2022-07-01から1ヶ月間の記事一覧
イタリア(という国も概念もなかった時代だとおもう)の大詩人ダンテが若き日に書いた。 1293年前後、詩人が28歳のころ、それまで書きためた詩31編を骨子にし、これらを分析解説する散文を加えて全42(もしくは43)章にまとめあげた詩文集。詩の内訳はソネッ…
13-14世紀の詩人で政治家のダンテが書いた畢生の大作。成立の背景その他はwikiを参照。 ja.wikipedia.org すでに森鴎外の紹介以来数種の翻訳がでている。岩波文庫や集英社文庫などで入手可能。でも、厳格な規律に従って書かれた700年前(1300-1320年にかけて…
2022/07/28 ダンテ/野上泰一「神曲物語」(現代教養文庫)-1「地獄篇」 1300年の続き ダンテ「神曲」の韻文訳は数種類でていて、古いものはネットで見つけることができる。そういうのをいくつか目を通してみたが、厳密な逐語訳では筋を負うことが難しい。ま…
2022/07/28 ダンテ/野上泰一「神曲物語」(現代教養文庫)-1「地獄篇」 1300年2022/07/26 ダンテ/野上泰一「神曲物語」(現代教養文庫)-2「浄罪篇」 1300年の続き ヴィルジリオの案内で行く地獄と煉獄では、多くの障害があり、あるいはダンテの知り合いと問…
イタロ・カルヴィーノの最初の長編小説。カルヴィーノはパルチザンに加わっていたし、WW2戦後にはイタリアで「レジスタンス小説」が多数出版されたそうだ。その時流に乗っていながら、ズレたところのある小説。 おそらく1944年夏の北イタリア(具体的な年月…
解説を読んでも発刊の経緯はよくわからない。1958年初出の似たようなテーマを集めた短編集。 ある兵士の冒険 ・・・ 汽車に乗っている兵士が豊満な若い女性に愛撫を試みる。言葉のないコミュニケーションを言っているのかもしれないが、行為は痴漢そのものな…
Qfwfq老人(別の訳者ではクフウフクと表記)のホラ話。科学の記述を聞くと、わしはそこにいたと叫んで、思い出話に花を咲かせる。1965年初出。 月の距離 ・・・ 月の軌道がいまより地球に近かったころ。老人のいた岩礁から月にいくことができた(途中の無重…
2022/07/19 イタロ・カルヴィーノ「レ・コスミコミケ」(ハヤカワ文庫)-1 1966年の続き Qfwfq老人のホラ話。後半。 いくら賭ける? ・・・ 宇宙ができるまえ、何が起こるかを老人は学部長と賭けをする。どんどんエスカレートして地球の歴史のささいなことま…
「レ・コスミコスケ」1966年に続く1967年の短編集。第1部はQfwfq老人のホラ話。訳者が変わったので、老人のイメージから中堅サラリーマンのようになった(一人称が「わし」から「私」に変更)。でも、底を流れるのは過去が回復しないことへの諦念。同類や仲…
2022/07/14 イタロ・カルヴィーノ「柔らかい月」(ハヤカワ文庫)-1 1967年の続き 以後はQfwfq氏の名は出てこない。でも「ティ・ゼロ」で「私Q0(0は小文字)」と表記されるので、Qfwfq氏が語り手だと推測可能。 第三部 ティ・ゼロティ・ゼロ ・・・ 突如…
パロマー氏という中産階級のインテリを語り手にした短編集。短編というにはオチもないし視点はズレるしで奇妙な味をもっている。3部3章3節で合計27のフラグメントからなる。 中年男性、職業不詳、家族は妻と娘一人、パリとローマにアパートを所有―これがパロ…
本書の紹介を出版社のページから引用(2002年刊行)。 軍事大国から,敗戦を経て経済大国へ.そしてその破綻による閉塞感.このような歴史を背負いつつ,百年余にわたる日本の近代は思想において,どのような経験を重ねてきたのだろうか.戦争と平和・民主主…
長年、日本を調査しているオランダ人ジャーナリストによる日本批判。1994年に出版され、ベストセラーになったという。 以下を読むときのポイント。彼の観察によると、日本は「管理者たち」という流動性のある階層にいる少数者が権力を独占している。だれか個…
日本の21世紀の政治は右傾化しているか。答えは、Yes。それもかつてないほどに。自由民主主義を標榜する国家の中では突出して。欧米のネオナチや極右が日本をうらやむほどに。 どのような特徴があるか。1.政治主導(首相官邸に権限集中)2.国家主義(戦…
第81代総理大臣になった村山富市の一代記。 1924年に大分の漁村に生まれる。小学校卒業と同時に東京に奉公。勉強して大学に進学(当時は入学資格にうるさくなかったとみえる)。無料の下宿が社会運動家で薫陶をうける。1944年に招集され、熊本で訓練中に敗戦…
日本の軍事史を専門にする研究者による啓蒙書。1983年初出。戦後、靖国神社を政治家が参拝することはあっても閣僚が参拝することはなかった。それが1975年に三木武夫が現職首相として初めて参拝した。それに対する批判が高まった時期のこと。靖国神社は右翼…
大江志乃夫「靖国神社」(岩波新書)1983年で靖国神社の戦前戦中の歴史を学んだので、戦後と現代の問題を本書で把握することにする。 極右や右派の宗教カルトは、古代からの神道と明治政府による国家神道をあえてごっちゃにして、靖国を正当化する。その違い…