odd_hatchの読書ノート

エントリーは3400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2025/9/26

科学史

伊東俊太郎「十二世紀ルネサンス」(講談社学術文庫) 地中海世界でおきた5回のルネサンスのうち12世紀のものを紹介。ルネサンスは古典復興ではなく文明移転。

ルネサンスを古典学術・芸術の復興としてみると、教科書では14世紀イタリアのできごとに注目してしまう。それは19世紀ヨーロッパの歴史家が言い出したことがいまだに継承している証。しかし、ルネサンスを文明移転としてみよう。すると、ヨーロッパとオリエ…

伊藤博明「ルネサンスの神秘思想」(講談社学術文庫) ギリシャ思想でキリスト教神学を補強補完する。異教の神々の賛美や霊的存在の詩人もこの宗教運動に関与する。

12世紀ルネサンスのあとの15世紀ルネサンス。中心はイタリア。通常は人文学や美術の成果をみたり、中世都市とは異なる商業都市に注目する。でも著者はこの時期のイタリア思想、なかでも神秘思想に傾倒する。 神秘主義や異端思想に傾倒する人は「木を見て森を…

中山茂「西洋占星術史 科学と魔術のあいだ」(講談社学術文庫) 占星術は算法を使うのでオカルトではないが、未来予知に使えないので科学ではなくなった。

占星術が生まれたのはバビロニアの時代で、紀元前2000年にはもうあったとされる。それから近世まで占星術は合理的で論理的な学問であり、未来予測に有効であるとされてきた。しかし、近代になってからは、占星術は疑似科学とみなされる。いつごろそう考えら…

中山茂「天の科学史」(講談社学術文庫) 手際のよい天文学史。情報が古いので薦めにくい。

著者の考えでは、人が天を見るようになったのは食糧調達に余裕ができてから。次第に天のできごとが社会と人の運命を支配していると考えるようになり、未来予測のために天を観察し続けた。観察記録が整備され、暦が作られ、未来予測の占星術になる。大形の人…

コペルニクス「天球回転論」(講談社学術文庫) 地動説は異端だったが、科学の発見で「存在の大いなる連鎖」が修正され受け入れられた。

ニコラウス・コペルニクスの「天球回転論」と彼の弟子が書いた解説が新訳で出ていたので読む。訳者による解説によると、コペルニクスは「地球が動いている」ことを観察データと理論から確信していた。ルターの宗教改革とカソリックの対抗が起きていたので、…

高橋憲一「よみがえる天才5 コペルニクス」(ちくまプリマー新書) 16世紀科学革命の様子がわかる。「地球は動いている」と主張するのは西洋二千年の思想に対する挑戦。

コペルニクスの「天球回転論」を読んだので、現代から見たコペルニクスを知るために本書を購入。後で知ったが、著者はコペルニクス「天球回転論」(講談社学術文庫)の訳者(別書で全訳もしている)だった。 科学書の古典を読むときの注意点は、現在の視点(…

ガリレオ・ガリレイ「星界の報告」(講談社学術文庫) 1610年の報告は「存在の大いなる連鎖」に沿った内容。なんで1633年のガリレイ裁判が起きたのか、本書からはわからない。

覗き眼鏡(望遠鏡)が発明された。新し物好きのガリレイはさっそく入手し、さらに改良を加えた。たぶん覗き眼鏡は地上の対象を観察するためで、軍用になったのだろうと妄想するが、ガリレイはなんと夜空に向けた。月と天の川と木星を観察し、無数のスケッチ…

田中 一郎「ガリレオ裁判」(岩波新書) ガリレオは「存在の大いなる連鎖」説に抵触することを主張したので宗教裁判にかけられた。

ガリレオは高校物理の早い時期に彼の仕事を知ることになるが、それよりも晩年になってローマ教会の宗教裁判にかけられ、きつい審理を経て有罪判決を受けた後に、「それでも地球は動いている」とつぶやいたことで知られている。教会のドグマの押し付けに対し…

千葉聡「ダーウィンの呪い」(講談社現代新書)-1 ダーウィンが「種の起源」を出版する以前から西洋人は種の変化、人間の進歩を信じていた。

生物学を勉強すると、進化論を誤解したものいいが気になる。パターンをまとめると、「進化(進歩)せよ」、「生存闘争と適者生存」、「ダーウィンかく語りき」。いずれもダーウィンや生物学の主張とは異なる。でも人口に膾炙している(安倍晋三政権下の自民…

千葉聡「ダーウィンの呪い」(講談社現代新書)-2 優性思想はナチのユダヤ人「最終解決」で消えたわけではない。人間の進化的操作で生き延びている。

2025/12/23 千葉聡「ダーウィンの呪い」(講談社現代新書)-1 ダーウィンが「種の起源」を出版する以前から西洋人は種の変化、人間の進歩を信じていた。 2023年の続き 後半は優性思想について。ダーウィンの「種の起源」がでてから、人間の能力強化と道徳性…

