イギリス文学
そういえばヨーロッパのことは、ゲルマン民族の大移動から世界史に登場するのだが、それ以前のことは知らなかった。高校の教科書には載っていなかったので記憶がないはずなので、本書でおぎなうことにしよう。 そうすると、考古学的な証拠からすると太古には…
夏目漱石が低評価をくだしたデフォー(1660-1731)の小説を読み直す(夏目漱石「文学評論 3」(講談社学術文庫))。本文庫には「完訳」がうたわれているが、解説を見ると昭和の時代に文庫になったものも完訳としてよさそうだ。おそらく大きな異同はないは…
2020/05/18 ダニエル・デフォー「ロビンソン・クルーソー(完訳版)」(中公文庫)-1 1719年 神を待ち望んでいたシモーヌ・ヴェイユの前に神は現れなかったが、ロビンソン・クルーソーの前には現われた。その神は慈愛に満ちた許すものではなく、不信心で徳行…
2020/05/18 ダニエル・デフォー「ロビンソン・クルーソー(完訳版)」(中公文庫)-1 1719年2020/05/15 ダニエル・デフォー「ロビンソン・クルーソー(完訳版)」(中公文庫)-2 1719年 不思議なのは、中南米を舞台にしているのに、でてくる動植物がヨーロッ…
2015/12/07 アントニイ・バージェス「1985年」(サンリオSF文庫)-1 2015/12/08 アントニイ・バージェス「1985年」(サンリオSF文庫)-2 かんたんにストーリーをまとめると、歴史教師のベブ・ジョーンズは組合運動史ばかりを教える公教育にすっかり…
2015/12/07 アントニイ・バージェス「1985年」(サンリオSF文庫)-1 では「1985年」の社会をみることにしよう。 オーウェル「1984年」では人口の1.5%の特権階級が「党」を作って、国家を統制する社会になっている。バージェス「1985年」ではそのような特…
このエントリーを読む前に、オーウェル「1984年」を読むことをお勧めします。このエントリーは、「1984年」の感想とつながっていますので、先に以下のエントリーを読むことを希望します。 2015/12/01 ジョージ・オーウェル「1984年」(ハヤカワ文庫)-1 2…
2015/12/01 ジョージ・オーウェル「1984年」(ハヤカワ文庫)-1 2015/12/02 ジョージ・オーウェル「1984年」(ハヤカワ文庫)-2 2015/12/03 ジョージ・オーウェル「1984年」(ハヤカワ文庫)-3 オーウェルが「1984年」でみた全体主義社会は次の…
2015/12/01 ジョージ・オーウェル「1984年」(ハヤカワ文庫)-1 2015/12/02 ジョージ・オーウェル「1984年」(ハヤカワ文庫)-2 さて、物語は39歳のうだつのあがらない(うだつをあげることがこの社会で可能かどうかはおいておくとして)ウィンストン…
2015/12/01 ジョージ・オーウェル「1984年」(ハヤカワ文庫)-1 日常風景で細部が語られる。物資は極端に少なく、かつてあったものは入手できないようになり、教育水準は年々低下する。人々は労働で疲労していて、少ない余暇も党活動やボランティアや集会…
タイトルの1984年が現実の年になった時、書店には翻訳と原書が山積みになり、雑誌で特集が組まれたりした。当時は、なるほどこの小説の内容は圧倒的ではあるが、その社会描写は現在(当時)のリアルには即していない、というような評価だったように思う。実…
2013/12/11 ヨーロッパ中世文学「アーサー王の死」(ちくま文庫)-1 第18章から最終章までは、聖杯の探求を終えたランスロットがアーサー王に叛旗を翻し自滅するまで。文庫の半分以上を占める。ここはほかの本で読んだことがないので、要約しておく。 聖杯…
例によって書誌はややこしい。15世紀半ば1469年にトーマス・マロリーという騎士であり罪人が1年で「アーサー王の死」のフランス語版などを参照して書いた。それを同世代のウィリアム・キャクストンが編纂して出版した。どうやら別の版をみると、だれか一人の…
サミュエル・バトラーの詳しい情報がない。とりあえず文庫の解説をまとめると、1835年イギリスで牧師の息子として生まれる。1854年にケンブリッジの聖ジョーンズ・カレッジに入学し、神学を勉強。卒業後、貧民街の牧師になるも、懐疑を抱いて断念。ニュージ…
「クリスマス・カロル」は読んだという読者が次のディケンズを読むときにいいだろう。なにしろディケンズの長編はたいてい2分冊、ときには4分冊にもなって、つまらないと感じたら(めったにないけど)苦痛になるほどの長さを誇るから。 墓堀り男をさらった…
長編探偵小説の創始者のひとりの遺作。ディケンズの長編はたいてい探偵小説風味の風俗小説という趣があるが、これは不可解な事件の謎解きがメインテーマのひとつ。たぶん構想の3分の1か4分の1で中絶したために、伏線は張りきれていないし、犯罪捜査が始ま…
1932年初出のディストピア小説。ディストピアであると思えるのは読者だけであって、登場人物たちは幸福そうに見える。失業がなく、娯楽が十分に提供されている世界では生活も精神も自足するようだからね。 冒頭で、人間が人工授精されて容器で発育するという…
奇妙な小説だ。世界が突然、氷で覆われることになり、行政・国家機能が停止する。北の国から徐々に氷河に襲われるようになり、次々と氷の下に埋もれてしまう。人は南に逃げていくが、氷の速度が上回る。この環境激変の理由は一切説明がないし、それに対抗し…
新潮文庫の田中西二郎訳ではなくて、早川書房全集版の氷川玲二訳。そのため人物名が変わっていて、Sarahがセアラとなっている。 「私たちの愛が尽きたとき、残ったのはあなただけでした。彼にも私にも、そうでした―。中年の作家ベンドリクスと高級官吏の妻サ…
「作家のロロ・マーティンズは、友人のハリー・ライムに招かれて、第二次大戦終結直後のウィーンにやってきた。だが、彼が到着したその日に、ハリーの葬儀が行なわれていた。交通事故で死亡したというのだ。ハリーは悪辣な闇商人で、警察が追っていたという…
かつては新潮文庫の中野好夫訳で読んだが、今回は青空文庫の原民喜訳。後者は小学高学年か中学生向けに作られた簡略版と見える。スウィフトの細かい社会や政治の描写はかなり省略されている。たしかに大人の読者であっても18世紀のイギリス統治の状況がのみ…
1960年代に小学館がカラー版名作全集「少年少女 世界の文学 1〜30巻」を出していた。そのうち2冊を親が買い、小学生の時に繰り返し読んだ。一つは日本のもので、宮沢賢治「風の又三郎」に黒岩涙香「死美人」があり、イギリス編にはスティーブンソン「宝島」…
「ヴェトナム戦争直前のサイゴンで一人のアメリカ人青年が無惨な水死体となって発見された。引退間際のイギリス人記者ファウラーは青年と美しい地元娘を争っていたものの、アジアを救うという理想に燃えていた純真なライバルの死に心を痛める。しかし、ファ…