odd_hatchの読書ノート

エントリーは2400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2020/10/13

埴谷雄高

埴谷雄高「文学論集」(講談社)-2

俺は大学で生物学を専攻し、そのあと業務・事務の仕事を続けていたので、論はなにごとかの応用や転用が可能であることを望ましく思っている。なので、ことばや文章は一つの意味をあらわしていて、誤解や誤読があれば言葉の選択や文章に問題があるのだと考え…

埴谷雄高「文学論集」(講談社)-3

2021/06/22 埴谷雄高「文学論集」(講談社)-2 1973年の続き 第3部は作家の存在論とそのイメージ化。エッセイでのっぺらぼうがでてきても多分になんのこっちゃなんだが、「死霊」というフィクションでは強烈なリアリティを持つ。それもまた架空や夢で存在を…

埴谷雄高「政治論集」(講談社)-1

埴谷の青年期の経歴は「青年期に思想家マックス・シュティルナーの主著『唯一者とその所有』の影響を受け、個人主義的アナキズムに強いシンパシーを抱きつつ、ウラジーミル・レーニンの著作『国家と革命』に述べられた国家の消滅に一縷の望みを託し、マルク…

埴谷雄高「政治論集」(講談社)-2

2021/06/18 埴谷雄高「政治論集」(講談社)-1 1973年の続き 発行された1973年では共産主義や革命運動の党の問題は重要で深刻だったが、50年もたつと歴史的文書になってしまう。早い時期からスターリニズム批判をしていたということで、この論集は珍重された…

埴谷雄高「死霊 II」(講談社文芸文庫)「第五章 夢魔の世界」-1「死者の電話箱」

「第五章 夢魔の世界」(第一日の真夜中から第二日の明け方) 真夜中になったころ、与志は高志の部屋にはいった。そこには、首猛夫が先に来ていて、与志を待っていたらしい。 首は与志に「死者の電話箱」というアイデアを語る。死に赴こうとしている人に電極…

埴谷雄高「死霊 II」(講談社文芸文庫)「第五章 夢魔の世界」-2 スパイ査問事件

2021/06/15 埴谷雄高「死霊 II」(講談社文芸文庫)「第五章 夢魔の世界」-1「死者の電話箱」 1975年の続き 目を開けた高志に与志はロケットを見せる。「あのひとはなぜ死んだか」の問いに高志は「俺が子供の存在を容認しなかったから」「自由意思でできる…

埴谷雄高「死霊 II」(講談社文芸文庫)「第五章 夢魔の世界」-3 窮極の秘密を打ち明ける夢魔

2021/06/14 埴谷雄高「死霊 II」(講談社文芸文庫)「第五章 夢魔の世界」-2 スパイ査問事件 1975年の続き 「あの人(尾木恒子の姉)」の死んだいきさつを聞く与志に、高志は「窮極の秘密を打ち明ける夢魔」の話をする。巧妙に回避したようだが、高志の作…

埴谷雄高/吉本隆明「意識・革命・宇宙」(河出書房)

1975年に「死霊」第5章が発表されたことを記念して、「文藝」誌上で行われた対談を収録したもの。その年に25年ぶりに続きが発表されたのだった。主題は革命運動の秘密結社が行ったリンチ殺人。当時は内ゲバによる殺人が頻繁にあって、この主題はとても重かっ…

埴谷雄高「死霊 II」(講談社文芸文庫)「第六章 《愁いの王》」-1

2021/06/11 埴谷雄高「死霊 II」(講談社文芸文庫)「第五章 夢魔の世界」-3 窮極の秘密を打ち明ける夢魔 1975年の続き 「第六章 《愁いの王》」(第二日の午前) 前日の夕方から立ち込めた霧は晴れて、日差しが出てきた。物語の中にいる人たちは、それぞ…

埴谷雄高「死霊 II」(講談社文芸文庫)「第六章 《愁いの王》」-2

2021/06/08 埴谷雄高「死霊 II」(講談社文芸文庫)「第六章 《愁いの王》」-1 1981年の続き 矢場は首猛夫に「何をたくらんでいる」と尋ねる。首は「全剿滅(そうめつ)」と答える。すでに津田に「宣戦布告」といっている以上、そのたくらみが暗い情念に基…

大岡昇平/埴谷雄高「二つの同時代史」(岩波書店)

