2020-01-01から1年間の記事一覧
1962年羽田空港。 「アメリカ人私立探偵のロガートはかつての上司の依頼で来日した。上司の妻ユキコが麻薬密売に関係しているらしいというのだ。だがロガートがユキコの尾行を始めた途端、彼女は誘拐されてしまう。ロガートも襲われ、現場には新聞記者の死体…
1976年に雑誌「幻影城」に連載。翌年、単行本で出版(1981年に改訂)。探偵は信一少年。脳性マヒをもっていて、自立運動ができるのは右手の一部。たまたま知り合った現職の刑事が少年に魅了され、毎日のように通う。事件の話を聞いた少年の慧眼が事件を解決…
小説の背景にあるのは、西洋の神秘主義。なので、上帝、天使、女神、竜など霊界の存在が説明抜きで現われ、彼らは地上界と行き来できる。名前はキリスト教由来のものもあれば、イスラム由来、ゲルマンやケルトの神話由来のもいたり。無節操ともいえるが、西…
小学校の若い女性教師が自宅で死体で発見される。睡眠薬を飲まされ(ホワイトデーのお返しのチョコレートに混入)、思いアンティークの時計が凶器だった。部屋の窓はガラス切りで開けられていて、複数の人物が事件の前後に侵入したらしい。とりあえずの容疑…
1993年発売直後に「聖アウスラ修道院の惨劇」を読んだのだが、エーコ「薔薇の名前」を表層だけなぞると、こんなにうすっぺらになるかと怒って投げ捨て、ずっと読んでいなかった。それから四半世紀をへての再会。 ルパンの慈善 ・・・ ルパン物のパスティーシ…
この国の奈良から平安の王朝を舞台にするのがサブカルで行われるようになったのは、大和和紀「あさきゆめみし」や山岸凉子「日出処の天子」の1980年代初めのころであったか。この森谷明子「千年の黙」2003年は上にあげた漫画に触発されているのではないか、…
サマリーを書くのも面倒なので、版元の紹介文を使用。 「天才建築家・十文字和臣の突然の死から半年が過ぎ、未亡人の意向により死の舞台となった異形の別荘に再び事件関係者が集められたとき、新たに連続殺人が勃発する。嵐が警察の到着を阻むなか、館に滞在…
サマリーを書くのも面倒なので、出版社のものを引用。 舞台は、アパートの一室。登場人物は、一組の男女。あの男の最期の姿、子供の頃の思い出——夜を徹して語り合ううち、共有する過去の風景に違和感が混じり始める。2人の会話のみで展開する濃密な心理戦、…
一時期進化論の本をある程度読んだので、ダーウィンは気難しく偏屈で陰気な人物というイメージを持っている。なので、本書にでてくる20代前半のダーウィンの快活さや他者への配慮、なにより活動的な社交性には違和感があった。でも最終章で、引きこもりにな…
夏目漱石はロンドン留学中に「猛烈の神経衰弱」にかかり、友人・知人はとても心配していた。その時、夏目は心理療法として通俗文学を読みふけり、おりからの流行小説である「シャーローク・ホームズ」譚に入れ込んだ。日常のふるまいから言葉使いまでホーム…
版元の紹介文はざつなので、amazonのものを利用。 「「巨大な敵に狙われている」。元警視庁SPの冬木安奈は、チェスの世界王者アンディ・ウォーカーの護衛依頼を受けた。謎めいた任務に就いた安奈を次々と奇妙な「事故」が襲う。アンディを狙うのは一体誰なの…
児童養護施設は児童福祉法によると、「児童養護施設は、保護者のない児童、虐待されている児童など、環境上養護を要する児童を入所させて、これを養護し、あわせて退所した者に対する相談その他の自立のための援助を行うことを目的とする施設」だとのこと(w…
中年の建設コンサルタントがいる。新規プロジェクトの際には、土地の買収やら建築会社の人夫手配やらのもめごとがあり、それの解決には大阪という土地柄やくざの力を借りねばならない。そのためやくざと腐れ縁ができ、時々持ち込まれてくる儲け話はいつもも…
「堂」シリーズの第3作という。これを最初に読んだので、背景がよくわからない。たぶん沼四郎なる建築家がたてた奇妙な建物で独立した殺人事件がおきる。事件がおきると、善知鳥神(うとうかみ)という女性が十和田只人(ただひと)というエルデシュ(ポール…
都会の人たちが田舎暮らしにあこがれる。その町のはずれには、芸術家が集まる一角があって、創作と販売の活動を行っていた。街の人々も緩く支援している。でも、何ごとかを起こすと波風がたつ。それも、かつて殺人事件が起こり、その犯人のひとりが逃亡して…
