odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

科学史

岡崎勝世「聖書vs世界史」(講談社現代新書) 普遍史は聖書の記述に基づいて書かれた世界史。聖書より古いエジプトや中国の歴史にとまどう。

普遍史(ユニバーサル・ヒストリー)は聖書の記述に基づいて書かれた世界史。普遍史がかかれるようになったのは、古代ローマ時代で異教とされていたころ。キリスト教護教のために正当性を明かすために書かれた。以後、さまざまな教父が普遍史を記述してきた…

小泉丹「ラマルク『動物哲学』」(KINDLE) 普遍史が終わり人類の歴史が書きだされた時代に、ラマルクは種は変化すると主張した。フランス革命の時代精神が反映している。

ラマルクの「動物哲学」が電子書籍で入手できると喜んで購入したら、実は邦訳者による解説でした。もとは「岩波書店刊行 大思想文庫23」に収録とのことだが、いつの出版かKINDLEには記載がない。文庫版の「動物哲学」が出たのは1954年。ネットにでてきた「…

野家啓一「パラダイムとは何か」(講談社学術文庫) クーン「科学革命の構造」より後のパラダイム論争のてごろなまとめ。

もとは1998年にでた単行本。トーマス・クーン(1922年7月18日 - 1996年6月17日)の翻訳は過去に二冊、できるだけ詳しく読んでみた。2013/02/13 トーマス・クーン「コペルニクス革命」(講談社学術文庫)-12013/02/12 トーマス・クーン「コペルニクス革命」(…

小山慶太「漱石が見た物理学」(中公新書) 漱石のいた時代は古典物理学の危機の時代。漱石の「非人情」は物理・数学好きのせいかも。

漱石を読み返している最中(2021年3月現在)。漱石の「文学」の解説は読む気はないが(読むと引っ張られるので参考にしないし、これまでの読みとは違うところで読んでいるので参考にならないし)、物理学なら参考になるかもとタイトルにひかれて購入。著者は…

佐倉統「進化論という考えかた」(講談社現代新書) 進化論のエッセンス(突然変異、適応、自己複製)で文化現象まで進化論で説明可能かも。でも「多分野への関心と自然への謙虚」だけでは不足だと思う。

自分の進化論の知識は1980年までで途絶えている(そのあとに紹介されたビッグネーム、たとえばドーキンス、グールド、ウィルソンなどを読んでいない)ので、手ごろな新書で補完することにする。著者・佐倉統はたとえば別冊宝島「進化論で愉しむ本」で名前は…

チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-1 人為的な選抜によって新しい種を作れるのだから、自然状態でも同じことが起きているに違いない。偶然におきた変異は子孫の残しやすさで種に定着していく。

ダーウィン「種の起源」1858年を読むのは35年ぶり、二回目。前回は長い長い記述にへこたれて、文字を目でトレースしただけだった。ダーウィンの考えはほとんど読み取れなかった。でも、進化論や科学史に興味があったので、そのあと今日までに、多数の進化論…

チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-2 自然淘汰は個体数の増加と(構造と行動の)多様化をもたらす。遺伝的浮動、性淘汰、地理的隔離、ニッチェ等のアイデアはすでにできていた。

2020/05/29 チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-1 1858年 リンネ、キュヴィエ、ビュフォン、ラマルクらの18世紀の博物学者やナチュラリストと、彼らより50年後のダーウィンの違いは、生物の知識が圧倒的に増大、地質学その他の他…

チャールズ・ダーウィン「種の起源 下」(光文社古典新訳文庫)-1 ダーウィニズム批判にダーウィン自身が答える。今もある進化論への難癖はすでに回答済。

2020/05/29 チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-1 1858年2020/05/28 チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-2 1858年 上巻はダーウィンの考えの理論編。下巻(と上巻の一部)は自然淘汰説に対する難題への…

チャールズ・ダーウィン「種の起源 下 」(光文社古典新訳文庫)-2 種を固定したものとしてみるのではなく、生存闘争(競争)をおこない、繁殖で自然淘汰がおき、移動して新しい居場所を獲得し、個体数を増やすという空間的・時間的なダイナミクスとしてみる。生物は居場所を得るために変異しているので、完成や完璧はない。

2020/05/29 チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-1 1858年2020/05/28 チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-2 1858年2020/05/26 チャールズ・ダーウィン「種の起源 下」(光文社古典新訳文庫)-1 1858年 …

トーマス・クーン「科学革命の構造」(みすず書房)-3 「パラダイム」概念は曖昧なので使い勝手が悪いよねという批判にクーンがこたえる。

2018/05/29 トーマス・クーン「科学革命の構造」(みすず書房)-1 1962年 2018/05/31 トーマス・クーン「科学革命の構造」(みすず書房)-2 1962年 「科学革命の構造」上梓(1962年)した後、さまざまな批判が出たので、その整理と著者の意見を披露する。訳…