1909年生まれの二人が1982-83年に雑誌「世界」で連載した座談を収録。作風から発表場所からずっと異なるところにいたので、接点はないものと自分は思い込んでいた。でも、同じ年に生まれたことと、戦前の東京で青春を過ごしていたことあたりが共通点になって…

埴谷雄高「死霊 III」(講談社文芸文庫)第七章 《最後の審判》-1

2021/06/07 埴谷雄高「死霊 II」(講談社文芸文庫)「第六章 《愁いの王》」-2 1981年の続き 第七章 《最後の審判》(第2日午後) ずぶぬれになった一行(第六章)は、小橋のうえで身づくろい。津田夫人はだまってばかりの与志を詰問(「一人勝手でひとり…

埴谷雄高「死霊 III」(講談社文芸文庫)第七章 《最後の審判》-2

2021/06/03 埴谷雄高「死霊 III」(講談社文芸文庫)第七章 《最後の審判》-1 1984年の続き 食われたものが食ったものを弾劾する。それは自己確認の前の弾劾。でも、食われたものもそのまえに誰かを食っているので、弾劾の対象になる。弾劾は相殺されて、…

埴谷雄高「死霊 III」(講談社文芸文庫)第七章 《最後の審判》-3

2021/06/01 埴谷雄高「死霊 III」(講談社文芸文庫)第七章 《最後の審判》-2 1984年の続き 「より重苦しく鈍くより厳しい響きが何処からともまったく解らずゆっくりと『違うぞ』」と響いてくる。「この影の影の影の国の果てにあるその長さも見届け得ぬほ…

埴谷雄高「死霊 III」(講談社文芸文庫)第八章 《月光のなかで》-1

2021/05/31 埴谷雄高「死霊 III」(講談社文芸文庫)第七章 《最後の審判》-3 1984年の続き 第八章 《月光のなかで》(第2日夜) 第6章の終わりで集まったもののうち、そのあとの行動は首だけが第七章で語られた。第八章ではほかの人たちが語られる。すな…

埴谷雄高「死霊 III」(講談社文芸文庫)第八章 《月光のなかで》-2

2021/05/28 埴谷雄高「死霊 III」(講談社文芸文庫)第八章 《月光のなかで》-1 1986年の続き そこまでの話をしたところで、外に出た安寿子は首と与志が歩いているのを見かけ、さらに父・津田康造もいるのを知る。 長身の黒川の影をみて「高志さん?」と…

埴谷雄高「死霊 III」(講談社文芸文庫)第九章《虚體》論―大宇宙の夢-1

2021/05/27 埴谷雄高「死霊 III」(講談社文芸文庫)第八章 《月光のなかで》-2 1986年の続き 第九章《虚體》論―大宇宙の夢(第3日朝) 当日は安寿子18歳の誕生日(成年を認められる日)。津田家に安寿子が呼んだ列席者が集まり、舞踏会も行ったホールの…

埴谷雄高「死霊 III」(講談社文芸文庫)第九章《虚體》論―大宇宙の夢-2

2021/05/25 埴谷雄高「死霊 III」(講談社文芸文庫)第九章《虚體》論―大宇宙の夢-1 1995年の続き 黒服のいうこの「私」を笑う未出現者は、たとえば受精しなかった精子。受精の競争で数億の精子からひとつだけが選ばれて、ほかの精子はなににもならない(…

埴谷雄高「死霊 III」(講談社文芸文庫)第九章《虚體》論―大宇宙の夢-3

2021/05/24 埴谷雄高「死霊 III」(講談社文芸文庫)第九章《虚體》論―大宇宙の夢-2 1995年の続き とはいえ、五日間の物語は三日目にようやく至ったにすぎない。登場人物たちのアクションで行く末の分からないままになったことはたくさんある。首猛夫は津…

川西正明「謎解き「死霊」論」(河出書房新社)-1

2か月かけて埴谷雄高の書いたもの(「文学論集」「政治論集」「死霊」)を読んできた。総仕上げは、埴谷雄高の担当編集者でのちに文芸評論家になったものによる「死霊」論。60年代後半に埴谷雄高の本を作ることから始まり、埴谷雄高の仕事の協力者として信頼…

川西正明「謎解き『死霊』論」(河出書房新社)-2

2021/05/20 川西正明「謎解き「死霊」論」(河出書房新社)-1 2007年の続き この長大な小説をおもに「存在」「虚体」をめぐる議論を批判しながら読んだ。なので「謎解き『死霊』論」を読んで、登場人物たちの関係や行動で読み漏らしたところがあったことに気…