odd_hatchの読書ノート

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フランス文学

奥平堯訳編「フランス笑話集」(現代教養文庫)

あとがきによると、「Les litteratures populaires de toutes les nations」から笑話を選んで訳したもの。元本の情報があとがきにないので、ネットで検索するとあった。 Catégorie:Les Littératures populaires de toutes les nations - Wikisource Les litt…

ヴォルテール「カンディード」(岩波文庫)

フランス啓蒙主義の立役者ヴォルテールが1759年に書いた小説(現代のそれとはちょっと違うけど)。ちなみに、この小説を翻案したバーンスタインのミュージカルは「キャンディード」。とても似ていてちょっと違うのでご注意あれ。 さて、ウェストフェリアの太…

ミラボー伯「肉体の扉」(富士見ロマン文庫)

ミラボー伯はフランス革命初期の指導者。生涯はこちらを参照。 オノーレ・ミラボー - Wikipedia 大政治家である人も、若い時にはやんちゃであったらしく、ときに監獄に入れられた。ヴァンセンヌ獄中にあるときに、「肉体の扉」なる性愛小説を書き(たぶん1776…

ギョーム・ド・アポリネール「若きドン・ジュアンの冒険」(角川文庫)

アポリネールが匿名で書いたポルノグラフィー。 高校生のときに、堀口大學訳でアポリネールの詩集を読んだなあ。「ミラボー橋」を暗唱できたときもあった。自分の勝手な感想でいうと、アポリネールはボードレール、ヴェルレーヌ、ランボー、マラルメと続くフ…

ヴィクトル・ユゴー「レ・ミゼラブル 上」(角川文庫)

19世紀の小説の中ではとりわけ有名。いくつかのエピソードは小学生のころから知ってはいても、全体を読むことはめったにない。なにしろ新潮文庫(全5冊)や岩波文庫(全4冊)などの分厚い全訳を読み通すのはきわめて困難。そこで、角川文庫の縮約版を読む。1…

ヴィクトル・ユゴー「レ・ミゼラブル 下」(角川文庫)-1

2017/03/01 ヴィクトル・ユゴー「レ・ミゼラブル 上」(角川文庫) 1862年の続き。 さてジャン・バルジャン、コゼット、マリウス、テナルディエ、ジャベール警部の因縁の深まりは、偶然の出会いと必然の衝突を繰り返し、次第に沸騰していく。それは、1832年6…

ヴィクトル・ユゴー「レ・ミゼラブル 下」(角川文庫)-2

2017/03/01 ヴィクトル・ユゴー「レ・ミゼラブル 上」(角川文庫) 1862年 2017/02/28 ヴィクトル・ユゴー「レ・ミゼラブル 下」(角川文庫)-1 1862年 の続き。 バリケード蜂起の時、人々は日常を越えた祝祭と緊張の瞬間を生きる。平穏であるが変化の乏しい…

アンドレ・ジイド「背徳者」(新潮文庫)

ギムナジウムで優秀な成績をとったミシェル君は教師の勧めで、古典学・文献学の研究を続ける。実家は南フランスの大地主で、そこの上りで十分に暮らしていけたのだ。25歳の時、20歳のマルスリイヌと結婚。式のあと、ミシェルは妻を愛していないことに気付く…

ヴェルコール「海の沈黙・星への歩み」(岩波文庫)

作者ヴェルコールについては、wiki記事(ヴェルコール - Wikipedia)を参照。この文庫の解説で補足すると、イラストレイターだったのが、1940年夏のナチスドイツによるフランス占領から抵抗(レジスタンス)の活動を行った。収録されたの短編はそのときに公…

ジャック・プレヴェール「プレヴェール詩集」(マガジンハウス)

ジャック・プレヴェールは1900年生まれ。10代に第1次大戦で動員され、20代にシュールリアリズム運動にかかわり、30代に映画界にはいって脚本をかいたり挿入歌の歌詞を書いたり、40代にレジスタンスにかかわったり、そのあとも映画にかかわり詩を作った。マル…

