odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

ベトナム戦争

小田実「「ベトナム以後」を歩く」(岩波新書) 1982年ふつうの国のベトナムとジェノサイドのあとのカンボジアを旅する。

1982年10月に2週間ほどヴェトナムとカンボジアを取材したのをベースに、1984年に出版した。この年にはまだ「社会主義諸国」があって、なんとかしよう/なんとかなるだろうという希望を持っていた時代だった。 1 「ふつうの国」としてのベトナム ・・・ 戦争の…

吉野源三郎「同時代のこと」(岩波新書) 1960年代のベトナム反戦運動の理論的な水準を示す一冊。

著者は1899年生まれ。東大哲学科を卒業。マルクス主義を勉強して、現実変革の意思を持ったが、当時はかなわず。戦後は岩波書店の雑誌「世界」の編集長を長く務める。「世界」の関心には日米安保条約があり、その関連でヴェトナム戦争のレポや論文をたくさん…

生井英考「ジャングル・クルーズにうってつけの日」(ちくま学芸文庫)-4 ヴェトナム戦争後に生まれたメタファー。記念碑、小説、迷彩服。

2014/07/14 生井英考「ジャングル・クルーズにうってつけの日」(ちくま学芸文庫)-1 2014/07/15 生井英考「ジャングル・クルーズにうってつけの日」(ちくま学芸文庫)-2 2014/07/16 生井英考「ジャングル・クルーズにうってつけの日」(ちくま学芸文庫)-3…

生井英考「ジャングル・クルーズにうってつけの日」(ちくま学芸文庫)-3 地上兵や飛行兵その他の戦闘員たちが経験した戦争のシンボル。さまざまなヴェトナム戦争の「ユニーク」さによって、兵士の残虐行為や理不尽な仕打ちが詳細に描かれる。 

2014/07/14 生井英考「ジャングル・クルーズにうってつけの日」(ちくま学芸文庫)-1 2014/07/15 生井英考「ジャングル・クルーズにうってつけの日」(ちくま学芸文庫)-2 第2部の「表現」をうけて、地上兵や飛行兵その他の戦闘員たちが経験した戦争のシンボ…

生井英考「ジャングル・クルーズにうってつけの日」(ちくま学芸文庫)-2 ヴェトナム戦争を同時代の人々がどのように「表現」したか。家に居ながらにしてみることができた戦争。

2014/07/14 生井英考「ジャングル・クルーズにうってつけの日」(ちくま学芸文庫)-1 第1部の「印象」を受けて、ヴェトナム戦争を同時代の人々がどのように「表現」したかをみる。この戦争がユニークなのは、TVカメラが入り、その日に起きたことが当日の夕…

生井英考「ジャングル・クルーズにうってつけの日」(ちくま学芸文庫)-1 1962年から1969年までのアメリカの参戦からベトナムでの戦いの激化まで。

戦争をまるごと全体とらえるというのはだんだん難しくなっていく。古い戦争では、ある特別な会戦に注目することによって、軍隊、政治、経済、大衆の生活などへの影響を表現することができた。表現されたものに「全体」が含まれていると錯誤することができた。…

石川文洋「戦場カメラマン」(朝日文庫)-2 アメリカ撤退後のベトナム周辺ではそれぞれの民族が互いに憎悪と差別の感情で戦争と残虐行為が行われる。

2014/07/10 石川文洋「戦場カメラマン」(朝日文庫)-1 1972年のパリ会談のあと、アメリカ軍の撤退が発表される。それと軌を一にして、北ヴェトナム政府が西側諸国のジャーナリストを招待した。その一員になったことから、しばらく南ヴェトナムの取材が許可…

石川文洋「戦場カメラマン」(朝日文庫)-1 ベトナム戦争のアメリカ兵。緊張してばかりの兵士は疲労の極で酒や麻薬に溺れ、村人への残虐行為になって発散する。

著者は沖縄生まれ、東京育ち。沖縄戦の前に疎開していたので、戦禍に会うことはなかったが、親類縁者に多数の死者がでた。そのことを知る祖母がときおり登場し、当時を述懐する。その言葉が、以下のヴェトナム戦争とそれ以降の戦場の被災者、被害者に重ねら…

