自然科学
この30年間の生命科学の発展がよくわかる本。1980年代にヒトのゲノム解析をするのが国家プロジェクトになったのだが、数十年がかりで多数の研究者を必要とすると思われていた。それがシーケンサーの発明によって塩基配列決定が短時間でできるようになった。…
DNAの構造解析が生物学のホットトピックだった1940~1950年代前半にかけての記録。著者はDNAの構造模型を提唱して、1962年にノーベル賞を受賞した。この研究に従事していたのは22~25歳にかけてのこと。なんとも早熟で、鼻っ柱が強く、傍若無人で怖いもの知…
科学の専門教育に挫折した時、学生の残り時間で科学論を独習した。村上陽一郎や柴谷篤弘、トーマス・クーンなどの読書感想エントリーがあるのはそのなごり。しばらく離れていたので、数十年ぶりに科学論を読む。なお、科学論と科学哲学は重なるところが多い…
2025/10/15 佐々木力「科学論入門」(岩波新書)-1 古典科学、17世紀の科学革命、フランス革命以後の科学でみる科学の特性と発展 1996年の続き 続いて後半。テクノロジーが主題になる。 第3章 技術とはなにか、それは科学とどう関係するか? ・・・ 日本で…
2023年夏に第8波か第9波の流行があり、その次の波はとても小さくなった。すでにコロナウィルス感染で重症化する人は少なくなり、死亡者もほぼいなくなった。そしてなし崩し的に緊急事態宣言が解除され、三密やソーシャル・ディスタンスなども言われなくなり…
2023年(感想を書いた年)は世界的に暑い夏。国連事務総長は「地球温暖化の時代は終わり、地球沸騰の時代(the era of global boiling)が来た」と発言した。https://www.asahi.com/sdgs/article/14969821 地球がおかしなことになっている。それは新聞やテレ…
人間はこの世界(宇宙)はどのようにできているかをどうにかして説明しようとしてきた。あいまいなままであるより、起源が明らかであり規則や秩序がわかるほうが安心できるからだ。古代の宇宙論や中世の占星術の試みの後、近世になって科学もそれにこたえよ…
モルテン・ティルドゥム監督の「イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密」2014年をみたので、エニグマ解読のことを知りたくて本書を入手した。 映画はアラン・チューリングを主人公にして、彼の功績で解読に成功したように見せているが、実際は…
色彩学は、物理学、化学、生物学、心理学、哲学などからのアプローチが可能でそれぞれの知見を積み重ねる学際(1980年代に文部省が広めようとした言葉)の学問なのだそうだ。著者は実験心理学の研究者なのだが、この啓蒙書ではもっぱら自然科学の研究史が振…
以前、ゲーテ「色彩論」を読んだときに、本書が参考書として見つかった。 odd-hatch.hatenablog.jp 入手できたので読んでみる。 主要な関心はゲーテの論をどのように評価しているかというところ。ゲーテによるニュートン批判は物理学としては意味がない(や…
感染症は感染源が人から人へと移り重篤な症状を起こすもの。とくに感染性が強く、症状が重いものは伝染病と呼ぶ。感染源はウィルス、病原菌、微生物、寄生虫など。人類はずっと感染症や伝染病の対策をしてきた。人間は生物学的にはあまり変わらないが、行動…
1990年代に完了したヒトゲノム解析、ES細胞などによって、人体の交配や臓器提供などが実現できる見通しができた。しかしこれは人間の人体観・死生観に大きな影響を及ぼす。一方で、企業は商用化に向けて研究を加速し、南北や国内の経済格差はマイノリティや…
2021/10/29 米本昌平「バイオポリティクス」(中公新書)-1 2006年の続き 後半はより政治に近い問題になる。人体のパーツが商品化されて(輸血や角膜移植などで古くから使われていた)、グローバルな経済圏を作っていることと経済格差を原因とする人体棄損が…
生物人類学、進化生物学、行動進化学など1990年以降に生まれた科学の新分野の紹介。かつてはおおざっぱに動物行動学とでもされていた研究を細分化すると同時に、「動物行動学」が内包していた差別や蔑視などをのぞこうとする(どこかで読んだが、「動物行動…
以前ピグミーチンパンジーと呼ばれていた類人猿は今ボノボと呼ばれる。体格はチンパンジーに似ているが、詳細にみると違いがあるし、行動がとても異なる。この類人猿がほとんど知られていないのは、生息域はコンゴ(旧ザイール)の一部に限られ、秘境にある…
ダーウィン「種の起源」1858年を読むのは35年ぶり、二回目。前回は長い長い記述にへこたれて、文字を目でトレースしただけだった。ダーウィンの考えはほとんど読み取れなかった。でも、進化論や科学史に興味があったので、そのあと今日までに、多数の進化論…
