2014-07-01から1ヶ月間の記事一覧
前作「どくろ杯」では、森三千代と巴里に抜けようというところ、上海にカウランプールほかで道草を食うところまで書かれていた。ここでは、先に送り出した森三千代を追って、シンガポールからインド洋にでる貨物船に乗船するところから始まる。そして約2年間…
往年の栄光はどこへやら、今は廃部寸前の野球部に転校生(新入生)が入部する。部員たちは彼らを白眼視するが、転校生(新入生)はわき目も振らずに猛練習。反目していた部員たちは彼の熱意に打たれたか、あるいは喧嘩のすえの和解でか、いっしょに練習をは…
ロケットの開発研究者が試作に失敗し、父の町工場を継ぐことになった。以来7年、売り上げを三倍に伸ばすくらいの手腕を発揮したが、売る当てのない水素エンジン用バルブの開発に巨額な研究費を投資している。そのことに社内の風当たりは強いが、利益の出て…
全国に支店を構える都市銀行・東京第一銀行の事務部には臨店チームという組織がある。これだけ支店が多いと同じシステムを使っていても支店ごとに業務の仕方が異なるので指導教育を担当したり、人事リソースの不足した支店に応援に出かけたり、不祥事やミス…
都市銀行でも有数の大手である帝都銀行には、総務部企画Gの特命担当という組織がある。彼らのもとには行内の不祥事を処理する依頼がやってくる。どの部署に行っても嫌われる特命課・指宿修平調査役が巨大銀行の闇と対決する!! こんなあおりでいいかな。テ…
2014/07/23 高野和明「ジェノサイド 上」(角川文庫) 全体は3部構成。第1部「ハイズマンレポート」はネメシス計画の準備とターゲットの補足まで。ここでは、小松左京「復活の日」、笠井潔「オイディプス症候群」などの人工的な病毒ウィルスをめぐるパニック…
登場人物のすべてがプロであって、そのプロがおのれのプライドにかけて任務を達成しようと意気込んでいる。そうすると、どのような危機も克服できるのであって、その克服の方法が素人のわれわれの予想を超えているのであるから、われわれは神のごとき「上か…
海外にでかけてパーティや居酒屋によるごとに、人々のジョークや小話、アネクドートを採集する博物学者に開高健がいた。「オーパ」や「もっと遠く」「もっと広く」の旅行で集めたジョークや小話は「食卓は笑う」(新潮社) にまとめられている。ほかのエッセ…
1982年10月に2週間ほどヴェトナムとカンボジアを取材したのをベースに、1984年に出版した。この年にはまだ「社会主義諸国」があって、なんとかしよう/なんとかなるだろうという希望を持っていた時代だった。 1 「ふつうの国」としてのベトナム ・・・ 戦争の…
著者は1899年生まれ。東大哲学科を卒業。マルクス主義を勉強して、現実変革の意思を持ったが、当時はかなわず。戦後は岩波書店の雑誌「世界」の編集長を長く務める。「世界」の関心には日米安保条約があり、その関連でヴェトナム戦争のレポや論文をたくさん…
2014/07/14 生井英考「ジャングル・クルーズにうってつけの日」(ちくま学芸文庫)-1 2014/07/15 生井英考「ジャングル・クルーズにうってつけの日」(ちくま学芸文庫)-2 2014/07/16 生井英考「ジャングル・クルーズにうってつけの日」(ちくま学芸文庫)-3…
2014/07/14 生井英考「ジャングル・クルーズにうってつけの日」(ちくま学芸文庫)-1 2014/07/15 生井英考「ジャングル・クルーズにうってつけの日」(ちくま学芸文庫)-2 第2部の「表現」をうけて、地上兵や飛行兵その他の戦闘員たちが経験した戦争のシンボ…
2014/07/14 生井英考「ジャングル・クルーズにうってつけの日」(ちくま学芸文庫)-1 第1部の「印象」を受けて、ヴェトナム戦争を同時代の人々がどのように「表現」したかをみる。この戦争がユニークなのは、TVカメラが入り、その日に起きたことが当日の夕…
戦争をまるごと全体とらえるというのはだんだん難しくなっていく。古い戦争では、ある特別な会戦に注目することによって、軍隊、政治、経済、大衆の生活などへの影響を表現することができた。表現されたものに「全体」が含まれていると錯誤することができた。…
2014/07/10 石川文洋「戦場カメラマン」(朝日文庫)-1 1972年のパリ会談のあと、アメリカ軍の撤退が発表される。それと軌を一にして、北ヴェトナム政府が西側諸国のジャーナリストを招待した。その一員になったことから、しばらく南ヴェトナムの取材が許可…
著者は沖縄生まれ、東京育ち。沖縄戦の前に疎開していたので、戦禍に会うことはなかったが、親類縁者に多数の死者がでた。そのことを知る祖母がときおり登場し、当時を述懐する。その言葉が、以下のヴェトナム戦争とそれ以降の戦場の被災者、被害者に重ねら…
作家は1964年末から1965年初頭の100日間をベトナムに過ごした。北の共産党が反抗を組織し、南の解放戦線が独立戦争を開始した。アメリカの支援を受けた政府があったが誰も信用していなくて、南ベトナム軍の将校は定期的にクーデターを起こしていた。金のある…
テキストクリティークの話から。もともとは紀元前500年ころに成立したといわれるが、自著ないし当時の本はもちろん残っていない。孫子の稿本は遡っても宋の時代(960-1279)まで。その写本は限りない人の手を経ていて、本文と注釈の区別がつかなくなっている…
これは普通では入手できない本。農業協同組合の機関紙に連載していた民話を家の光出版サービスが印刷製本したもの。農協の関係者と図書館くらいにしか配本されていないと思う。親類が農業をしていたので、謹呈されたようだ。 前書きをみると、1977年ころから…
もとは1979年に旺文社の雑誌に連載されていた。自分が読んだのは1982年の旺文社文庫版。いまでは角川文庫で出版されている。この小説はむしろ大林宣彦監督の映画「転校生」で知られているかな。 「斉藤一夫は小学六年生。ある日クラスに斉藤一美という転校生…
この本を読んだある経済学者がエンデに「この本の主題は貨幣だね」といったところ、そうだという返事をもらった。そこでエッセーを書き、シルビオ・ゲゼルという経済学者(現在では傍流のいささかふうがわりな学者と思われている)の研究雑誌に載せた。その翻…
ぽっぺん先生シリーズの第2作。1974年初出。 大学は夏休みになったけど、ぽっぺん先生は今日も出勤。というのも、大学構内の「カエラズの沼」の生態系を30枚で書いてくれという執筆依頼があるから。暑さのせいか書きたいことがありすぎるのか、ぽっぺん先生…
ぽっぺん先生シリーズの第1作。1973年初出。 ファンタジーにおいて、設定した異世界にまで主人公を届ける描写は難しい。そこに到着するまでの間に、異世界に移動したことを読者にわからせなければならず、同時に異世界と読者や作者のいるこの世界が隔絶して…