開高健「ベトナム戦記」(朝日文庫) 1964-65年に国家の後ろ盾なくベトナムを歩いた作家のルポ。戦場で死にそうな目に会う。

作家は1964年末から1965年初頭の100日間をベトナムに過ごした。北の共産党が反抗を組織し、南の解放戦線が独立戦争を開始した。アメリカの支援を受けた政府があったが誰も信用していなくて、南ベトナム軍の将校は定期的にクーデターを起こしていた。金のある…

開高健「渚から来るもの」(角川文庫) 東南アジアの架空の国アゴネシアを舞台にした「ベトナム戦記」の小説版。

もとは1966年1月から10か月間朝日ジャーナルに連載された小説。ずっと単行本化されなかったので、1970年代に新潮社が出した「全仕事」には収録されていない。単行本になったのは1980年で、1983年に文庫化。 東南アジアの架空の国アゴネシア。1940年までフラ…

開高健「歩く影たち」(新潮文庫) ベトナム戦争体験の小説化。ノンフィクションやエッセイの切実さはここにはない。

兵士の報酬 ・・・ ベトナムのCゾーンで大隊ほぼ全滅の戦いから生還した日本人記者の3日間の休暇。アメリカの曹長と食い、飲み、買う。休暇が終えていないのに、曹長は戦場に戻るという。「渚から来るもの」の終わったところから始まるノヴェル。ストーリー…

岡村昭彦「南ヴェトナム戦争従軍記」(岩波新書) 戦争当事国がメディア管理をしていない時代にフリーライターが潜入ルポした。現代戦争のリアルを伝える。

1962-64にかけての南ヴェトナムの従軍記。1960年にベトナム解放戦線が作られ、ゲリラ戦が始まる。ゴ・ディン・ジエム大統領は直ちに対抗。この政府をアメリカが支援し、軍事顧問を派遣する。ゴ・ディン・ジエム大統領が独身のカソリック教徒で、極めて質素な…

本多勝一「アメリカ合州国」(朝日新聞社) 差別を経験したいなら被差別者と行動すればよい。1960年代の命がけの取材まとめ。

1969年に著者が「アメリカ」という国を取材した時の模様。 1.ベトナム戦争から帰郷したブライ軍曹 ・・・ 1969年はベトナムに派遣された米軍兵士数が最大になった年。この時最初に兵士が撤退された。その黒人軍曹を取材する。白人カメラマンなどと同行した…

グレアム・グリーン「おとなしいアメリカ人」(早川書房) 1950年代前半、覇権国から没落したイギリスからみると新しい覇権国アメリカの言動はナイーブなのに厄介ごとばかり起こす青二才。

「ヴェトナム戦争直前のサイゴンで一人のアメリカ人青年が無惨な水死体となって発見された。引退間際のイギリス人記者ファウラーは青年と美しい地元娘を争っていたものの、アジアを救うという理想に燃えていた純真なライバルの死に心を痛める。しかし、ファ…

結城昌治「ゴメスの名はゴメス」(光文社文庫) 1962年ベトナム首都で起きたスパイ事件。同時代の緊迫はノンフィクションのほうが優れていた。

「失踪した前任者・香取の行方を捜すために、内戦下のサイゴンに赴任した坂本の周囲に起きる不可解な事件。自分を尾行していた男が「ゴメスの名は・・・」という言葉を残して殺されたとき、坂本は、熾烈なスパイ戦の火中に投げ出された。香取の安否は? そし…

笠井潔「サイキック戦争」(講談社文庫) 日本の根っこにつながる一族の血に覚醒した英雄が人類の巨悪=ファシズムを打倒して宇宙革命に参加する。

あなたは炎の竜に君臨する王者――謎の女の言葉はいったい何を意味するのか。呪われた地を封印するべく信州山深く籠っていた竜王翔は、虐殺と地獄絵さながらのカンボジアに潜入。密林の中で翔と<金色の目の男(レジュー・ドール)>との超能力が激突する。未…