odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

モーリス・ルブラン「赤い数珠」(創元推理文庫)

パリ近郊の城館で開かれた野遊会の日、突然発生した殺人事件と盗難事件。乗り出したのは、リュパンのよき理解者であるルースランの予審判事。彼は安楽椅子に腰をかけたままご馳走をたらふく詰めこみ、微笑しながら、みごとに難事件を解決する。著者最晩年の…

自炊PDFをAmazonKINDLEで読んでみた (6)KINDLEに取り込む、そして読む

KINDLEをPCに接続する。 KINDLEはこんな画面がでてくる。中身を読みたいならUSBを切断しろ、だってさ。 一方、PCのモニターではつぎのようなフォルダーが開く。 PDFファイルは「documents」フォルダにコピーする。 まあ、こんな具合だ。コピー完了はExplorer…

自炊PDFをAmazonKINDLEで読んでみた (5)PDFをKINDLE用に加工

これから行うことは 1.カバーのPDFファイルを開き、JPEGでページごとに分割する 2.本文PDFにカバーJPEGを挿入する(ここで一時保管)。 3.PDFをトリミングして、KINDLE用のPDFを作成する。 をadobeAcrobatで実行する。 AdobeAcrobatの使い方はほぼ直感…

自炊PDFをAmazonKINDLEで読んでみた (4)スキャニング

ScanSnapのセットアップとアプリのインストールは省略。それくらいは自力で解決してね。 ScanSnapOrganizerを立ち上げると、次のような画面になる。すでにスキャン済の書籍があるのはご愛嬌。 左上のアプリケーションボタンをクリックして、設定を確認。この…

自炊PDFをAmazonKINDLEで読んでみた (3)書籍を裁断する

ここでは、ロバート・マキャモン「マイン」上巻をKINDKLEに取り込むまでを追いかけてみよう。 「マイン」は、マキャモンの10冊目の長編で初めて超常現象を扱わなくなった(略)・・・佳作である。品切れだし、新作の紹介も途絶えていて、あまり話題になってい…

自炊PDFをAmazonKINDLEで読んでみた (2)まず触ってみる (追記あり 2011/2/6)

文庫とKINDLEを比較してみる。 アルファベットのキーがあるぶん、縦長。横幅は文庫本とほぼ同じサイズ。 ただし、電子ペーパーの画像サイズは文庫本よりひとまわりからふたまわり小さい。 なので、書籍をスキャンしたままのPDFでは余白が生まれてしまい、文…

自炊PDFをAmazonKINDLEで読んでみた (1)必要なもの (追記あり 2011/2/17)

AmzonKINDLEを購入した。ScanSnapでPDF化した書籍を読めるようにした。 そこまでの作業をまとめておこう。 購入の意思決定に至ったのは、 1.一時期、4000冊の本・雑誌を持っていて、部屋の収納を圧迫していたこと。 2.死んだあとにだれかが廃棄するのだ…

モーリス・ルブラン「ジェリコ公爵」(創元推理文庫) 記憶をなくした男のアイデンティティ捜索+「モンテ・クリスト伯」の傑作冒険小説

海賊ジェリコと、剛勇侠気のエレン・ロックの誇り高い美女と、謎のメダルをめぐっての死闘を中心に、ルブランならではの活劇、悲劇、喜劇が、地中海、パリ、ブルターニュの海と街と田園を背景に展開する。それにしても、海賊王が公爵とは? 失われた記憶をた…

モーリス・ルブラン「謎の家」(創元推理文庫) デビューから30年たった中年紳士リュパンの求愛に18歳の娘は躊躇する。

素晴らしい宝石をつけた女優が誘拐され、宝石を奪われた事件に端を発して、お針子がまた誘拐された。しかも、連れ去った者も、連れ去られた場所も同じ。この怪事件を結びつけるものは何もない。だが、デンヌリことリュパンが首を突っ込んだことから、意外な…

モーリス・ルブラン「緑の目の令嬢」(創元推理文庫) 中年紳士リュパンが発行の謎めいた少女に恋する。「カリ城」ラストシーンの先取り。

サファイヤのように澄んだ瞳をもつ令嬢、街角で心ひかれた女性のために、たちまち怪事件に巻き込まれたラウール。彼は相つぐ事件の謎と、緑の目の女性の陰に隠された恐ろしい秘密をかぎつけた。ラウールことリュパンは、敢然とその渦中にとび込んで謎を究明…

モーリス・ルブラン「バール・イ・ヴァ荘」(創元推理文庫)

