odd_hatchの読書ノート

エントリーは3200を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2024/11/5

週刊本

週刊本 INDEX

2012/05/03 丹生谷貴志「天使と増殖」(朝日出版社) 2012/05/04 天野祐吉「巷談コピー南北朝」(朝日出版社) 2012/05/05 小田晋「グリコ・森永事件」(朝日出版社) 2012/05/07 磯崎新「ポスト・モダン原論」(朝日出版社) 2012/05/08 フェリックス・ガタ…

柴谷篤弘「構造主義生物学原論」(朝日出版社)

初出は1985年。いみじくも「週刊本」シリーズの最終巻で、唯一のハードカバーである。 それはさておき、初出年にあるように「構造主義生物学」を名付けた邦書の最初である(と思う)。この時代には池田清彦は自説を発表していないので、柴谷との邂逅は後の話…

山口昌男「流行論」(朝日出版社) 共同体は変化がないと停滞するから王(アイドル)と祭が必要。

週刊本の第1冊。ここから始まったが1年もたたずに終えた。この本では最初の章が語りおろしで、残りは雑誌に掲載された論文なのだろう。論文のテーマが雑獏なので、最初の語りでまとめを付け加えたといえる。 流行論 ・・・ 共同体に流行が生まれるのは、差…

秋山さと子「メタ・セクシュアリティ」(朝日出版社) フェミニズム前の女性視点でみた精神分析の研究史

著者は1923年生まれのユング派の学者。1960年代にチューリッヒのユング研究所に留学。筆が立つので、いろいろな啓蒙書を書いた。講談社現代新書のを読んだことがある。ラジオ番組を持っていて、長年のリスナーもいるかな。 半分は、女性視点でみた精神分析の…

岡田節人「細胞に刻まれた未来社会」(朝日出版社) 科学者の慎重なものいいに田原総一郎は能天気に擬人化する。

岡田節人は京大で細胞学を研究していた。当時の細胞学者としては最も名の知れた人だった。この人は筆の立つ人で、ブルーバックスに岩波新書に各種の啓蒙書を書いていたからかもしれない。いくつか読んだことがある。1985年に退官した。その直後に、イン…

岸田秀「希望の原理」(朝日出版社) 日本人の近代的自我の確立失敗と大東亜共栄圏の思想および行動パターンは一致する。

一時期(1970−80年代)、作者の本はよく読まれたなあ。学生の部屋にはたいてい一冊転がっていたのではないかしら。とはいえ1990年代中ごろから名を聞かなくなって、どうしたのかねえ。なにやらスキャンダルがあったようだが、興味はないので調べない。 週刊本…

四方田犬彦「映像要理」(朝日出版社) 男は性器を見ることで女性がわかるという執念に取りつかれているのはなぜか。

週刊本の一冊。著者のもとにフランスの友人から稀覯本が送られた。そこにあったのは、ある女性の性器を映した100枚の写真を集めた「とある女性の性器写真集成百枚 ただし、二千枚より厳選したる」という写真集。発行された1984年では、まだビニ本・裏本はあ…

四方田犬彦「電撃フランクチキンズ」(朝日出版社) プー太郎がロンドンで「国辱」イメージを積極的に誇張して、文化を相対化するパフォーマンスをしたらバカ受けした。

自分の読書の記録だと2010年に最初に読んだことになっているけど、本当は1985年にたぶん日本橋・丸善で買って即日で読んだのだよ(あれ、府中市の駅前書店かな、どっちでもいいや)。 1970年後半にロンドンに渡った20代半ばの女性二人が、とある書店でふと出…

フェリックス・ガタリ/田中民「光速と禅炎」(朝日出版社) 資本主義を「精神分析」しよう。

浅田彰「構造と力」でフランスにはドゥルーズとガタリと言う難解な思想家がいて、1972年に「アンチ・エディプス」という本がでたらしいということを知った。読んでみたいなあと思いながらも法政大学出版局とか朝日出版社ででているのはあまりに高価で手が出…

磯崎新「ポスト・モダン原論」(朝日出版社) 過去の様式がカタログ化されてオリジナリティを発揮できない時代にポストモダニズムが生まれた。

1985年刊の週刊本の一冊。 ポスト・モダニズムというのは、もともと建築学あるいは建築設計現場の人たちから生まれたわけで、それが現代思想の一潮流になったのは、デリダ・ドゥルーズ・ガタリなどのフランス思想の紹介者たちがいいだしたから。あれ、リオタ…

小田晋「グリコ・森永事件」(朝日出版社) 1984年に起きた企業をターゲットにした新しい型の犯罪を分析する。

1985年月ころの刊行。前年のグリコ・森永事件について、犯罪心理学の著者が語った話をまとめている。 事件の経緯のうち注目点は、3つかな。グリコ社長の誘拐、市場に流通している商品に毒物を混入させてほとんどすべての人を人質にする、数多くの脅迫文をマ…

天野祐吉「巷談コピー南北朝」(朝日出版社) 1980年代コピーライターの時代に日本のコピー史を振り返る。

週刊本の一冊。 広告ができるようになったのは、貨幣経済と商品流通市場ができ、かつ大量に購入する消費者が生まれてから。日本では、元禄の平賀源内その他の戯作者たちが開祖。このときは、商品そのものではなく、商品を使用したときのイメージを伝えるよう…

丹生谷貴志「天使と増殖」(朝日出版社) なにも持たない天使と所有に固執する悪魔。日本人は持ちたがり捨てたがる。

1985年から数年間、朝日出版社から「週刊本」というシリーズがでていた。コンセプトは企画から出版までを極めて早くしようというもの。雑誌のような流行を追うのではなく、ある程度の問題をもって、いろいろ考えをめぐらしているものに2時間ほどインタビューあ…