odd_hatchの読書ノート

エントリーは2200を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。

イギリス文学

アントニイ・バージェス「1985年」(サンリオSF文庫)-3

2015/12/07 アントニイ・バージェス「1985年」(サンリオSF文庫)-1 2015/12/08 アントニイ・バージェス「1985年」(サンリオSF文庫)-2 かんたんにストーリーをまとめると、歴史教師のベブ・ジョーンズは組合運動史ばかりを教える公教育にすっかり…

アントニイ・バージェス「1985年」(サンリオSF文庫)-2

2015/12/07 アントニイ・バージェス「1985年」(サンリオSF文庫)-1 では「1985年」の社会をみることにしよう。 オーウェル「1984年」では人口の1.5%の特権階級が「党」を作って、国家を統制する社会になっている。バージェス「1985年」ではそのような特…

アントニイ・バージェス「1985年」(サンリオSF文庫)-1

このエントリーを読む前に、オーウェル「1984年」を読むことをお勧めします。このエントリーは、「1984年」の感想とつながっていますので、先に以下のエントリーを読むことを希望します。 2015/12/01 ジョージ・オーウェル「1984年」(ハヤカワ文庫)-1 2…

ジョージ・オーウェル「1984年」(ハヤカワ文庫)-4

2015/12/01 ジョージ・オーウェル「1984年」(ハヤカワ文庫)-1 2015/12/02 ジョージ・オーウェル「1984年」(ハヤカワ文庫)-2 2015/12/03 ジョージ・オーウェル「1984年」(ハヤカワ文庫)-3 オーウェルが「1984年」でみた全体主義社会は次の…

ジョージ・オーウェル「1984年」(ハヤカワ文庫)-3

2015/12/01 ジョージ・オーウェル「1984年」(ハヤカワ文庫)-1 2015/12/02 ジョージ・オーウェル「1984年」(ハヤカワ文庫)-2 さて、物語は39歳のうだつのあがらない(うだつをあげることがこの社会で可能かどうかはおいておくとして)ウィンストン…

ジョージ・オーウェル「1984年」(ハヤカワ文庫)-2

2015/12/01 ジョージ・オーウェル「1984年」(ハヤカワ文庫)-1 日常風景で細部が語られる。物資は極端に少なく、かつてあったものは入手できないようになり、教育水準は年々低下する。人々は労働で疲労していて、少ない余暇も党活動やボランティアや集会…

ジョージ・オーウェル「1984年」(ハヤカワ文庫)-1

タイトルの1984年が現実の年になった時、書店には翻訳と原書が山積みになり、雑誌で特集が組まれたりした。当時は、なるほどこの小説の内容は圧倒的ではあるが、その社会描写は現在(当時)のリアルには即していない、というような評価だったように思う。実…

ヨーロッパ中世文学「アーサー王の死」(ちくま文庫)-2

2013/12/11 ヨーロッパ中世文学「アーサー王の死」(ちくま文庫)-1 第18章から最終章までは、聖杯の探求を終えたランスロットがアーサー王に叛旗を翻し自滅するまで。文庫の半分以上を占める。ここはほかの本で読んだことがないので、要約しておく。 聖杯…

ヨーロッパ中世文学「アーサー王の死」(ちくま文庫)-1

例によって書誌はややこしい。15世紀半ば1469年にトーマス・マロリーという騎士であり罪人が1年で「アーサー王の死」のフランス語版などを参照して書いた。それを同世代のウィリアム・キャクストンが編纂して出版した。どうやら別の版をみると、だれか一人の…

サミュエル・バトラー「エレホン」(岩波文庫)

サミュエル・バトラーの詳しい情報がない。とりあえず文庫の解説をまとめると、1835年イギリスで牧師の息子として生まれる。1854年にケンブリッジの聖ジョーンズ・カレッジに入学し、神学を勉強。卒業後、貧民街の牧師になるも、懐疑を抱いて断念。ニュージ…

チャールズ・ディケンズ「ディケンズ短編集」(岩波文庫)

