odd_hatchの読書ノート

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反差別

デビッド・ギャレン編「マルコムX最後の証言」(扶桑社文庫)

1992年スパイク・リー監督の映画「マルコムX」が評判だったのにあわせたのか、1993年に出版。原著は1992年初出。この本は3部構成で、人々の思い出を集めた回想録、生前のインタビュー7本、故人の人となりや評価からなっている。 アレックス・ヘイリーが編集…

角岡伸彦「被差別部落の青春」(講談社文庫)

部落差別問題のことをほとんど知らなかったので、入り口として読む。いや、過去に本で部落差別の起源や100年前の水平社運動のことは知っているが、<いま>どうなっているのかを知らないのだ。民族差別や人種差別はSNSやネットで流れてくるくらいに目に見え…

広田和子「証言記録 従軍慰安婦・看護婦」(新人物文庫)

文庫になったのは2009年だが、もとは1975年の出版。インタビューや聞き取りは1970年ころから開始されている。1945年敗戦から25年たったころ(同時に大阪万博終了を境に、テレビのドラマやアニメ、エンタメ小説から戦争記憶が描かれなくなったころ)から行わ…

大沼保昭「「慰安婦」問題とは何だったのか」(中公新書)

第1-2章にあるように、1990年代に「慰安婦」問題が起きてから解決に向けた取り組みを総括。成功と失敗の政府と市民の運動の記録。 第1章 「慰安婦」問題の衝撃 ・・・ 1991年に韓国女性が名乗り出て、事実が確認された。1994年の村山内閣のときに被害補償の…

鹿嶋敬「男女共同参画の時代」(岩波新書)

21世紀の10年代が憂鬱だったのは、女性に対する差別やバッシングがきわめて厳しく行われたことだ。痴漢には加害者の男性よりも被害者の女性がいじめや非難をうけ、共働きの女性は家で子育てしろと命令され、レイプ事件では加害者は匿名にされたが被害者の実…

福岡安則「在日韓国・朝鮮人」(中公新書)

1910年の韓国併合によって、日本は朝鮮人を「臣民」とした。併合にいたる経緯とその後の植民地政策は以下を参照。海野福寿「韓国併合」(岩波新書)高崎宗司「植民地朝鮮の日本」(岩波新書) 1945年夏のポツダム宣言受諾と無条件降伏は、この国には敗戦を、…

朴一「「在日コリアン」ってなんでんねん?」(講談社α新書)

チェスタトンの探偵小説では「見えない人間」というモチーフがある。20世紀前半のイギリスの階級社会では、その階級に属さない人間は「見えない」、存在を認識しないのだ。ラルフ・エリソンの「見えない人間」1952年の小説ではアフリカ系アメリカ人が見えな…

加藤直樹「NOヘイト! 出版の製造者責任を考える」(ころから)

書店の棚にヘイト本(とくに韓国・北朝鮮・中国への憎悪煽動をタイトルにした本)や「日本スゴイ本」がでるようになる。50代より上の男性が買っていたのが、若年層にも普及していて、いまや(2014年当時)不況の業界では売れ筋商品になっている。とはいえ、…

有田芳生「ヘイトスピーチとたたかう!――日本版排外主義批判」(岩波書店)

2013年の始めにある作家が投稿したツイートに、在特会のヘイトスピーチが載っていた。それに触発されて、日本のヘイトスピーチ問題にかかわっていくことになった国会議員による反差別の記録。出版された2013年は、在特会に代表されるレイシストの運動の最高…

神原元「ヘイト・スピーチに抗する人びと」(新日本出版社)

本書でヘイトスピーチや排外主義が強くなった経緯をまとめてみる。ほかの本でも取り上げられているが、自分の覚えていないことがあったので、再度。・1990年代のバックラッシュ。歴史修正主義がサブカルや漫画にでてくるようになった。村山政権時の慰安婦に…

李信恵「#鶴橋安寧」(影書房)

