odd_hatchの読書ノート

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フランス文学_エンタメ

ジュール・ヴェルヌ「海底二万リュー」(旺文社文庫)-2

2016/07/21 ジュール・ヴェルヌ「海底二万リュー」(旺文社文庫)-1 1870年 の続き その他気になったところを箇条書きに。 ・この小説には女性が一切登場しない。これはメルヴィル「白鯨」、ポー「アーサー・ゴードン・ピムの物語」、スティーブンソン「宝島…

ジュール・ヴェルヌ「海底二万リュー」(旺文社文庫)-1

昔読んだ旺文社文庫版では「リュー」、今回読んだ集英社文庫版では「里」。ほかに「リーグ」「海里」など表題の単位表記にはさまざまなヴァリアントがある。 きわめて高名な冒険小説。1870年に書かれてから、この国で何度も翻訳され、ジュブナイル版も出たり…

モーリス・ルヴェル「夜鳥」(創元推理文庫)-2

2016/07/19 モーリス・ルヴェル「夜鳥」(創元推理文庫)-1 の続き。 続いて後半15編。ルヴェルがこの国の小説史に刻まれ、今でも読み手がいるのは(翻訳後80年たとうというのに)、この作家に惚れた翻訳者がいるから。「新青年」を編集するとき、編集者が小…

モーリス・ルヴェル「夜鳥」(創元推理文庫)-1

モーリス・ルヴェルは本国(フランス)でも忘れられた作家になっているらしい。解説および序文を書いた人たちによると、どうもこの一冊だけが翻訳されたらしい(長編一つが翻訳されたかされないか)。しかし、この一冊の翻訳によって、ルヴェルの名はこの国…

ノエル・カレフ「死刑台のエレベーター」(創元推理文庫)

会社社長は高利貸しからの返済催促に苦慮していた。資金繰りのめどがたたなくなり、ついに義兄をはめ、さらに高利貸しを殺すことを決意する。実行は土曜日夕方、そうすれば月曜朝の発覚までに時間稼ぎができる。犯行は成功したが、自室に小切手他の証拠を残…

ボワロ&ナルスジャック「技師は数字を愛しすぎた」(創元推理文庫)

パリの原子力関連施設で殺人事件が起きた。調べないで書くと、初出の1958年当時にはまだ原子力発電は実験段階。それもアメリカの企業が開発していたので、この施設は核兵器の開発施設だったのではないかと思う。なにしろ、核燃料を詰めたチューブが同時に盗…

ミシェル・ジュリ「不安定な時間」(サンリオSF文庫)

2060年、ロベール・オルザックは時間溶解剤を飲んだ。この薬は、現実から意識が遊離して<溶時界><不安定界>なる時空体に入ることになる。そこでは継時的な時間はなく、タイムスリップに似た感覚をもつことができる。初出の1973年には、現実と夢の境をま…

フィリップ・キュルヴァル「愛しき人類」(サンリオSF文庫)

フランスのシュールレアリストで作家のキュルヴァルが1976年に書き、翌年のアポロ賞を受賞した、という。 奔放なイメージが錯乱し、いくつもの物語が同時に進行している。なので箇条書きにするしかない。 ・20年前にマルコム(旧ヨーロッパ共同体)は国境を封…

ジョン・ガッテニョ「SF小説」(文庫クセジュ)

これを読むと、ミステリ(探偵小説)は形式の文学だなあと思う。形式は犯罪→探偵→捜査(解決)で構成される。そこにはしばしばテーマはない。形式を踏まえていれば、何の内容もなくてかまわない。量産されるミステリ(探偵小説)はそういうものだ。また作品…

ボワロ&ナルスジャック「探偵小説」(文庫クセジュ)

フランスのミステリ事情はあまりこの国では知られていない。ガボリオ、ボアゴベ、ルルー、ミシェル・ルブラン、シムノン、アルレー、ジャブリゾ、カレフ、本書の作家を除いて、複数の翻訳があるのはあと何人いるのだろう。これを続けると、自分の無知を天下…

カミ「エッフェル塔の潜水夫」(講談社文庫)

1870年代にエッフェル塔ができてから、好きにしろ嫌いにしろ、この建物を意識しないわけにいかなく、この建物をめぐる物語はたくさんあった。これがそのひとつ。建設当時の苦労はやはり神話になっていて、しかもその動力に関する話は1929年当時には人の記憶…