トーマス・クーン「科学革命の構造」(みすず書房)-2 新しいパラダイムを提示するのは若手か新人。その影響で科学者集団が次第に新理論に染まっていく。

2018/05/29 トーマス・クーン「科学革命の構造」(みすず書房)-1 1962年 通常科学と科学革命の説明のために、科学史のできごとが前置きなしで説明される。だいたいは高校教科書に載っている話(20世紀前半の物理学は大学の教養課程ででてくるものかな)。…

トーマス・クーン「科学革命の構造」(みすず書房)-1 通常科学の体系が危機になると弥縫策をとるが、にっちもさっちもいかなくなると新しい理論に乗り移る。

パラダイムを提唱した科学史、科学哲学の古典。パラダイムは1980年代にこの国で流行になった。その時期に自分はこの分野の本や論文をすこしかじった(とはいえ啓蒙や一般向けのものだけ。専門書はほとんど読んでいません)ので、以下の四半世紀ぶりの再読で…

マイケル・ファラディ「ロウソクの科学」(岩波文庫) 燃焼という現象をみることから、どこまで議論や考えを広げることができるか。この好奇心の広げ方こそが科学者の在り方。

高校時代に読んだのだが、どこかにいってしまったのを、ネットで公開されている翻訳で読み直す。 Chemical History of A Candle: Japanese 岩波文庫版には、実験器具や実験風景の挿絵があったと記憶するのだが、ここには載っていない。また、もともとは1847-…

科学史 INDEX

2013/02/20 レオナルド・ダ・ヴィンチ「手記 1」(岩波文庫) 2013/02/14 コペルニクス「天体の回転について」(岩波文庫) 2013/02/15 ブレーズ・パスカル「科学論文集」(岩波文庫) 2016/09/21 エマニュエル・スウェデンボルグ「霊界からの手記」(リュ…

薮内清「中国の科学文明」(岩波新書)薮内清「中国の科学文明」(岩波新書) なぜ四大文明発祥地では優れた技術を生まれても、科学は生まれなかったか。

吉田光邦「日本科学史」(講談社学術文庫)でもいったように、厳密に言えば、「科学」の方法と思想はヨーロッパ由来のもの。なので、中国の科学史は19世紀半ばの洋務運動あたりから始まるといえるかも。いや、むしろ1949年の人民共和国建国以降にしてもよい…

エマニュエル・スウェデンボルグ「霊界からの手記」(リュウ・ブックス) 現代のオカルトやスピリチュアリズムの源流は神なき18世紀思想のアマルガム。

幽霊やオーラを見ることができる知り合いが何人かいて、ときどき霊を見たという話をしてくれる。聞くと、彼ら、「見える」ひとたちは自分のような凡庸な人とは別の苦労をしょっているみたい。子供のころから霊的体験による恐怖に会うとか、メンターについて1…

ゲーテ「色彩論」(岩波文庫)-1 色は晩年のゲーテが最も関心をもった研究領域。学問は世界精神をつかむために教養を高めなければならない。

ゲーテの「色彩論」1810年は大部な著述であって、第1部:教示編、第2部:論争編、第3部:歴史編の3つの部分からなるという。この岩波文庫版は第3部:歴史編の抄訳(それでも400ページ)。1952年初出のために、旧字旧かな。古い書体の活字はかすれ、文体…

ゲーテ「色彩論」(岩波文庫)-2 科学と文学と哲学を統合したいゲーテは要素還元主義のニュートンが大嫌い。

2016/09/20 ゲーテ「色彩論」(岩波文庫)-1 1810年 の続き。 ゲーテの時代(18世紀後半)の科学を思い出すと、古典力学は完成済。微分積分などの数学も発展途上(力学と数学は相互に影響しあいながら発展していた)。化学だとラボアジェの元素論が今につなが…

荒俣宏「大博物学時代」(工作舎) 18世紀は科学と大航海の時代。神がいないと想定すると、人間が観察するものには変化が起きている。では変化の原因と機構はどのようなものか。

生物学はむかしから生物学であったわけではなく、それ以前はいくつかの分野に分化していて統合されていなかった。解剖学と分類学と生理学が別々にあったような具合。19世紀に統合されるようになったらしいが、18世紀では博物学という採集と観察と分類の学が…

ジャン・ラマルク「動物哲学」(岩波文庫)-1 著者の主張は、複雑なものから単純なものへ堕ちていく当時の見方のコペルニクス的転換と、多分枝の分類体系。生命の変化に関する説明は、付け足しみたいなもの。

ラマルクの「動物哲学」全3巻は1809年に上梓された。あいにくパリの博物学者としては不遇であり、この浩瀚な書物も同時代では評価されなかった。のちに「ラマルキズム」として再評価・復活させたのは、解説によるとエルンスト・ヘッケルであるという。そして…