2020/05/29 チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-1 1858年 リンネ、キュヴィエ、ビュフォン、ラマルクらの18世紀の博物学者やナチュラリストと、彼らより50年後のダーウィンの違いは、生物の知識が圧倒的に増大、地質学その他の他…
2020/05/29 チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-1 1858年2020/05/28 チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-2 1858年 上巻はダーウィンの考えの理論編。下巻(と上巻の一部)は自然淘汰説に対する難題への…
2020/05/29 チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-1 1858年2020/05/28 チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-2 1858年2020/05/26 チャールズ・ダーウィン「種の起源 下」(光文社古典新訳文庫)-1 1858年 …
エルヴィン・シュレーディンガーの生涯と業績はリンク先を参照。20世紀前半の物理学者で、量子力学成立の立役者。 ja.wikipedia.org もとは1944年の講演。この国では1951年に岩波新書ででて、2008年に岩波文庫に入った。すなわち、岩波新書では最新の科学啓…
科学に信頼を置いているのは、科学の方法が日常生活で知識を得て正当化する方法を洗練させたものだから。でも、詳しく見ると「日常生活で知識を得て正当化する方法」がつねにいつでも正当化できるかというとあやしい。というわけで、そのあやしい理由を探る…
著者は疑似科学を3種に分類する1種: 占い(血液型性格占い、占星術など)、超能力・超科学、擬似宗教。<参考エントリー>渡邊芳之 「「モード」性格論」(紀伊国屋書店)-2 なぜ心理学者は血液型性格診断を信じないか。 2種: 科学を装いながら科学でない…
時間旅行(タイムトラベル)というテーマはフィクションから始まる。とりあえず元祖をウェルズ「タイム・マシン」に求めるとして、SF内の一つのジャンルになるくらいに作家と読者を魅了した。タイムトラベルにはパラドックスがあり、過去や未来に介入するこ…
2018/06/05 ポール・ホフマン「放浪の天才数学者エルデシュ」(草思社文庫)-1 1998年 この本の記述は面白くて、エルデシュの生涯をそのままなぞらない。筆は現在と過去を自由に行き来し、エルデシュの少年時代のつぎには高年時代が記述される。生涯のエピソ…
数論のおもしろさは、数(かず)という日常で使い慣れた(と思い込んでいる)ツールから、思いがけずに深淵な世界をかいまみさせること。でも、その世界の奥深さと幽玄さは自分のような凡庸な頭には全く理解ができない。いまよりももっと計算になれていて、…
テーマはふたつ。 まずエンジニアリングについて。この国の「技術」とは一致しないし、「科学」でもない。エンジニアリングは科学とは補完関係にあって、互いに相手を包含しているという、やっかいな概念。本書では、数回説明があるが、腑に落ちるのはエンジ…
高校時代に読んだのだが、どこかにいってしまったのを、ネットで公開されている翻訳で読み直す。 Chemical History of A Candle: Japanese 岩波文庫版には、実験器具や実験風景の挿絵があったと記憶するのだが、ここには載っていない。また、もともとは1847-…
2007年のベストセラー。生物学の最先端(当時)の研究成果も書かれた本がたくさん売れるというのは珍しい。自分はあまのじゃくなので、売れていた時には読まず、ほぼ10年たって影響力が消失してから読む。 さて、自分は1980年前後に大学で生理学や生化学の講…
素数は、自然数のうち正の約数が 1 と自分自身のみであるなので、理解は簡単。でも、どの数が素数なのか、どの程度の頻度で出現するのかを明らかにしようとすると途方に暮れる。たとえばこういう1000万(!)までの素数表をみるのは楽しい。素人目には、素数…
1939年翻訳初版。wikiによると初版は1950年刊行になっているが、どうしてだろう。なので原著がいつ書かれたのかわからない。本文の記述からすると1925年から1939年の間に執筆されたと思う。新書は1963年に改訳されているので、その間に改訂されたのだろう。 …