セバスチャン・ジャブリゾ「シンデレラの罠」(創元推理文庫)

病院で目覚めた娘がいる。彼女は全身を(顔ですら)包帯で巻かれた重傷人だった。それは全身に負った火傷のためであり、彼女の外観は皮膚移植などで元の顔を知らない医師たちによって人工的に作られたものであった。しかも彼女は記憶を失っている。医師たちは…

ミシェル・ルブラン「未亡人」(創元推理文庫)

自分の持っているのは1981年印刷のもので、カバーにはNHK銀河テレビ小説「鏡の中の女」の原作であるとクレジットされている。主演は多岐川裕美。1981年8月17日から9月1日までの全20回(1回20分)。自分は未見。 未亡人 ・・・ 貿易商ダニエルは事業は成功して…

ミシェル・ルブラン「殺人四重奏」(創元推理文庫)

「人気絶頂の映画女優シルヴィーが殺された。報せをうけた映画監督、脚本家、俳優たちの表情は硬い。素人から、瞬くうちにスターの階段を駆けあがったシルヴィー。傷つかずにやりすごせた者など、はたしていたのか? かくて、殺したのは自分だと皆が言う、巧…

トマス・ナルスジャック「贋作展覧会」(ハヤカワポケットミステリ)

訳者解説によると、これはトーマス・ナルスジャックの第1作。船乗り一家に生まれたが、8歳で空気銃の暴発で片目を失明。長じては文学部の教授に就任。シムノンを読み漁り、1945年の退屈な日々に贋作を書いた。楽しかったらしく、10編たまっていた。さらに同…

フレッド・カサック「殺人交叉点」(創元推理文庫)

マザコンの気のある大学生がいる。あるいは母の干渉が過ぎて、意気阻喪しているのか。息子の取り巻きを集めたサロンに学生の友人が集まるが、母は息子に近寄る女を排除する。息子は数人の女を捨てた後、バカンスの最中に殺されてしまった。状況は一緒に死ん…

S=A.ステーマン「殺人者は21番地に住む」(創元推理文庫)

「霧深いロンドンの街を騒がす連続殺人。犯人は不敵にも、現場に〈スミス氏〉という名刺を残していた。手がかりもなく途方に暮れる警察に、犯人の住居を突き止めたという知らせが入る。だがしかし、問題のラッセル広場21番地は下宿屋なのだ。どの下宿人が犯…

S=A.ステーマン「六死人」(創元推理文庫)

「「世界はぼくたちのものさ!」大志を抱き、五年後の再会と築いた富の分有を約して、世界に旅立った六人の青年たち。月日は流れ、彼らが再び集う日がやってきた。だが、そのうちの一人が客船から落ちて行方不明になったのを皮切りに、一人、また一人と殺さ…

カトリーヌ・アルレー「白墨の男」(創元推理文庫)

「最後のバラ色の三日間。あとはみなさん、さようなら!」 イリスが車に乗せた青年は、こう言うと笑った。自殺志願者の最後の三日間! 人生に破れ、死を思っていた女流作家イリスが、偶然にも自殺志願者を拾ったのだ。「あんたも三日延ばさないかい? それか…

ボリス・ヴィアン「死の色はみな同じ」(早川書房)

兄と称する黒人が現われた時から、白い肌のダンは、愛する白人の妻を抱けなくなり、傷ついた野獣のように追いつめられていった……黒い血への怯えが生む狂った犯罪をスピーディに描く! この作品が書かれた背景を簡単に書くと、第2次大戦直後、高尚な文学を出…

ガボリオ「ルコック探偵」(旺文社文庫)

パリのうらぶれた居酒屋で深夜、銃声が聞こえる。駆けつけた警察官のみたものは、3人の男の死体と銃を持った一人の男。容疑者は自分が行ったことだと説明した。誰もがありふれた強盗殺人事件と考えた。しかし、野心に燃える若い警官はその事件の背後に隠され…

ガストン・ルルー「黄色い部屋の謎」(創元推理文庫)

1900年になったばかりの時代の探偵小説(1907年作)。 主要登場人物の一人、スタンガースン博士の研究テーマは「電気作用による物質の解離」「帯電物質に紫外線を照射して疲労を測定する方法」「差動蓄電式検電器」というものだった。最初のは、のちの密室で…