岡崎勝世「世界史とヨーロッパ」(講談社現代新書) 西洋では自国優位と周辺の蔑視や差別はとても根深い。歴史観にも反映している。

ヨーロッパは歴史と世界をどのようにみてきたのか。世界をどこまでの範囲にしているかで歴史の記述は変わる。歴史の長さをどこまでとるかで世界の広がりも変わる。そこで、ヨーロッパの歴史書と歴史哲学を古代から近代まで見通してみる。 問題意識はそこにあ…

岡崎勝世「科学vs.キリスト教 世界史の転換」(講談社現代新書) 科学はキリスト教に反抗したのではなく、忖度しようとしたのだが、聖書は合理と論理に耐えられなかった。

岡崎勝世「聖書vs世界史」(講談社現代新書)がとても面白かった。ヨーロッパの歴史記述は聖書の記述に基づいて書かれた普遍史から、科学の知見に依拠した世界史に代わっていった。その過程を実際に書かれた本を読んで記述する。これは西洋哲学史にも科学史…

ジェイムズ・ワトソン「二重らせん」(講談社文庫) 生物学の科学革命の渦中にいた人の証言。女性科学者へのミソジニーはひどい。

DNAの構造解析が生物学のホットトピックだった1940~1950年代前半にかけての記録。著者はDNAの構造模型を提唱して、1962年にノーベル賞を受賞した。この研究に従事していたのは22~25歳にかけてのこと。なんとも早熟で、鼻っ柱が強く、傍若無人で怖いもの知…

佐々木力「科学論入門」(岩波新書)-1 古典科学、17世紀の科学革命、フランス革命以後の科学でみる科学の特性と発展

科学の専門教育に挫折した時、学生の残り時間で科学論を独習した。村上陽一郎や柴谷篤弘、トーマス・クーンなどの読書感想エントリーがあるのはそのなごり。しばらく離れていたので、数十年ぶりに科学論を読む。なお、科学論と科学哲学は重なるところが多い…

佐々木力「科学論入門」(岩波新書)-2 社会に直接インパクトを与える技術とは何か。社会的モラルに欠くエンジニアや開発者が問題を起こしている。

2025/10/15 佐々木力「科学論入門」(岩波新書)-1 古典科学、17世紀の科学革命、フランス革命以後の科学でみる科学の特性と発展 1996年の続き 続いて後半。テクノロジーが主題になる。 第3章 技術とはなにか、それは科学とどう関係するか? ・・・ 日本で…

岡崎勝世「聖書vs世界史」(講談社現代新書) 普遍史は聖書の記述に基づいて書かれた世界史。聖書より古いエジプトや中国の歴史にとまどう。

普遍史(ユニバーサル・ヒストリー)は聖書の記述に基づいて書かれた世界史。普遍史がかかれるようになったのは、古代ローマ時代で異教とされていたころ。キリスト教護教のために正当性を明かすために書かれた。以後、さまざまな教父が普遍史を記述してきた…

小泉丹「ラマルク『動物哲学』」(KINDLE) 普遍史が終わり人類の歴史が書きだされた時代に、ラマルクは種は変化すると主張した。フランス革命の時代精神が反映している。

ラマルクの「動物哲学」が電子書籍で入手できると喜んで購入したら、実は邦訳者による解説でした。もとは「岩波書店刊行 大思想文庫23」に収録とのことだが、いつの出版かKINDLEには記載がない。文庫版の「動物哲学」が出たのは1954年。ネットにでてきた「…

野家啓一「パラダイムとは何か」(講談社学術文庫) クーン「科学革命の構造」より後のパラダイム論争のてごろなまとめ。

もとは1998年にでた単行本。トーマス・クーン(1922年7月18日 - 1996年6月17日)の翻訳は過去に二冊、できるだけ詳しく読んでみた。2013/02/13 トーマス・クーン「コペルニクス革命」(講談社学術文庫)-12013/02/12 トーマス・クーン「コペルニクス革命」(…

小山慶太「漱石が見た物理学」(中公新書) 漱石のいた時代は古典物理学の危機の時代。漱石の「非人情」は物理・数学好きのせいかも。

漱石を読み返している最中(2021年3月現在)。漱石の「文学」の解説は読む気はないが(読むと引っ張られるので参考にしないし、これまでの読みとは違うところで読んでいるので参考にならないし)、物理学なら参考になるかもとタイトルにひかれて購入。著者は…

佐倉統「進化論という考えかた」(講談社現代新書) 進化論のエッセンス(突然変異、適応、自己複製)で文化現象まで進化論で説明可能かも。でも「多分野への関心と自然への謙虚」だけでは不足だと思う。

自分の進化論の知識は1980年までで途絶えている(そのあとに紹介されたビッグネーム、たとえばドーキンス、グールド、ウィルソンなどを読んでいない)ので、手ごろな新書で補完することにする。著者・佐倉統はたとえば別冊宝島「進化論で愉しむ本」で名前は…

チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-1 人為的な選抜によって新しい種を作れるのだから、自然状態でも同じことが起きているに違いない。偶然におきた変異は子孫の残しやすさで種に定着していく。

ダーウィン「種の起源」1858年を読むのは35年ぶり、二回目。前回は長い長い記述にへこたれて、文字を目でトレースしただけだった。ダーウィンの考えはほとんど読み取れなかった。でも、進化論や科学史に興味があったので、そのあと今日までに、多数の進化論…

チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-2 自然淘汰は個体数の増加と(構造と行動の)多様化をもたらす。遺伝的浮動、性淘汰、地理的隔離、ニッチェ等のアイデアはすでにできていた。

2020/05/29 チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-1 1858年 リンネ、キュヴィエ、ビュフォン、ラマルクらの18世紀の博物学者やナチュラリストと、彼らより50年後のダーウィンの違いは、生物の知識が圧倒的に増大、地質学その他の他…

チャールズ・ダーウィン「種の起源 下」(光文社古典新訳文庫)-1 ダーウィニズム批判にダーウィン自身が答える。今もある進化論への難癖はすでに回答済。

2020/05/29 チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-1 1858年2020/05/28 チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-2 1858年 上巻はダーウィンの考えの理論編。下巻(と上巻の一部)は自然淘汰説に対する難題への…

チャールズ・ダーウィン「種の起源 下 」(光文社古典新訳文庫)-2 種を固定したものとしてみるのではなく、生存闘争(競争)をおこない、繁殖で自然淘汰がおき、移動して新しい居場所を獲得し、個体数を増やすという空間的・時間的なダイナミクスとしてみる。生物は居場所を得るために変異しているので、完成や完璧はない。

2020/05/29 チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-1 1858年2020/05/28 チャールズ・ダーウィン「種の起源 上」(光文社古典新訳文庫)-2 1858年2020/05/26 チャールズ・ダーウィン「種の起源 下」(光文社古典新訳文庫)-1 1858年 …

トーマス・クーン「科学革命の構造」(みすず書房)-3 「パラダイム」概念は曖昧なので使い勝手が悪いよねという批判にクーンがこたえる。

2018/05/29 トーマス・クーン「科学革命の構造」(みすず書房)-1 1962年 2018/05/31 トーマス・クーン「科学革命の構造」(みすず書房)-2 1962年 「科学革命の構造」上梓(1962年)した後、さまざまな批判が出たので、その整理と著者の意見を披露する。訳…

トーマス・クーン「科学革命の構造」(みすず書房)-2 新しいパラダイムを提示するのは若手か新人。その影響で科学者集団が次第に新理論に染まっていく。

2018/05/29 トーマス・クーン「科学革命の構造」(みすず書房)-1 1962年 通常科学と科学革命の説明のために、科学史のできごとが前置きなしで説明される。だいたいは高校教科書に載っている話(20世紀前半の物理学は大学の教養課程ででてくるものかな)。…

トーマス・クーン「科学革命の構造」(みすず書房)-1 通常科学の体系が危機になると弥縫策をとるが、にっちもさっちもいかなくなると新しい理論に乗り移る。

パラダイムを提唱した科学史、科学哲学の古典。パラダイムは1980年代にこの国で流行になった。その時期に自分はこの分野の本や論文をすこしかじった(とはいえ啓蒙や一般向けのものだけ。専門書はほとんど読んでいません)ので、以下の四半世紀ぶりの再読で…

マイケル・ファラディ「ロウソクの科学」(岩波文庫) 燃焼という現象をみることから、どこまで議論や考えを広げることができるか。この好奇心の広げ方こそが科学者の在り方。

高校時代に読んだのだが、どこかにいってしまったのを、ネットで公開されている翻訳で読み直す。 Chemical History of A Candle: Japanese 岩波文庫版には、実験器具や実験風景の挿絵があったと記憶するのだが、ここには載っていない。また、もともとは1847-…

科学史 INDEX

2013/02/20 レオナルド・ダ・ヴィンチ「手記 1」(岩波文庫) 2013/02/14 コペルニクス「天体の回転について」(岩波文庫) 2013/02/15 ブレーズ・パスカル「科学論文集」(岩波文庫) 2016/09/21 エマニュエル・スウェデンボルグ「霊界からの手記」(リュ…

薮内清「中国の科学文明」(岩波新書)薮内清「中国の科学文明」(岩波新書) なぜ四大文明発祥地では優れた技術を生まれても、科学は生まれなかったか。

吉田光邦「日本科学史」(講談社学術文庫)でもいったように、厳密に言えば、「科学」の方法と思想はヨーロッパ由来のもの。なので、中国の科学史は19世紀半ばの洋務運動あたりから始まるといえるかも。いや、むしろ1949年の人民共和国建国以降にしてもよい…