2024-03-01から1ヶ月間の記事一覧
ナショナリズムと言語についての解説書。35年前に読んだときはさっぱりだったが、ナショナリズムと差別のことを勉強するようになると本書はがぜんとして精彩を放つ。40年前(1981年刊)の本だが、今でも新しい。とはいえ、多くは常識になった(ということは…
外国語を習得するにあたり、日本人は様々な困難に直面する。大きな理由は、その言語が置かれているコンテクストを理解しないところにある。すなわち、ことばが社会や文化の中にあり、個々の項目はほかの項目との間で相対的に価値が決まることを無視するため…
著者はアメリカ研究者。購入後に気づいたが、以下の本の編著者だった。 odd-hatch.hatenablog.jp odd-hatch.hatenablog.jp その彼が8年の共和党政権(子ブッシュ)のあと民主党政権(オバマ)になってからのアメリカをみる。2010年初出。 第1章 アメリカン・…
最後の章で、日本人はインドネシアの見方を変えろと主張する。そのとおりであって、インドネシアを観光国、資源供給国とみるのは1930年代の南進論以来の思考。そこにあるアジア人差別は1940年代の占領にあり、抗日の激しい反発を招いた。戦後はODA供与先とし…
2024/03/21 高橋和巳「捨子物語」(新潮文庫) 自意識過剰な子供が何もしない言い訳と他人の悪口を延々と描き続ける。 1968年2024/03/19 高橋和巳「悲の器」(新潮文庫) 法科系エリートは労働はできても、生活ができない無能なミソジニー男性。 1962年2024/…
高橋和巳は1931年生まれ-1971年没。享年39歳。60年代から70年代半ばころまでの政治の季節にはよく読まれた。俺も一時期集中的に読んだことがある。でもしばらく忘れていたので、読み直すことにした。前に読んだときは年上の作家だったが、今回の再読では…
正木典膳という中高年の法学者がいる。彼の法理論は世界的な名声を得ていて、都内の国立大学で法学部長を務めている。学内や学界だけでなく、折からの警職法改正問題で国会から参考人として招致されたりもしている。そのような栄達をした人物が突然スキャン…
高橋和巳は長編を主に書いていて、短編は極めて少ない。たぶんこの一冊だけ。解説には発表場所と年が書いていない。いつどういう状況書かれたものかはとても重要な情報なのに、そこに触れない解説や評論は無用。おそらく「悲の器」の前に書かれた習作だろう…
28から30歳くらいの元教師・西村がいる。彼は結婚し子供もいるが、この5年間熱中していたのは、父母らが入居していた長屋の住人36人の伝記を書くこと。出生も仕事も年齢も共通していない36人であるが、共通しているのは1945年8月6日8時15分に広島で死亡した…
2024/03/15 高橋和巳「憂鬱なる党派 上」(新潮文庫) 六全協で挫折した活動家たち。大島渚「日本の夜と霧」と同じ主題。 1965年の続き 20世紀にはこの小説は社会運動や革命運動のやりかたについての議論をどう評価するかで読んできただろう。革命家になる…
なんとも辛気臭い話がだらだらと続くなあと読んでいたが、下巻に入って疑問氷解。これはドストエフスキーの「罪と罰」を日本で再演しようとした小説なのだ。松本健一「ドストエフスキーと日本人」に高橋和巳の名がなかったので、注意していなかった。松本の…
個人的な思い出から。最初に小遣いで買った文庫本は「路傍の石」と「二十四の瞳」だったが、大人びた文庫として本書を買ったのは12歳の中学一年生のとき。学校に持ちこんで読んでいた。あいにく級友で関心を示すものはなく、孤独な読書だった(担任の女性教…
大学教員をしながら大長編を書き、そこに大量の随筆・随想を書いていたから、高橋和巳は忙しすぎたのだよなあ。資料を読むこむ時間も、題材を深く考える時間もなくて、どのレポートも不十分なのだ。たとえば、「人間にとって」には「現代思想と文学」「戦後…
明治の半ばに、神懸かりになった中年女性が救霊の啓示を受け、人救いの道に入る。彼女の人柄に惹かれた人々が入信し、ある被差別部落が部落を上げたりして参加した。そしてやりての中年男性が教組に拾われ、幅広い信仰運動を始める。最初は(たぶん)奈良県…
2024/03/07 高橋和巳「邪宗門 上」(新潮文庫)第1部-1 皇国イデオロギーに抵触する新興宗教集団は「憂鬱なる党派」であり破滅することが定められている。 1966年の続き 前の要約は、教団の第1から第2世代の大人たちの物語。組織にがんじがらめになって、…
2024/03/07 高橋和巳「邪宗門 上」(新潮文庫)第1部-1 皇国イデオロギーに抵触する新興宗教集団は「憂鬱なる党派」であり破滅することが定められている。 1966年2024/03/05 高橋和巳「邪宗門 上」(新潮文庫)第1部-2 人に言えない秘密を持つ少年は常に苦労…
2024/03/04 高橋和巳「邪宗門 上」(新潮文庫)第2部 挙国一致の翼賛体制で大衆・庶民は政治参加する楽しみを得る。窮乏による不満と不安はマイノリティにぶつけられる。 1966年2024/03/04 高橋和巳「邪宗門 上」(新潮文庫)第2部 挙国一致の翼賛体制で大衆…