ラウール・ダヴナック子爵が深夜自宅に帰ると、一人の美しい女性が待っていた。そこに、ラウールをリュパンと知る青年刑事ベシゥーから電話がかかる。難事件解決のための援助を懇請してきたのだ。不可解な事件、美しい女性、そして〈バール・イ・ヴァ荘〉の…

横溝正史「仮面劇場」(角川文庫) 結核療養以後の本格よりの戦前探偵小説。美少年に人形、レコード歌手といった横溝の好きなギミックがたくさんある興味深い作品。

すべての長編を読み込んでいるわけではないし、全部読もうとする気力はないのだが、いろいろ読み継いで見ると、戦前の作品のほうが横溝らしさが横溢しているのではないかとおもうようになってきた。どこらへんに横溝らしさをみるかというと、(1)モダンな…

横溝正史「悪魔の家」(角川文庫) 昭和13-15年にかけての作家専業中になってから書かれたデビュー以来のモダンな都会小説の延長にある短編。

広告面の女1933 ・・・ 輪郭だけ描いた顔の広告がでた。翌日は目、その翌日は眉、という具合に次第に女の顔ができあがっていく。最後には尋ね人の広告になった。平凡なサラリーマンが隣室の奇妙な男に興味を持ち、男は広告の女のデスマスクを作っているのを…

横溝正史「夜光虫」(角川文庫) 美少年、声を失った少女、妖艶な歌手。個性的なキャラが東京市内を走り抜ける耽美アクション。

両国の夜空に咲く花火に脱走囚の姿が浮かび上がった。それは目を奪う美貌と、目を背ける人面瘡を持つ少年。いにしえに遡る、少年の血塗られた秘密とは?仮面舞踏会、サーカス団、幽霊塔…絢爛たる名場面と共に甦る巨匠、戦前の代表作。 http://www.tokuma.jp/b…

横溝正史「三つ首塔」(角川文庫) 戦後モダン探偵小説を作った作者が10年後には戦前の伝記小説に先祖返り。

女時代に両親をなくし、伯父宅に引き取られた音禰に、遠縁の玄蔵老人からの遺産、それも百億円相続の話がまい込んできた。が、それには見知らぬ謎の男との結婚が条件という。思いもかけない事態にとまどう音禰の周辺で次々と起きる殺人事件。おびただしい血…

横溝正史「獄門島」(角川文庫) 世界的テクニックを駆使した作家の最高傑作。鬼頭家は同族経営を行ってきた一族の末裔。

獄門島――江戸三百年を通じて流刑の地とされてきたこの島へ金田一耕助が渡ったのは、復員船の中で死んだ戦友、鬼頭千万太に遺言を託されたためであった。『三人の妹たちが殺される……おれの代わりに獄門島へ行ってくれ……』瀬戸内海に浮かぶ小島で網元として君…

横溝正史「仮面舞踏会」(角川文庫) 軽井沢の観光地に集まるのは根無し草の都会人。雑多な登場人物の関係図を明らかにするのが主眼。

裕福な避暑客の訪れで、閑静な中にも活気を見せ始めた夏の軽井沢を脅かす殺人事件が発生した。被害者は画家の槇恭吾、有名な映画女優・鳳千代子の三番目の夫である。華麗なスキャンダルに彩られた千代子は、過去二年の間、毎年一人ずつ夫を謎の死により失っ…

横溝正史「悪魔が来たりて笛を吹く」(角川文庫) 「斜陽」のような没落貴族の家庭と六本木という繁華街を舞台にするが金田一には都会は似合わない。

世の中を震撼させた青酸カリ毒殺の天銀堂事件。その事件の容疑者とされていた椿元子爵が姿を消した。「これ以上の屈辱、不名誉にたえられない」という遺書を娘美禰子に残して。以来、どこからともなく聞こえる“悪魔が来りて笛を吹く”というフルート曲の音色…

横溝正史「悪魔の手毬歌」(角川文庫) 見立て殺人の日本的変奏というより「Yの悲劇」の日本版。

岡山と兵庫の県境、四方を山に囲まれた鬼首村。たまたまここを訪れた金田一耕助は、村に昔から伝わる手鞠唄の歌詞どおりに、死体が異様な構図をとらされた殺人事件に遭遇した。現場に残された不思議な暗号はいったい何を表しているのか?事件の真相を探るう…

