odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

中井英夫

中井英夫「虚無への供物」(講談社文庫)-1 埴谷雄高の推薦文で低評価から戦後探偵小説の傑作に急転換。そこらに落ちているミステリーとは比べ物にならない文章の密度と技術。

作者曰く、1955年にこの構想が一気にまとまったにもかかわらず、なかなか書き進めず、第2章までのところで乱歩賞に応募したのが1962年(次席)。増補して現在の形(原稿用紙1200枚)で出版したのが1964年。評価は芳しくなったが、埴谷雄高の文で再評価開始…

中井英夫「虚無への供物」(講談社文庫)-2 現実(実際に起きている事件)と非現実(久生や亜利夫などの推理比べで登場するさまざまな妄想)の区別がつかない「ザ・ヒヌマ・マーダー」。

2019/10/29 中井英夫「虚無への供物」(講談社文庫)-1 1964年の続き 第2章 ・・・ 氷沼家に40年も奉公していた爺やが「黒月の呪法」などと言い出したので(医師の藤木田老は分裂症(ママ:死語)の疑いありといっていた)、家族の同意で収容される。蒼司は…

中井英夫「虚無への供物」(講談社文庫)-3 「事件は終わった。しかし、なにか割り切れぬうそ寒い気持ちだけが残った」。犯人にされた「読者」は何を思う?

2019/10/29 中井英夫「虚無への供物」(講談社文庫)-1 1964年2019/10/28 中井英夫「虚無への供物」(講談社文庫)-2 1964年の続き 第4章 ・・・ 藍司が息せき切って急いだのは、八田を詰問するためで、実のところ死んだはずの黄司とつながっていたのは八田…

中井英夫「虚無への供物」(講談社文庫)-4 作中で設定した論理は小説内では整合性を持つがリアルとは無関係であり、ミステリーのお約束をいっさい無視しているこの小説はアンチ・ミステリーと呼ぶしかない。

2019/10/25 中井英夫「虚無への供物」(講談社文庫)-3 1964年の続き 「事件は終わった。しかし、なにか割り切れぬうそ寒い気持ちだけが残った@黒澤明「天国と地獄」予告編」という思いになるもうひとつの理由は、終章で真犯人が自白しているにもかかわらず…