odd_hatchの読書ノート

エントリーは2600を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2021/9/25

反差別

熊谷奈緒子「慰安婦問題」(ちくま新書)

2014年初出。慰安婦問題は解決されていない戦争責任と戦後補償の問題。問題の社会化、日韓の補償事業の挫折などを経て2010年代の状況をまとめる。 序章 いまなぜ慰安婦問題なのか ・・・ 占領地の女性をターゲットにした慰安婦問題が社会問題になったのは199…

池明観「韓国 民主化への道」(岩波新書)

韓国の1945年の日本からの解放後を、民主化という視点で歴史をみる。1980年以降の韓国の民主化運動は、とても参考になる。どころか、日本は学ばなければならない。ことに、不正をする大統領を辞任に追い込み、逮捕させた2016年のろうそく革命(100万人でもが…

鄭大均「日本のイメージ 韓国人の日本観」(中公新書)

日本に住む朝鮮にルーツを持つ人たちが日本をどう見ているかは、たとえばこれらが参考になった。そこからわかるのは、数十万人数百万人もいるグループだから、考え方は多種多様。ルーツが同じという属性だけで均質な集団になっていると思い込んだら大間違い…

田中宏「在日外国人(第3版)」(岩波新書)-1

2013年にでた第三版を読む。前の「新版」が出たのは1995年。およそ20年後との大きな違いは、日本社会に排外主義やレイシズムが蔓延するようになり、路上やネットでヘイトスピーチがおおっぴらに発せられるようになったこと。アジア諸国が経済発展する…

田中宏「在日外国人(第3版)」(岩波新書)-2

2022/05/23 田中宏「在日外国人(第3版)」(岩波新書)-1 2003年の続き 前回は1エントリーで終わった感想が今回の再読では2エントリーに増えた。最近の動向をすこしは知るようになったので、メモしておくべき事柄が増えたのだ。 差別撤廃への挑戦 ・・・…

文京洙/水野直樹「在日朝鮮人」(岩波新書)-1

在日朝鮮人の問題を歴史的にみる。明治政府以降の日本がどのような政策を朝鮮に取ってきたかは以下のエントリーを参考。これらには日本国内の事情はほとんど書かれていないので、本書で補完することになる。2017/05/25 海野福寿「韓国併合」(岩波新書) 199…

文京洙/水野直樹「在日朝鮮人」(岩波新書)-2

2022/05/19 文京洙/水野直樹「在日朝鮮人」(岩波新書)-1 2015年の続き 後半は日本の敗戦後。日本にいることを選択した/余儀なくされた在日朝鮮人の歴史や記録は多数でている。自分が読んだのは以下の数冊だけ。勉強不足です。2019/4/26 福岡安則「在日韓国…

角南圭佑「ヘイトスピーチと対抗報道」(集英社新書)

このブログで取り上げてきたヘイトスピーチの記録には以下のようなものがある。2019/04/22 有田芳生「ヘイトスピーチとたたかう!――日本版排外主義批判」(岩波書店) 2013年2019/04/19 神原元「ヘイト・スピーチに抗する人びと」(新日本出版社) 2014年2017…

本田創造「アメリカ黒人の歴史 新版」(岩波新書)-1

本書旧版(1964年)は高校生の時に知っていた。その時は「黒人」の歴史に意味があると思わなかった。とんだマジョリティしぐさで、ぼんくらだった。21世紀のBLM運動を見るうちに、タイトルの歴史が重要であることがわかり、勉強することにする。 今ならアフ…

本田創造「アメリカ黒人の歴史 新版」(岩波新書)-2

2022/03/22 本田創造「アメリカ黒人の歴史 新版」(岩波新書)-1 1990年の続き 後半は20世紀。白人側から見たアメリカの近代史と重ねることが必要。参考エントリーは以下。2020/10/12 有賀夏紀「アメリカの20世紀 上」(中公新書) 2002年2020/10/09 有賀夏…

荒このみ「マルコムX」(岩波新書)

以前にマルコムXの言葉を読んできたが、ピンとこなかった。そのあたりは、下記のエントリーで。アレックス・ヘイリー「マルコムX自伝」(河出書房新社)デビッド・ギャレン編「マルコムX最後の証言」(扶桑社文庫) そこで、第三者の視点による評伝を読む…

吉村昭「関東大震災」(文春文庫)

関東大震災の被害は、小沢健志「写真で見る関東大震災」(ちくま学芸文庫)で。odd-hatch.hatenablog.jp と言いながら、テキストでないと伝わらない情報もある。本書の指摘を抜き書きで。 ・震災による家屋の倒壊や火災(出火の原因は薬品由来という。学校、…

斉藤貴男「安心のファシズム」(岩波新書)

日本にファシズムが起こりつつあるとみた、2004年の論集。これを2020年から振り返るように読む。 第1章 イラク人質事件と銃後の思想 ・・・ イランで起きた日本人人質事件。このとき、政府は自己責任論で放置し、民衆は人質と被害者家族をバッシングした。…

別冊法学セミナー「ヘイトスピーチとは何か」(日本評論社)

法学セミナーは過去に数回ヘイトスピーチを特集してきた。2016年のヘイトスピーチ解消法施行後、状況が変化したところがあるので、それらを反映してヘイトスピーチの概念と過去事案をまとめる「ヘイトスピーチとは何か」を編集した。本号で特集をつくるので…

別冊法学セミナー「ヘイトスピーチに立ち向かう」(日本評論社)-1

別冊法学セミナー「ヘイトスピーチとは何か」(日本評論社)で実態と本質的な意味を勉強したあと、ヘイトスピーチに抗する具体的なツールである法や司法を検討する。「ヘイトスピーチに法や司法はどのように対応すべきなのか。憲法学、刑事法学、国際人権法…

