odd_hatchの読書ノート

エントリーは3000を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2023/9/21

2018-03-01から1ヶ月間の記事一覧

三田村泰助「世界の歴史14 明と清」(河出文庫) いち早く近世になったものの緊縮財政の鎖国で古代に逆戻り。多すぎる人口はイノベーションを生まない。

ここでは元の末期から清の最盛期まで。1350年から1800年ころまでか。このころになると、「中国」「中華」の範囲が広がって、「西域」とされる高山地帯や砂漠なども含まれるようになる。ことに元や清のような漢民族でない民族が政権をとるようになると、それ…

愛宕松男「世界の歴史11 アジアの征服王朝」(河出文庫) いち早く近世になった宋と元が倒れると、貨幣の信用がなくなり、ハイパーインフレを起こす。

ここでは唐の末期から元の末期まで。900年から1300年ころまで。高校教科書にあるように元王朝は「匈奴」と呼ばれる西方民族の支配になるので、その前後の西域の歴史も記述される。自分は西域にはあまり興味を持てないので、以下のまとめと感想では主に中国の…

羽田明/間野栄二/山田信夫/小中仲男「世界の歴史10 西域」(河出文庫) ユーラシア大陸の交易が陸上輸送だった時に栄え、海上輸送に切り替わると衰亡した。

「西域」はとてもあいまいな地理や歴史の概念のよう。とりあえず21世紀初頭の世界地図で言うと、モンゴル、中国西部(新疆ウィグル自治区、チベット)、カザフスタン、ウズベキスタン、キルギス、タジキスタン、アフガニスタン、トルクメニキスタンあたり。…

宮崎市定「世界の歴史07 大唐帝国」(河出文庫) シルクロードは漢の金銀を流出させて国を滅亡させ、名産品をたくさんもつ唐を輸出超過で経済発展させる。

ここでは漢の滅亡ころ(三国時代の開始)から五代時代(唐の滅亡)ころまでの、西暦200年から1000年ころまでを扱う。著者によると、これが中国の中世に相当するという。ヨーロッパの中世が500年ころ、この国の中世が1200年ころから開始したとすると、この古…

河部利夫「世界の歴史18 東南アジア」(河出文庫) 海洋交易圏は長い中世を過ごし、西洋や日本の植民地にされて近代を経験しなかった。

東南アジアは近いのに、この国の人からは等閑視されている。観光やビジネスで行くことはあっても、文化を知るまでにはなかなかいかない。1941-45年のこの国による占領とその影響は忘れられつつある(なにしろ、日本の帝国主義的植民地化を「アジアの解放」と…

岩村忍 他「世界の歴史19 インドと中近東」(河出文庫) インドと中近東の政治的不安定は、宗教情熱の強さと、他民族との衝突に由来。

トルコ、イラン、インドの中世と近代史。もうしわけないが、この場所と時代に関する興味をもっていないので、どうにもつらい読書。なにしろ、それぞれの地域には巨大帝国があったとはいえ、宮廷内の内紛とクーデター、王朝の交代ばかり。個々の皇帝の個性や…

佐藤圭四朗「世界の歴史06 古代インド」(河出文庫) 西洋の「市民」感情や意識を成立させないカースト制度と他民族による度重なる侵略。

土地と歴史に勘が働かない上、現在のインドをよく知らないので、おざなりな感想になることを事前報告。 この文明の成立した一帯は海からも陸からも行くのが便利な交通の要地であった。農業生産よりも貿易の拠点として、人と物と富が集積した場所のよう。紀元…

前嶋信次「世界の歴史08 イスラム世界」(河出文庫) 15世紀までは世界の最先進地帯。西洋や中国の規範や常識がこの世界には通用しない。

2016/03/25 岸本通夫/伴康哉/富村伝「世界の歴史02 古代オリエント」(河出文庫) ここでは紀元3世紀から15世紀までのイスラム世界を描く。おおよそでいうと、ローマ帝国が弱体化し、インドのクシャーナ帝国の支配も弱まりササン朝ペルシャが成立して、オス…

