2018-08-01から1ヶ月間の記事一覧
1950年代のアメリカの田舎町。スーパーマーケットを開いている夫婦。そこに寄宿している独身の夫の弟。彼は仕事につかず、毎日新聞の懸賞クイズを解いている。「小さな緑の男」が次に行く先を1026のマス目の中から予測するのだ。この懸賞に独身男レイグル・…
フィリップ・K・ディックの小説でも「普通小説」なのでと油断したのか、ひどく気分を滅入らせるなあ。なにしろ、登場人物の全員が愚かしく、人を傷つけてばかりなのに、俺自身とそっくりなところをもっていて、彼らが語ったり行動したりするたびに、苦笑しな…
PKDの小説では、しばしば社会はきわめて不合理でどのようなルールでうごいているのはまったくわからなかったり、理解不能・コミュニケーション不能な存在に支配されている。いわば「狂った世界」である。その狂った存在は不可視であることが多いのだが、この…
2018/08/28 フィリップ・K・ディック「高い城の男」(ハヤカワ文庫)-1 1962年 以上の大状況は正面きっては書かれず、この状況に翻弄される主人公たちの会話の端々で垣間見えるに過ぎない。なので、メモを取るなどして、把握しておくことが必要。 占領者の側…
2018/08/28 フィリップ・K・ディック「高い城の男」(ハヤカワ文庫)-1 1962年 2018/08/27 フィリップ・K・ディック「高い城の男」(ハヤカワ文庫)-2 1962年 人為的に狂った世界に置かれている作中人物は、不合理や不条理や暴力などを妄想であるとか、誰か…
通常は中期から後期をつなぐ作品とされている。ここではポール・ウィリアムズ編「フィリップ・K・ディックの世界 消える現実」(ペヨトル工房) の長編作品一覧に基づき、1962年10月4日SMLA受理の日付を優先する。刊行は1972年。SMLAの日付を優先すると、作…
(以下の感想で「自閉症」「分裂症」などを使いますが、作中の用語として扱います。現実の症状とは一致しないことをご了解ください。) 火星の植民が開始されたが、あまりの不毛さに自給自足は遅々として進まない。脱出するものもおおい(なので映画「ブレー…
西メイン州の田舎町。狭い町で、人々がうろちょろ。PKDの眼は、社会的な弱者に注がれる。たとえば、デレビ販売&修理店の店員でちょっと頭のあたたかい黒人スチュアートであり、1964年生まれの「海豹(ママ)」男の少年であるホッピィであり(同年におきたサ…
近未来。世界戦争が起きて、中国の兵器によって人口激減と出生率の極端な低下が起きている。老化除去手術で長命になったが、タイタンの知的生物であるヴァグによって緩やかに支配されている。このヴァグは人間と似た形態になることもできて、外見では見分け…
ともあれ大量のキャラクターが数ページごとにでてきて、それぞれのオブセッションにとらわれている悪夢や不安を語っている。失業、オーディション不合格、赤字続きの事業、特権階級からの蔑視、体臭恐怖症、政府に監視されている不安、不倫が発覚する恐れな…
PKDの長編では膨大な登場人物が現れて、それぞれが連絡なしに動いていって、最後にまとまるという仕掛けがおおい。うまくいくことはまれで、たいていは本筋を追うのも困難になる。この長編ではエリック・スイートセントという人工臓器移植医の視点で書かれて…
シミュラクラのプログラマーであるチャック・リッタースドルフは、離婚の危機。なにしろ妻のメアリーはマリッジ・カウンセラーとして成功していて、最も有名なコメディアンバニー・ヘントマンの支援を受けて大成功。夫婦関係を清算して、アルファ系衛星で心…
PKDの長編は登場人物が多くて、それぞれがしばらく脈絡ないストーリーを進めるので、しばらく何が本筋なのかわからないことが多いのだが、この長編は3人にフォーカスしているのでわかりやすい。とはいうものの、10ページごとに筋がずれるので、追いかける…
事前に短編「ウォー・ゲーム」を読んでおいた方がよい。この短編の描かれた状況が長編「ザップ・ガン」の延長にあり、短編にでてきたギミックが長編にも登場するから。 とはいえ、作者本人が「最初の150ページは、ほんとうに読めないよ。文字通り読めないん…