2021-05-01から1ヶ月間の記事一覧
2021/06/01 埴谷雄高「死霊 III」(講談社文芸文庫)第七章 《最後の審判》-2 1984年の続き 「より重苦しく鈍くより厳しい響きが何処からともまったく解らずゆっくりと『違うぞ』」と響いてくる。「この影の影の影の国の果てにあるその長さも見届け得ぬほ…
2021/05/31 埴谷雄高「死霊 III」(講談社文芸文庫)第七章 《最後の審判》-3 1984年の続き 第八章 《月光のなかで》(第2日夜) 第6章の終わりで集まったもののうち、そのあとの行動は首だけが第七章で語られた。第八章ではほかの人たちが語られる。すな…
2021/05/28 埴谷雄高「死霊 III」(講談社文芸文庫)第八章 《月光のなかで》-1 1986年の続き そこまでの話をしたところで、外に出た安寿子は首と与志が歩いているのを見かけ、さらに父・津田康造もいるのを知る。 長身の黒川の影をみて「高志さん?」と…
2021/05/27 埴谷雄高「死霊 III」(講談社文芸文庫)第八章 《月光のなかで》-2 1986年の続き 第九章《虚體》論―大宇宙の夢(第3日朝) 当日は安寿子18歳の誕生日(成年を認められる日)。津田家に安寿子が呼んだ列席者が集まり、舞踏会も行ったホールの…
2021/05/25 埴谷雄高「死霊 III」(講談社文芸文庫)第九章《虚體》論―大宇宙の夢-1 1995年の続き 黒服のいうこの「私」を笑う未出現者は、たとえば受精しなかった精子。受精の競争で数億の精子からひとつだけが選ばれて、ほかの精子はなににもならない(…
2021/05/24 埴谷雄高「死霊 III」(講談社文芸文庫)第九章《虚體》論―大宇宙の夢-2 1995年の続き とはいえ、五日間の物語は三日目にようやく至ったにすぎない。登場人物たちのアクションで行く末の分からないままになったことはたくさんある。首猛夫は津…
2か月かけて埴谷雄高の書いたもの(「文学論集」「政治論集」「死霊」)を読んできた。総仕上げは、埴谷雄高の担当編集者でのちに文芸評論家になったものによる「死霊」論。60年代後半に埴谷雄高の本を作ることから始まり、埴谷雄高の仕事の協力者として信頼…
2021/05/20 川西正明「謎解き「死霊」論」(河出書房新社)-1 2007年の続き この長大な小説をおもに「存在」「虚体」をめぐる議論を批判しながら読んだ。なので「謎解き『死霊』論」を読んで、登場人物たちの関係や行動で読み漏らしたところがあったことに気…
今回読んだのは新潮日本文学の39巻「野間宏集」。新潮文庫で読んだことはあるが、手放したので同じ作品が収録されているかは不明。 暗い絵 1946 ・・・ 近衛が「東亜新秩序の建設」声明を出したというから1938年ころか。その5年前の滝川事件で京都大学の左翼…
自分の進化論の知識は1980年までで途絶えている(そのあとに紹介されたビッグネーム、たとえばドーキンス、グールド、ウィルソンなどを読んでいない)ので、手ごろな新書で補完することにする。著者・佐倉統はたとえば別冊宝島「進化論で愉しむ本」で名前は…
初出が解説に書いていないが(いつ書かれたかの情報は必須!)、最後の中編を除いて1860年代、作家初期のものらしい。 私の懐中時計 ・・・ 正確無比な懐中時計が時を正しく刻まなくなったので、修理してもらう。そのたびに、ますます正しい時刻(とは何か)…
トウェイン最晩年の作(出版は死後の1916年)。 1590年のオーストリアの片田舎。教会が町の中心で、町長もいるが神父の権威が強いころ。3人の子供が遊んでいるところに、「サタン」を名乗る美少年が現れる。古今東西の面白い話をして子供らを魅了したが、不…
1890年代に書かれ、私家版として1904年に出版。正式出版は没後の1917年。 老人が青年に語る。いわく、おまえの信じている人間の権威、尊厳、崇高さなどはないのだよ。なんとなれば人間は外的諸力に強制的に動かされている機械なのであるから(この「機械」は…
O.ヘンリは昭和の時代にはよく読まれていた。高校時代に新潮文庫の3冊本を読んだが、今回は角川文庫が1969年に改版したものを読む(翻訳は1950年代だろう)。 作者名はペンネーム。30代にこういう短い話で大人気になり(当時、週刊誌が流行していて、平易…
2021/05/07 オー・ヘンリー「傑作集」(角川文庫)-1 の続き オー・ヘンリーは数年の間に380編のショートショート(という言葉はまだなかった)を書いた。おおざっぱに、ニューヨークもの、中部もの、南部もの、中米ものに分けられるという。そのうち出来が…