2016-01-01から1年間の記事一覧
ざっとおさらいをすると、教養主義の起源は19世紀ドイツ。それが丸ごと輸入された1920年代からこの国の人口に膾炙。とくに知的エリートである大学生に普及した。そこには多少政治的なかかわりもある。1920年代に社会主義やアナキズム、それに抗するナショナ…
「真相」はあきらかでないのに「こうではないか」とまことしやかに、繰り返し口端に乗る言説がある。「都市伝説」とかデマとかいうものだ。これらは一般人には検証しようがないので、時間がたったら同じ都市伝説やデマが復活してしまう。否定や打消しの言説…
古今の奇妙な遺言をあつめた。 奇想天外な例がある。50年ごとの特別な日にプディングやパンを焼いて貧しい人に配布しろとか、売れない俳優が来たら靴一足を恵む基金にしろとか、頭蓋骨を残して「ハムレット」を上演するときの小道具に使えとか。あるいは、「…
小学校高学年のころから地図帳や地球儀を見るのが楽しくなって、たとえば授業の休憩時間に飽かずに眺めていた。ときに、クラスメートがやってきて「○○ページに『××』の地名があるから探してみろ」などと問題を出し合う。そうすると、最初は小さな文字を、当…
どんなにつまらぬ、くだらぬものでもたくさん集めれば意味が生まれてくる、ということをいったのは荒俣宏さんだったか。その典型がエドワード・モースのコレクションで、明治前期の日本で使われたものを片っ端からコレクションしていてそのかず数万点。当時…
2016/12/15 ガブリエル・ガルシア=マルケス「ママ・グランデの葬儀」(集英社文庫) 1960年 2016/12/14 ガブリエル・ガルシア=マルケス「悪い時」(新潮社) 1962年 2016/12/13 ガブリエル・ガルシア=マルケス「百年の孤独」(新潮社)-1 1967年 2016/12/…
1950年代に書かれたと思しい中短編を集めた。作者30代の最初期の作品を集める。 大佐に手紙は来ない ・・・ 腸に病気を抱える75歳の大佐とぜんそく持ちの妻の二人暮らし。10月は彼らの体調を崩し、灼熱は町を茹で上げる。彼らは職を持たないし、金もない。彼…
中南米の高温多湿な地方都市。そこに住む人たちの日常のてんやわんやがうだうだとつづられている。暑い、湿っぽい、不潔、人口過多、貧しい、食い物はすぐ悪くなり、ぬるいビールか地元の蒸留酒を飲むか、そんな発展から取り残されたカリブ海沿岸の衰退しつ…
1967年初出の畢生の大作にして傑作。読んでいる間、小説の世界がまるで現実のようにあらわれ(しかし描写はほとんどないのに)、読者の物理現実のほうが色あせ、マコンドと呼ばれる土地のおよそ百年の歴史と100人を超えると思われる人物によい、続きを知りた…
2016/12/13 ガブリエル・ガルシア=マルケス「百年の孤独」(新潮社)-1 1967年 の続き。 古い新潮社版では全部で約300ページ。作家は章を立てていないが、改ページで分けられているところが19ある。そのために、20の部分にわけることができる。タイトル「百…
2016/12/13 ガブリエル・ガルシア=マルケス「百年の孤独」(新潮社)-1 1967年 2016/12/12 ガブリエル・ガルシア=マルケス「百年の孤独」(新潮社)-2 1967年 の続き。 20に分けられた章で「百年の孤独」を書いたので、ひとつの章がおおよそ5年にあたる…
2016/12/13 ガブリエル・ガルシア=マルケス「百年の孤独」(新潮社)-1 1967年 2016/12/12 ガブリエル・ガルシア=マルケス「百年の孤独」(新潮社)-2 1967年 2016/12/9 ガブリエル・ガルシア=マルケス「百年の孤独」(新潮社)-3 1967年 タイトル「百年…
2016/12/13 ガブリエル・ガルシア=マルケス「百年の孤独」(新潮社)-1 1967年 2016/12/12 ガブリエル・ガルシア=マルケス「百年の孤独」(新潮社)-2 1967年 2016/12/9 ガブリエル・ガルシア=マルケス「百年の孤独」(新潮社)-3 1967年 2016/12/08 ガブ…
最初の6編は大人のための童話と銘打たれた短い物語。カリブ海に面したコロンビアの町や村がたぶん舞台になっていて、リアリスティックでありながら幻想的なイメージがたくさん出てくる。人呼んで「マジック・リアリズム」であります。これは中南米の湿気が多…
長年人が寄り付いたことがなかった大統領府。そこに足を踏み入れると、牛やメンドリが建物の中を闊歩し、高価なカーペットほかの調度品を破壊していた。ある部屋に、大統領の死体があった。ハゲタカが腐肉をついばみ、腹の周りには海の寄生物が付着していた…
