2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧
2015/03/27 野間宏「真空地帯」(新潮文庫)-1 2015/03/30 野間宏「真空地帯」(新潮文庫)-2 「暗い絵」「崩壊感覚」でみられた句読点のない長い文章、対象の執拗な描写、内面で噴き出す声、現在と過去のカットバック、生硬な思想を交わす会話、そういう「…
2015/03/27 野間宏「真空地帯」(新潮文庫)-1 木谷の過去の事件は、当時彼が勤務していた経理部でのできごと。新任の経理部担当尉官が赴任すると、それまでの尉官と対立が生じる。二人は派閥をそれぞれつくり、敵対する。前者がインテリ風で老獪であるとす…
あれから2年、木谷上等兵が原隊に復帰した。その空白の2年間を知るものは数少ない。時期は1944年1月。イタリアがファシスト政権を倒して連合軍に降伏し、バジリオ政権が樹立したころだ。この国の戦争は各所で膠着状態。その間、この国の戦力はどんどん消耗し…
1949年昭和24年に東大協同組合出版部が刊行したもの。そのまえに東大生のみの戦没学生の手記「はるかなる山河に」を出版していて、それを母体にして、ほかの全国の大学高等専門学校出身者の遺稿を集めた。集まったもののうち、75名分をこの題名で出版した。 …
目の付け所が違うなあ。「あの戦争」を語るとなると、切り口はいろいろあれど、被害者か兵士であった日本人というところに落ち着く。空襲や機銃射撃、空腹、いじめ、買い出し、インフレ、物資不足、教練の記憶か、新兵訓練に外地派遣、死地、飢餓、収容所体…
1938年(昭和13年)第1次近衛内閣によって国家総動員法が制定された。これによって、総力戦遂行のため国家のすべての人的・物的資源を政府が統制運用できるようになった。経済が国家統制になり(資源分配、生産計画、商品分配などが市場を経由しないようにな…
昭和恐慌の時代は別の本の感想でまとめてきた。 徳川直「太陽のない街」(新潮文庫) ・・・ 同時代の不況と労働争議の様子をみるのによい。 高橋亀吉/森垣淑「昭和金融恐慌史」(講談社学術文庫) ・・・ 高橋亀吉は井上準之助の向うを張って、金解禁反対論…
昭和恐慌のうち、1930年に実施された金解禁に焦点をあてる。昭和恐慌の原因を探ると、それこそ日露戦争くらいまでさかのぼることになるのだが、そこまではみない。またここでは1923年の関東大震災および震災手形、あるいは蔵相の失言から発した1927年の取り…
1955年に書かれて、1959年に改訂版のでた新書。改訂版がでるにあたって、「昭和史論争」という論争があったと聞く。とりあえずその論争の中身には触れないで、この本を読むことにする。 ・昭和史ではあるが、出版された時期を見ての通り、昭和34年までの出来…
「内には立憲主義、外には帝国主義」とまとめられる大正デモクラシーの、別の、多彩な面をみようとする研究。もとは1974年に刊行。 大正デモクラシーは1905年から1925年にかけての民主主義運動。主な政治目標は、普通選挙の実施、軍縮と徴兵制の改革、税制改…
自由民権運動の単著は出さなかったが、折に触れて書いた論文を収録。 自由民権運動1951 ・・・ 明治維新前から民衆の民主改革要求はあったが、散発的な運動にとどまった。明治政府ができて封建的な体制はなくなるかにみえたが、官僚制と資本主義を基とする政…
1913年生まれ2001年没の歴史家。近代日本史を専攻し、羽仁五郎の大きな影響を受ける。もっとも師のアジテーター的なところは継承していないで、アカデミシャンとして冷静な発言をする。師の影響もあって、歴史の人民解放という視点を強調する。 明治維新につ…
もとは1987年。1991年に文庫化されたので改訂した。読み返すと、このあとの著作の基本的な考えがほぼ出そろっている。一方、80年代は進行中のできごとであったので、彼の予測通りに進行しなかったことが多々ある。 1 近代化と技術革新 ・・・ 1945年以降のこ…
2015/03/11 伊藤修「日本の経済」(中公新書)-1 後半は、経済の制度についての現在(2007年)のまとめ。1945年に終わった戦争で、この国の仕組みのかなりがゼロベースで構築しなおすことになった。そのとき、この国は小資源・生産財の不足・投資の不足・過剰…
著者の師匠は中村隆英だそうで、中村隆英の著作では「昭和恐慌と経済政策」「昭和経済史」講談社学術文庫でお世話になりました。 この本は2007年時点でのこの国の経済を振り返るという意図をもつ。前半は経済史、後半は各論(同時にさまざまな経済学分野の紹…
あの長大な「ゴヤ」を書き終えて(朝日ジャーナルに長期連載)、スペインに移住することにした1977年から79年にかけてのエッセイ、インタビューなど。ちょうどスペインのフランコ総統が死去したときに現地にいたので、そこでのてんやわんやが面白かった。と…
18世紀から19世紀の画家ゴヤの評伝を書くという途方もない計画に取り掛かり、めったに公開されない自筆画を見ることを目的のひとつにスペインに移住する。そして奥さんの運転する自動車に乗って、スペイン各地を移動し、見物し、本を読み、歴史をひもとく。…
「スペイン断章〈上〉歴史の感興 」(岩波新書)では主題は「歴史」であって、どこにいっても歴史がものとしてあらわれ、そこに茫然自失する。それから5年たった1982年に出たこちらの本では、前著に書かなかったところを書く。すなわち、スペイン市民戦争と…
1980年代頭に書かれたエッセーや往復書簡などを収録して、1986年に出版。 まず注目は、「歴史・宗教・国家」という長いエッセイ。書き方を見ると、講演の書き起こし。ここには、ヨーロッパ中世を研究して見出したことを網羅的に語っている。内容は、「ヨーロ…
堀田善衛は1918年、加藤周一は1919年生まれで同世代。共通するのは、戦後いち早く外国を周遊し、あるいは生活拠点にしてきたこと。そのうえ、勉強家で博識。彼らが1986年にヨーロッパについて語り合う。当時は、ソ連ほかの社会主義国があって渡航制限があっ…