別冊法学セミナー「ヘイトスピーチに立ち向かう」(日本評論社)-2

2020/03/12 別冊法学セミナー「ヘイトスピーチに立ち向かう」(日本評論社)-1 2019年 続いて後半。論文の中で言及されている事案(デモや裁判など)について、別冊法学セミナー「ヘイトスピーチに立ち向かう」(日本評論社)補注のページを作り、Togetterま…

前田朗「ヘイトスピーチと地方自治体」(三一書房)

2016年にヘイトスピーチ解消法が施行されてからの課題をまとめる。路上のヘイトは市民有志(カウンター、プロテスターと呼ばれる)の活動で減少してきたが、根絶にはいたらない。公的施設利用、選挙、インターネットではヘイトスピーチがいまだに多い。…

ジェレミー・ウォルドロン「ヘイト・スピーチという危害」(みすず書房)

2012年にでたヘイトスピーチの法規制を主張する本。ヨーロッパ諸国はヘイトスピーチ禁止法をもっているのに対し、アメリカは法がない。法規制の反対論が強い。そのような状況での主張。この国の邦訳は2015年で、日本では法規制がなかった時代で、アメリカの…

徐京植(ソ・キョンシク)「在日朝鮮人ってどんなひと? (中学生の質問箱)」(平凡社)

日本は単一民族、一民族一国家と言われることが多いが、それは幻想。実際は、さまざまなマイノリティがいっしょに住んでいる場所。それを確認することから始めよう。突っ込みを入れれば、ネトウヨの大好きな「大日本帝国」は満州・朝鮮・台湾を併合して「五…

大澤武男「ヒトラーとユダヤ人」(講談社現代新書)

ナチスを率いたヒトラーのユダヤ人虐殺は、政策遂行から派生したとか世論の後押しで行ったという議論があるが、そうではない、徹頭徹尾反ユダヤ主義がヒトラーの確信・核心であり、終生変わることなく維持し、多数の被害者をだしたことに反省することはなか…

デビッド・ギャレン編「マルコムX最後の証言」(扶桑社文庫)

1992年スパイク・リー監督の映画「マルコムX」が評判だったのにあわせたのか、1993年に出版。原著は1992年初出。この本は3部構成で、人々の思い出を集めた回想録、生前のインタビュー7本、故人の人となりや評価からなっている。 アレックス・ヘイリーが編集…

角岡伸彦「被差別部落の青春」(講談社文庫)

部落差別問題のことをほとんど知らなかったので、入り口として読む。いや、過去に本で部落差別の起源や100年前の水平社運動のことは知っているが、<いま>どうなっているのかを知らないのだ。民族差別や人種差別はSNSやネットで流れてくるくらいに目に見え…

広田和子「証言記録 従軍慰安婦・看護婦」(新人物文庫)

文庫になったのは2009年だが、もとは1975年の出版。インタビューや聞き取りは1970年ころから開始されている。1945年敗戦から25年たったころ(同時に大阪万博終了を境に、テレビのドラマやアニメ、エンタメ小説から戦争記憶が描かれなくなったころ)から行わ…

大沼保昭「「慰安婦」問題とは何だったのか」(中公新書)

第1-2章にあるように、1990年代に「慰安婦」問題が起きてから解決に向けた取り組みを総括。成功と失敗の政府と市民の運動の記録。 第1章 「慰安婦」問題の衝撃 ・・・ 1991年に韓国女性が名乗り出て、事実が確認された。1994年の村山内閣のときに被害補償の…

鹿嶋敬「男女共同参画の時代」(岩波新書)

21世紀の10年代が憂鬱だったのは、女性に対する差別やバッシングがきわめて厳しく行われたことだ。痴漢には加害者の男性よりも被害者の女性がいじめや非難をうけ、共働きの女性は家で子育てしろと命令され、レイプ事件では加害者は匿名にされたが被害者の実…

福岡安則「在日韓国・朝鮮人」(中公新書)

1910年の韓国併合によって、日本は朝鮮人を「臣民」とした。併合にいたる経緯とその後の植民地政策は以下を参照。海野福寿「韓国併合」(岩波新書)高崎宗司「植民地朝鮮の日本」(岩波新書) 1945年夏のポツダム宣言受諾と無条件降伏は、この国には敗戦を、…

朴一「「在日コリアン」ってなんでんねん?」(講談社α新書)

チェスタトンの探偵小説では「見えない人間」というモチーフがある。20世紀前半のイギリスの階級社会では、その階級に属さない人間は「見えない」、存在を認識しないのだ。ラルフ・エリソンの「見えない人間」1952年の小説ではアフリカ系アメリカ人が見えな…

加藤直樹「NOヘイト! 出版の製造者責任を考える」(ころから)

書店の棚にヘイト本(とくに韓国・北朝鮮・中国への憎悪煽動をタイトルにした本)や「日本スゴイ本」がでるようになる。50代より上の男性が買っていたのが、若年層にも普及していて、いまや(2014年当時)不況の業界では売れ筋商品になっている。とはいえ、…

有田芳生「ヘイトスピーチとたたかう!――日本版排外主義批判」(岩波書店)

2013年の始めにある作家が投稿したツイートに、在特会のヘイトスピーチが載っていた。それに触発されて、日本のヘイトスピーチ問題にかかわっていくことになった国会議員による反差別の記録。出版された2013年は、在特会に代表されるレイシストの運動の最高…

神原元「ヘイト・スピーチに抗する人びと」(新日本出版社)

本書でヘイトスピーチや排外主義が強くなった経緯をまとめてみる。ほかの本でも取り上げられているが、自分の覚えていないことがあったので、再度。・1990年代のバックラッシュ。歴史修正主義がサブカルや漫画にでてくるようになった。村山政権時の慰安婦に…