2016/12/05 ガブリエル・ガルシア=マルケス「族長の秋」(集英社)-1 1975年 の続き。 最後の章に簡単に触れらているが、大統領はわかいときに前大統領ムニョスをクーデターで追放していたのだった。そのあとは、自身の手で国内改革に熱中する。全国を行脚…
プロットを記すと以下のようになる。 「『わたし』の実家がある田舎町に現れた得体の知れぬ金持ち、バヤルド・サン・ロマン。彼は洗練された身のこなしと強引な性格を合わせ持つが、町の人々からは概ね好意的に受け入れられる。そして彼は、古風な家に生まれ…
2016/11/28 エラリー・クイーン「ローマ帽子の謎」(ハヤカワ文庫) 1929年 2016/11/25 エラリー・クイーン「フランス白粉の謎」(ハヤカワ文庫) 1930年 2016/11/24 エラリー・クイーン「オランダ靴の謎」(ハヤカワ文庫) 1931年 2010/12/15 エラリー・ク…
クイーンのデビュー作で、1929年初出。この年にはブラック・マンデーからの大不況が始まるのだが、この作はそのような気配が微塵もない。なので、舞台のニューヨーク・ローマ劇場には着飾った紳士淑女が大挙して押し寄せている。この時代のトップモードは、…
これから読まれる方への重大な警告。小説の最後の1行に真犯人の名が書かれています。本文より先に解説を読もうとすると、わかってしまう場合がありますよ。 というのは1970年代までの探偵小説読みの常識であったが、いまはどうなのだろう。 さて、ニューヨ…
大富豪の老婦人が寄付してできたオランダ記念病院。当の老婦人が糖尿病の治療中転倒してけがを負う。ちょっと脱線するが、この手術室には患者の関係者が手術の様子を見るひな壇が設けられている。西洋ルネサンスころに人体解剖をするようになったが、教授た…
以前感想を書いたのを訳と版を変えて再読。 ギリシャ人の美術商が病気で亡くなり、葬儀を終えると遺言状が紛失していた。式場や屋敷から出て行った不審者はいない。エラリーの推理で墓を掘り、棺を開けるとそこには見知らぬ死体が一緒に入っていた。遺言状は…
以前感想を書いたのを訳と版を変えて再読。 ウェスト・ヴァージニア(ニューヨーク市から自動車で片道3-5時間くらいか)の片田舎で、偏屈な小学校教師アンドルー・ヴァンの首なし死体が見つから。交通標識に縛り付けられて、Tの形に見える。たまたま検視訊問…
世界不況の前か後かわからない戦前のニューヨークで、以下の3つの事件が起きる。 第一の事件: 雨のなか、満員の市電で、乗客のひとりが毒殺される。凶器はコルク玉に針をいくつも刺し、先端に高濃度のニコチンを塗ったというもの。被害者を嫌う人物が複数乗…
1932年作で、レーン4部作の第2作。今度は田村隆一訳の角川文庫版で読んだ。これで5回目の再読になるのかな。 前作「Xの悲劇」では都会を舞台にしたのが、今度は一転して館の一族の事件。 ニューヨーク有数の資産家ハッター家の当主ヨークが失踪し、入水自殺…
これまでにクイーン「Yの悲劇」は、鮎川信夫訳(創元推理文庫)、大久保康雄訳(新潮文庫)、田村隆一訳(角川文庫旧版)で読んできた。ほかに井上良夫訳、宇野利泰訳、鎌田三平訳、越前敏弥訳と複数の翻訳がある。さて、ここに今は入手難になった平井呈一訳…
2016/11/17 エラリー・クイーン「Yの悲劇」(講談社文庫)-1 1932年 の続き。 解説はミステリマガジンの編集者だった各務三郎氏。退職後は翻訳やアンソロジー編集などで活躍。出版年1975年からすると編集者をやめてフリーになった直後の執筆みたい。 この解…
ニューヨーク近郊の大理石採掘会社は成長していたが、社長は苦難を感じていた。共同経営者の医師には悪いうわさが流れている。闇酒場(当時は禁酒法時代)と娼婦館を経営している女族長を部下にし、弟は上院議員でロビー活動に余念がない。そこに上院議員が…
古書がでてくるミステリは、ダニング「死の蔵書」とかロス・キング「謎の蔵書票」(早川書房)とかエーコ「薔薇の名前」(東京創元社)などを読んでいるけど、これはカー「帽子収集狂事件」と同じ時期に書かれた古書ミステリ(範囲を拡張すると、蔵書を数え上…
中学生のときに「国名」と「悲劇」のシリーズをひととおり読んだとき、もっとも印象に残った作品。再読すると、たしかに謎の規模は小さいし、複雑でもない。探偵のさえもない。そのあたりは、次のような推理を裏付けるかも。すなわち、1932年に「ギリシャ」…