odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

2022-08-01から1ヶ月間の記事一覧

堀田善衛「ゴヤ 4」(朝日学芸文庫)-1

2022/09/01 堀田善衛「ゴヤ 3」(朝日学芸文庫)-2 1975年の続き 晩年。すでにゴヤ68歳(1814年)。半島戦争の影響は 「彼ら(民衆)が立ち上って戦ったのは、ナポレオンの新しい軍事雫専制主義に対してであって、フランス革命の精神に対してではなかったの…

堀田善衛「ゴヤ 4」(朝日学芸文庫)-2

2022/08/30 堀田善衛「ゴヤ 4」(朝日学芸文庫)-1 1977年の続き 「ゴャの諸作は、あまりに生々しく人間的であるために、美術作品でありながらも、美しい、という語を付することの不可能なものばかりなのである(P294)」 暗い谷間に ・・・ 1810年代の暗い…

堀田善衛「路上の人」(新潮文庫)-1

時代は13世紀。1243年のモンサヴァール城包囲戦を焦点にする。しかし、この戦い―異端審問から発する異教徒の殺戮戦―は主題ではなく、深い森からおずおずと現われ、村と村がつながりだした、西洋の中世のあり様を全的に描くことにある。作家はすでに西洋中世…

堀田善衛「路上の人」(新潮文庫)-2

2022/08/26 堀田善衛「路上の人」(新潮文庫)-1 1985年の続き 人々が森を出て、隣の村と交易を開始する。ローマ帝国の道が残っていたが、教会と王の物だったので、新たに道を作った。すると無数の人々が道を行きかう。路上を歩くのは商人、職人、下級聖職者…

堀田善衛「ミシェル 城館の人1」(集英社文庫)-1

ミシェルは「随想録(エセー)」を書いたミシェル・ド・モンテーニュのこと。1533年生まれ1592年没というから、この国では戦国時代にあたる。織田信長(1534-1582)、豊臣秀吉(1537-1598)、明智光秀(1528-1582)らを並べると親近感がわくだろうか。もちろ…

堀田善衛「ミシェル 城館の人1」(集英社文庫)-2

2022/08/23 堀田善衛「ミシェル 城館の人1」(集英社文庫)-1 1991年の続き 乱世、というしかない時代。そこにおいて知識人(という言葉はこの時代にはないが)はどう生きるか。 通常フランスのルネサンスは尻つぼみとされるが、それは文人のビッグネームを…

堀田善衛「ミシェル 城館の人2」(集英社文庫)-1

2022/08/22 堀田善衛「ミシェル 城館の人1」(集英社文庫)-2 1991年の続き 39歳にして隠棲を始めたからといって、現代のひきこもりや江戸川乱歩の作中人物のようなものを想像してはならない。高等法院の前審議官であり、貴族の領地の経営などを引き継ぐと…

堀田善衛「ミシェル 城館の人2」(集英社文庫)-2

隠棲して1572年ころから「エセー(試み)」を書き始める。以後約20年書き継がれ、全部で3巻を出版した。加筆を繰り返したので、時期によってテキストはa、b、cに区別している。いくつかの邦訳がでているが大冊。体系的な書き方をしていないので、俺のような…

堀田善衛「ミシェル 城館の人3」(集英社文庫)-1

2022/08/18 堀田善衛「ミシェル 城館の人2」(集英社文庫)-2 1992年の続き 率直に言えば、堀田善衛の著作は敬愛するところ多々とはいえ、通読するのに困難が時に起こる。「ゴヤ」がそうで、この「ミシェル 城館の人」でも2巻の中ほどで半年以上放置してい…

堀田善衛「ミシェル 城館の人3」(集英社文庫)-2

2022/08/05 堀田善衛「ミシェル 城館の人3」(集英社文庫)-1 1994年の続き 16世紀のフランスは混迷の時代。進んだイタリア、スペイン、イギリスに囲まれ、ドイツやオランダなどからプロテスタントがはいっていた。それを統合する王権はとても弱い。王様が…

堀田善衛「ラ・ロシュフーコー公爵傳説」(集英社文庫)-1

前作「ミシェル 城館の人」で16世紀フランスを描いた次作「ラ・ロシュフーコー公爵傳説」では17世紀フランスを取り上げる。この博識な観察家によると、ばらばらだった断片が一つにつながる快感を得られる。箴言(マキシム)で高名なラ・ロシュフーコー公がデ…

堀田善衛「ラ・ロシュフーコー公爵傳説」(集英社文庫)-2

2022/08/02 堀田善衛「ラ・ロシュフーコー公爵傳説」(集英社文庫)-1 1998年の続き ラ・ロシュフーコー公爵家はフランス南部の名家。この名を持つ土地を所領にして、フランス王の覚えも愛でたかった。本書の主人公フランソア六世・ド・ラ・ロシュフーコー公…