odd_hatchの読書ノート

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大江健三郎

大江健三郎 INDEX

2017/02/16 大江健三郎「死者の奢り・飼育」(新潮文庫) 1958年 2017/02/15 大江健三郎「芽むしり仔撃ち」(新潮文庫)-1 1958年 2017/02/14 大江健三郎「芽むしり仔撃ち」(新潮文庫)-2 1958年 2017/02/13 大江健三郎「見る前に跳べ」(新潮文庫) 1958年…

大江健三郎「美しいアナベル・リイ」(新潮文庫)

自分は1994年以降の大江の作品を追いかけていないので(「宙返り」を除く)、長江古義人のシリーズはまったく知らない。なので、この2007年の作品では、説明抜きで古義人やその家族の名前が出てきて戸惑った。過去に彼らに起きた事件やその顛末も知らない。…

大江健三郎「死者の奢り・飼育」(新潮文庫)

エントリーのタイトルは1960年にでた短編集に倣った。ただし、読んだのは「全作品 I-1」で収録作は全作品に倣う。文庫収録情報はタイトルのあとに入れた。また「死者の奢り・飼育」(新潮文庫)の収録作品は「死者の奢り」「他人の足」「飼育」「人間の羊」…

大江健三郎「芽むしり仔撃ち」(新潮文庫)-1

(おそらく)昭和20年の冬。指導教官に引率された感化院の少年14人と「僕」の弟の計15人が山間の村に到着した。都会にあったと思われる感化院を疎開させる必要があり、山村が選ばれたのだ。その村は奇妙な緊張感が漂う。村人は少年たちを警戒して遠巻きにし…

大江健三郎「芽むしり仔撃ち」(新潮文庫)-2

2017/02/15 大江健三郎「芽むしり仔撃ち」(新潮文庫)-1 1958年の続き。 山の中の村。それはすでに生産力を失っていて沈滞している。そこに外部のものが現れて、村をかきまわし、活性化して、彼はスケープゴートとなって懲罰を受けたり破滅する。このプロッ…

大江健三郎「見る前に跳べ」(新潮文庫)

エントリーのタイトルは1960年にでた短編集に倣った。ただし、読んだのは「全作品 I-2」で収録作は全作品に倣う。文庫収録情報はタイトルのあとに入れた。また「見る前に跳べ」(新潮文庫)の収録作品は「奇妙な仕事」「動物倉庫」「運搬」「鳩」「見るまえ…

大江健三郎「われらの時代」(新潮文庫)-1

1958年を同時代としてみる。そうすると、敗戦から12年、占領開放から5年を経過している。この国は自立して戦争の債務を返すために若く健康になっているはずであった。とはいえ、朝鮮戦争から占領軍は名前を変えてこの国に駐留し、保守政党は占領軍の顔色を窺…

大江健三郎「われらの時代」(新潮文庫)-2

2017/02/10 大江健三郎「われらの時代」(新潮文庫)-1 1959年の続き。 もうひとつの物語が進行する。靖男より若い連中。靖男の弟・滋(16歳)が所属する「アンラッキー・ヤングメン」というジャズトリオ(クラリネット、ピアノ、ドラムという特殊編成)のメ…

大江健三郎「青年の汚名」(文春文庫)

著者の小説の舞台は都会か四国の山の村がほとんどだが、めずらしくソ連領に近い北海道の島(ほかにあるのは「幸福な若いギリアク人」くらいか)。この島も荒海に囲まれて、周囲とは隔絶状態にあるというのは同じだし、古い因習と長老による集団統治、村の中…

大江健三郎「孤独な青年の休暇」(新潮社)

エントリーのタイトルは1960年にでた短編集に倣った。ただし、読んだのは「全作品 I-3」と「全作品 I-4」。それぞれの短編のあとに文庫化情報を追記。いくつかの短編は未収録で、初出誌か「全作品」でないと読めないと思う。タイトルの「孤独な青年の休暇」…

大江健三郎「セヴンティーン」「政治少年死す」-1

1960年上半期の安保反対運動は、6月19日の自然承認のあと沈静化する。岸信介が首相を止めたのが大きな理由(反対運動のミッションのひとつを達成したから)。そのあと、10月12日に日比谷公会堂で行われた三党首立会演説会で、社会党党首・浅沼稲次郎が刺殺さ…

大江健三郎「セヴンティーン」「政治少年死す」-2

2017/02/06 大江健三郎「セヴンティーン」「政治少年死す」-1 1961年の続き。 純粋天皇と直接コンタクトする、その回路を持っている唯一の人間。その確信は「おれ」の死や無の恐怖を克服できる(つもりになるだけ)。そこからテロルの実行にはさらにいくつか…

大江健三郎「遅れてきた青年」(新潮文庫)-1

文庫版のカバー説明には「フィクショナルな自伝」の文言が見えるが、囚われないほうがよい。むしろ「自伝的な装いを帯びたフィクション」とみるべき。なるほど、敗戦の年に12歳であるとか、長じて東大文学部に進学するとか、いくつかは著者の経歴をなぞって…

大江健三郎「遅れてきた青年」(新潮文庫)-2

2017/02/02 大江健三郎「遅れてきた青年」(新潮文庫)-1 1961年 の続き。 第1部の終わりで教護院に入院されることになった「わたし」。「うまくたちまわって、騙して良い子になってみせるぞ」と宣言した通りに、優秀な生徒として卒業し、あまつさえ東大文…

大江健三郎「遅れてきた青年」(新潮文庫)-3

2017/02/02 大江健三郎「遅れてきた青年」(新潮文庫)-1 1961年 2017/02/01 大江健三郎「遅れてきた青年」(新潮文庫)-2 1961年の続き。 昭和10年代の軍国主義、そのあとの占領時代の民主主義。この国では価値の激変がおきたわけだが、1952年に独立を承認…