事件に巻き込まれたり、事件の当事者を知っている女性のナラティブ。 マイディアレスト ・・・ 妊婦殺害事件の調査聞き取りの記録。父の存在が薄く、独占欲の強い母にネグレクトされ、勘気の強い妹にバカにされている、空想癖のある女性。疎外が強まるにつれ…
感想が書きにくいなあ。悪口をいいだしたらとめどなくなりそうだけど、そうすると自分の社会や他人に対する偏見をあらわにすることになりそう。なので、ブッキッシュな話題で韜晦することにしよう。 他人と道徳や規範を共有していなくて、他者危害をしてしま…
零細工場の息子・山崎瑛と大手海運会社東海郵船の御曹司・階堂彬。生まれも育ちも違うふたりは、互いに宿命を背負い、自らの運命に抗って生きてきた。やがてふたりが出会い、それぞれの人生が交差したとき、かつてない過酷な試練が降りかかる。逆境に立ち向…
新聞広告でこのシリーズの宣伝が派手に行われているのを見てきたが、興味をひかれたことはない。なぜか手元に回ってきたので、読んでみた。このシリーズの23巻ということだが、その前がどうなっているかは知らない。 「磐音不在の江戸を島抜け一味が狙う!/…
サマリーをしっかり書く気にならないので、wikiを参照。あいにく出版社の紹介ページに書かれたものは雑すぎて引用に堪えない。 「11年前、娘を強盗に殺害された中原道正は、当時の担当刑事だった佐山の訪問を受け、今度は離婚した元妻の小夜子までも刺殺され…
医療用機械を製造しているメーカーの社長一家。円満な夫婦に見えたが、亀裂がある。離婚しようかという話のさなか、娘4歳がプールでおぼれ脳死と判定された。脳死を認められない妻は、娘を引き取って介護をし、社長は自社の開発チームの一部を娘の機能回復を…
10年前の初読では経済学にしては分析が甘いし、哲学にしては考えが粗雑で保守的だし、どこがベストセラーになったのか不思議に思ったものだ。今回の再読では、ある程度理由が分かった。 シューマッハは1911年ドイツのボン生まれ。経済学を学び、のちにケイン…
スミスやマルクスの経済学には国家が(ほとんど)登場しないが、20世紀以降、国家は市場に介入するようになる。1930年代の世界不況で市場が失敗してから。市場では利益のでない事業を国家が行うようになり、国家は福祉サービスを提供した。これは自由主義経…
2020/11/17 ヤーギン/スタニスロー「市場対国家 上」(日経ビジネス文庫)-1 1998年続き 上巻の後半は、アメリカと西ヨーロッパ以外の国々をみる。WW2以前から資本に乏しく、金融制度が不十分で、自国内の技術革新が見込めない国々は、戦争による荒廃と不況…
2020/11/16 ヤーギン/スタニスロー「市場対国家 上」(日経ビジネス文庫)-2 1998年の続き 下巻の前半の章は、計画経済から市場経済に移行するにあたって、政治体制の変化が起きた国を概観する。変革、改革、革命などさまざまな手法によって政治体制が変化し…
2020/11/13 ヤーギン/スタニスロー「市場対国家 下」(日経ビジネス文庫)-1 1998年の続き 福祉国家や社会民主主義、あるいは資本主義は、国家によって形態が様々。本書だけをみても、どの産業を国家が所有するかはとても違いがある。イギリスでは炭鉱が、フ…
原題は「Undercover Economist」で作中では「覆面経済学者」と訳される。市場(マーケットだけではなく金融市場も)を訪れて、人々が行う行動をみて、それを経済学者の知識で解釈する。もちろん個々人の行動や選択は千差万別でランダムであるが、ある程度の…
2020/11/10 ティム・ハーフォード「まっとうな経済学」(ランダムハウス講談社)-1 2006年の続き 後半は雑多なテーマ。大きくみると、市場の失敗の克服というところか。 第6章 合理的な狂気 ・・・ 予測可能な情報を収集して合理的に思考すると、予測不可能…
自分の主義主張を言語化して、一貫した形式(イデオロギー)にしてみよう。首尾が一貫していると他人への説得力が増す。とはいえ、イデオロギーは環境に規定されていて、考えるたびに変化する。首尾一貫そのものには価値がないので注意。判断や是非をつけら…
大学の新入生向けテキスト。高校までの覚える授業から考える講義になるにあたって、大学生が自発的・積極的に政治をみられるようにする。そのために卑近な日常のできごとがイントロになり、そのあとに考える枠組みを提示するという仕掛けになっている。もと…