odd_hatchの読書ノート

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経済学

ジョン・リチャード・ヒックス「経済史の理論」(講談社学術文庫)-2

前回の読みから10年後の再読。その間に、経済学の本はいろいろ読んできたので、どのくらい自分の読みが深まったかを確認してみよう。 前回の読み。2013/05/23 ジョン・リチャード・ヒックス「経済史の理論」(講談社学術文庫) 理論と歴史 ・・・ 通常歴史は…

ジョン・リチャード・ヒックス「経済史の理論」(講談社学術文庫)-3

2019/02/1 ジョン・リチャード・ヒックス「経済史の理論」(講談社学術文庫)-2 1969年 続いて古代・中世から近世に入ってからの変化(なお、古代・中世・近世の区分は評者である自分の区分であって、ヒックスの区分ではないことに注意)。 農業の商業化 ・…

片岡剛士「円のゆくえを問いなおす」(ちくま新書)

1990年代初頭の「バブル経済」崩壊から20年(初出当時)。この国の経済は円高とリフレでにっちもさっちもいかない。どちらも経済に悪影響を及ぼし、産業の空洞化につながる。なんとかしなければ、ということで「円」を考える。 第1章 円の暴騰と日本経済 ・…

岩井克人「二十一世紀の資本主義論」(ちくま学芸文庫)

初出は2000年。ただ、最初の論文を除くと、すでに雑誌や新聞などに掲載されたエッセー。過去の著作に「貨幣論」があって、その内容が前提になっているから(あるいは抽象的な内容を具体例で説明しているから)、「貨幣論」を読んでおいた方がよい。最初の論…

岩井克人「資本主義を語る」(ちくま学芸文庫)

著者は、「不均衡動学」の経済学で賞を取り、そこで有名になった。いい加減な記憶で書くと、古典派や新古典派の経済学では市場と労働は均衡する自動調節が働き、現実がそうならないのは別の問題があるからと説明されていたが、数理モデルを使って均衡するこ…

岩井克人「貨幣論」(ちくま学芸文庫)

マルクスの価値形態論をベースにして、貨幣とは何かを説明しようとする試み。すると、説明は「貨幣は貨幣として使われるものである」という身もふたもなくなってしまうが、これがトートロジーでもなく、こけおどしでもないことがわかる。()内は自分の勝手…

スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー「ヤバい経済学」(東洋経済新報社)

以前からネット情報で気になっていた上に、タイトルが素敵なので購入。「ヤバい経済学」の原題は「FreaKonomics」。FreakとEconomicsの合体語という、これもステキなネーミング。 序 章 あらゆるものの裏側 ・・・ ここでは経済学の定義をちょっと変える。世…

中村隆英「昭和恐慌と経済政策」(講談社学術文庫)

昭和恐慌の時代は別の本の感想でまとめてきた。 徳川直「太陽のない街」(新潮文庫) ・・・ 同時代の不況と労働争議の様子をみるのによい。 高橋亀吉/森垣淑「昭和金融恐慌史」(講談社学術文庫) ・・・ 高橋亀吉は井上準之助の向うを張って、金解禁反対論…

長幸男「昭和恐慌」(岩波現代文庫)

昭和恐慌のうち、1930年に実施された金解禁に焦点をあてる。昭和恐慌の原因を探ると、それこそ日露戦争くらいまでさかのぼることになるのだが、そこまではみない。またここでは1923年の関東大震災および震災手形、あるいは蔵相の失言から発した1927年の取り…

佐和隆光「文化としての技術」(岩波同時代ライブラリ)

もとは1987年。1991年に文庫化されたので改訂した。読み返すと、このあとの著作の基本的な考えがほぼ出そろっている。一方、80年代は進行中のできごとであったので、彼の予測通りに進行しなかったことが多々ある。 1 近代化と技術革新 ・・・ 1945年以降のこ…

伊藤修「日本の経済」(中公新書)-2

2015/03/11 伊藤修「日本の経済」(中公新書)-1 後半は、経済の制度についての現在(2007年)のまとめ。1945年に終わった戦争で、この国の仕組みのかなりがゼロベースで構築しなおすことになった。そのとき、この国は小資源・生産財の不足・投資の不足・過剰…

伊藤修「日本の経済」(中公新書)-1

著者の師匠は中村隆英だそうで、中村隆英の著作では「昭和恐慌と経済政策」「昭和経済史」講談社学術文庫でお世話になりました。 この本は2007年時点でのこの国の経済を振り返るという意図をもつ。前半は経済史、後半は各論(同時にさまざまな経済学分野の紹…

真野俊樹「入門 医療経済学」(中公新書)

医療はサービスに対して対価を払うのであって経済行為とみなすことができるが、一方でサービスの内容や提供者による価格の差異がないなど経済外行為にもみなすことができる。なんでそんなことになるのかということと、医療費が増大していて国や自治体の財政…

神野直彦「地域再生の経済学」(中公新書)

「人間回復の経済学」(岩波新書)とおなじく2002年の初出。 ここでは地域自治体の自立を検討する。その前提になる社会、経済分析は、「人間回復の経済学」と同じなので繰り返さない。 さて地方の問題とその解決提案は以下のようになる。 1.地方自治体の公…

神野直彦「人間回復の経済学」(岩波新書)

