odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

J・G・バラード

J・G・バラード INDEX

2016/02/25 J・G・バラード「時の声」(創元推理文庫) 1962年刊行の作者の第1短編集。異常な事態に遭遇したら間違っているのは世界ではなく〈この私〉と懐疑する人たち。 1962年 2016/02/26 J・G・バラード「時間都市」(創元推理文庫) 1962年刊行の作者…

J・G・バラード「第三次世界大戦秘史」(福武文庫) 1990年初出の短編集(10番目?)。外挿した異常事態がリアルになったバブル時代。

1990年初出のバラードの短編集。10番目になるらしい。 War Fever ウォー・フィーバー (1989) ・・・ ベイルートではずっと戦闘・内乱が続いていた。叔母と姉と暮らすライアンは国連平和維持軍の医師と行動を共にするうちに、みなが国連軍のブルーヘルメット…

J・G・バラード「奇跡の大河」(新潮文庫) アフリカの砂漠に突如沸いた水の源を探る始原への旅。アフリカを困窮させ好き勝手する西洋人の傲岸不遜に鼻白む。

西洋で成功することのなかった医師マロリーは砂漠化の進む中央アフリカに国連の一員として派遣されていた。任務は井戸を掘って周囲を農地化すること。彼の試みを拒否するように、採掘しても水源にぶつかることはない。その土地は、軍事政権の政府軍と独立を…

J・G・バラード「ハイ-ライズ」(ハヤカワ文庫) 40階の高層高級住宅が閉鎖されると、人々から民主主義は消え、暴力と野蛮に逆行する。

1960年代のバラードでは、世界の終末は人やその集団の外からやってくるものだった。その暴力的なふるまい、物理学的ないかんともしがたさを前に、人やその集団は降参して、事態が推移するのを緩慢に、無気力に眺めるものだった。そして世界が熱的死で凍りつ…

J・G・バラード「溺れた巨人」(創元推理文庫) 1966年の第5短編集。バラードが好きな場所は「浜辺、海、砂漠、熱帯の密林、眩い庭園、廃墟、ハイウェイー、純白の研究所や病院」

1966年の第5短編集。第4短編集の「時間の墓標」は未読。 The Drowned Giant 溺れた巨人 (1965) ・・・ ギリシャ風の風貌を持った巨人が砂浜に打ち上げられた。撤去されないまま次第に朽ちて、破壊され、持ち去られる。これがSFだとホーガン「星を継ぐもの…

J・G・バラード「永遠へのパスポート」(創元推理文庫) 1963年刊行の第3短編集。当時のモダニズム建築を意識したアンチ・モダニズムSF。

1963年刊行の第3短編集。 The Man On The 99th Floor 九十九階の男 (1962) ・・・ 99回まで登るとその先に行けなくなる憂鬱症の小男。それでいて100階のビルに上ろうとする。小男の強迫観念は後催眠暗示なのではないか。治療している精神科医はそのように考…

J・G・バラード「時間都市」(創元推理文庫) 1962年刊行の作者の第2短編集。エントロピーの最大化による熱死が必然なので、あらゆる行動は無意味と考える人たち。

1962年刊行の作者の第2短編集。 Billenium 至福一兆 (1961) ・・・ 人口増が進み、都市は大混雑。一人あたりの居住スペースは4平方mに制限されている。道は身動きがならず、食堂に行くのもいのちがけ。そのような状況で青年はアパートに広大なスペース(と…

J・G・バラード「時の声」(創元推理文庫) 1962年刊行の作者の第1短編集。異常な事態に遭遇したら間違っているのは世界ではなく〈この私〉と懐疑する人たち。

1962年刊行の作者の第1短編集。 The Voices Of Time 時の声 (1962) ・・・ ストーリーを要約するのではなく断片を勝手に並べるようにして。生物学者がプールの底に幾何学模様を延々と描いている。昏睡状態になった患者が終末医療施設に数千人も収容されてい…