odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

エドワード・H・カー「歴史とは何か」(岩波新書) 1961年当時の歴史学の批判。英雄史、歴史法則による決定論、進歩史観はダメ。

「歴史とは何か」の問いに真正直にこたえようとすると途方に暮れる。概念や指示されているもの・ことを明らかにするのは素人には困難だからだ。そこで、問いを変える。「歴史でないとは何か」「歴史を捏造するとは何か」。非歴史を俎上に挙げることによって…

プラトーン「ソークラテースの弁明・クリトーン・パイドーン 」(新潮文庫)-1

タイトルは出版社のものを使うが、以下の感想では高校で習ったように長引きを消して、「プラトン」「ソクラテス」とする。学術的には出版社のものが正しいのだろうが、長年の習性を変えるのは難しくて。 多くの人と同じように本書は学部生の時に読んだ。よく…

プラトーン「ソークラテースの弁明・クリトーン・パイドーン 」(新潮文庫)-2

2021/12/27 プラトーン「ソークラテースの弁明・クリトーン・パイドーン 」(新潮文庫)-1 の続き これが書かれたのは今から2500年以上前のこと。国民国家はないし、資本主義もないし、法の意味するところも異なる。しかし、「国家」「法」「共同体」などは…

田中美知太郎「ソクラテス」(岩波新書) 「ソークラテースの弁明・クリトーン・パイドーン 」の引用とその言いかえばかり。

2021/12/27 プラトーン「ソークラテースの弁明・クリトーン・パイドーン 」(新潮文庫)-1 2021/12/24 プラトーン「ソークラテースの弁明・クリトーン・パイドーン 」(新潮文庫)-2 16歳の高校二年生で読んでよくわからなかった。数十年ぶりに読んでも、わ…

ジョン・ロック「市民政府論」(岩波文庫)-1

本書の概要 『統治二論』(とうちにろん、Two Treatises of Government)は、1689年にイギリスの政治学者ジョン・ロックによって著された二篇の論文から成る政治哲学書である。『統治論二篇』『市民政府論』『市民政府二論』とも呼ばれる。アメリカ独立宣言…

ジョン・ロック「市民政府論」(岩波文庫)-2

2021/12/21 ジョン・ロック「市民政府論」(岩波文庫)-1 1689年の続き ロック「市民政府論」はパブリックドメインなので、英語の原文はネットに公開されている。たとえば、リンク先のPDF。下記で原文の単語をあたるときの参考にした。 Two Treatises of Gove…

ジョン・ロック「市民政府論」(岩波文庫)-3

2021/12/21 ジョン・ロック「市民政府論」(岩波文庫)-1 1689年2021/12/20 ジョン・ロック「市民政府論」(岩波文庫)-2 1689年の続き ・ ロックは、絶対主義王国や専制は市民社会の一種ではないという。その理由は、これらの国家は構成員の財産権(くどいが…

堂目卓生「アダム・スミス」(中公新書)-1

アダム・スミスは1727-90の生涯で、「道徳感情論」と「国富論」だけを出版し、繰り返し改定した。通常は「国富論」の「神の見えざる手」にばかり注目するが、彼の自由市場は放任ではなく、市場の参加者が一般的諸規則を守り正義を実現する「同感(エンパシー…

堂目卓生「アダム・スミス」(中公新書)-2

2021/12/16 堂目卓生「アダム・スミス」(中公新書)-1 2008年の続き エントリーの2番目は「国富論」について。ここでスミスの経済学を詳述しても、現代の経済学のおさらいにはならない。それは別の新書や文庫でフォローしてもらおう。気になるところを箇条…

ジャン・ジャック・ルソー「社会契約論」(岩波文庫)-1

原著は1762年。今回は桑原武夫 / 前川貞次郎ほか訳の岩波文庫を読み直す。光文社古典新訳文庫で新訳も読める。ルソーの思想を解説した本はたくさんあるので、正確な読解にはそちらを参照されるように。 今回の再読ではアーレントの「革命について」を導…

ジャン・ジャック・ルソー「社会契約論」(岩波文庫)-2

2021/12/13 ジャン・ジャック・ルソー「社会契約論」(岩波文庫)-1 1762年の続き 半ばを読んでわかったのは、ルソーの民主制はギリシャやローマの政治をモデルにしていること。既存の絶対王政がドレイ状態をつくりだしているとき、それに対抗する政治のあり…

テオドール・アドルノ/マックス・ホルクハイマー「啓蒙の弁証法」(岩波書店)-1

四半世紀ぶりの読み直し。かつて読んだときには、アドルノの近代批判、とくに数値化・要素還元主義への批判を読み取ろうとした。当時の関心が科学論、科学批判にあったから(別冊宝島「現代思想のキーワード」1980年の影響)。 今回の再読では、全体主義批判…

テオドール・アドルノ/マックス・ホルクハイマー「啓蒙の弁証法」(岩波書店)-2

2021/12/09 テオドール・アドルノ/マックス・ホルクハイマー「啓蒙の弁証法」(岩波書店)-1 1947年の続き 後半はアドルノが書いた章。 文化産業――大衆欺瞞としての啓蒙 ・・・ 孤立化・アトム化した大衆は娯楽を欲しがり、資本は文化産業を作って大衆の求め…

矢野久美子「ハンナ・アーレント」(中公新書) 「戦争の世紀を生きた政治哲学者」の評伝。入門に適している。

「革命について」(ちくま学芸文庫)に震撼させられたので、ハンナ・アーレントの評伝を読む。振り返ると、自分がもっとも哲学に関心を持っていたのは1980年代だったが、当時アーレントの話題はほとんどなかった。「イェルサレムのアイヒマン」に出てく…

川崎修「ハンナ・アレント」(講談社学術文庫)-1 『全体主義の起源』を読む。全体主義は19世紀の国民国家と資本主義の流れで生まれてくる

ハンナ・アーレントの解説本を読む。1998年に出たのを2014年に文庫化。アーレントの本は分厚く、晦渋な文体なので読むのに苦労する(その甲斐はある)。専門家が読んでまとめたものを利用させていただきます。 プロローグ ・・・ 生涯は矢野久美子「ハンナ・…

川崎修「ハンナ・アレント」(講談社学術文庫)-2 『全体主義の起源』を読む。国民国家の解体は人権の終わりと見捨てられた人々を生んだ。そして全体主義の残虐となる。

2021/12/03 川崎修「ハンナ・アレント」(講談社学術文庫)-1 2014年 第2章は20世紀。国民国家の理念である民族自決権を実施すると、ネーションのほうが国家よりも強くなる。それ以降の分析は以下のサマリーを参照。俺にとって重要なのは、100年以上前の分析…