タイトルの「#鶴橋安寧」はツイッターのハッシュタグ。鶴橋駅前でヘイト街宣が繰り返されていたころ、アンチレイシズムの抗議者が鶴橋付近を警戒しているとき、現状報告に使ったのだった。のちには、鶴橋周辺のグルメ案内にも使われたりする。 鶴橋周辺はオ…

野間易通「実録・レイシストをしばき隊」(河出書房新社)-1

「しばき隊」のことは、笠井潔/野間易通「3.11後の叛乱 反原連・しばき隊・SEALDs」(集英社新書)でも触れられていた。 笠井潔/野間易通「3.11後の叛乱 反原連・しばき隊・SEALDs」(集英社新書)-1 2016年 笠井潔/野間易通「3.11後の叛乱 反原…

野間易通「実録・レイシストをしばき隊」(河出書房新社)-2

2019/04/15 野間易通「実録・レイシストをしばき隊」(河出書房新社)-1 2018年の続き 後半では、広義のしばき隊が行うアンティレイシズムの論理と倫理が語られる。キーワードは「公正としての正義」「正義はだいたいでいい」「どっちもどっち論はだめ」。こ…

法学セミナー2018年2月号「ヘイトスピーチ/ヘイトクライム III」(日本評論社)

雑誌「法学セミナー」のヘイトスピーチ特集は2年ぶり3回目。前回では国内には法や条例はなかったが、2016年にHS解消法が、いくつかの自治体で条例が制定された。また、ヘイトクライムの裁判判決が確定したり、地裁などで被害者勝訴の判決が出たりした。行政…

木下ちがや「ポピュリズムと「民意」の政治学 3・11以後の民主主義」(大月書店)-1

1990年以降の政治をポピュリズムという概念を使って分析する。 「ポピュリズムとは、人びとが抱く感情にはたらきかけ、政治的シンボル(言葉やイメージ等)への支持/同一化を広範に喚起する政治」という齊藤純一の定義がわかりやすい。通常は、「一般大衆の…

木下ちがや「ポピュリズムと「民意」の政治学 3・11以後の民主主義」(大月書店)-2

後半は「2011.3.11」以降のできごと。本書の性格から外国の話題は少ししか触れていないが、2000年以降の大規模占拠などの民主化のポピュリズム運動も知っておいた方がよい。 第7章 二〇一五年七月一六日――「安保法制」は何をもたらしたか ・・・ 2015年の安…

海野福寿「韓国併合」(岩波新書)

教科書では「日韓併合」と称される事象をここでは「韓国併合」とする。以下の事態進行中では「韓国併合」が普通の表記であったから。同時に、日韓が対等であると思わせるような表現にしたくないという意思も込められる。実際、下記のような歴史的事実をみる…

高崎宗司「植民地朝鮮の日本人」(岩波新書)

1876年の日朝修好条規締結から1948年の引き上げ完了までの、在朝日本人の軌跡をまとめる。統計資料や政治文書も使用するが、生身の人間のふるまいを描くために、多くの人の回想録を使用する。できごとや政策を知るには物足りなき術だが、日本人がどのように…

吉見義明「従軍慰安婦」(岩波新書)

1945-70年にかけてのこの国の文学や映画には従軍慰安婦が登場することがあった。野間宏「真空地帯」、大岡昇平「俘虜記」、野村芳太郎「拝啓天皇陛下様」、岡本喜八「独立愚連隊、西へ」「肉弾」「血と砂」などが思いつく。慰安婦の実態を知らないでいたので…

小林英夫「日本軍政下のアジア」(岩波新書)

1931-1945年の「アジア太平洋戦争」のおもに非戦闘地や期間における軍政の被害状況をまとめる。戦闘期における日本軍の残虐行為はよく知られているが、非戦闘期になると情報が少ない。軍人、民間人が現地人を暴力的差別的に扱ったというのが断片的に書かれる…

