスピアの筆は雄渾、無駄な一字もない。驚くほど多数のキャラを縦横に動かし語らせ、ジュリアス・シーザー亡き後のローマンの混乱を余すところなく描き、運命に逆らうことはできず、英雄たちも…
シチリアとボヘミアの王様は幼少期から仲がよく一緒に遊ぶことしばしばだったが、即位後は多忙でなかなか会えない。しばらくぶりのボヘミア王の来訪にシチリア王は喜ぶが、虫の知らせがあってボヘミア王は変えると言い出す。シチリア王は妻にボヘミア王を引…
ミラノ公とナポリ公を乗せた船が難破し、ほうほうのていで全員が無人島に漂着する。ミラノ公とナポリ公はいっしょにいたが、ミラノ公の息子は行先不明になってしまった。ほかに水夫などの火夫のグループと、酔漢の賄い方が島の別の場所に避難した。船が折れ…
原則として小説評論は読まないようにしているが(自分で考えないようになるため、評者の見解に引っ張られるため)、シェイクスピアとドストエフスキーだけは自分の読み取りだけでは不安なので、見つけたら読むことにしている。これはたまたま見つけた一冊。…
久しぶりにシェイクスピアを読み直したらとても面白かった。知っている話であっても発見がたくさん(なのに20代の読書ではなぜつまらないと思ったのだろう)。でも、50年以上前の解説だけでは情報が不足していると思ったので、2001年刊の本書を読む。著者は…
2023/11/20 ロレンス・スターン「トリストラム・シャンディ 上」(岩波文庫)第1巻 トリストラム氏懐胎のシーンから始まるが巻の終わりでも生まれていない 1760年2023/11/17 ロレンス・スターン「トリストラム・シャンディ 上」(岩波文庫)第2巻 出産の準備…
ロレンス・スターンは1713年生まれ。国教会の牧師になったが特筆にたることはひとつとしてない。それが1760年に本書「トリストラム・シャンディ」の第1巻をだしたところ大評判になった。そのおかげで社交界でちやほやされ、莫大な収入を得ることになり、当時…
2023/11/20 ロレンス・スターン「トリストラム・シャンディ 上」(岩波文庫)第1巻 トリストラム氏懐胎のシーンから始まるが巻の終わりでも生まれていない 1760年の続き 第2巻は出産準備。誰に取り上げてもらうかで父と母が対立し、陣痛が始まると男性医師を…
2023/11/17 ロレンス・スターン「トリストラム・シャンディ 上」(岩波文庫)第2巻 出産の準備をするが男たちは別の話に夢中になってばかり 1760年の続き 第3巻は引き続き出産前。産気ついたが産婆が腰を抜かしたので、スロップ医師がいやいやながら出産を手…
2023/11/16 ロレンス・スターン「トリストラム・シャンディ 上」(岩波文庫)第3巻 産婆が腰を抜かし藪医者がトリストラムの鼻をつぶしてしまう 1761年の続き 第4巻。愛息子の鼻がつぶれたので父は動転、卒倒寸前。そのために記述の気もそぞろ。したがって、…
2023/11/14 ロレンス・スターン「トリストラム・シャンディ 中」(岩波文庫)第4巻 手違いで父が最も嫌った名前が乳児につけられてしまう。 1761年の続き 第5巻。「私のために賽を投げた最初の三つの大勝負――私の種つけと鼻と名前と――に、いずれも勝負運にめ…
2023/11/13 ロレンス・スターン「トリストラム・シャンディ 中」(岩波文庫)第5巻 5歳になったトリストラムは割礼をすることになり、大人たちはおしゃべりし、婉曲表現では意を尽くせない 1762年の続き 第6巻。割礼の手術になったが、スロップ医師と助手の…
2023/11/10 ロレンス・スターン「トリストラム・シャンディ 中」(岩波文庫)第6巻 手術になったがまたトラブル。白紙ページ、二人称、図形、伏字に使用などスターン師は文学実験にいそしむ(いや読者サービスなのだ) 1762年の続き 下巻に収録された巻はし…
2023/11/09 ロレンス・スターン「トリストラム・シャンディ 下」(岩波文庫)第7巻 物語は突如中断してフランス旅行記が挿入される 1765年の続き 第8巻。第7巻の回り道の後、叔父トウビーの恋物語が始まる。隣家の未亡人がトウビーに一目ぼれして、日がな一…