大江健三郎「世界の若者たち」(新潮社)

35年前にたまたまどこかの古本屋で入手して、それ以後見かけたことがない。珍しい本だと思う。1962年初出。 デビュー以来ずっと図書館か書斎で小説を書いてきたが、閉鎖的で室内的な性格をつくりかえあければならないと思って、海外旅行(および他の国の作家…

大江健三郎「叫び声」(講談社文庫)

冒頭に「人間みなが遅すぎる救助をまちこがれている恐怖の時代には、誰かひとり遥かな救いをもとめて叫び声をあげる時、それを聞く者はみな、その叫びが自分自身の声でなかったかと、わが耳を疑う」とあって、小説の主題が提示される。高度経済成長があって…

大江健三郎「性的人間」(新潮文庫)

「性的人間」新潮文庫と同じ内容であるが、自分の読んだのは新潮社版の「大江健三郎全作品 I-6」。新潮文庫には「セヴンティーン」「共同生活」が入っているが、それらは別エントリーで。 性的人間(1963年5月) ・・・ 大企業創業社長の息子Jは、仕事をしな…

大江健三郎「日常生活の冒険」(新潮文庫)-1

著者のよくある技法である「はた迷惑な闖入者」の物語。 20歳になるまえの大学生で小説が認められ、そのまま職業作家になる。必ずしも平穏無事にあるわけではなく、書斎に閉じこもり気味な生活がストレスになり、22歳ころに書いた政治的小説でバッシング…

大江健三郎「日常生活の冒険」(新潮文庫)-2

2017/01/25 大江健三郎「日常生活の冒険」(新潮文庫)-1 1964年の続き。 孤独で悲惨な現代生活。周りは高度経済成長で仕事にはげめば高収入が得られ、およそ20年前の敗戦とその後の窮乏から抜け出せる。この小説が書かれた1964年はそのような気分があったこ…

大江健三郎「空の怪物アグイー」(新潮文庫)

「空の怪物アグイー」新潮文庫と同じ内容であるが、自分の読んだのは新潮社版の「大江健三郎全作品 I-6」。なので、新潮文庫版とは収録作品が異なり、並び順が違う。この感想では、とりあえず「空の怪物アグイー」にならう。「大江健三郎全作品 I-6」には「…

大江健三郎「個人的な体験」(新潮文庫)

27歳4カ月の鳥(バード:あだ名)は鬱屈していた。妻の出産が思いかけず難産であり、赤ん坊に異常があると知らされたから。町の産婦人科はただちに大学病院を紹介し、そこで赤ん坊が「脳ヘルニア」であることを知る。手術をしなければ命が危ういし、成功して…

大江健三郎「ヒロシマノート」(岩波新書)

原爆投下から20年にもなる1964年。政府は被爆者問題や支援に無関心で、通常の生活保護でしか対応しない(それでは不十分)。原水爆反対運動は二つに分裂しつつあり、多くの国民も無関心になろうとしている。一方、健康と思われた人にも原爆症の症状がでて有効…

大江健三郎「大江健三郎全作品 第1期」巻末エッセイ(新潮社)

1965年から翌年にかけて、「大江健三郎全作品第I期」全6巻(新潮社)が刊行された。その際に、各巻末にエッセイが収録された。のちに、岩波書店で刊行された「大江健三郎同時代論集全10巻」のたしか第9巻にまとめられた。ここでは「全作品第I期」で読んだ。…

大江健三郎「万延元年のフットボール」(講談社文庫)-1

障害のある子供が生まれて鬱屈して大学の英語講師をやめた「僕」は、数年ぶりに帰国した弟・鷹四の誘いで生まれた四国の森の中の村に帰ることにする。この兄弟の根所家がもっていた巨大な蔵屋敷を、「スーパーマーケットの天皇」と及ばれる地域の商人資本家…

大江健三郎「万延元年のフットボール」(講談社文庫)-2

2017/01/17 大江健三郎「万延元年のフットボール」(講談社文庫)-1 1967年の続き。 このエントリーでは根所家にフォーカス。根所というのは奇妙な名前で、どうやら村の権力には関係しない、むしろ差別される側の一族だったようだ。蔵屋敷をもつのは、たぶん…

大江健三郎「万延元年のフットボール」(講談社文庫)-3

2017/01/17 大江健三郎「万延元年のフットボール」(講談社文庫)-1 1967年 2017/01/16 大江健三郎「万延元年のフットボール」(講談社文庫)-2 1967年の続き。 蜜と鷹が帰る四国の山の中の村。周囲は森に囲まれ、隠遁者ギーという老人のほかは村人でさえ迷…

大江健三郎「万延元年のフットボール」(講談社文庫)-4

2017/01/17 大江健三郎「万延元年のフットボール」(講談社文庫)-1 1967年 2017/01/16 大江健三郎「万延元年のフットボール」(講談社文庫)-2 1967年 2017/01/13 大江健三郎「万延元年のフットボール」(講談社文庫)-3 1967年の続き。 1967年に書かれた長…

松原新一「大江健三郎の世界」(講談社)

1967年出版なので、大江健三郎は32歳で、最新作品は「万延元年のフットボール」。21世紀に読むには取り上げている作品が初期に偏っているのが不満だし、1970年代以降の作家のモチーフには触れていない。そこは残念だが仕方がない。 著者が大江の作品の中で重…

大江健三郎「核時代の想像力」(新潮社)

「万年元年のフットボール」1967年を書き終えて、次の長編にとりかかるのが大変(次の長編「洪水は我が魂に及び」がでるのは1972年で間があいている)。そこで、紀伊国屋ホールで毎月1回の講演をすることで、小説を書くこと、想像力を使うこと、社会や現実…