odd_hatchの読書ノート

エントリーは3200を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2024/11/5

柴谷篤弘

INDEX 柴谷篤弘

2013/01/22 柴谷篤弘「生物学の革命」(みすず書房) 2013/01/21 柴谷篤弘「反科学論」(みすず書房) 2013/01/18 柴谷篤弘「あなたにとって科学とは何か」(みすず書房) 2013/01/17 柴谷篤弘「日本人と生物学」(工作舎) 2013/01/16 柴谷篤弘「今西進化論…

柴谷篤弘「生物学の革命」(みすず書房)

雑誌「自然」や「科学」に連載された記事を元にして1960年晩冬に出版された。この本の衝撃の一端は荒俣宏「目玉と脳の大冒険」に記載されている。なにしろ、生物学の目的について大転換を図ろうという目論見があって、その転換の大きさというのは当時の学者に…

柴谷篤弘「反科学論」(みすず書房)

「生物学の革命」の10年後の「みすず」連載をまとめたもの。ベトナム戦争と大学闘争、公害と環境破壊と資源枯渇が背景になっていて、前著よりもさらにラディカルな問いかけになっている。 I. 序章 ・・・ この本の問題意識は2つ。ひとつは、大学闘争による「…

柴谷篤弘「あなたにとって科学とは何か」(みすず書房)

前著「反科学論」から3年後の1977年刊。前著の想定読者および問いかけ先は職業科学者であったが、こちらでは一般市民(というか非専門家)に対して科学を説明することを目的にしている。もちろん単純な啓蒙ではなくて、科学批判への実践的な参加の呼びかけを…

柴谷篤弘「日本人と生物学」(工作舎)

1980年の語りおろし。前著「あなたにとって科学とは何か」に対する批判があって、分子生物学からなぜ発生生物学に変えたのか、科学批判はどのようにあるのか、などを話すためのもの。 彼は1947年から核酸の研究を始めていて、西欧の分子生物学の興隆を実感で…

柴谷篤弘「今西進化論批判試論」(朝日出版社) ネオダーウィーニズムの優れた解説書。ラマルキズムや今西進化論はマルキシズム(と全体主義)と相性がよい

著者は今西進化論批判の本をいくつか書いているが、これがもっとも古くて、最も網羅的。取り上げているのは今西進化論だが、実のところはネオダーウィニズムの優れた紹介になっている。これを準備するにあたり「種の起源」の前の草稿をファクシミリ版で読み…

柴谷篤弘/藤岡喜愛「分子から精神へ」(朝日出版社) 今西錦司の薫陶を受けた生物学者と心理学者の対談。基礎知識もあいまいな「専門家」の妄言。

自分は心理学のよい勉強家ではない。新書を10冊くらいと岸田秀や秋山さと子らの通俗解説書とフロイトの「精神分析入門」とラカンの一冊くらいなものだ。なので、藤岡喜愛がロールシャッハテストの話をしてもさっぱりわからない。あと柴谷によると、今西錦司が…

柴谷篤弘「私にとって科学とは何か」(朝日新聞社)

1982年刊行。この本の前には「反科学論」1972、「あなたにとって科学とは何か」1977、「日本人と生物学」1980、「今西進化論批判序説」1980がある。そこに書いたことが前提になっている事に注意。単独で読むことは可能だが、これらに目を通しておくほうがわ…

柴谷篤弘「バイオテクノロジー批判」(社会評論社)

1980年から83年にかけて雑誌に書いた文章やインタビュー、講演を収録している。科学批判の主題は別の本(「私にとって科学とは何か」朝日新聞社)の感想で触れたのでここでは書かない。 代わりに「バイオテクノロジー批判」について。とはいえ、当時の状況を…

柴谷篤弘「私にとって科学批判とは何か」(サイエンスハウス)

「私にとって科学とは何か」で発生生物学にターゲットを変えた著者。この本では科学批判、自己変革、社会変革をどのように実践するかを考える。あわせて、実践例を提示し、批判を仰ごうという意図の本。 第1部 批判の論理 私にとって「科学批判」とは何か …

柴谷篤弘「構造主義生物学原論」(朝日出版社)

初出は1985年。いみじくも「週刊本」シリーズの最終巻で、唯一のハードカバーである。 それはさておき、初出年にあるように「構造主義生物学」を名付けた邦書の最初である(と思う)。この時代には池田清彦は自説を発表していないので、柴谷との邂逅は後の話…

今西錦司/柴谷篤弘「進化論も進化する」(リブロポート) 自然選択と適応が嫌いな今西進化論は五族協和八紘一宇の日本型共同体主義のいいかえ

この本は、1983年夏に、今西錦司と柴谷篤弘が「今西進化論」について談論した記録。米本昌平の発案をリブロポートという出版社が企画して実現した。その背景になったのは、柴谷篤弘が「今西進化論批判試論」という本を出版していたから。もう少し背景を説明す…

柴谷篤弘「構造主義生物学」(東京大学出版会) 要素還元主義ではない次世代生物学研究のパラダイムを提案。成果が出ていないので盛り上がらない。

2011年3月25日に柴谷篤弘死去(享年90歳)、2011年3月31日にいいだもも死去(享年85歳)。学生のときに二人の講演を企画したことがあり、中華料理屋の打ち上げで話を聞いたことがある。今日は予定を変更して追悼企画。 生物学を勉強するつもりで大学にはいっ…