odd_hatchの読書ノート

エントリーは3200を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2024/11/5

2018-05-01から1ヶ月間の記事一覧

トーマス・クーン「科学革命の構造」(みすず書房)-2 新しいパラダイムを提示するのは若手か新人。その影響で科学者集団が次第に新理論に染まっていく。

2018/05/29 トーマス・クーン「科学革命の構造」(みすず書房)-1 1962年 通常科学と科学革命の説明のために、科学史のできごとが前置きなしで説明される。だいたいは高校教科書に載っている話(20世紀前半の物理学は大学の教養課程ででてくるものかな)。…

トーマス・クーン「科学革命の構造」(みすず書房)-1 通常科学の体系が危機になると弥縫策をとるが、にっちもさっちもいかなくなると新しい理論に乗り移る。

パラダイムを提唱した科学史、科学哲学の古典。パラダイムは1980年代にこの国で流行になった。その時期に自分はこの分野の本や論文をすこしかじった(とはいえ啓蒙や一般向けのものだけ。専門書はほとんど読んでいません)ので、以下の四半世紀ぶりの再読で…

マイケル・ファラディ「ロウソクの科学」(岩波文庫) 燃焼という現象をみることから、どこまで議論や考えを広げることができるか。この好奇心の広げ方こそが科学者の在り方。

高校時代に読んだのだが、どこかにいってしまったのを、ネットで公開されている翻訳で読み直す。 Chemical History of A Candle: Japanese 岩波文庫版には、実験器具や実験風景の挿絵があったと記憶するのだが、ここには載っていない。また、もともとは1847-…

読書感想のエントリーが2000に到達

タイトルの通り。 読書感想のエントリーが1000に到達 - odd_hatchの読書ノート 上の記事を見ると、1→1000に3年3か月かかり、1001→2000に4年2か月かかっていて、ペースが落ちている。 次の3000に行くかというと自信がない。5年後や6年後の自分を想像でき…

土門拳「腕白小僧がいた」(小学館文庫) 世界第2位のGDPを達成した豊かな国が抱える貧しい人々の記録。

写真家・土門拳の仕事のなかから、子供を撮影したものを収録。1935年ころから1960年ころまで。 「下町のこどもたち」は1950年代前半の江東区や佃島、月島の子供たちを映す。「日本のこどもたち」は主に戦前に撮影した写真。カメラをもって下町にいくと、子供…

藤森照信/荒俣宏「東京路上博物誌」(鹿島出版会) TOKYOが世界の最先端にあった時代に、江戸と明治と戦前の物件や商売を探す。当時の都市論記号論のアンチテーゼ。

1986年に雑誌に連載したものを1987年に出版した。このころは景気がよくて、おしゃれな店ができて、新しい家電製品を買おうとし、テレビ番組が刺激的で、雑誌の新刊が楽しみだった時代だ。まあ、TOKYOが世界の最先端にあるとされていて、輝かしい電飾の下で若…

赤瀬川原平「超芸術トマソン」(ちくま文庫) おしゃれでハイソな時代に、無名氏がよってたかって価値のないものを探して楽しむ。

そうか「トマソン」のブームからもう30年が経過したのか。懐かしい、という思いになるのは、遅れてそれを知った自分でさえ、路上観察とか考現学とかその他の観察記録が書店に並べられていたのを記憶しているからに他ならない。なるほどバブル経済といわれた…

赤瀬川原平「櫻画報大全」(新潮文庫) 1967-71年の政治と前衛芸術の季節。著者の宮武外骨趣味が現れた最初のころ。

「櫻画報」は説明しずらいなあ。背景には1967-71年のこの国の政治の季節がある。大学構内と街中と路上に、常に人があふれ、デモや機動隊が衝突し、催涙ガスが漂い、暴力が日常的にあった時代だ。もともとは機動隊の側が暴力をふるったのがきっかけて、自衛の…

塩月弥栄子「冠婚葬祭入門 正・続」(光文社カッパブックス)  冠婚葬祭では贈与の応酬による物の交換が面倒なのでマニュアルが必要

1970年のベストセラー。裏表紙によると100万部を超えたそうで(手元の奥付をみると、昭和45年1月30日初版で、昭和46年3月1日で358版とある。毎日印刷している計算になるな)、この冊数になったのは(当時)7冊目だそう。普段本を読まない両親がこの本を買っ…

河盛好蔵「人とつき合う法」(新潮文庫)  簡単に付き合う人をかえることができないときのつき合う法は息苦しい

昭和33年に週刊朝日に連載したものが単行本になり、文庫になった。教科書に書かれていない人との付き合い方を高校生向け(しかし著者はそのことに拘泥しない)に書いた。 個別には、納得できることが書いてある。時間を守れ、良き友人とつきあえ(でもほどほ…

ヒッチコック/トリュフォー「映画術」(晶文社) 映画の職人を巨匠に変えた長時間インタビュー。殺人犯の末路と無実で終われる主人公の苦闘の二種類に分けられる。

トリュフォーは監督になるまえに映画雑誌の編集長をしたり映画評論を書いたりしていた。そのときからヒッチコックのファンで、何度もインタビューしていた。監督の名声が高まってから、ヒッチコックに長時間インタビューを申し込み、ヒッチコックが受諾した…

岡田暁生「音楽の聴き方」(中公新書)

音楽を聴くとその時の感情の動きを誰かに話したくなる。でも、同じ音楽を聴く場にいても、必ずしも同じ感情を共有できるわけではない。同じ音楽を録音で聴いても、同じ感情が再現するわけではない。それでも、音楽を聴いた時の感情や知的関心などは語りたい…

岡田暁生「西洋音楽史」(中公新書)

西洋の音楽の通史を新書200ページ強で説明しようとする野心的な試み。専門家向けには数巻に及ぶような微に入り細を穿つ「音楽史」の叢書があるが、素人が通読するのは困難。そのうえ、「西洋」や「西洋音楽」をどこまで取るかで、範囲は膨大になる。ここでは…

金聖響「ロマン派の交響曲」(講談社現代新書) ベートーヴェンのあとに交響曲を書くことがいかに困難だったか。19世紀の音楽先進国では交響曲は書かれない。

玉木正之(1952年生)が指揮者・金聖響(1970年生)にインタビューして交響曲の魅力を語るという企画第2弾。 指揮者が自分の仕事を語るというのは、朝比奈隆「交響楽の世界」(早稲田出版)や岩城宏之「楽譜の風景」(岩波新書)があるが、ここでは彼らの2…

金聖響「ベートーヴェンの交響曲」(講談社現代新書) 21世紀になって刷新されたベートーヴェン像に基づく解説。指揮者も暴君や巨匠からファシリテーターやプロジェクトマネージャーに変わる。

玉木正之(1952年生)が指揮者・金聖響(1970年生)にインタビューして交響曲の魅力を語るという企画第1弾。 ベートーヴェンの交響曲はクラシック音楽のアルファであり、オメガ。なので、個々の曲ごとに傾聴することにする。以下では気になる言葉をメモした…

みつとみ俊郎「オーケストラの秘密」(NHK出版生活人新書) ビジネスからオーケストラをみるのは、市場の縮小に対する危機感の現れ。

西洋音楽がこの国で聞かれるようになってからわずか150年しか経過していない。明治維新以降のクラシック音楽受容の系譜は下記エントリーを参考に。 堀内敬三「音楽五十年史 上」(講談社学術文庫) 堀内敬三「音楽五十年史 下」(講談社学術文庫) 中島健蔵…