2017-02-01から1ヶ月間の記事一覧
2017/03/01 ヴィクトル・ユゴー「レ・ミゼラブル 上」(角川文庫) 1862年の続き。 さてジャン・バルジャン、コゼット、マリウス、テナルディエ、ジャベール警部の因縁の深まりは、偶然の出会いと必然の衝突を繰り返し、次第に沸騰していく。それは、1832年6…
2017/03/01 ヴィクトル・ユゴー「レ・ミゼラブル 上」(角川文庫) 1862年 2017/02/28 ヴィクトル・ユゴー「レ・ミゼラブル 下」(角川文庫)-1 1862年 の続き。 バリケード蜂起の時、人々は日常を越えた祝祭と緊張の瞬間を生きる。平穏であるが変化の乏しい…
ギムナジウムで優秀な成績をとったミシェル君は教師の勧めで、古典学・文献学の研究を続ける。実家は南フランスの大地主で、そこの上りで十分に暮らしていけたのだ。25歳の時、20歳のマルスリイヌと結婚。式のあと、ミシェルは妻を愛していないことに気付く…
作者ヴェルコールについては、wiki記事(ヴェルコール - Wikipedia)を参照。この文庫の解説で補足すると、イラストレイターだったのが、1940年夏のナチスドイツによるフランス占領から抵抗(レジスタンス)の活動を行った。収録された短編はそのときに公開…
1966年秋にサルトルはボーヴォワールと一緒に来日し、講演や対話を行った。公的な発言はすべて収録され雑誌に掲載されたり本になったという。そのひとつの「知識人の擁護」と名付けられた本書は、3つの講演を収録。 サルトル/ボーヴォワール「サルトルとの…
サルトル/ボーヴォワール「知識人の擁護」(人文書院)にあるように、1966年にサルトルとボーヴォワールは来日して、講演会や対話集会などに参加した。そのうち、ここでは雑誌「世界」に収録された日本の「知識人」との対話をおさめる。 知識人・核問題をめ…
1964年、サルトルが「言葉」を発表した際、スキャンダルが起きた。すなわち、 「『ル・モンド』紙は、女流記者ジャクリーヌ・ピァチエによるサルトルとのインターヴィュの記事を発表したが、このときサルトルは、「飢えて死ぬ子供を前にしては『嘔吐』は無力…
2017/02/16 大江健三郎「死者の奢り・飼育」(新潮文庫) 1958年 2017/02/15 大江健三郎「芽むしり仔撃ち」(新潮文庫)-1 1958年 2017/02/14 大江健三郎「芽むしり仔撃ち」(新潮文庫)-2 1958年 2017/02/13 大江健三郎「見る前に跳べ」(新潮文庫) 1958年…
自分は1994年以降の大江の作品を追いかけていないので(「宙返り」を除く)、長江古義人のシリーズはまったく知らない。なので、この2007年の作品では、説明抜きで古義人やその家族の名前が出てきて戸惑った。過去に彼らに起きた事件やその顛末も知らない。…
エントリーのタイトルは1960年にでた短編集に倣った。ただし、読んだのは「全作品 I-1」で収録作は全作品に倣う。文庫収録情報はタイトルのあとに入れた。また「死者の奢り・飼育」(新潮文庫)の収録作品は「死者の奢り」「他人の足」「飼育」「人間の羊」…
(おそらく)昭和20年の冬。指導教官に引率された感化院の少年14人と「僕」の弟の計15人が山間の村に到着した。都会にあったと思われる感化院を疎開させる必要があり、山村が選ばれたのだ。その村は奇妙な緊張感が漂う。村人は少年たちを警戒して遠巻きにし…
2017/02/15 大江健三郎「芽むしり仔撃ち」(新潮文庫)-1 1958年の続き。 山の中の村。それはすでに生産力を失っていて沈滞している。そこに外部のものが現れて、村をかきまわし、活性化して、彼はスケープゴートとなって懲罰を受けたり破滅する。このプロッ…
エントリーのタイトルは1960年にでた短編集に倣った。ただし、読んだのは「全作品 I-2」で収録作は全作品に倣う。文庫収録情報はタイトルのあとに入れた。また「見る前に跳べ」(新潮文庫)の収録作品は「奇妙な仕事」「動物倉庫」「運搬」「鳩」「見るまえ…
1958年を同時代としてみる。そうすると、敗戦から12年、占領開放から5年を経過している。この国は自立して戦争の債務を返すために若く健康になっているはずであった。とはいえ、朝鮮戦争から占領軍は名前を変えてこの国に駐留し、保守政党は占領軍の顔色を窺…
2017/02/10 大江健三郎「われらの時代」(新潮文庫)-1 1959年の続き。 もうひとつの物語が進行する。靖男より若い連中。靖男の弟・滋(16歳)が所属する「アンラッキー・ヤングメン」というジャズトリオ(クラリネット、ピアノ、ドラムという特殊編成)のメ…
著者の小説の舞台は都会か四国の山の村がほとんどだが、めずらしくソ連領に近い北海道の島(ほかにあるのは「幸福な若いギリアク人」くらいか)。この島も荒海に囲まれて、周囲とは隔絶状態にあるというのは同じだし、古い因習と長老による集団統治、村の中…
エントリーのタイトルは1960年にでた短編集に倣った。ただし、読んだのは「全作品 I-3」と「全作品 I-4」。それぞれの短編のあとに文庫化情報を追記。いくつかの短編は未収録で、初出誌か「全作品」でないと読めないと思う。タイトルの「孤独な青年の休暇」…
1960年上半期の安保反対運動は、6月19日の自然承認のあと沈静化する。岸信介が首相を辞めたのが大きな理由(反対運動のミッションのひとつを達成したから)。そのあと、10月12日に日比谷公会堂で行われた三党首立会演説会で、社会党党首・浅沼稲次郎が刺殺さ…
2017/02/06 大江健三郎「セヴンティーン」「政治少年死す」-1 1961年の続き。 純粋天皇と直接コンタクトする、その回路を持っている唯一の人間。その確信は「おれ」の死や無の恐怖を克服できる(つもりになるだけ)。そこからテロルの実行にはさらにいくつか…
文庫版のカバー説明には「フィクショナルな自伝」の文言が見えるが、囚われないほうがよい。むしろ「自伝的な装いを帯びたフィクション」とみるべき。なるほど、敗戦の年に12歳であるとか、長じて東大文学部に進学するとか、いくつかは著者の経歴をなぞって…
2017/02/02 大江健三郎「遅れてきた青年」(新潮文庫)-1 1961年 の続き。 第1部の終わりで教護院に入院されることになった「わたし」。「うまくたちまわって、騙して良い子になってみせるぞ」と宣言した通りに、優秀な生徒として卒業し、あまつさえ東大文…