odd_hatchの読書ノート

エントリーは3200を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2024/11/5

芸術

ライナー・マリア・リルケ「ロダン」(岩波文庫) ロダン作品の評価は凡庸だろうが、ロマン主義芸術観を知るのに便利な小著。

このブログからわかるように、自分は小説と西洋古典音楽には一家言を持つようなマニアであるのだが、それ以外の芸術にはうとい。本書を読むまで、ロダンが1840年生まれ1917年没ということすら知らなかった。作品も有名な一つしか知らない。なので、ロダンに…

高階秀爾「近代絵画史 下」(中公新書) 近代絵画は実験なのだ。色彩と形態の目新しさにどれだけ心惹かれるかで見ればよいのだ。

2025/06/11 高階秀爾「近代絵画史 上」(中公新書) 19世紀のフランス絵画史。近代を把握するにはそれ以前のスタイルを知る必要があるが、ここには書かれていない。 1975年の続き 1972~74年にかけて中央公論社が「世界の名画」全24巻を出した。各巻の解説を…

堀田善衛「美しきもの見し人は」(新潮文庫)-1

ヨーロッパの美に近づこうとするには、「ギリシャ・キリスト教・科学精神」を我々のものにしないといけないが、自然に入ってきてくれるものではない。なので無理と努力がいることになるが、それが精神のどの部分かをねじまげることになる。でもここではなる…

堀田善衛「美しきもの見し人は」(新潮文庫)-2

2016/04/20 堀田善衛「美しきもの見し人は」(新潮文庫)-1 の続き。 「愛するものについて語り出せば、やはり尽きせぬ思いがある(P224)」という作家が古今東西の芸術作品を眺め歩き、語る随筆。その後半。 海老原喜之助の作品を見て、「手応えのある人生を…

シェーンベルク/カンディンスキー「出会い」(みすず書房) ユダヤ人芸術家の出会いとすれ違い。カンディンスキーはよく我慢できたなあ。

シェーンベルク1874-1951、カンディンスキー1866-1944。彼らの仕事を紹介するときに、それぞれ互いの名前が出ることはまずない。しかし、この本によると、1910-30年代にかけて彼らは文通をして、深い交友があり、ロシア革命で決裂した。その関係と対立(とい…

黒井千次「永遠なる子供 エゴン・シーレ」(河出書房新社) シーレの作風の変化は、彼の自意識が中二病のような子供の独我論から、大人になって他者がいる世界を発見したという青年男性の成長心理で説明できる。

「1918年にウィーンで28歳の生を閉じたシーレの絵が現代人をひきつけてやまない秘密はなにか。天才画家の短い生涯をたどり、秘められた精神と感覚のドラマを追究する画期的労作。」 初版は1984年。たしかにこのあと数年間、バブルが終わるまでの間、エゴン・…

北川民次「絵を描く子供たち」(岩波新書) 子どもは好き勝手に才能を発揮する。でもほとんどは怠惰か高慢でつぶれたり、30歳前に理由なくタレントが消えてしまうという。

著者は1894年生まれの画家。20歳でアメリカにわたりニューヨークの美術学校で勉強。小金をためたので、中南米を漫遊しようとおもっていたが、キューバで有金を盗られてしまう。メキシコで聖画売りなどをしながら生活する。ここまでの著者の放浪生活はまるで…