金子光晴
これは昭和15年(1940年)に出版された紀行文。もとになった東南アジアの渡航体験は、「どくろ杯」「西ひがし」に書かれた1928-31年のときのこと。行きの話もあれば、帰りの話もあって、それはこの本だけではわからない。どの場所の話がいつごろのものかは、…
巴里について2年たち、根なし草の生活が板につくようになってきて、詩想も消えていく。それに若くない。妻・三千代は父に預けた子供のことが気になって仕方がない。それにかの国では日本の評判は下がる一方であり、不況はますます肩身を狭くする。ベルギーの…
前作「どくろ杯」では、森三千代と巴里に抜けようというところ、上海にカウランプールほかで道草を食うところまで書かれていた。ここでは、先に送り出した森三千代を追って、シンガポールからインド洋にでる貨物船に乗船するところから始まる。そして約2年間…
不良という言葉には、ひどく人を魅了するところがあるのだが、そこらでオートバイをふかせているような矮小な連中は置いておくとして、金子光晴のスケールになると、もう太刀打ちできないと思い知らされる。なにしろ、旧制中学の頃から素行不良で退学ばかり…