横溝正史「本陣殺人事件」(角川文庫) 金田一耕介が初登場する記念作。肩に力が入りすぎて冒頭から50ページは停滞するのが惜しい。

江戸時代からの宿場本陣の旧家、一柳家。その婚礼の夜に響き渡った、ただならぬ人の悲鳴と琴の音。離れ座敷では新郎新婦が血まみれになって、惨殺されていた。枕元には、家宝の名琴と三本指の血痕のついた金屏風が残され、一面に降り積もった雪は、離れ座敷…

横溝正史「犬神家の一族」(角川文庫) 田舎の大きい屋敷をめぐる事件で父権を奪取する闘争が行われる。

信州財界一の巨頭、犬神財閥の創始者犬神佐兵衛は、血で血を洗う葛藤を予期したかのような条件を課した遺言状を残して永眠した。佐兵衛は生涯正室を持たず、女ばかり三人の子があったが、それぞれ生母を異にしていた。一族の不吉な争いを予期し、金田一耕助…

エラリー・クイーン「心地よく秘密めいた場所」(ハヤカワポケットミステリ) 殻に閉じこもっている人がくつろげる場所は心の中だけ。そこに他者がいないというのはつらい。

品切れになって久しいらしくサマリーがネットにない。しかたがない、記憶を頼りに書いてみよう。 ウォルトは長年世界的企業インポーチュナの監査役兼副社長を務めていたが、公金横領が企業主ニーノに知られてしまった。ニーノはウォルトに娘バージニア21歳を…

エラリー・クイーン「帝王死す」(ハヤカワ文庫) 資本主義における労働契約が人びとを縛っている法が通じない場所で、理性はどこまで正義を通すことができるのか。

第二次大戦当時の機密島を買取り、私設の陸海空軍を持つベンディゴ帝国に君臨する軍需工業界の怪物キング・ベンディゴーー彼の許に舞い込んだ脅迫状の調査を求められ、クイーン父子は突然ニューヨークから拉致された。その強引なやり方と島の奇妙な雰囲気に…

エラリー・クイーン「悪の起源」(ハヤカワ文庫) 「奇妙なプレゼント」の解読は事物の後ろ側のある意図を読み取ることであって、その真偽を実証的に検証することではない

犬が父親を殺した。突然訪ねてきた若い娘の言葉に、エラリイ・クイーンは興味をそそられた。玄関先に送りつけられていた犬の死体と、その首についていた脅迫状が宝石商のヒルをおびえさせ、死に追いやったというのだ。しかも、彼の共同経営者ブライアムの寝…

エラリー・クイーン「悪魔の報酬」(ハヤカワポケットミステリ) カフカの「城」のようなハリウッドで、いつまでも入城できないエラリーは城の周囲で探偵する。

倒産した発電会社の社長ソリー・スペイスが、ハリウッドの屋敷で殺された。彼は倒産にもかかわらず私腹を肥やし、欺かれた共同経営者や一般投資家から深い恨みを買っていたばかりか、正義感の強い彼の息子もまた父を憎んでいた。ハリウッドへ脚本を書くため…

エラリー・クイーン「二百万ドルの死者」(ハヤカワ文庫) チーム・クイーンによる、ゲルマン・東欧系キャラが登場する素人スパイ小説。

ギャングの大物バーニー・ストリートが殺され、二百万ドルの遺産が残された。当然自分の手に入るとおもっていた妻のエステルは、遺言書に目を通し、愕然とした。すべての財産を、戦時中命を救ってくれたチェコスロバキア人ミーロ・ハーハに遺贈するというの…

エラリー・クイーン「最後の女」(ハヤカワ文庫) 昔からの読者は、まるでライツヴィルに来たかのようにオールド・スタイルのミステリをニヤニヤと読むことになる

クイーンが手に取った受話器から聞こえてきたのは「殺される」というジョニー・Bの断末魔の悲鳴だった・・・ 華々しい社交界の旋風の中でしか充足できなかったジョニー・B。そんな彼が三人の元妻たちをライツヴィルの別荘に呼び集め、遺言状の書き換えを発表…

エラリー・クイーン「三角形の第四辺」(ハヤカワ文庫) 「現場」をみないアームチェア探偵の純粋推理や観念もてあそびは遊戯になり、時として人を傷つける。

売り出し中の作家デイン・マッケルは、母の打ち明け話に耳を疑った。厳格勤勉な大実業家の父に女ができたというのだ。まさか・・・デインの驚きは、やがて母への同情に変わった。古風で世間知らずの母を救ってやらなければならない。父の浮気をやめさせるた…