odd_hatchの読書ノート

エントリーは3200を超えているので、記事一覧よりもカテゴリー「INDEX」をご覧ください。2024/11/5

2019-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ロバート・マキャモン「マイン 下」(文芸春秋社) 幼児を誘拐された母親に加えられる暴力。マゾヒスティックなまでの身体の嫌悪。

2019/03/01 ロバート・マキャモン「マイン 上」(文芸春秋社) 1990年の続き。 神の声を聴いたメアリーは、ロード・ジャック(ストーム・フロントのリーダ―)の命令に応えるために、産科病院に忍び込み、生まれたばかりの男の子を預かるふりをして外に持ち出…

ロバート・マキャモン「少年時代 上」(文芸春秋社) アメリカ南部の田舎町で少年が経験する「君たちはどう生きるか」。

コーリー・マッキンソン、12歳。1964年の世界は美しく発見に満ちている。アメリカ南部の田舎町ゼファーで、感受性が強く、想像力を使うすべを知っている男の子が、激動の、しかしありふれた一年を回想する。 第1部 春の薄闇 ・・・ 早朝、牛乳配達の最中に…

ロバート・マキャモン「少年時代 下」(文芸春秋社)-1 1964年「古き良き時代」のアメリカで少年は「正義」を行為で示す。

2019/02/25 ロバート・マキャモン「少年時代 上」(文芸春秋社) 1991年 続けて後半。1964年を振り返れば、前年にケネディ大統領が暗殺され、ベトナム戦争がはじまり、反体制の運動が胎動しているころ。大都市から見ると、アメリカは「古き良き時代」ではな…

ロバート・マキャモン「少年時代 下」(文芸春秋社)-2 正義は暴力と不寛容に対して発揮されなければならない。加虐した過去は忘れてしまうのではなく、大切にする。

2019/02/25 ロバート・マキャモン「少年時代 上」(文芸春秋社) 1991年 2019/02/19 ロバート・マキャモン「少年時代 下」(文芸春秋社)-2 1991年 正義は何に対して発揮されなければならないかというと、暴力と不寛容。1960年代前半の経済成長期であり、マ…

ロバート・マキャモン「遥か、南へ」(文春文庫)-1 二組の故郷喪失者が自己回復のために南の沼地に向かう。

原題「Gone South」。まだ翻訳のでていない1993年冬にサンフランシスコに出張したとき、空港の書店でハードカバーの新刊を購入した。それから2年後の1995年1月で読了したという記録が残っている。邦訳が出ていない昔(1995/02/05)、こんなことを書いた。 そ…

ロバート・マキャモン「遥か、南へ」(文春文庫)-2 奇蹟で苦痛や危機を回避したとしても、それで得られるのは望ましい人生ではない。

2019/02/21 ロバート・マキャモン「遥か、南へ」(文春文庫)-1 1992年の続き。 時代は1991年。この国の経済がまだ好調だった余韻があり、逆にアメリカでは不況の最中。国内メーカーの工場が相次いで閉鎖され、大量馘首。そのため、多くの失業者は日払いの仕…

ロバート・マキャモン「遥か、南へ」(文春文庫)-3 死に直面したときに起こる自己変容。自己の可能性に賭けてみること、自堕落な生活を捨て、自律する生活を送ること。

2019/02/19 ロバート・マキャモン「遥か、南へ」(文春文庫)-2 1992年の続き。 もうひとつのストーリーがあって、こちらはバウンティハンター二人を主人公にする。・銀行はダンをとらえるものに懸賞金1万5千ドルを出した。それを目的にバウンティハンター…

赤瀬川源平「トマソン大図鑑 空の巻・無の巻」(ちくま文庫) トマソン批評は内輪うけねらいで皮相的な消費運動。リベラルが愛国主義に転向する日本的な運動。

トマソンについては、赤瀬川源平「超芸術トマソン」(ちくま文庫)を参照。雑誌の連載、単行本出版のあとも各地からの報告があった。いくつか本にしていたが、総集編のようにして、1996年に「無の巻」「空の巻」の二冊を文庫化した。 それから20年がたち、も…

池内了「疑似科学入門」(岩波新書)  疑似科学(ニセ科学とも)と陰謀論には「お前の主張はバカだ」といおう

著者は疑似科学を3種に分類する1種: 占い(血液型性格占い、占星術など)、超能力・超科学、擬似宗教。<参考エントリー>渡邊芳之 「「モード」性格論」(紀伊国屋書店)-2 なぜ心理学者は血液型性格診断を信じないか。 2種: 科学を装いながら科学でない…

バックミンスト・フラー「宇宙船「地球」号」(ダイヤモンド社)-2 20世紀半ばの予言者にして、発明家。プロジェクト・リーダーやマネージャーの役割は期待しないほうがよい。

原著は1969年刊行、邦訳は1972年。前回2005年に読んだので、2015年に再読。2011/12/16 バックミンスト・フラー「宇宙船「地球」号」(ダイヤモンド社) 綜合的な性向 ・・・ 人類の生存地域の拡大や資源の有効活用などは少数の冒険家のおかげ。彼らは未知に…

ジョン・リチャード・ヒックス「経済史の理論」(講談社学術文庫)-2

前回の読みから10年後の再読。その間に、経済学の本はいろいろ読んできたので、どのくらい自分の読みが深まったかを確認してみよう。 前回の読み。2013/05/23 ジョン・リチャード・ヒックス「経済史の理論」(講談社学術文庫) 理論と歴史 ・・・ 通常歴史は…