ジュール・ルナール「博物誌」(旺文社文庫)

解説を読んでなるほどと思ったのは、ルナールはビュフォンの「博物誌」を読んでいたのだったってこと。ビュフォンの博物誌L'Histoire Naturelleは当時の博物学研究の総覧(1749-1788ころまで)。数十巻に及ぶ大著で、世界の動物を枚挙しようとする大著。厳密…

ジュール・ヴァレース「パリ・コミューン」(中央公論社)-2

2014/11/19 ジュール・ヴァレース「パリ・コミューン」(中央公論社)-1 後半の150ページが1871年の「パリ・コミューン」のドキュメント。小説を見る前に、このできごとをまとめておこう。 遡ると1789年のフランス革命まで行ってしまうが、そこまで行くのは…

ジュール・ヴァレース「パリ・コミューン」(中央公論社)-1

そういえば19世紀後半のフランスを知らないなあ、大仏次郎の「パリ燃ゆ」も読んでいねえなあ、ということでタイトル買いした一冊。1965年初版の中央公論社版「世界の文学」の第25巻。その後、この小説は復刻された様子がないので、読むにはこの本を入手しな…

メーテルランク「ペレアスとメリザンド」(岩波文庫)

狩の途中、道に迷った王ゴローは泉のそばで泣いている美少女をみつけ、城に連れて帰る。ゴローは連れ帰ったメリザンドと名乗る少女と結婚し、古くから伝わる指輪を与える。ゴローには先に妻を亡くしていてイニョルドという子供がひとり。年の離れた弟ペレア…

フランス古典「聖杯の探索」(人文書院)

最初のミレニアムの後半にケルトの伝承として語られていたものが西ヨーロッパの各地で流行した。それを文書にするようになったのが、12世紀あたり。同時多発的にまとめられたので、似たような話でも微妙に異なるヴァリアントになり、筆写生の誤記や改変で版…

アレクサンドル・デュマ「モンテ・クリスト伯 下」(講談社)

2013/12/03 アレクサンドル・デュマ「モンテ・クリスト伯 上」(講談社)の続き モレル海運会社の若い航海士エドモン・ダンテスは、アラビアへの貿易航海を成功させ、美しい娘メルセデスと結婚することになり、その暁には船長になることが内定していた。それ…

アレクサンドル・デュマ「モンテ・クリスト伯 上」(講談社)

自分が読んだのは1960年代に発刊された講談社の世界文学全集33と34巻の2冊本。のちに同じ訳者(新庄嘉章)で講談社文庫に5分冊の完訳本がでているが、こちらはたぶんダイジェスト。上下2段組みで一冊480ページの大冊であるとはいえ、大雑把な計算では原稿用…

ヴィクトル・ユゴー「死刑囚最後の日」(岩波文庫)

1829年(著者27歳)に匿名で出版され、2年後の再販時にユゴー自身が序文を書いた。 ミステリでいうなら、事件は解決した。しかし関係者には重苦しいしこりが残った。なぜ犯人はあのような事件を起こしたのだろうと内省する。ここで「エンド」の文字がはいる。…

アナトール・フランス「神々は渇く」(岩波文庫)

神々は何に乾いているのか。人間の血、とりわけ「革命」に関与した人たち(賛成、反対、協賛、拒否いずれにかかわらず)のそれ。「革命」の熱狂はすさまじいのであるが、そのあとに興奮を冷ますための人身御供を要求するのであって、フランスで起きたものに限…

レーモン・クノー「イカロスの飛行」(ちくま文庫)

レーモン・クノーは映画ファンには「地下鉄のザジ」の原作者として(中公文庫に翻訳あり)、アンサイクロペディアファンには「文体演習」で有名な作家。1903年に生まれて、奇想天外な小説や詩や戯曲を書き、1976年没。フランスにはこういう洒脱な人がときど…

