反差別
1923年9月1日に発生した関東大震災。東京や横浜、鎌倉などの被災地には文士、芸術家が多数すみ、遠方から見舞いに来た者がいて、当時は未成年であったものがいた。彼らの文章は全集を参照しないことにはなかなかめにつかない。著者は長年、関東大震災…
魔女という概念は古代からあったが、中世のキリスト教社会では寛容だった。懺悔を白という命令だけでおしまいになることが多かったという。それが転換するのは、13世紀の南フランスやカタルーニアなどで異端(アルビ派、ヴィルドー派、カタリ派など)が活動…
20世紀後半に書かれた「アメリカ黒人の歴史」を先に読んだ。感想は以下。2022/03/22 本田創造「アメリカ黒人の歴史 新版」(岩波新書)-1 1990年2022/03/19 本田創造「アメリカ黒人の歴史 新版」(岩波新書)-2 1990年 本書は2013年に書かれた。21世紀になっ…
アメリカ黒人の歴史のうち、1950-60年代の公民権運動を描く。黒人の歴史(アメリカでは大学の授業がある)の通史は以下を参照。 odd-hatch.hatenablog.jp odd-hatch.hatenablog.jp 上杉忍「アメリカ黒人の歴史」(中公新書) 本書を呼んだ限りでは、「公民権…
アメリカの白人ナショナリズムの動向を2020年にレポートする。重要なできごとは、911事件とその後のヘイトクライム、2017年10月シャーロッツビルで起きた白人ナショナリストによる襲撃事件(一人死亡)。本書刊行後では、Qアノン、2021年1月のアメリカ議会襲…
本書で人種主義としているのはレイシズム(racism)の日本語訳。この言葉が使われるようになったのは19世紀末からだが、差別の意味をもつraceは古くから使われてきた。「人種」は存在しないが、差別目的の人種主義が人種をつくってきた。それぞれの時代の思…
これまで全く無知だったので、朝鮮の近代史と日本の植民地政策を勉強するために、以下を読んできた。2017/05/25 海野福寿「韓国併合」(岩波新書) 1995年2017/05/24 高崎宗司「植民地朝鮮の日本」(岩波新書) 2002年 また同じ時代の日本の近代史はさまざま…
2024/05/14 趙景達「近代朝鮮と日本」(岩波新書)-1 朝鮮に視点を定め、日本が「異人」であるかのように朝鮮と日本の近代史を見直す。 2012年の続き 日本史を外国の目から見るとき、列島の住民の「常識」が覆される。ことにこの時代の朝鮮半島のできごとを…
1946年に外務省が調査したら、約4万人の中国人が戦争末期の1944~45年に強制連行された。連行先では強制労働が行われ、24時間の監視、生存ラインぎりぎりの食糧、悪質な労働環境と住環境、医療なし、監視員他による暴行や拷問の頻発などにより、多数の中国…
ヘイト団体や差別団体の活動を監視していると、どうしても右翼団体が視野に入ってくる。ときに差別団体(在特会とか日本第一党とか)よりも悪質なヘイトスピーチを,ヘイトスピーチ解消法施行後にも行っている。なぜ右翼は外国人排斥を主張するのか、なぜ右翼…
2019年にハーバード大学のラムザイヤー教授(専門は法学らしい)が関東大震災の朝鮮人虐殺を否定する論文を発表した。第1章に論文のサマリーが載っているが、内容は日本のネトウヨがいっている否定論と同じだ。関東大震災の朝鮮人虐殺のことを「朝鮮人…
歴史学者・大石慎三郎監修による「新書・江戸時代」の一冊。江戸時代の身分制は時代劇などで牧歌的に描かれているが、そうではない。たとえば「士農工商」が江戸時代の身分制の序列とされているが、この言葉ができたのは明治時代で、昭和の義務教育で定着し…
1975年に出版された被差別部落の歴史を概説したもの。以下の本を補完することを目的として読む。組坂繁之/高山文彦「対論 部落問題」(平凡社新書)角岡伸彦「被差別部落の青春」(講談社文庫) 1999年 これまで歴史学があまり取り上げてこなかったし、文書…
部落差別はまず角岡伸彦「被差別部落の青春」(講談社文庫)を取り掛かりにした。つぎに、本書で歴史を学ぶ。組坂繁之は部落解放同盟の重鎮、高山文彦は作家で水平社運動を担った松本治一郎の評伝「水平記」を書いた。高山が質問し組坂が答える形で対論とな…
野中広務は日本の政治家(1925.10.20 - 2018.1.26)。自民党に所属して、官房長官などを歴任した。この人が独特なのは、京都の被差別部落の出身で、若いころの差別体験から政治家を志した。 所属ゆえに彼の政策は必ずしもリベラルの支持を受けなかったが、彼…
