odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

2013-01-01から1ヶ月間の記事一覧

廣重徹「科学の社会史 上」(岩波現代文庫) 明治政府が科学を導入し産官学を連携して「体制化」を推進する。

これもなーつかしいなあ(by佐藤允@独立愚連隊西へ!)。いまは廃刊になった雑誌「自然」の連載が中公自然選書になり、これも品切れになって岩波現代文庫で刊行された。残念なのは、中公自然選書に載っていた写真が削除されたこと。戦前の多くの研究所、大…

廣重徹「科学の社会史 下」(岩波現代文庫) 軍国主義の「科学の体制化」では成果を出せず、戦後の高度経済成長で「体制化」が進む。

2013/01/31 廣重徹「科学の社会史 上」(岩波現代文庫) の続き。 「戦後日本の科学は,戦時の総力戦体制の構築とともに整えられた基盤の上に成長し,経済政策に即応するかたちで大きな飛躍を遂げた.下巻では,敗戦・復興から高度成長へといたる時代の科学…

中山茂「科学と社会の現代史」(岩波現代選書) 廣重徹「科学の社会史」にない1970年代の科学の体制化を鳥瞰。

1981年、岩波現代選書で発行。1970年代に、科学は社会にどのような影響を与え受けたのかというレポート。廣重徹「科学の社会史」を受けて、書かれなかった1970年代を鳥瞰しようとする試み。ここでは「1968年」という象徴年に、科学の体制化の在り方が変わっ…

中山茂「科学技術の戦後史」(岩波新書) 廣重徹の史観をもとにして、戦後の科学技術政策を4つの時期に分ける。

1995年初出のこのレポートは、廣重徹の史観をもとにして、戦後の科学技術政策を4つの時期に分ける。 1.占領政策の影響(1945-1952) ・・・ 占領政策の初期にはニューディーラーが教育・科学を担当する部署に多くいたので、アメリカ型の科学技術政策や組織…

廣重徹「近代科学再考」(朝日新聞社) 若くして亡くなった科学史家の論文集。内容は濃い。

若くして亡くなった科学史家の論文集。彼の関心は物理学史とこの国の科学社会学であったが、ここではそこから外れるテーマの論文が収録されている。内容は濃い。例によって論文のサマリー。 科学のおける近代と現代 ・・・ 科学の開始は16世紀ごろに求められ…

ディビット・ディクソン「オルタナティブ・テクノロジー」(時事通信社) オルタナティブなテクノロジーに資本が参入してきたとき、小規模技術は人民の手に残るか。

たぶん季刊クライシスの科学批判特集号(「技術と人間」が正しい)で、読書案内に載っていたから購入したのだと思う(1983年購入)。 1970年代の真ん中あたりにかかれたもので、この国への紹介は1980年。監修をしている里深文彦さんは当時相模女子大助教授で…

アンドレ・ゴルツ「エコロジスト宣言」(技術と人間社) 1970年代に提唱された「第三の道」。でも本書のあと、エコロジストは極右に取り込まれるようになった。

タイトルからすると、博物学者か有機農業を行うコミューン生活者を志すように思える。この本が出版されたのは1975年ころ(翻訳は1982年)であるので、反=資本主義的な生き方が志向され、このような隠遁的な生活スタイルが試みられたものだ。そうい…

柴谷篤弘「生物学の革命」(みすず書房)

雑誌「自然」や「科学」に連載された記事を元にして1960年晩冬に出版された。この本の衝撃の一端は荒俣宏「目玉と脳の大冒険」に記載されている。なにしろ、生物学の目的について大転換を図ろうという目論見があって、その転換の大きさというのは当時の学者に…

柴谷篤弘「反科学論」(みすず書房)

「生物学の革命」の10年後の「みすず」連載をまとめたもの。ベトナム戦争と大学闘争、公害と環境破壊と資源枯渇が背景になっていて、前著よりもさらにラディカルな問いかけになっている。 I. 序章 ・・・ この本の問題意識は2つ。ひとつは、大学闘争による「…

柴谷篤弘「あなたにとって科学とは何か」(みすず書房)

前著「反科学論」から3年後の1977年刊。前著の想定読者および問いかけ先は職業科学者であったが、こちらでは一般市民(というか非専門家)に対して科学を説明することを目的にしている。もちろん単純な啓蒙ではなくて、科学批判への実践的な参加の呼びかけを…