文京洙「韓国現代史」(岩波新書)

この本は高崎宗司「植民地朝鮮の日本」(岩波新書)の続きとして読む。 朝鮮戦争の結果、朝鮮半島は南北に分断され、それぞれが別の統治形態を持つことになった。この本ではおもに大韓民国の歴史の変遷をみる(北の朝鮮についていえば、1950年代に金日成が反…

田中宏「在日外国人(新版)」(岩波新書)

この国の戦後史を読むときに、ほぼ無視されるのが、オールドカマーと呼ばれる旧植民地出身者およびその係累に起きたこと、そしてニューカマーと呼ばれる戦後の在留外国人のこと。とりわけ前者には差別が日常であり、法も彼らを保護せず、なにしろ政府そのも…

高木健一「今なぜ戦後補償か」(講談社現代新書)

20世紀の15年戦争は、周辺諸国および交戦国に多大な被害を及ぼしたわけだが、この国にいると1952年のサンフランシスコ条約で全部清算されたと考える。しかし、1990年以降に韓国、中国、台湾の戦争被害者が日本や現地の日本法人を相手に補償を請求する裁判が…

安田浩一「ネットと愛国」(講談社)

在特会のデモや街宣の映像は異様で不気味。ときに暴力を辞さない(しかし暴力行為にでるのは多対小になっているときだけ。人数が少ない時には挑発するがそこまで)。なぜ在特会は人数を広げ、路上で目立つようになったか。差別や排外主義の街宣やデモに人は…

部落解放2013年11月号「「在特会」とヘイトスピーチ」(解放出版社)

人種差別扇動運動とその対抗活動の転換点だとおもう2013年上半期。この時期に起きたことと何が考えられていたかの参考になる特集記事。おもに路上で起きていることについて。法整備や裁判などは触れられていないので、別書を参照してください。 奴らを通すな…

法学セミナー2015年7月号「ヘイトスピーチ/ヘイトクライム 」(日本評論社)

「ヘイトスピーチ/ヘイトクライム 」の現状をしるために雑誌を購入。特集の中心は、2009年におきた在特会による京都朝鮮学校襲撃事件に対する最高裁判決。当然この国のヘイトスピーチ、ヘイトクライムはこれだけではなく、日々起きている。実際に起きている…

法学セミナー2016年5月号「ヘイトスピーチ/ヘイトクライム II」(日本評論社)

2016年春の国会で、ヘイトスピーチ規制法の審議が始まったことを受けて、ヘイトスピーチ(以下HS)の法規制の在り方について検討する。 ヘイトスピーチ規制消極説の再検討(奈須祐治) ・・・ HS規制法消極説は、1)表現の自由の侵害(でもHSの表現の価値は…

師岡康子「ヘイト・スピーチとは何か」(岩波新書)

「ヘイト・スピーチ」が流行語になったのは2013年。「在日特権(そんなものはない)を許さない市民の会」が全国各地でデモや街宣を行い、いくつか刑事事件を起こしてから。ヘイトスピーチに対する抗議活動もできるようになり、法整備が必要という認識も生ま…

笠井潔/野間易通「3.11後の叛乱 反原連・しばき隊・SEALDs」(集英社新書)-1

2015年12月から半年かけて二人の間で交わされた交換エッセー。21世紀の社会運動に関与してきた人たちが、2011.3.11以後の変化を語り合う。もとは集英社のwebで公開されていたのを完結後に一冊にまとめた。一時期は全文がWebにあったが、現在公開されているの…

笠井潔/野間易通「3.11後の叛乱 反原連・しばき隊・SEALDs」(集英社新書)-2

2017/05/09 笠井潔/野間易通「3.11後の叛乱 反原連・しばき隊・SEALDs」(集英社新書)-1 2016年の続き。 2013年2月に呼びかけがあって同年9月に解散した「レイスストをしばき隊」。「しばき」という語感に惑わされてか(意図的な誤解か)、「しばき隊…