2002年の出版。 失われた20年(当時は10年か)を取り戻すために「構造改革」というけれど、新自由主義の改革では競争が激しくなってみんな疲弊し少数の勝者以外は敗者になって格差が拡大するよ、ケインズ主義の社会民主主義は重化学工業の経済成長右肩上がり…

小野善康「景気と国際金融」(岩波新書)

前著「景気と経済政策」は総論と国内の経済にフォーカスしていたので、こちらでは国際経済を取り上げることになる。 第1章 国際金融 ・・・ 国際金融にはモノやサービスを販売・購入するフローと、株券や債券を投資・購入するストックがある。この二つは区…

小野善康「景気と経済政策」(岩波新書)

どうもこの人の考えは自分にはよくわからないところがある。そのことを告白したうえで、もう一回読んでみる。 第1章 景気に対する二つの考え方 ・・・ 経済事象をみるときには、<供給側>と<需要側>のふたつの立場がある。供給側だと、技術革新で需要を…

宇沢弘文「社会的共通資本」(岩波新書)

これまで収奪の対象でしかなかった「自然」や、公共物としてその経済的効果を判断することのなかった道路・公園などの公共財、たんなる公共サービスとしかみていなかった教育・医療・介護などを社会的共通資本として人々の管理において適正な使い方をしてい…

堀内昭義「金融システムの未来」(岩波新書)

序 日本の不良債権問題をどのように考えるか ・・・ 金融システムは、家計などの資金の提供者が蓄積した貯蓄を国・自治体・企業の資金調達者に効率よく移転し、それぞれに適切なリスクとリターンの関係を実現すること。1990年代の金融システムはそれを実現し…

藤原保信「自由主義の再検討」(岩波新書)

1994年に急逝した著者のおそらく最後の本(1993年刊)。 1989年の東欧革命で深刻な衝撃を得て、それでもなおかつ社会主義思想を擁立しとうしている試み。1935年生まれの著者は、おそらく1960年安保闘争を前線で戦い、1970年安保を窓の横に見ながら政治思想史…

デヴィッド・ルードマン「エコ経済への改革戦略」(家の光協会)

柄谷行人「世界共和国へ」は資本主義経済社会の行き詰まりを打開するための理念を示しているが、具体策には乏しい。それは読者個々人で現場を作ることになるのだが、どのような問題をどのように解決するのかということを具体例なしに個人で抱えるには大きす…

ジョン・リチャード・ヒックス「経済史の理論」(講談社学術文庫)

先にぶっとい中村勝己「世界経済史」を読んでいたので、ここで書かれた事例がいつごろのどこのことかがはっきりしたのがよかった。 この本では、歴史の記述を考えるのではなく、経済の発展のモデルを作ること。そのモデルは妥当性を持っているように思える。…

佐和隆光「市場主義の終焉」(岩波新書)

まず本書の中身を鳥瞰。2000年10月現在の状況を描写。 序章 市場主義の来し方ゆく末 ・・・ 1970年代末から1990年代末までの市場主義、自由主義経済政策は終わりにしなければならない。市場の調整機能に任せられない状況が様々な問題を生じている。市場主義…

佐伯啓思「アダム・スミスの誤算」(PHP新書)

アダム・スミスの読み直しとそれによる経済のグローバル化の批判。スミスの生きた時代が漱石「文芸評論」の時代であること、そして「産業革命」の時代であること(下記のように実際は別の経済革命が重要だった)。そのころから300年もたつと、どうもわれわれ…

佐伯啓思「ケインズの予言」(PHP新書)

2013/05/20 佐伯啓思「アダム・スミスの誤算」(PHP新書) 序章 凋落したケインズ ・・・ ケインズの政策は一国の閉鎖的な経済環境を想定していた。外国との開放経済を調べてみると、1)一国の独自の経済政策、2)貿易のバランス、2)為替レートの安定…

ピーター・バーンスタイン「リスク 上」(日経ビジネス文庫)

「リスク」という言葉はどうもえたいが知れないし、どうも誤解された使われ方をしているのではないか(自分の責任とは無関係に降りかかってくる災難みたいな意味)。なので、このタイトルの本を読む。 前半は、リスクの考え方や計算に使われる確率や統計、推…

ピーター・バーンスタイン「リスク 下」(日経ビジネス文庫)

2013/05/16 ピーター・バーンスタイン「リスク 上」(日経ビジネス文庫)第10章 サヤエンドウと危険 ・・・ ようやく株の話。株価は変動が激しいが、長期的にみれば「平均への回帰」がみられる。問題は、「平均」が長期的に変動していくこと。ほかにもいく…

ポール・ポースト「戦争の経済学」(バジリコ)

「憲法9条改正?自衛隊を正規軍に?でもその前に一度、冷静になって考えてみよう。戦争は経済的にみてペイするものなのか?ミクロ・マクロの初歩的な経済理論を使って、現実に起きた戦争―第一次世界大戦から、ベトナム戦争、湾岸戦争、イラク戦争まで―の収支を…

高橋亀吉/森垣淑「昭和金融恐慌史」(講談社学術文庫)

昭和金融恐慌について数冊を読んでいたが、1920年代の恐慌史に思い違いがあったようだ。 徳永直「太陽のない街」(新潮文庫) 追記2011/7/1 - odd_hatchの読書ノート まとめると、 ・第1次大戦によりアジアから撤退した欧州企業の間隙をぬって日本企業が進出…