著者はジェンダーワークやLGBTQ差別の研究者で、政策提言者。なので本書でも、ジェンダー差別とLGBTQ差別を扱っている。自分の知識が不足しているので、差別一般に関する議論として抽象化、形式化してメモを取ります。 社会のマジョリティが差別禁止や撤廃の…
これまでの経済学では市場・企業・家庭を一人格に扱い、中にいる個人を取りあげることはなかった。また自然を無限とみなして収奪してきたが(同時に農村の「余剰」人口を労働者に吸収し続けてきた)、再生産も無限とみなして対価をはらわずに再生産の場であ…
2024/04/19 上野千鶴子「家父長制と資本制」(岩波現代文庫)-1 家父長制と資本制は市場とそれ以外の空間を支配する構造としてできている 1990年の続き 1の理論編は家父長制と資本制の二元論を共時的にみた。2の分析篇は二元論を通時的にみる。大賞は日本…
自分が感じる生きにくさは、不安定で暴力的な社会に理由はあるが、同時に「男らしく」を深く内面化している自分自身にあるのではないか。そういう問いが老年になって生まれたので、勉強する。まず「ジェンダー」を理解することから。 ジェンダーは「社会的に…
2024/04/16 伊藤公雄「ジェンダーの社会学〔新訂〕」(放送大学教材)-1 「社会的に作られた性別」であるジェンダーの刷り込みは個人の生きにくさになり、差別や貧困などの原因になる。 2008年の続き 個人の問題からシーン別のジェンダーや「女性問題」につ…
ナショナリズムと言語についての解説書。35年前に読んだときはさっぱりだったが、ナショナリズムと差別のことを勉強するようになると本書はがぜんとして精彩を放つ。40年前(1981年刊)の本だが、今でも新しい。とはいえ、多くは常識になった(ということは…
原著は2005年で邦訳は2009年。複数のステークホルダーがいて、解決の調停や交渉が難しい時、それぞれの費用と便益を数値化して(下にあるようにデータにバイアスがあるとか、統計がとりにくいとか問題はあるが)、トレードオフを考慮することを推奨する。な…
2014年初出。慰安婦問題は解決されていない戦争責任と戦後補償の問題。問題の社会化、日韓の補償事業の挫折などを経て2010年代の状況をまとめる。 序章 いまなぜ慰安婦問題なのか ・・・ 占領地の女性をターゲットにした慰安婦問題が社会問題になったのは199…
韓国の1945年の日本からの解放後を、民主化という視点で歴史をみる。1980年以降の韓国の民主化運動は、とても参考になる。どころか、日本は学ばなければならない。ことに、不正をする大統領を辞任に追い込み、逮捕させた2016年のろうそく革命(100万人でもが…
日本に住む朝鮮にルーツを持つ人たちが日本をどう見ているかは、たとえばこれらが参考になった。そこからわかるのは、数十万人数百万人もいるグループだから、考え方は多種多様。ルーツが同じという属性だけで均質な集団になっていると思い込んだら大間違い…
2013年にでた第三版を読む。前の「新版」が出たのは1995年。およそ20年後との大きな違いは、日本社会に排外主義やレイシズムが蔓延するようになり、路上やネットでヘイトスピーチがおおっぴらに発せられるようになったこと。アジア諸国が経済発展する…
2022/05/23 田中宏「在日外国人(第3版)」(岩波新書)-1 2003年の続き 前回は1エントリーで終わった感想が今回の再読では2エントリーに増えた。最近の動向をすこしは知るようになったので、メモしておくべき事柄が増えたのだ。 差別撤廃への挑戦 ・・・…
在日朝鮮人の問題を歴史的にみる。明治政府以降の日本がどのような政策を朝鮮に取ってきたかは以下のエントリーを参考。これらには日本国内の事情はほとんど書かれていないので、本書で補完することになる。2017/05/25 海野福寿「韓国併合」(岩波新書) 199…
2022/05/19 文京洙/水野直樹「在日朝鮮人」(岩波新書)-1 2015年の続き 後半は日本の敗戦後。日本にいることを選択した/余儀なくされた在日朝鮮人の歴史や記録は多数でている。自分が読んだのは以下の数冊だけ。勉強不足です。2019/4/26 福岡安則「在日韓国…
このブログで取り上げてきたヘイトスピーチの記録には以下のようなものがある。2019/04/22 有田芳生「ヘイトスピーチとたたかう!――日本版排外主義批判」(岩波書店) 2013年2019/04/19 神原元「ヘイト・スピーチに抗する人びと」(新日本出版社) 2014年2017…