「クリスマス・カロル」は読んだという読者が次のディケンズを読むときにいいだろう。なにしろディケンズの長編はたいてい2分冊、ときには4分冊にもなって、つまらないと感じたら(めったにないけど)苦痛になるほどの長さを誇るから。 墓堀り男をさらった…

チャールズ・ディケンズ「エドウィン・ドルードの謎」(創元推理文庫)

長編探偵小説の創始者のひとりの遺作。ディケンズの長編はたいてい探偵小説風味の風俗小説という趣があるが、これは不可解な事件の謎解きがメインテーマのひとつ。たぶん構想の3分の1か4分の1で中絶したために、伏線は張りきれていないし、犯罪捜査が始ま…

オルダス・ハックスリー「すばらしい新世界」(講談社文庫)

1932年初出のディストピア小説。ディストピアであると思えるのは読者だけであって、登場人物たちは幸福そうに見える。失業がなく、娯楽が十分に提供されている世界では生活も精神も自足するようだからね。 冒頭で、人間が人工授精されて容器で発育するという…

アンナ・カヴァン「氷」(サンリオSF文庫)

奇妙な小説だ。世界が突然、氷で覆われることになり、行政・国家機能が停止する。北の国から徐々に氷河に襲われるようになり、次々と氷の下に埋もれてしまう。人は南に逃げていくが、氷の速度が上回る。この環境激変の理由は一切説明がないし、それに対抗し…

グレアム・グリーン「情事の終わり」(早川書房)

新潮文庫の田中西二郎訳ではなくて、早川書房全集版の氷川玲二訳。そのため人物名が変わっていて、Sarahがセアラとなっている。 「私たちの愛が尽きたとき、残ったのはあなただけでした。彼にも私にも、そうでした―。中年の作家ベンドリクスと高級官吏の妻サ…

グレアム・グリーン「第三の男」(ハヤカワ文庫)

「作家のロロ・マーティンズは、友人のハリー・ライムに招かれて、第二次大戦終結直後のウィーンにやってきた。だが、彼が到着したその日に、ハリーの葬儀が行なわれていた。交通事故で死亡したというのだ。ハリーは悪辣な闇商人で、警察が追っていたという…

ロレンス・スターン「センチメンタル・ジャーニー」(岩波文庫)

スターンがこの本を書いたのは16歳のとき、ではなく50歳のころに療養でフランスを訪れた後のこと。 病弱だったスターンはこれが出版された1768年に55歳でなくなった。「センチメンタル」というのは現在のように感傷的・少女趣味的な意味を持っていないで、ま…

ジョナサン・スウィフト「ガリバー旅行記」(新潮文庫)

かつては新潮文庫の中野好夫訳で読んだが、今回は青空文庫の原民喜訳。後者は小学高学年か中学生向けに作られた簡略版と見える。スウィフトの細かい社会や政治の描写はかなり省略されている。たしかに大人の読者であっても18世紀のイギリス統治の状況がのみ…

イギリス古典「ベーオウルフ」(岩波文庫)

1960年代に小学館がカラー版名作全集「少年少女 世界の文学 1〜30巻」を出していた。そのうち2冊を親が買い、小学生の時に繰り返し読んだ。一つは日本のもので、宮沢賢治「風の又三郎」に黒岩涙香「死美人」があり、イギリス編にはスティーブンソン「宝島」…

グレアム・グリーン「おとなしいアメリカ人」(早川書房)

「ヴェトナム戦争直前のサイゴンで一人のアメリカ人青年が無惨な水死体となって発見された。引退間際のイギリス人記者ファウラーは青年と美しい地元娘を争っていたものの、アジアを救うという理想に燃えていた純真なライバルの死に心を痛める。しかし、ファ…

松山巌「乱歩と東京」(ちくま学芸文庫)

探偵小説作家・江戸川乱歩登場。彼がその作品の大半を発表した1920年代は、東京の都市文化が成熟し、華開いた年代であった。大都市への予兆をはらんで刻々と変わる街の中で、人々はそれまで経験しなかった感覚を穫得していった。乱歩の視線を方法に、変…