2023/11/07 ロレンス・スターン「トリストラム・シャンディ 下」(岩波文庫)第8巻 トリストラムは忘れられ築城術にしか興味がない叔父トウビーの恋物語が始まる 1765年の続き 第9巻。第8巻でひとめぼれしたトウビーはウィドマン夫人にアタック(しかし恋愛…
2023/11/03 ジェイムズ・ジョイス「ダブリナーズ」(新潮文庫)-1 WW1前、作者20代前半の短編。当時のダブリンの生活様式は今と異なることに注意。 1914年2023/11/02 ジェイムズ・ジョイス「ダブリナーズ」(新潮文庫)-2 WW1前、作者20代前半の短編。ダ…
とても高い山に登るつもりの読書を始めよう。 ジェイムズ・ジョイスが最初に出した短編集。作者ジェームズ・ジョイスは1882年生まれ1941年没。1914年というとジョイスが30歳を過ぎたばかりだが、最初のほうのは20代前半の作と思われる。 翻訳は2009年。 The …
2023/11/03 ジェイムズ・ジョイス「ダブリナーズ」(新潮文庫)-1 WW1前、作者20代前半の短編。当時のダブリンの生活様式は今と異なることに注意。 1914年の続き 驚きなのは、習作ぽいのは最初の数編だけで、それ以降は完成した小説になっていること。19世…
以前、1979年に講談社文庫ででた丸谷才一訳を数年後に読んだ記録が残っているが、内容をちっとも覚えていない。20代の自分はもっとテーマがわかりやすいものでないと、読みこなせなかったし、解説も新版の集英社文庫と比べると貧相だったので、読み方の指南…
2023/10/31 ジェイムズ・ジョイス「若い芸術家の肖像」(集英社文庫)-I、II とても感受性が強く、頭のよいこどもの成長の記録。 1914年の続き 読んでいる間はわすれてしまうが、19世紀末のアイルランドはイギリス統治下にあった。プロテスタントのイギリス…
2023/10/30 ジェイムズ・ジョイス「若い芸術家の肖像」(集英社文庫)-III、IV 自我に目覚め宗教的ナショナリズムにかわるアイデンティティを模索する。 1914年の続き 他人との距離の取り方、他人の描き方が独特。小説に初登場のキャラがでてくると、彼の名…
さて20世紀文学の金字塔に挑むことにしよう。 表層は「若い芸術家の肖像」の続き。アイルランドを出ることきめたディーダラスはその2年後にダブリンに戻っている。以後、1904年6月16日という凡庸な日(しかしジョイス自身には重大な日)を朝から深夜まで詳し…
2023/10/26 ジェイムズ・ジョイス「ユリシーズ I」(集英社文庫)1.2.3 第1部は何者にもなっていないし何もしないディーダラスの青春の一日。 1922年の続き 第2部が始まる。第2部は第4挿話から第15挿話までで、「ユリシーズの放浪」というタイトル…
2023/10/24 ジェイムズ・ジョイス「ユリシーズ I」(集英社文庫)4.5.6 第2部は中年ユダヤ人ブルームの凡庸な一日。 1922年の続き 7.アイオロス 正午。スティーブンは頼まれた原稿を編集者に渡すために、ブルームは広告の出稿の打ち合わせで同じビルに…
2023/10/23 ジェイムズ・ジョイス「ユリシーズ I」(集英社文庫)7.8 文体パロディの始まり。内面描写よりも言葉遊びに関心が移る。 1922年の続き 「II」で訳者の一人、永川玲二(この人はグレアム・グリーンの訳者(「情事の終わり」)として名前を知っ…
2023/10/20 ジェイムズ・ジョイス「ユリシーズ II」(集英社文庫)9.10 「ガス状脊椎動物」はヘッケルの引用。補注の付いていないところにも隠しごとはあるよ。 1922年の続き 「ユリシーズ」を読んでいると、他の小説を読んでいるときよりもずっと頭を働…
ジェイムズ・ジョイスの小説はほとんど何も起こらない。事件らしい事件が起こらない。よくある、凡庸な一日のスケッチにみえる。自分も若い時はそんなふうに読んでいたので、さっぱり興味を持てなかった。でも、時間を経て読んでみると、何気ない描写や会話…
2023/10/19 ジェイムズ・ジョイス「ユリシーズ II」(集英社文庫)11.12 ブルームにとって性と死と食はたがいにつながっている。 1922年の続き 「12.キュクロプス」で様々な文体模倣を行ってきたが、この先は章全体が文体模倣だ。19世紀とそれ以前の…