ジョルジュ・シムノン「雪は汚れていた」(ハヤカワ文庫)

大状況が全く書かれていないので、断片的な情報から推測するしかない。フランク・フリードマイヤーが16歳の時に町は占領され、今では19歳というから1942年なのだろう。登場人物の名前はゲルマン風だ。しかし、この「本格ロマン」がフランス語で書かれている…

アンドレ・マルロー「人間の条件」(新潮文庫)

1933年の作。この前にマルローは1925年にインドシナにわたり、帰仏の途次、中国に渡り国民党政権に協力した。1926年に帰国した。 小説の背景は1927年3月の南京事件。共産党指導のもとに労働組合がゼネストを開始。それにあわせて、党員の武装部隊が警察その…

ピエール・ボーマルシェ「フィガロの結婚」(岩波文庫)

モーツァルトの同名オペラで筋をよく知っているので、サマリは略。 訳は辰野隆先生。1952年の訳なので古臭いなあ、と読み始めた。みんな難しい漢語を使うし、回りくどい言い回しをするから。途中で思ったのは、「フィガロの結婚」が初演されたのは1784年。時…

ピエール・ボーマルシェ「セヴィラの理髪師」(岩波文庫)

老いた医師(それでも40代だろうが)が後見している若い娘がいる。彼女は美しく、どうやら資産もちであるらしいので、医師バルトロは娘ロジーナと結婚しようとしている。バルトロによっていわば幽閉されている美女に哀れを感じたアルマヴィーヴァ伯爵は、雇…

フランス古典「トリスタン・イズー物語」(岩波文庫)

「トリスタンとイゾルデ」のバリアント。今度はフランスの場合。 「愛の媚薬を誤って飲み交わしてしまった王妃イズーと王の甥トリスタン。このときから二人は死に至るまで止むことのない永遠の愛に結び付けられる。ヨーロッパ中世最大のこの恋物語は、世の掟…

アナイス・ニン「アナイス・ニンの日記」(ちくま文庫)

アナイス・ニンはヨーロッパに住んでいたが、12歳ころに両親が離婚。アメリカに渡ることになる。そのころから日記を書き始めて、生涯途切れることがなかった。全訳すると、600ページ掛ける10巻くらいの巨大なものになるらしい。ここには、1931年から1934年ま…

ポーリーヌ・レアージュ「O嬢の物語」(講談社文庫)

高名な作家が匿名で書いたポルノ小説。一時期はマンディアルグが作者ではないかといわれていたが、いまはどうなっているのかな(どこかの個人ブログに「数年前(2000年前後)になって編集者ドミニック・オーリーが自分であるとインタビューで認めた」との記…

ジャン・ジュネ「泥棒日記」(新潮文庫)

1914年生まれ。父親のことは誰も知らず、母もすぐに子育てを放棄。そのため孤児院で生活。その後は、男娼、泥棒、その他の犯罪で生計を立てながら、1930年代にヨーロッパ中(文中にでてくるだけでもスペイン、イタリア、ユーゴスラヴィア、チェコ、…

ポール・ニザン「アデン・アラビア」(晶文社)

ぼくは二十歳だった。それがひとの一生でいちばん美しい年齢だなどとだれにも言わせまい。 一歩足を踏みはずせば、いっさいが若者をだめにしてしまうのだ。恋愛も思想も家族を失うことも、大人たちの仲間に入ることも、世の中でおのれがどんな役割を果してい…

ピエール・ガスカール「街の草」(晶文社)

1933年フランス、パリ。17歳の青年が銀行に勤めるが仕事が面白くない。数ヶ月でやめて、知り合いのつてでジャン=ジャック・ルソー街のアパートに行く。そこには20代前半の青年が勝手に寝ては出て行く、無秩序な共同体ができていた。彼らは腹をすかせていた…