2024-04-01から1ヶ月間の記事一覧
歴史学者・大石慎三郎監修による「新書・江戸時代」の一冊。江戸時代の身分制は時代劇などで牧歌的に描かれているが、そうではない。たとえば「士農工商」が江戸時代の身分制の序列とされているが、この言葉ができたのは明治時代で、昭和の義務教育で定着し…
1975年に出版された被差別部落の歴史を概説したもの。以下の本を補完することを目的として読む。組坂繁之/高山文彦「対論 部落問題」(平凡社新書)角岡伸彦「被差別部落の青春」(講談社文庫) 1999年 これまで歴史学があまり取り上げてこなかったし、文書…
部落差別はまず角岡伸彦「被差別部落の青春」(講談社文庫)を取り掛かりにした。つぎに、本書で歴史を学ぶ。組坂繁之は部落解放同盟の重鎮、高山文彦は作家で水平社運動を担った松本治一郎の評伝「水平記」を書いた。高山が質問し組坂が答える形で対論とな…
野中広務は日本の政治家(1925.10.20 - 2018.1.26)。自民党に所属して、官房長官などを歴任した。この人が独特なのは、京都の被差別部落の出身で、若いころの差別体験から政治家を志した。 所属ゆえに彼の政策は必ずしもリベラルの支持を受けなかったが、彼…
著者はジェンダーワークやLGBTQ差別の研究者で、政策提言者。なので本書でも、ジェンダー差別とLGBTQ差別を扱っている。自分の知識が不足しているので、差別一般に関する議論として抽象化、形式化してメモを取ります。 社会のマジョリティが差別禁止や撤廃の…
これまでの経済学では市場・企業・家庭を一人格に扱い、中にいる個人を取りあげることはなかった。また自然を無限とみなして収奪してきたが(同時に農村の「余剰」人口を労働者に吸収し続けてきた)、再生産も無限とみなして対価をはらわずに再生産の場であ…
2024/04/19 上野千鶴子「家父長制と資本制」(岩波現代文庫)-1 家父長制と資本制は市場とそれ以外の空間を支配する構造としてできている 1990年の続き 1の理論編は家父長制と資本制の二元論を共時的にみた。2の分析篇は二元論を通時的にみる。大賞は日本…
自分が感じる生きにくさは、不安定で暴力的な社会に理由はあるが、同時に「男らしく」を深く内面化している自分自身にあるのではないか。そういう問いが老年になって生まれたので、勉強する。まず「ジェンダー」を理解することから。 ジェンダーは「社会的に…
2024/04/16 伊藤公雄「ジェンダーの社会学〔新訂〕」(放送大学教材)-1 「社会的に作られた性別」であるジェンダーの刷り込みは個人の生きにくさになり、差別や貧困などの原因になる。 2008年の続き 個人の問題からシーン別のジェンダーや「女性問題」につ…
前回読んだときは、アダム・スミスのアメリカ分離論も、アーレントの「革命について」も深くは知らなかった。再読では彼らの考えを参考にする。前回の感想。 odd-hatch.hatenablog.jp イギリスは7年戦争(1754-1763)で疲弊していた。ヨーロッパのほとんどの…
この古典をそのまま読むのは危険。なにしろ1895年の著書。今と同じ前提で書かれていると思うと誤りになる。まず、19世紀末の心理学は20世紀後半の実験や観察、アンケートなどを使った実証的なものではなく、哲学の一分野だった。ニーチェがいう「心理学」み…
イギリス・オックスフォード大学所属の研究者が2003年に書いた政治哲学の入門書。章立てを見ればわかるように、政治哲学の大問題をわかりやすく解説したもの。日本で政治哲学の入門書を書くと、ソクラテス、プラトン、アリストテレスからカントやヘーゲ…
著者は比較宗教学者。 日本では、政教は分離されているとたいていの人が認識しているが、政教分離は普遍原理ではない。日本そのものが神権政治の国だった。その精神は日本国憲法施行以後も消えていない。他の国では政治と宗教が一体化しているところがあるし…
2024/04/08 保坂俊司「国家と宗教」(光文社新書)-1 キリスト教とイスラームの場合 2006年の続き 後半は通常政治的ではないとされる宗教が政治に関与しているという話。アジアの政教分離はヨーロッパとはかなり違う。 第3章 仏教と政治 ・・・ 仏教には政…
政教分離は近代の国民国家の前提になっているが、国によってありかたは異なる。たとえば、アメリカでは議員が宗教団体の集会に出ることは承認されている。イギリスでは国教会があり、聖職者には一定数の上院議員の割り当てがある。ドイツでは聖職者は国から…
21世紀になってから、ヨーロッパに居住するイスラムが増えた。2004年(本書初出)現在で1500万人ともいわれる。彼らの受け入れ国社会では摩擦が起きて(彼らを規制する動きとそれに対する反発)、イスラムへのヘイトクライムが発生している。民主主義、平等…
2024/04/02 内藤正典「ヨーロッパとイスラーム」(岩波新書)-1 難民受入を進めるドイツと多文化主義のオランダの場合 2004年の続き 「ヨーロッパとイスラーム」を考えるときに、イスラムのひとたちがどのような信仰や社会帰属意識や「個人」観などを持って…