odd_hatchの読書ノート

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伊藤公雄「ジェンダーの社会学〔新訂〕」(放送大学教材)-2 男性優位社会のジェンダー観は社会のしくみの隅々まで浸透している。転換が必要。

2024/04/16 伊藤公雄「ジェンダーの社会学〔新訂〕」(放送大学教材)-1 「社会的に作られた性別」であるジェンダーの刷り込みは個人の生きにくさになり、差別や貧困などの原因になる。 2008年の続き

 

 個人の問題からシーン別のジェンダーや「女性問題」について。社会のしくみにあるジェンダー問題。

9.労働とジェンダー ・・・ 21世紀の日本は女性の労働参加が先進国でも低い。労働力の不足を補っているのが男性の長時間労働。それは家庭と地域で男性の存在感がなくなりつながりを崩壊させている。ほかに、賃金の男女格差、女性管理職の低さもある。「男性は仕事、女性は家庭と育児」というジェンダー観が社会で強固なことが問題。

10.家族の中のジェンダー ・・・ 核家族は近代産業社会で作られた新しい形態。1.内と外の区分、2.強い情緒の結びつき、3.子供中心、4.性別分業、5.集団性の強調、6.社交の衰退、7.非親族排除が特徴。夫(父)の存在感がなく、母と子の結びつきが強くなり(子供が女性依存になる)、母の負担が大きく、華族が密室化して問題が発見しずらくなり、育児介護が家族負担になる。
(ここを読んで落ち込んでしまうのは、自民党やカルト宗教団体がこの家族観を強化する政策をしていること。家族に育児と介護の負担を押し付け、国家が家族を放置しようとしている。)

11.教育とジェンダー ・・・ 教育はジェンダーの形成に影響しているが、多くの学校では男女の二分法と性別分業が肯定されている。隠れたカリキュラム、ジェンダーラッキングなどで「女性らしさ」が押し付けられる。性教育と非暴力コミュニケーションが不足していることは将来の性暴力やDVに影響している。男の低学力化と女性研究者の不足は教育界の問題。
(目からうろこ。指摘されないとわからなかったのは俺に「男らしさ」が強く植え付けられているからだなあ。自分が学生時代に女子学生がいたことは当たり前で対等と思っていたが、実は男よりも彼女らのほうが努力していたし、社会や(俺のような)男性と戦っていたのだった。)

12.スポーツとジェンダー ・・・ 近代スポーツは男性主導で、男らしさに沿った男を作り出す機能をもっていた。競争・努力・勝利・数量化・記録。21世紀になってスポーツのジェンダー平等が実行されている。それでも能力に対する偏見、設備や待遇や褒賞の格差などの問題がある。                                                                                                    

13.セクシュアリティジェンダー ・・・ セクシュアリティは、性的欲望や性的行為、性的指向性などを含む、性に関わる意識・行動・心理・傾向などの総称。LGBTQなど性的マイノリティーへの差別。

14.国際社会とジェンダー ・・・ ジェンダー政策は国際社会でも必要。とくに開発。これまでの生産性・効率優先では、女性にさまざまな負担が集中し貧困と困難が押し付けられる。公正や福祉のプログラムもうまくいかない。個人の生活権の確保、学習権、身体の自己管理権などがある女性の地位向上が必須。エンパワーメント・プログラムが提案されている。自立、自己決定ができ、差別撤廃のしくみがあり、女性の社会参画ができ、平和を維持する。男性優位社会からの転換が必要。

15.ジェンダー政策のゆくえ ・・・ ジェンダー問題を整理すると、1.女性:差別、貧困、困難、社会参画できない、教育を受けられない、就職差別、妊娠・出産・育児の保護不足、DVなど。2.男性:自立できない、結婚できない、ひとりで解決しようとして孤立する、自己肯定感が低く他人に攻撃的、長時間労働、過労死、リタイア後の邪魔者扱いなど。3.セクシャル・マイノリティ:偏見と差別の被害など。
ジェンダー政策への反対意見は、男性優位社会の偏見に基づいているので、セクハラになることを求めているとか、家族の絆が壊れるとかのいいがかりばかりのようだ。そこは適切に反論していこう。たとえば社会の絆が壊れるには、男性の長時間労働を止めさせて家庭にいる時間を長くするのがよい、など。)

 

 個別では知っている話題がつながりました。ページを繰ることに自分に思い当たることが指摘してあって、恥じ入ったり過去の失敗を思い出したり、現在の問題を正面切って言われているように思ったり。男である俺にとってはストレスフルな読書でした。無意識に加害していたのがわかったので、これからは自分を変えないといけない。参考になる指摘がたくさんあった。
 ただ大学の教科書なので、全く知らない若者に状況やアウトラインを説明するまで(男性優位社会で競争に勝ってきた男子学生が聞いたり読んだりしたら、ショックを受けるだろう。反発するだろう。でも、男のジェンダーに基づく偏見を溶かすために必要な過程なのだ)。個々の問題は深くないので、気になるところは別書で補完しましょう。
 日本の男性優位社会を変えることが必要(個人的には組織のトップは女性のほうがいいよ。60歳以上の男性が決定権を持つ仕組みではいくら先進的な考えの持ち主でも対応は遅れる)。男性優位社会を変えるには、男性が声をあげないといけない。変化を望まないものに対する批判を男性がやろう(間違っても被害者にアドバイスしたり慰めたりすることはしない。そんなのは被害者の周囲にいる人がやればいいのであって、加害者にわーわーいうことが大事なのだ)。
 同時に、男性は家事・育児・介護と積極的に担うことが必要。いいことをいっていても生活で女性に依存していてはいけないよな。体と手を動かせ。

 

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