ジャン・ラマルク「動物哲学」(岩波文庫)-2 著者の主張は、日々の生物の自然発生、使う器官の発達とつわかない器官の退化。努力による変異と獲得形質の遺伝は筆の滑りで、つじつま合わせの仮説。

2016/09/15 ジャン・ラマルク「動物哲学」(岩波文庫)-1 1809年 の続き。 この時代は地球や宇宙の年齢を正確に測る方法がなくて、現在のわれわれから見ると憶測と大差ないくらいの不正確なもの。聖書の記載を累計すると6000年強。それはエジプト学の研究で…

エルンスト・ヘッケル「生命の不可思議 上」(岩波文庫) プラスマなる実体が哲学と科学を統一するというトンデモ主張(今は「エクトプラズム」でオカルトにだけ名を残す)

エルンスト・ハインリッヒ・フィリップ・アウグスト・ヘッケル(Ernst Heinrich Philipp August Haeckel, 1834年2月16日 ポツダム - 1919年8月8日 イェーナ)は、ドイツの生物学者であり、哲学者である。生物学者としては海産の無脊椎動物の研究と図版作成で…

エルンスト・ヘッケル「生命の不可思議 下」(岩波文庫) プラスマの自発的自立的な意思が環境と自己を変化させる。本書は「ドグラ・マグラ」「エヴァ」の元ネタ。

2016/09/13 エルンスト・ヘッケル「生命の不可思議 上」(岩波文庫) 1904年 の続き。 ヘッケルが構想する生命の起源では、まず核のないプラスマ(原核細胞にちかいのかな)が生まれたとする。でそれが、生物の基本形で、生命現象の物質的基礎である。ミラー…

荒俣宏「図鑑の博物誌」(工作舎) 18世紀博物学最盛期に作られた図鑑を楽しむ。芸術画とは異なる価値が博物画にはある。図鑑作成に命を懸けて極貧に陥った人々に涙。

著者は、1960年代後半に本郷の古本屋で18世紀の博物学図鑑を入手する(なんと6000円という破格の安値!)。200年を経ても色あせない図版であることにおどろき、以来さまざまな博物学図鑑を手に入れる。その悪戦苦闘ぶりは「稀書自慢、紙の極楽」(中央公論社…

ヤーコプ・フォン・ユクスキュル「生物から見た世界」(岩波文庫) 環世界Umwertは均質で同等の時間が流れる時空間(デカルト的な空間)とはまるで別の世界像。環世界のHowは説明しているが、WhyとWhenは一切触れない。

1980年代にこの本はよく紹介された(翻訳初出は1973年)。プリゴジーンの「散逸構造」理論とセットで取り上げられることが多く、生物学よりも哲学思想の人が語っていたとも記憶する。どちらも高価な本だったので、当時は読めなかったが、21世紀に文庫になっ…

アラン・バイエルヘン「ヒトラー政権と科学者たち」(岩波現代選書)-3 時代遅れでトンデモのアーリア的物理学は成果を上げないので、産業界が文句をいって解任させた。

2015/12/14 アラン・バイエルヘン「ヒトラー政権と科学者たち」(岩波現代選書)-1 2015/12/15 アラン・バイエルヘン「ヒトラー政権と科学者たち」(岩波現代選書)-2 の続き 政権や党に迎合したアーリア的物理学の主張はそれぞればらばらでまとまっていない…

アラン・バイエルヘン「ヒトラー政権と科学者たち」(岩波現代選書)-2 ユダヤ人研究者が追放されたので、ドイツの物理学のレベルは低下した。

2015/12/14 アラン・バイエルヘン「ヒトラー政権と科学者たち」(岩波現代選書)-1 の続き ドイツの物理学者が国家社会主義に対してとった態度には3つのパターンがある。亡命した者、アーリア的物理学の政治運動を行ったもの、国内にとどまって研究活動を継…

アラン・バイエルヘン「ヒトラー政権と科学者たち」(岩波現代選書)-1 ナチスはトンデモのアーリア的物理学を科学政策とした。

アメリカの少壮科学史家による戦間期ドイツの物理学者の動向。1977年出版で、当時著者は32歳。 戦間期ドイツの20年間で重要なできごとはナチスの政権掌握。ファシズム政権が科学統制を行うとき、科学者はどのように対応したかという事例をみる。あわせてナ…

INDEX 科学史関連

2013/02/28 科学を考えるときに考えておくとよいこと 2013/02/27 吉田光邦「日本科学史」(講談社学術文庫) 2013/02/26 村上陽一郎「ペスト大流行」(岩波新書) 2013/02/25 小田垣雅也「キリスト教の歴史」(講談社学術文庫) 2013/02/22 生松敬三/木田元…

科学の「権威」について

趣向を変えて、昨日のtwitterのつぶやきを再録します。 科学が権威をもつということについて考えてみた。①科学者集団の内部の人たちは、科学は疑うもの、確立していなくて正しさは将来変わりうる可能性がある。一方、すでにある言明は覆すことが困難であるこ…