柴谷篤弘「日本人と生物学」(工作舎)

1980年の語りおろし。前著「あなたにとって科学とは何か」に対する批判があって、分子生物学からなぜ発生生物学に変えたのか、科学批判はどのようにあるのか、などを話すためのもの。 彼は1947年から核酸の研究を始めていて、西欧の分子生物学の興隆を実感で…

柴谷篤弘「今西進化論批判試論」(朝日出版社) ネオダーウィーニズムの優れた解説書。ラマルキズムや今西進化論はマルキシズム(と全体主義)と相性がよい

著者は今西進化論批判の本をいくつか書いているが、これがもっとも古くて、最も網羅的。取り上げているのは今西進化論だが、実のところはネオダーウィニズムの優れた紹介になっている。これを準備するにあたり「種の起源」の前の草稿をファクシミリ版で読み…

柴谷篤弘/藤岡喜愛「分子から精神へ」(朝日出版社) 今西錦司の薫陶を受けた生物学者と心理学者の対談。基礎知識もあいまいな「専門家」の妄言。

自分は心理学のよい勉強家ではない。新書を10冊くらいと岸田秀や秋山さと子らの通俗解説書とフロイトの「精神分析入門」とラカンの一冊くらいなものだ。なので、藤岡喜愛がロールシャッハテストの話をしてもさっぱりわからない。あと柴谷によると、今西錦司が…

柴谷篤弘「私にとって科学とは何か」(朝日新聞社)

1982年刊行。この本の前には「反科学論」1972、「あなたにとって科学とは何か」1977、「日本人と生物学」1980、「今西進化論批判序説」1980がある。そこに書いたことが前提になっている事に注意。単独で読むことは可能だが、これらに目を通しておくほうがわ…

柴谷篤弘「バイオテクノロジー批判」(社会評論社)

1980年から83年にかけて雑誌に書いた文章やインタビュー、講演を収録している。科学批判の主題は別の本(「私にとって科学とは何か」朝日新聞社)の感想で触れたのでここでは書かない。 代わりに「バイオテクノロジー批判」について。とはいえ、当時の状況を…

柴谷篤弘「私にとって科学批判とは何か」(サイエンスハウス)

「私にとって科学とは何か」で発生生物学にターゲットを変えた著者。この本では科学批判、自己変革、社会変革をどのように実践するかを考える。あわせて、実践例を提示し、批判を仰ごうという意図の本。 第1部 批判の論理 私にとって「科学批判」とは何か …

柴谷篤弘「構造主義生物学原論」(朝日出版社)

初出は1985年。いみじくも「週刊本」シリーズの最終巻で、唯一のハードカバーである。 それはさておき、初出年にあるように「構造主義生物学」を名付けた邦書の最初である(と思う)。この時代には池田清彦は自説を発表していないので、柴谷との邂逅は後の話…

吉岡斉「科学者は変わるか」(社会思想社) 廣重徹-中山茂らを継ぐ「科学の体制化」研究。この後著者は日本の原子力研究に移った。

この本は著者の第2作にあたり1984年に刊行された。当時和歌山大学講師であったが、31歳。浅田彰「構造と力」の26歳にもびっくりしたが、この著者の年齢にも驚いた。まあ、なんとたくさんの本を読んでいること、それにびしびしと評価を与え、明晰な論理を展開…

吉岡斉「科学革命の政治学」(中公新書) 科学研究システムは新陳代謝(人の交換、設備の投資など)を行わないと生産性を失う。企業・軍・国家の研究者囲い込みはもろ刃の剣

1987年の新書。筑波科学博などというイベントがあったり、日本的経営システムが優秀だと論じられたり、超伝導や遺伝子組換、PCなど科学技術が社会をばら色に変革するという夢が語られたりした時代の著作。200ページちょっとの小冊子でありながら、中身の濃い…

2013年年頭の誓い

このblogを始めるときにモットーが3つあった。3.宣伝活動をなるべくしない web検索で複数回のクリックをしないと、このblogが発見されないようにしておく。 毎年特定の話題が繰り返されるようで、「ルィセンコ」「サイキック戦争」「自炊 pdf」あたりの検…