2013-01-01から1年間の記事一覧
1978年初出で当時のベストセラー。聞き取りと構成を糸井重里が行ったのも注目された。 父の家族は本人を除いて広島原爆で死亡。再婚した父から永吉が生まれる(1949年)が、数年後に死去。母は別の男と失踪。永吉は祖母との二人暮らし。貧乏暮らしであったが…
産業考古学シリーズともいうべき一冊。1987年に雑誌連載されて、1989年に単行本化。 ここでは、図案、商標に注目。すなわち、製造業と販売業の境がなく、消費者は「もの」を購入していた時代。企業は商品のイメージを的確に消費者に伝えるためにどのような工…
作家には、旅と相性の合う人とそうでない人がいる。最もディープな旅は無銭の貧乏旅行で、辺境深く迷い込み、機転のみが自分の武器であり、運命に翻弄されることを厭うことなく、別地に向かい、もしかしたら帰還することがかなわないかもしれないという境地…
1963年から1964年にかけて「週刊朝日」に連載されたルポ。毎回15枚くらいで、東京のあちこちにでかけて現在進行していることをデッサンするという仕事。競馬場の下から都庁(有楽町駅前にあったころ)の上まで。紙芝居屋や河渡しから工業倶楽部のトップまで…
著者は1987年ころに月島の一軒家を借りることにした。当時、レトロブームとか下町ブームとか都市論とか路上観察とか、そういう町を見て調べるのが流行っていた。それに触発された、かどうかはわからないけれど、月島という町を調べてみた。 月島は佃島と隣接…
イギリスの統計学者がかいた若い人向けの数学入門書。 小川洋子「博士の愛した数式」を読んで数の世界がおもしろいと思ったら、この本にトライしてみてはいかが。下記のように高校までの数学の復習になる。 扱う題材は、数(整数、分数、無理数、虚数など)…
1947年に編まれた暗号を主題にするミステリのアンソロジー。下にも書いたように、テクノロジーの発達は暗号を機智で解くことを不可能にしてしまった。本書は、ポーやドイルのような暗号小説の幸福な時代だったころを思い出すよすがになる。 序 レイモンド・…
全国の蔵を開けて覗くという贅沢な冒険。当主自身ですら数十年足を踏み入れていないという場所をみるというのであるから。 訪れた場所をリストアップすると、 南方熊楠 ・・・ ブリタニア百科事典のそろいと、キャラメル箱やマッチ箱にはいった粘菌標本。 泉…
「異都発掘」「怪奇の国ニッポン」(集英社文庫)「東京妖怪地図」(祥伝社文庫)の方法を東京や京都のような大都市ではなく、地方都市で行うことはできないか。そのときに、地方都市のモニュメントは人と企業の活動の成果ないし道楽としてできたものが多い…
もとの記事が書かれた1985年というと、近年の好況を受けて、金の流動性が高まり、結果としてものの価値が高いとみなされるようになった。とくに土地の価値が高いことになり、企業・個人が競って土地と建物を投資目的で購入した。そのとき、古い建物でそれほ…
クラシック音楽をよく聴くものにとっては19世紀はなじみのある時代ではある。ベートーヴェンの、ワーグナーの、マーラーの各時代のことを多少は知っているものだ。あるいは、ベルリオーズの、オッフェンバックの、ドビュッシーの各時代でもいい。しかし、そ…
1912年4月4日、当時世界最大の客船タイタニック号がイギリス・サザンプトンを出港し、ニューヨークを目指す航海にでた。乗客、乗務員は合計2208人。4月15日午前2時20分、氷山に衝突し、約2時間後に沈没。救助されたものは750人ほど。1400名弱が死亡した。…
2013/03/29 トーヴェ・ヤンソン「ムーミン谷の彗星」(講談社文庫) 2013/03/28 トーヴェ・ヤンソン「たのしいムーミン一家」(講談社文庫) 2013/03/27 トーヴェ・ヤンソン「ムーミンパパの思い出」(講談社文庫) 2013/03/26 トーヴェ・ヤンソン「ムーミン…
2013/01/22 柴谷篤弘「生物学の革命」(みすず書房) 2013/01/21 柴谷篤弘「反科学論」(みすず書房) 2013/01/18 柴谷篤弘「あなたにとって科学とは何か」(みすず書房) 2013/01/17 柴谷篤弘「日本人と生物学」(工作舎) 2013/01/16 柴谷篤弘「今西進化論…
テバイの都は危機に瀕していた。疫病、飢饉、家畜の死。都市の豊饒さが失われ、民が貧困に苦しむ。このようなとき、王はすべての責任を負わねばならない。そこで、テバイの王オイディプスはデルポイの神託を聞くことにした。 プロロゴス ・・・ ここで明らか…
