odd_hatchの読書ノート

エントリーは3400を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2025/9/26

現代戦争

石田勇治「ヒトラーとナチ・ドイツ」(講談社現代新書)-1 国民的な支持があってナチスは政権奪取後1年半で人種差別と人権制限の法を整備した。

1990年代からヒトラーとナチス研究は一新する。東西ドイツの統一で、資料の発見が相次いだこと、研究者が世代変わりしたこと、EU実現のために過去の戦争犯罪に対する補償をする決断をしたこと、ホロコースト否定の歴史捏造が現れたことなどが理由にありそう…

石田勇治「ヒトラーとナチ・ドイツ」(講談社現代新書)-2 見かけだけの雇用促進と外交上の成果にドイツ国民は熱狂した。

2025/05/26 石田勇治「ヒトラーとナチ・ドイツ」(講談社現代新書)-1 国民的な支持があってナチスは政権奪取後1年半で人種差別と人権制限の法を整備した。 2015年の続き ナチスが全権を掌握しヒトラーが総統(党ができたころから名乗っていた)になってか…

石田勇治「ヒトラーとナチ・ドイツ」(講談社現代新書)-3 ホロコーストはヒトラーとナチ・ドイツの手段ではなく、目的そのもの。

2025/05/26 石田勇治「ヒトラーとナチ・ドイツ」(講談社現代新書)-1 国民的な支持があってナチスは政権奪取後1年半で人種差別と人権制限の法を整備した。 2015年2025/05/23 石田勇治「ヒトラーとナチ・ドイツ」(講談社現代新書)-2 見かけだけの雇用促進…

對馬達雄「ヒトラーに抵抗した人々 反ナチ市民の勇気とは何か」(中公新書) ファシズムを許さない人々の自らの責任で決断し事を引き受ける意志。日本人には抵抗運動はなかった。

ナチ政権ができた1933年からヒトラー自殺と敗戦の1945年までに、ドイツでは各地で反ナチ運動が行われた。エリートが行ったものもあれば、学生・若者が主導したものもあるし、ユダヤ人支援には市井の人々が参加した。いずれも命を賭しての行動であり、発覚し…

小野寺拓也/田野大輔「検証 ナチスは『良いこと』もしたのか?」(岩波書店) 歴史修正、歴史否認、歴史捏造は詭弁ばかりの政治活動。

「ナチスは「良いこと」もした」という主張がでてきたり、通俗書で誤りが書かれていたりするので、主要な「良いこと」もした論を検証する。「おわりに」でこのような歴史捏造が登場する理由を分析しているが、個人の欲望や不満などに求めるのは誤りだと思う…

望田幸男「ナチス追求」(講談社現代新書) 戦争犯罪を自国で裁く決意が周辺諸国の信用を培う

1989年の東西ドイツの国境開放は、それまでのソ連と東欧の革命の総決算で象徴のようであったが、実はそこから始まることもあり、それまでやっていたことをいかに継続するかという課題もあったのだ。冷戦終結以降のドイツを回顧的にまとめたのが、以下の…

芝健介「ホロコースト」(中公新書) ナチスの収容所はアウシュビッツだけではない。1980年以降の新発見も反映したナチスのユダヤ人絶滅計画の概要。

ホロコーストは1939年9月から1945年5月までのナチスドイツによるユダヤ人大量殺戮のことをいう。WW2前の欧州のユダヤ人口は950万人くらいと推測されるが、そこから600万人が死亡させられたと推計されている。推計値になるのは、ドイツ敗戦直前に絶滅収容所が…

武井彩佳「歴史修正主義」(中公新書) ヨーロッパ諸国が歴史否認や捏造を法で処罰するようになった経緯。ヘイトスピーチ同様、市民の監視が必要。

歴史とは何かにこたえるのは難しいが、歴史ではないのは何かということには20世紀になって社会問題になった歴史修正主義(revisioism)や否定論(denial)で説明できる。日本でも「大東亜戦争肯定論」を端緒にする歴史修正主義は「南京事件捏造」「従軍慰…

臼杵陽「イスラエル」(岩波新書) この国はシオニズムを統合理念にしているわけではない

全体主義の脅威を考えていくと、そのもとになった反ユダヤ主義にふれないわけにはいかない。反ユダヤ主義に関連するような本を読んできたが、20世紀ではユダヤ教ないしユダヤ民族国家としてのイスラエルを避けては通れない。とはいえ、断続的な報道でイスラ…