ハインリヒ・シュリーマン「古代への情熱」(新潮文庫) 19世紀にバルト海貿易でビジネスマンが成功するまでは啓発的。しかし発掘作業は強奪的で批判されている。

ハインリヒ・シュリーマンは立身出世の人。高等教育を受けることができず、丁稚奉公から事業で成功し、幼少時代からの夢を実現した。その社会的成功、学問の達成、語学の天才、克己と自己実現は子供向けの伝奇としてよく読まれた。 この「古代への情熱」は高…

田中眞「世界史夜話」(文健書房) 昭和30年代の大学入試世界史は自己修養とトリビア暗記が必須

これはたぶん入手困難な一冊。1958年、昭和33年に出たのがその理由であるし、執筆者が高校教師で雑誌「高校時代」と「英語研究」に連載された文章をまとめたものだから。余談になるが、戦後に学研と旺文社がずっと受験雑誌を出していて、世の高校生は受験な…

桑原武夫「世界の歴史24 戦後の世界」(河出文庫) 冷戦下に書かれた同時代の問題点。執筆者の知恵は20年後くらいまでしか見えなかった。

前の巻の「第2次世界大戦」の記述は1953年の朝鮮戦争終結までを記載した(まえがきによる。自分は23巻は未読)。第2次世界大戦を1953年まで拡大する見方は刺激的で、事態をはっきりさせる区分だと思った。すなわちこの国では戦中と戦後を昭和20年1945年8月…

中山治一「世界の歴史21 帝国主義の開幕」(河出文庫)-2 イギリス-フランス-ロシアvsドイツのブロック経済圏の均衡が破れ、政治と外交では戦争は終結しなくなる。

2018/03/08 中山治一「世界の歴史21 帝国主義の開幕」(河出文庫)-1 安定と均衡の19世紀末。その均衡を破るのは、ふたつの周縁。ひとつはヨーロッパという地域の周縁で外部とつながっているところ。すなわちバルカン半島。強大国トルコの衰勢で、この地域の…

中山治一「世界の歴史21 帝国主義の開幕」(河出文庫)-1 イギリス、フランス、ドイツ、ロシア4か国が相手を変えてのパワーゲーム。日本は戦争によって世界史に登場。

岩間徹「世界の歴史16 ヨーロッパの栄光」(河出文庫)に続く「長すぎる19世紀」の後半。1870年ころから1921年のワシントン会議まで。19世紀が終わるにあたり、ロシア革命という重要なイベントがあったが、それは松田道雄「世界の歴史22 ロシアの革命」(河…

岩間徹「世界の歴史16 ヨーロッパの栄光」(河出文庫) 長い19世紀に西洋の国民国家は帝国主義国家に変貌する。

フランス革命で開幕した長いヨーロッパの19世紀をこの本でさらに圧縮しすると、18世紀までの絶対王政がブルジョア・市民などの新しい階層の人々によって民族主義と自由主義の国家に変化していく過程であるといえる。ナポレオンのあと王政、帝政へのバックラ…

河野健二「世界の歴史15 フランス革命」(河出文庫)-2 近代のナショナリズムはここに始まる。国家の求心力を求める運動はマイノリティ差別を必然とする。

2018/03/02 河野健二「世界の歴史15 フランス革命」(河出文庫)-1 (以下は若書き。かっこ内が再読時の補足) まとめでパトリオティズムとナショナリズムの違いを説明している。前者は郷土や地縁などに根ざした感情に由来するもので、後者は国家(国民=ネ…

河野健二「世界の歴史15 フランス革命」(河出文庫)-1 グローバル化する資本主義に対応できない封建国家体制は人民の蜂起や革命で打倒される。

本書のテーマはタイトル通りであって、1789年から1815年までを扱う。この前の今井宏「世界の歴史13 絶対君主の時代」(河出文庫)が1700年ころで記述を終えているので、約90年の間にヨーロッパで何が起きたかはこの叢書でははっきりしない。 わずかながら記…

今井宏「世界の歴史13 絶対君主の時代」(河出文庫) 地中海貿易から締め出された西ヨーロッパはグローバル化を進め世界システム構築に乗り出す。

だいたい1550年から1750年までのヨーロッパを扱う。自分はクラシックオタクなので、この時代はバロック音楽であるからとても興味があるのに、読書はぜんぜんスイングしない。政治史に集中して、王様と反逆者の名前がでてくることと、各国史になってこの時代…