odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

2020-08-01から1ヶ月間の記事一覧

アガサ・クリスティ「なぜ、エヴァンズに頼まなかったか」(ハヤカワ文庫) 子供じみた青年男女が冒険を通じて、角突き合いそして事件の大団円とともにロマンスも成就する。頼りない男をリードするのは行動的な女性。

視力が落ちて退役することになったボビー青年は牧師館に間借りしている。ゴルフをしていたらとんでもないミスショット。ボールを探しに行くと瀕死の男性が倒れている。いまわのきわに語ったのはタイトルの言葉。転落事故で一件落着したが、事件の話を周囲に…

アガサ・クリスティ「ひらいたトランプ」(ハヤカワ文庫) 四人しか容疑者がいないのに全員犯人にはなりえない。多すぎる探偵が事件をひっかきまわす。

奇妙な大金持ちのシャイタナ氏はポアロに「生きた犯罪コレクションをみせましょう」と、自宅の(コントラクト・)ブリッジのパーティに招待した。二組(一組4人)のチームで徹夜でブリッジを遊ぶ。シャイタナ氏はゲームに加わらないで、ブランデーをたしな…

アガサ・クリスティ「殺人は癖になる」(創元推理文庫)「メソポタミアの殺人」「メソポタミア殺人事件」とも 舞台はシリア。イスラエル建国以前の中東はイギリス帝国主義支配下にあったので、白人には安全。

原題「Murder in Mesopotamia」1936年はハヤカワ文庫で「メソポタミアの殺人」、新潮文庫で「メソポタミア殺人事件」、創元推理文庫で「殺人は癖になる」。創元推理文庫は中盤で事件を担当することになったポワロの口に出した言葉から。そのときには予想され…

アガサ・クリスティ「そして誰もいなくなった」(ハヤカワポケットミステリ)-2 犯罪を放置できずに制裁を個人的に実行しようというのは「真犯人」の善ではあっても、社会の正義を実現したものとは思えない。

15年振りの再読。楽しんだ。前回の感想は、アガサ・クリスティ「そして誰もいなくなった」(ハヤカワポケットミステリ) 8人の老若男女がインディアン島に招かれる。屋敷があり、執事とコックの夫妻がいる。合計10人が島にいる。最初のディナーのあと、な…

アガサ・クリスティ「オリエント急行の殺人」(ハヤカワ文庫) この事件は西ヨーロッパがアメリカを象徴的に殺すことだったのかも。

西洋各国の鉄道路線を連結してヨーロッパを横断できる長距離列車にしようという構想で作られたのが、オリエント急行。就業は1883年にさかのぼるというからとても古い。最盛期はこの小説の書かれた1930年代だそうで、カレーないしパリからイスタンブールまで…

アガサ・クリスティ「マダム・ジゼル殺人事件」(新潮文庫)「大空の死」「雲をつかむ死」とも

原題「Death in the Clouds」は、創元推理文庫では「大空の死」、ハヤカワ文庫では「雲をつかむ死」、新潮文庫は「~~殺人事件」でまとめようとしたのかこのようなタイトル。cloudのダブルミーニングをどう汲むかがタイトルをつけるときのポイントになるが…

アガサ・クリスティ「三幕殺人事件」(新潮文庫)-2 この小説でクリスティはベストセラー作家になる。英米版で中身が異なったのは出版社の事情があった。

前回読んだとき(アガサ・クリスティ「三幕の悲劇」(創元推理文庫))、どうもよくわからない話だなあと思った。そこで、翻訳を変えて読むことにする。新潮文庫版を選ぶ。 だめだった。3分の2の直前の210ページあたりでギブアップ。サー・チャールズ(俳優…

アガサ・クリスティ「愛国殺人」(ハヤカワ文庫) Patriotic War 祖国戦争最中には、薄っぺらなネトウヨ(Alt-Right)がたくさんいたのだろう。

歯医者に行くのは憂鬱だ(と自分は思わないのだが。最近の歯科治療では痛みを感じることは少ないよ)と、ポワロは年二回の検診を受ける。愛想よく話をした歯科医師は、翌日自殺しているのが見つかった。当時(1941年初出)のイギリスではピストルの個人所有…

アガサ・クリスティ「NかMか」(ハヤカワ文庫) バトル・オブ・ブリテン真っ最中のスパイ摘発。排外主義とレイシズムが社会に蔓延して、リベラルも偏見から免れない。

トミーとタペンス物を読むのははこれが最初なので、過去の経歴や仕事はまるで知らない。スパイ・サスペンスは好みのジャンルではないので敬遠してきたが、ある評論家が全長編を読んでこれが最上等の傑作だといっているのを知ったので、入手した。 1940年。英…