藤原帰一「戦争を記憶する」(講談社現代新書) 日本人は敗戦と占領を直視できないので、ナショナリズムの自己愛の物語で戦争責任を無化しようとする。

2001年。1990年代にこの国でもホロコースト否定、南京虐殺否定、自虐史観脱却などの歴史捏造が言論界に現れてきた。ヨーロッパではヘイトクライムが目立って発生し、極右が移民や難民排斥を主張するようになる。 「歴史の記憶とは? 「国民の物語」とは? 戦…

アラン・B・クルーガー「テロの経済学」(東洋経済新報社) 事実に基づかないテロリストのプロファイリングは間違っている

1990年以降のテロ事件を分析して、テロの対する我々の思い込みを正す(2007年刊)。 その結論は本文にはかいてないので、日本の編集者の手になると思われるカバーのサマリーをみなければならない。引用すると、 「実証データから明らかになったテロに関する…

広田和子「証言記録 従軍慰安婦・看護婦」(新人物文庫) 慰安婦は自発的に参加したわけではないし、高給ではない。戦後沈黙を余儀なくされ、支援と救済システムから取りこぼされる。

文庫になったのは2009年だが、もとは1975年の出版。インタビューや聞き取りは1970年ころから開始されている。1945年敗戦から25年たったころ(同時に大阪万博終了を境に、テレビのドラマやアニメ、エンタメ小説から戦争記憶が描かれなくなったころ)から行わ…

大沼保昭「「慰安婦」問題とは何だったのか」(中公新書) 1990年代に「慰安婦」問題が起きてから解決に向けた取り組みを総括。成功と失敗の政府と市民の運動の記録。

第1-2章にあるように、1990年代に「慰安婦」問題が起きてから解決に向けた取り組みを総括。成功と失敗の政府と市民の運動の記録。 第1章 「慰安婦」問題の衝撃 ・・・ 1991年に韓国女性が名乗り出て、事実が確認された。1994年の村山内閣のときに被害補償の…

早坂隆「世界の紛争地ジョーク集」(中公新書) 社会の監視や警備が厳しいほど、ジョークや小話がさえてくるが、人間は度し難いといういやな気分を味わう

海外にでかけてパーティや居酒屋によるごとに、人々のジョークや小話、アネクドートを採集する博物学者に開高健がいた。「オーパ」や「もっと遠く」「もっと広く」の旅行で集めたジョークや小話は「食卓は笑う」(新潮社) にまとめられている。ほかのエッセ…

石川文洋「戦場カメラマン」(朝日文庫)-1 ベトナム戦争のアメリカ兵。緊張してばかりの兵士は疲労の極で酒や麻薬に溺れ、村人への残虐行為になって発散する。

著者は沖縄生まれ、東京育ち。沖縄戦の前に疎開していたので、戦禍に会うことはなかったが、親類縁者に多数の死者がでた。そのことを知る祖母がときおり登場し、当時を述懐する。その言葉が、以下のヴェトナム戦争とそれ以降の戦場の被災者、被害者に重ねら…

米国技術評価局「米ソ核戦争が起こったら」(岩波現代選書) 1980年代にでた核戦争被害のシナリオ。アメリカ主導のレポートの内容は悲惨だが、甘く見積もりすぎ。

1980年代の初頭には、東西国家間の核戦争が起こるかもしれないという危機感があった。1975年にベトナム戦争が終了したこと、1973年の第一次石油危機を西側諸国がどうにか乗り越えたことなど、1970年代はデタントの進んだ時期だった。それが1980年代になると…

ポール・ポースト「戦争の経済学」(バジリコ) 感情やイデオロギーをカッコにいれて数値と要素に分解された「科学」的な議論をしよう。

「憲法9条改正?自衛隊を正規軍に?でもその前に一度、冷静になって考えてみよう。戦争は経済的にみてペイするものなのか?ミクロ・マクロの初歩的な経済理論を使って、現実に起きた戦争―第一次世界大戦から、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争まで―の収支を…

ジョン・サマヴィル「人類危機の十三日間」(岩波新書) 1962年10月キューバ危機に対応したアメリカ政府の対応をほぼそのまま収録した戯曲。

「ジョン・サマヴィル教授の戯曲『危機』The Crisis の訳である。主題は一見してわかるように、一九六二年のいわゆるキューバ危機を扱った半ドキュメンタリー・ドラマ。キューバ危機とは、一九六二年十月に突発した、文字通り世界が全面核戦争、一触即発の危…