odd_hatchの読書ノート

エントリーは2200を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。

自然科学

池内了「疑似科学入門」(岩波新書)

著者は疑似科学を3種に分類する1種: 占い(血液型性格占い、占星術など)、超能力・超科学、擬似宗教。<参考エントリー> 渡邊芳之 「「モード」性格論」(紀伊国屋書店)-2 なぜ心理学者は血液型性格診断を信じないか。 2種: 科学を装いながら科学でない…

J・リチャード・ゴット「時間旅行者のための基礎知識」(草思社)

時間旅行(タイムトラベル)というテーマはフィクションから始まる。とりあえず元祖をウェルズ「タイム・マシン」に求めるとして、SF内の一つのジャンルになるくらいに作家と読者を魅了した。タイムトラベルにはパラドックスがあり、過去や未来に介入するこ…

ポール・ホフマン「放浪の天才数学者エルデシュ」(草思社文庫)-2

この本の記述は面白くて、エルデシュの生涯をそのままなぞらない。筆は現在と過去を自由に行き来し、エルデシュの少年時代のつぎには高年時代が記述される。生涯のエピソードがシャッフルされているわけで、しかしエルデシュの人格(前エントリ―にも書いたよ…

ポール・ホフマン「放浪の天才数学者エルデシュ」(草思社文庫)-1

数論のおもしろさは、数(かず)と日常で使い慣れた(と思い込んでいる)ツールから、思いがけずに深淵な世界をかいまみさせること。でも、その世界の奥深さと幽玄さは自分のような凡庸な頭には全く理解ができない。いまよりももっと計算になれていて、しか…

F.ハプグッド「マサチューセッツ工科大学」(新潮文庫)

テーマはふたつ。 まずエンジニアリングについて。この国の「技術」とは一致しないし、「科学」でもない。エンジニアリングは科学とは補完関係にあって、互いに相手を包含しているという、やっかいな概念。本書では、数回説明があるが、腑に落ちるのはエンジ…

マイケル・ファラディ「ロウソクの科学」(岩波文庫)

高校時代に読んだのだが、どこかにいってしまったのを、ネットで公開されている翻訳で読み直す。 Chemical History of A Candle: Japanese 岩波文庫版には、実験器具や実験風景の挿絵があったと記憶するのだが、ここには載っていない。また、もともとは1847-…

福岡伸一「生物と無生物のあいだ」(講談社現代新書)

2007年のベストセラー。生物学の最先端(当時)の研究成果も書かれた本がたくさん売れるというのは珍しい。自分はあまのじゃくなので、売れていた時には読まず、ほぼ10年たって影響力が消失してから読む。 さて、自分は1980年前後に大学で生理学や生化学の講…

マーカス・デュ・ソートイ「素数の音楽」(新潮文庫)

素数は、自然数のうち正の約数が 1 と自分自身のみであるなので、理解は簡単。でも、どの数が素数なのか、どの程度の頻度で出現するのかを明らかにしようとすると途方に暮れる。たとえばこういう1000万(!)までの素数表をみるのは楽しい。素人目には、素数…

アルバート・アインシュタイン「物理学はいかに創られたか 上下」(岩波新書)

1939年翻訳初版。wikiによると初版は1950年刊行になっているが、どうしてだろう。なので原著がいつ書かれたのかわからない。本文の記述からすると1925年から1939年の間に執筆されたと思う。新書は1963年に改訳されているので、その間に改訂されたのだろう。 …

G.L.シャックル「楽しい数学」(現代教養文庫)

イギリスの統計学者がかいた若い人向けの数学入門書。 小川洋子「博士の愛した数式」を読んで数の世界がおもしろいと思ったら、この本にトライしてみてはいかが。下記のように高校までの数学の復習になる。 扱う題材は、数(整数、分数、無理数、虚数など)…

吉田光邦「日本科学史」(講談社学術文庫)

厳密に言えば、「科学」の方法と思想はヨーロッパ由来のものなので、日本の科学史は幕末から明治にかけて洋書を購入したりお雇い教師を招いたりしたところから始まる。そうすると日本の「科学」はたかだか200年にも満たないような歴史しか持っていない。われ…

グレゴール・メンデル「雑種植物の研究」(岩波文庫)

グレゴール・メンデルは1822年生まれで1884年没。モラヴィア地方にいた。教職志望であったが検定試験に2度失敗し、僧職につく。29歳のとき、僧院の推薦でウィーン大学に留学し、主に物理学を研究。帰国後、僧院の教職につき、博物学・物理学全般を指導。あわ…

柴谷篤弘「今西進化論批判試論」(朝日出版社)

著者は今西進化論批判の本をいくつか書いているが、これがもっとも古くて、最も網羅的。取り上げているのは今西進化論だが、実のところはネオダーウィニズムの優れた紹介になっている。これを準備するにあたり「種の起源」の前の草稿をファクシミリ版で読み…

柴谷篤弘/藤岡喜愛「分子から精神へ」(朝日出版社)

自分は心理学のよい勉強家ではない。新書を10冊くらいと岸田秀や秋山さと子らの通俗解説書とフロイトの「精神分析入門」とラカンの一冊くらいなものだ。なので、藤岡喜愛がロールシャッハテストの話をしてもさっぱりわからない。あと柴谷によると、今西錦司が…

柴谷篤弘「構造主義生物学原論」(朝日出版社)

初出は1985年。いみじくも「週刊本」シリーズの最終巻で、唯一のハードカバーである。 それはさておき、初出年にあるように「構造主義生物学」を名付けた邦書の最初である(と思う)。この時代には池田清彦は自説を発表していないので、柴谷との邂逅は後の話…