2013/12/11 ヨーロッパ中世文学「アーサー王の死」(ちくま文庫)-1 第18章から最終章までは、聖杯の探求を終えたランスロットがアーサー王に叛旗を翻し自滅するまで。文庫の半分以上を占める。ここはほかの本で読んだことがないので、要約しておく。 聖杯…
例によって書誌はややこしい。15世紀半ば1469年にトーマス・マロリーという騎士であり罪人が1年で「アーサー王の死」のフランス語版などを参照して書いた。それを同世代のウィリアム・キャクストンが編纂して出版した。どうやら別の版をみると、だれか一人の…
最初のミレニアムの後半にケルトの伝承として語られていたものが西ヨーロッパの各地で流行した。それを文書にするようになったのが、12世紀あたり。同時多発的にまとめられたので、似たような話でも微妙に異なるヴァリアントになり、筆写生の誤記や改変で版…
サミュエル・バトラーの詳しい情報がない。とりあえず文庫の解説をまとめると、1835年イギリスで牧師の息子として生まれる。1854年にケンブリッジの聖ジョーンズ・カレッジに入学し、神学を勉強。卒業後、貧民街の牧師になるも、懐疑を抱いて断念。ニュージ…
「クリスマス・カロル」は読んだという読者が次のディケンズを読むときにいいだろう。なにしろディケンズの長編はたいてい2分冊、ときには4分冊にもなって、つまらないと感じたら(めったにないけど)苦痛になるほどの長さを誇るから。 墓堀り男をさらった…
長編探偵小説の創始者のひとりの遺作。ディケンズの長編はたいてい探偵小説風味の風俗小説という趣があるが、これは不可解な事件の謎解きがメインテーマのひとつ。たぶん構想の3分の1か4分の1で中絶したために、伏線は張りきれていないし、犯罪捜査が始ま…
2013/12/03 アレクサンドル・デュマ「モンテ・クリスト伯 上」(講談社)の続き モレル海運会社の若い航海士エドモン・ダンテスは、アラビアへの貿易航海を成功させ、美しい娘メルセデスと結婚することになり、その暁には船長になることが内定していた。それ…
自分が読んだのは1960年代に発刊された講談社の世界文学全集33と34巻の2冊本。のちに同じ訳者(新庄嘉章)で講談社文庫に5分冊の完訳本がでているが、こちらはたぶんダイジェスト。上下2段組みで一冊480ページの大冊であるとはいえ、大雑把な計算では原稿用…
1829年(著者27歳)に匿名で出版され、2年後の再販時にユゴー自身が序文を書いた。 ミステリでいうなら、事件は解決した。しかし関係者には重苦しいしこりが残った。なぜ犯人はあのような事件を起こしたのだろうと内省する。ここで「エンド」の文字がはいる。…
2011/02/19 モーリス・ルブラン「怪盗紳士リュパン」(創元推理文庫) 2011/02/18 モーリス・ルブラン「リュパンの冒険」(創元推理文庫) 2011/02/17 モーリス・ルブラン「リュパンの告白」(創元推理文庫) 2011/02/16 モーリス・ルブラン「リュパン対ホー…
2012/06/08 レイ・ブラッドベリ「たんぽぽのお酒」(晶文社) 2012/06/09 レイ・ブラッドベリ「ハロウィーンがやって来た」(晶文社) 2012/06/11 レイ・ブラッドベリ「火星の笛吹き」(徳間文庫) 2013/04/26 レイ・ブラッドベリ「何かが道をやってくる」(…
ホームズは事件の依頼人を一瞥しただけで、住んでいる土地から職業から秘密までを解き明かすのである。シュロックもその力を持っているのだが、常に間違ってしまう。依頼人もワトニイも(生)暖かくホームズの推理に感嘆するのであって、まことに優雅で美し…
名探偵シュロック・ホームズはベイグル街221B番地のアパートにワトニイ博士と同居している。今日も、依頼人の持ち込む事件を迷宮入りさせるのに余念がない。それでいて、底抜けの善人たちはシュロックの推理にやんやの喝さいを送る。 いわずとしれたホームズ…
続けて「歌おう、感電するほどの喜びを!」収録分から。 吾は歌う、この身の充電するまで! ・・・ 母を亡くしたあと、子供たちはある広告を見つける。「電子お祖母ちゃん」! 13歳のトムと11歳のティモシーはすぐにお祖母さんになつくが、末っ子のアガサはど…
原題は「I Sing The Body Electriv!」。初出は1980年代初め。サンリオ文庫は520ページもあるぶっとい文庫で、ハヤカワ文庫で再販されたときは「キリマンジャロ・マシーン」と「歌おう、感電するほどの喜びを!」の2冊に分けられた模様。ハヤカワ文庫版はもっ…