梅棹忠夫「生態学入門」(講談社学術文庫)

1951年に「思想の科学」研究会が新しい知識の百科事典を作ろうとしたのがきっかけ。当時の最新の学問である生態学の項目をつくるために、鶴見俊輔が梅棹忠夫に相談したのが始まり。梅棹忠夫が所属していた京都大学の研究者を中心に生態学の項目が記述された…

岡田節人「細胞に刻まれた未来社会」(朝日出版社)

岡田節人は京大で細胞学を研究していた。当時の細胞学者としては最も名の知れた人だった。この人は筆の立つ人で、ブルーバックスに岩波新書に各種の啓蒙書を書いていたからかもしれない。いくつか読んだことがある。1985年に退官した。その直後に、イン…

荒俣宏/金子務「アインシュタインの天使」(哲学書房)

科学思想史研究者と稀代の好奇心の持ち主が、「落下」をテーマに語りつくそうという壮大なテーマに挑み、見事に成功。この長い対談を読むことによって、西洋の思想史および力学史を通覧できるというのだから、なんてお得なんでしょう。 章立ては以下のとおり…

ニュー・サイエンティスト編集部編「つかぬことをうかがいますが・・・」(ハヤカワ文庫)

くしゃみをすると目をつぶっちゃうのはなぜ? 瞬間接着剤はどうしてチューブの内側にくっついてしまわないの?……お固い科学書ではまずとりあげないけれど、だれもが知りたい日常の“疑問”を科学的に解明するエヴリデイ・サイエンスQ&A集。イラスト:水玉螢…

エドゥアール・ロネ「変な学術研究2」(ハヤカワ文庫)

悪ふざけで釣りたてピチピチの魚を飲み込んだらなんと窒息死!ちょっとしたお楽しみのためにガムテープで口をふさいだらそのままご昇天…誰もが平穏な死を迎えるとは限らない殺伐とした現代で、不可思議な死の真相を暴いてくれる法医学者たちの冷静な仕事ぶり…

マーティン・ガードナー「奇妙な論理」(現代教養文庫)

ニセ科学や超常現象、ニセ医学などのデバンキングの古典。アメリカの初版は1952年というのに、でてくるトンデモ科学は現在でも健在で、しかも主張がまったく進歩していない。まったくあいつらには進歩とか前進とかいうのはないのか(えーと、引用は正しかっ…

日高敏隆「動物にとって社会とはなにか」(講談社学術文庫)

これは名著。著者40代に書かれていて、文章は清冽かつ意気に溢れ、慎重でありながら、ときには学問の領域を逸脱し的確なところで矛を収めている。見事。 内容の検討の前に、気をつけなければならないことをいくつか。主題は動物の社会であって、「社会」と…

柳川弘志「生命の起源を探る」(岩波新書)

とても久しぶりに、生物学関連の本を購入。主題は、生命の誕生に関する最新知見の紹介。 1980年代初頭では、生命の誕生はミラーの実験(1950年代)までしか紹介されていない。その前の10年間、生物学者は遺伝子組換実験の可能性を検討し弱点を克服することに…

立花隆/利根川進「精神と物質」(文春文庫)

サブタイトルは「分子生物学はどこまで生命の謎を解けるか」。これはいささか風呂敷を広げすぎている。利根川進にはそこまでの意図はない。免疫系の複雑さが脳神経系の複雑さに似ているのではないか、という直観を語ったのみ。立花隆の勇み足。 今でこそこの…

平澤輿「生命の探求者」(新学社文庫)

昭和17年に「子供の科学」に連載されたエッセー集。自分の知っている「子供の科学」は誠文堂新光社から出版されていたが、当時はどうだったのか。 タイトルから連想されるのは、生物学の発展の話であって、たしかにレーヴェンフックが顕微鏡の発明と細胞の発…

三田誠広「天才科学者たちの奇跡」(PHP文庫)

隠された原理を見出したい」「もっと深く真理を探究したい」……。科学者たちのそうした願いが、ときに信じられないような奇跡を呼び起こした。「何かがおかしい」という直感を得て、何時間も揺れるシャンデリアを見続けたガリレオ。リンゴは落下するのに、な…

M.ミッチェル ワールドロップ「複雑系」(新潮文庫)

1985年に「VHSコミュニケーション」という深夜番組があった。最初の放送が、浅田彰がプロデュースした「ビデオ進化論」。その第1部が、アートとサイエンスの中間領域に関する話題だった。そこで初めて、「セルオートマトン」「ライフゲーム」「メンガースポ…

サイモン・シン「フェルマーの最終定理」(新潮文庫)

フェルマーが当時の数学の教科書の余白に書いたメモ(それが知られるようになったのは、息子が書き込み付の本を出版したこと、および1908年にとある財団が証明に懸賞をだしたこと)で、350年間数学者が頭を悩ました問題の最終解決を独力で行った物語。証明の…

中谷宇吉郎「雪」(岩波文庫)

高校1年に入学したてのとき、学校図書館に通って昼食時に読む本を借りていた。ひとつは谷崎精二訳の「ポー小説全集」(たしか6巻。全巻制覇)。もうひとつが中谷宇吉郎の随筆集。後者はたしか3巻だったが、途中で挫折したと思う。それにしてもなぜこの随…

サイモン・シン「宇宙創成」(新潮文庫)

宇宙はいつ、どのように始まったのか?人類永遠の謎とも言えるその問いには現在、ある解答が与えられている。ビッグバン・モデル。もはや「旧聞」の感さえあるこの概念には、実は古代から20世紀末の大発見へと到る意外なエピソードと人間ドラマが満ちていた―…